はじめの一歩3.5 六歩目
  
  
クレリック編

060307
 骰拾陸 & いしかわ


 神に仕え、神の意志を具現化する者たち----それがクレリックである。
 地上において神の意志を代行するため、彼らは主たる神より様々な能力を得ている。その能力はさすがは神の使い、3.5eになってなお『クレリック最強説』をささやかれるほどに強力で、しかも応用範囲が広い。
 最強か否かの真偽はさておき、冒険には必須である回復系呪文を使いこなせるクレリックは冒険者パーティになくてはならない存在であることは間違いない。一説には『ファイターのいないパーティは無数にあってもクレリックのいないパーティはない。なぜなら、そんなパーティは遠からず全滅の憂き目に遭うからである』ともいわれる。まあ、世にはこんなトンチキもいないではないが。


 では、まずクレリックがいかなる能力を持っているのかを確認してみよう。


基本攻撃ボーナス:レベルの3/4
セーヴ:頑健と意志が良好
HD:D8
特殊能力: 信仰呪文、アンデッド退散/威伏、すべての鎧と盾(タワー除く)に習熟



 ほほう。つまり、攻撃ボーナスもHDもそこそこあって、セーヴも反射以外は良くて、鎧は全部着れて、そんで呪文が使える、と。

・・・・・・なんかちょっとだけ優遇されてるみたいだねクレリックちゃんてば。
まあ気にせず解説を続けよう。優遇ったってほんのちょっとだけだから。いいよね? ほんのちょっとだし。



 で、まあクレリックてのは能力的に悪くない上、信仰呪文に自己強化系の呪文が結構含まれてるもんでこんな感じの前衛型(=戦闘重視型)クレリックを作ることも十分可能なのだが、ここではそれには触れず、D&Dにおける標準プレイ人数である4人パーティに不可欠であろう、”回復・サポート重視型クレリック”を中心に考えてみよう。


 戦闘が激しく、完璧に構築されたキャラでもザコのクリティカルで一発即死なんて光景が頻繁に見られるD&Dにおいては迅速な回復が必要なのは言うまでもなく、いきおい回復の出来るPCはパーティには不可欠である。
 もちろん、安価で強大な----750gpでキュア・ライト・ウーンズ50発分!----回復量を供給してくれるワンドや巻物を使えるもの、すなわちレンジャーやパラディン、バード、ドルイドがいれば何とかなるよ! という声もある。たしかに、戦闘の合間あいまにhpを全快させるだけであればキュアのワンドを数本持って行けばそれで充分だし、低レベルであれば1回のキュア・ライト・ウーンズでも充分な回復量である。
 しかし、レベルが上がるにつれて、それでは確実に追いつかなくなる。一度に数十、下手をすれば3けたを超えるダメージを受けるようになると、総回復量はともかく、瞬間最大回復量が重要となってくる。そして、治癒呪文を迅速に使用できるクレリックはその瞬間最大回復量もけた違いなのだ。
 また、hp回復のみならず、クレリックには状態異常を回復するという重要な役割がある。状態異常には麻痺恐怖などキャラクターを事実上戦闘不能に陥らせるものがごまんとある。特に意志セーヴを強要する「一発戦闘不能系」能力は低レベルの敵や呪文にも複数存在し、その危険は前衛キャラにとってオークの持つ大斧を遙かに凌駕する。

 さて、傷ついたもの、そして状態異常を癒す役目を持つクレリックは、そうした状態異常はもちろん、ダメージを受けることも極力避けるように立ち振る舞う必要がある。そりゃそうだ。麻痺を治しに行こうって言うのに自分が麻痺ってちゃしょうがねえもんな。
 
 幸いにして、クレリックの使う信仰呪文はどんな鎧や盾を装備していても呪文に失敗することはない(*8)。また、前述のようにクレリックはすべての種類の鎧と盾(タワー除く)に習熟しているので、冒険序盤からファイター並みの重装備で出発することが可能である。(*10)

 しかし、クレリックはパーティ全員の回復・治療をしなければならないことを考えると、うかつに移動力が落ちる中・重装鎧を着るのも得策とは言えない。むしろ軽装備にして〈軽業〉 で前線を移動する方が良い場面だって充分にありえる。
 とはいえ、軽装型クレリックはやはりACを稼ぐのが難しいし、立ち振る舞いを間違えただけであっという間に囲まれて死亡、などということもありえるので、プレイに慣れるまでは重装備で望む方が安定したプレイが出来るだろう。
 また、安定した回復役を目指すのであればいくらACが高くても前線で剣を振るうのは避けたいところだ。敵の手の届くところでの呪文使用は敵の機会攻撃のかっこうの的となってしまうし、ちょっとした戦術的優位を得るために前線に出て仲間の回復が遅れて死者が増えた、などということになっては目も当てられない。もちろんやむを得ない状況----助けるまもなく前衛が倒れたとか、〈軽業〉 などによって前衛が突破されたとか言う場合はしょうがないとしても、普段は射撃系武器か、せめて間合いの長い武器で敵と密接しなくても攻撃できるようにしておく方が無難だろう。
 ファイターが倒れても回復すればよいが、クレリックが倒れればパーティは全滅する
 クレリックが倒れることは、パーティが倒れることに等しいということを忘れずに!



 さて、次はクレリックをクレリックたらしめている呪文について。

 クレリックは自らが信仰する神から信仰呪文を得る。3e(以降)の神々は非常に太っ腹(*1)なので、どんな神を信仰していてもクレリック呪文リスト(PHBp184〜)にある全ての呪文からその日使う呪文を選択させてくれる(*12)。
 ウィザードが大金を支払って呪文のレパートリーを増やしているのに比べ、なんというアドバンテージだろう(ソーサラーについては触れないでやってくれ。クレリックの話をする度に崖から身を投げられるのは非常に迷惑だから)。使用可能呪文数もウィザードのそれとほぼ同じ(高レベルになればやや多い)な上、【判断力】が高ければそれに応じてボーナススペルも受け取ることができる。

 さらに、彼らは追加で各呪文レベルにつき1回の領域呪文を得る
 領域とは、信仰する神の「得意分野」とでもいったもので、PHBに掲載された神はおのおの少なくとも3つの領域を有している(PHBp30)。
 キャラクターメイキング時に信仰する神を決定したクレリックは、自分の仕える神の領域から2つを選択(*2)し、キャラクターシートに記入しておく。領域によっては
武器技能や特殊能力を得られる場合もある(後述)ので慎重に選択したい。ちなみに領域によってもたらされるボーナス呪文と特殊能力(など)はPHBp186〜にまとめられている。

 さらに、属性が善であるか、あるいは仕える神の属性が善であるクレリックは
呪文の任意発動が可能である(PHBp31)。任意発動とは、用意した呪文を同レベル(以下)のキュア呪文に変換する能力である。ちなみに属性が悪(または神の属性が悪)のクレリックはキュアではなくインフリクト呪文に任意発動する能力を得られるが、よほどの事情(PCが全員マゾだとか、キュア呪文アレルギーだとか)がない限り、キュアに変換できるよう設定しておいた方がいいだろう。正味のところ、キュアを任意発動できないクレリックは1段下がると考えていいと思う(*3)。

 ちなみに信仰する神は「PCと属性が同じか、一段階だけ異なる属性を持つ」ものしか選択できない(PHBp30)。たとえば秩序にして中立のクレリックは秩序にして善、秩序にして中立、秩序にして悪、真なる中立の神を選択することが可能だが、混沌にして善の神を信仰することはできないのだ。
 ちなみに神の属性は、ほかにも
『対立する属性の呪文は使用できない』(=善の神のクレリックは[悪]属性呪文を使用できない)など、微妙な部分で冒険に関与してくるので、前述の領域共々よく考えて決めてほしい。
 
 もう一つ、「クレリックならでは」といえる能力に
アンデッド退散/威伏がある(PHBp156)。前者は正のエネルギーをもって負の生き物であるアンデッドを追い払い、あるいは破壊する。また後者は負のエネルギーをもってクレリックの意に従わせ、時にはそのアンデッドを完全に服従させる。ちなみにクレリックの【魅力】ボーナス分、アンデッド退散/威伏の使用回数が追加される(*5)。
 この能力も、呪文の任意発動同様、クレリックないし神の属性の影響をうける(中立の神ならどちらかを選択しておかねばならない点も同じ:p30)。なお、アンデッド退散/威伏と任意発動は連動していることに注意。たとえば任意発動をキュアとして選択したクレリックは、自動的にアンデッド退散を選択することになる


 以上のことから考えるに、スタンダードなクレリックは少なくとも
善か中立属性の神を信仰する必要がある
 では属性さえ善か中立ならどの神を選んでも良いのか?残念ながら答えはNoだ。

 なぜなら、神の属性の一つである”領域”の選択は今後の活動に大きな影響を与える可能性があるからだ。
ぶっちゃけ領域の選択で明らかに能力に差が出る。領域の有無で神を選択したくなるくらい、その差は顕著だ。

 では、領域で得られる能力には一体何があるのだろうか?
 それを知りたければ、まずはPHBp186を開いてみよう。そこには神々の領域リストと、その領域がそれぞれどんなボーナス呪文、そして効果を与えてくれるかを示している。その多くは領域と関係する呪文(治癒の領域なら[治癒]呪文)の術者レベルが1上がる、とか地味なものだが、中には幸運の領域(p187)のように

効果:術者はたったいま自分が振ったロールを振り直すことができる

 なんて
デンジャラスなことがさらっと書かれていたりする。世にはこの能力のためだけに幸運の領域を持った神のクレリックを1レベルだけ修得するものまでいるほどである。

 ほかにも旅の領域(フリーダム・オブ・ムーブメント呪文の自動使用:
からみつき、グラップルや麻痺(!)からの影響を一切受けない)や魔術の領域(1/2レベルの秘術呪文使いとしてスクロールやワンドの使用可)など、強烈な効果を持つものは多数ある。

 さらに、これら領域からもたらされる領域呪文にも強力なものが多い。たとえば旅の領域はフライ、ディメンジョン・ドア、テレポートなど、冒険中使いまくる呪文が並んでいる。こうした呪文は本来クレリックなら使用できない呪文であり、これら領域で追加された呪文でも(呪文リストにある、と見なされるので)巻物やワンドなどでも使用が可能となる。ほかにも火の領域(プロデュース・フレイムなど使いやすい攻撃呪文が多く入っている)や欺きの領域(インビジビリティが2lvにある)は比較的使いやすいだろう。

ここで、いくつかおすすめの神&領域を示しておこう。

ファラングン:「領域」の組み合わせという点だけで見れば最強。前述した幸運・旅の領域のほか、4レベル以降の領域呪文の強力な守護の領域をエントリーしている。むしろどれを選択するか迷ってしまうくらい。
コード:幸運の領域を持っている。また、力の領域の【筋力】ブースト能力は、領域呪文とあわせて「戦うクレリック」を強力にバックアップする。

 次点としてペイロア(「治癒」が地味に強い・「太陽」の攻撃力がまあまあ)、ボカブウィー・ジャス(魔術の領域が強いが、それだけという話もある)といったあたりが選択の余地に入るだろうか。


 信仰する神と領域が決定すれば、あとは呪文の選択である。
 前述のようにクレリックは
クレリック呪文リストにあるすべての呪文から、その日使用する呪文を選択できる。しかも任意発動により、同レベルのキュアないしインフリクト呪文への変換が可能である
 ほかの術者クラスやるのがばかばかしいくらいの応用力を誇る彼らだが、では実際どのような呪文を選択すべきなのか?

 これまで何度も述べたように、キュアへの任意発動を選択しているなら話は早い。その回の冒険にふさわしい呪文(対ヒューマノイドなら精神系呪文など)を選択すれば良いのだ(*13)。
 
使えない呪文は年中必要とされるキュア呪文に変換してしまえばよいのだから、「特定の相手には絶対的な効果を持つ呪文」などといった、ウィザードなどではちょっと使いづらい呪文でも、比較的気軽に準備していける。


といわれてもどれを選んだらよいのやら、という
人も少なくあるまい。
ご安心あれ。

今回はいまは亡きゲームぎゃざ誌でおなじみの骰拾陸氏が、ご近所のよしみ(*9)で呪文選択のポイントと実際の選択についての特別講師として原稿をお寄せ下さった。





 まあ読んどけ!
 


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 以上を踏まえつつ、実際のキャラクター作成についても触れておこう。
 まずは能力値の割り振りから。

 基本的には呪文投射に関わる【判断力】を中心に割り振るのがよいだろう。
 多少低くても4レベル毎の成長をつぎ込むことにするなら最低15あればすべてのレベルの呪文が唱えられる(マジックアイテムの購入を考えれば条件はもっと簡単になる)とはいえ、相手のセーヴを突破する際の難易度は、クレリックの場合呪文レベル+【判】ボーナスによって決定される。仲間にかける呪文の大半は難易度が関係ないから、と割り切って他の能力に回すのもアリとは思うが、敵へのフィアーやホールド・パーソンを狙っている君なら高くするに越したことはない。
 <精神集中>やHPの多寡に関与する【耐久力】ACを強化できる【敏捷力】が高ければ、前衛を抜けてきた敵をくい止める際にも役立つだろう。特に【耐久力】が高い=hpが多いクレリックは、すなわち「自分のダメージを気にせず他者を癒しに行ける」クレリックということだからそれだけで価値が高いといえる。
 意外と忘れがちだが、重装備で移動することを考えると【筋力】もある程度は必要となるのを忘れずに。特にクレリックは【筋力】より回したい能力値が多い分、思わず8を割り振ってしまい、チェインシャツと盾で重量制限いっぱい、なんてことをやらかしがちなクラスである。せっかく軽装鎧を着ても、重量に耐えられないせいで移動速度が落ちるようではパーティ全員に迷惑がかかる。ご注意のほどを。
 交渉系技能がクラス技能としてあること、アンデッド退散/威伏回数に追加が得られることなどを加味して【魅力】をあげておくのも有効かもしれない。クレリックは将来的には「情報の真贋を明らかにする」類の呪文を投射できるようになる。そうした呪文を有効に活用するためにも、【魅力】をあげておくのも良いだろう。
 後述するが、クレリックは技能に関してはほとんど期待できないクラスなので、【知力】が多少低くても何とかなる可能性が高い。ただ、3.5eになってからモンスターの判別のために〈知識(宗教)〉 などが必要とされるようになり、【知】にマイナスペナルティが入るようだと少々つらいような気もしないではないが。ドンマイ。

 種族については特におすすめのものはない。
 【判断力】【魅力】にプラス修正される種族はPHBにはいないからである(*6)。とはいえ、ハーフオークだけはクレリック的に不便な点が多いのでさけておく方が無難だとは思う。
 後衛に立つ機会が多いようなら弓の習熟を有するエルフを選択しておくのは悪くない。
 ただ、なんだかんだ言いながら技能と特技に恵まれた人間を選択するのがベストという気がしないでもないのだが。
 結局のところ「コレしかねえ!」って選択肢があるわけでもないので、パーティメンバーと役割分担についての相談しつつ、自分のイメージに合った種族を選択するのが一番良いのではないだろうか。

 お次は技能だ。
 まず<精神集中>必須の技能である。機会攻撃を受けないように呪文を唱え(防御的発動:p138)たり、呪文にあわせて攻撃されたとき、呪文の使用を維持できるかどうかといったチェックはすべてこれで行われる。前衛PCの回復をじゃまされないためにも常に最大値にしておこう。
 また、<治療>を修得すれば低レベル時でも毒や麻痺に対応できるので、回復手段に乏しい低レベルのうちはなるべく修得しよう。
 先に述べたように、3.5eからはモンスターの判別が各種〈知識〉に割り振られる(PHBp76)ようになり、<知識(宗教)>はアンデッドを判別するのに使用される。つまり、〈知識(宗教)〉が低いと出てきたアンデッドがどんな能力を持っているか、どのくらい強いのかが判別できないのである。
 エロい特殊能力を持つものが多いアンデッドの判別がつかない=能力ががわからないのは致命的である。
 君の仲間たちが「なんだ、ゾンビじゃん」と言いながらワイトに襲いかかり命より大事な何かを奪われたり、前線で戦っていたはずのファイターがいつの間にかシャドウになっていた、などという事態は極力避けたい。多少無理をしても〈知識(宗教)〉は修得しておくように。ちなみに〈知識(宗教)〉が5ランクあるとアンデッドに対する退散判定に+2のボーナスが得られる点も忘れずに!(PHBp77)
 ほかにも <呪文学>は相手の使用する呪文がなにか(ディスペル・マジックの必要性を判断したりするのに重要)とか、ディテクトマジックでオーラを見たときその魔法がどの系統に属しているかなどがわかるようになるなど使用する場面が比較的多い。
 【魅力】が高めなら<交渉>も捨てがたい。情報収集や物品の購入、NPCの雇用や依頼主との交渉など、様々な場面で役に立つ。戦闘関連技能に比べ軽く見られがちな<交渉>だが、使える人間が多いほど有利に冒険が進められることはまちがいない。


 特技については、まず《イニシアチブ強化》 をおすすめしておこう(*11)。攻撃や防御を補助する呪文を使う機会が多いクレリックであるがゆえに、「早く動ける」この《特技》の有効度は高い。「すんでのところでキュアが間に合わなかった!」などといった事態を避けるためにも修得をおすすめする。
 また《巻物作成》は「普段使わないけどないと『終わる』呪文(マジックウェポンディテクトイービル/マジック、レビテートなど)」を安価に準備しておくために役立つ。《その他の魔法のアイテム作成》もDMがアイテム作成の時間的余裕を与えてくれ、かつ3レベル以降の修得であるという条件を満たせるのなら非常に有効である。
 そのほか、序〜中盤では《呪文持続時間延長》も候補にあげられる。レリック呪文には能力値やAC、あるいは攻撃力を補助する呪文が多いため、呪文の持続時間が2倍になるこの《特技》はダンジョン内で有効である(もっとも1レベル時にはほとんど使う機会はないので3レベル以降で十分だが)。もっともDMGp234に示されるメタマジック・ロッド(呪文修正のロッド)は比較的安価に《呪文持続時間延長》や《呪文距離延長》の効果を与えてくれるので無理をして取るというほどの事もないかもしれない。
 
また、戦闘補助を考えるなら《近距離射撃》《精密射撃》 などを修得出来れば活躍の場面は多いだろう。特技数の少ないクレリックがそこまでがんばる必要があるかどうかは微妙なところだが。


 装備は前述の通り、プレイになれないうちは可能な限りACを高くしておく方がいい。パーティの中で重装備してるのが君だけで君がパーティの移動力を低下させている、などということになるようなら話は別だが、基本的には【筋力】の許す限りの装備をしておく方が無難だろう。なに、構成要素ポーチと聖印以外のアイテムは【筋】のあり余ってる前衛にでも持たしときゃいいのさ。どうせ移動中は他に出来ることはないんだ。パーティの生命を握る重要な役割を担ってる君のために荷馬程度の働きも惜しむような前衛なら戦闘後のキュアを渋るだけで、まあたいていの言うことを聞いてくれるようになる。「人は環境が作る」と言う言葉を忘れてはいけない。あんまり要求が激しすぎるといつの間にか自分の属性が変わってたりする可能性もあるが。ドンマイ。
 資金が余っているようならスクロールワンドに使いたい。
 例えばキュアライトウーンズのポーションは1本50gpである。ところが(信仰呪文使いにしか使用できないという欠点はあるものの)スクロールなら一回あたり25gp、ワンドならわずか15gpでキュアライトウーンズを使用できるのである(*7)。
 また、回復役である君が行動不能になるのを防ぐために毒消しや麻痺消し、余裕があるならキュアポーションなどの各種回復薬を他のPCに渡しておくのも忘れずに。こうした気遣いによって、パーティは君の回復力をより大きく享受できるのだ。ぐだぐだ言うようなら戦闘後のキュアを(以下略)。




 最後に。


 クレリックはこれといった弱点もなく、呪文や特殊能力は非常に強力である。
 特に治癒能力はD&Dというゲーム中でも随一のものである。
 
 しかし、優秀であるだけに、PCとして、またパーティの一員として求められるものが多い。

 苦悩と煩悶の末選び抜いた呪文をアホな仲間がつまらんトラップにかかって傷ついたおかげでキュアに変換しなければならなくなる(*14)なんてことは日常茶飯事だし、敵を攻撃したり攻撃呪文を唱えたい場面なのに、愚かにも単騎突撃して袋叩きにあったファイターの治療を行わなければならなかったり、突撃してくる敵から脆弱なウィザードどもを守ってやったり、と他人の世話に追われてしまうこともしょっちゅうだ。
 あまつさえ、戦闘後にはキュアのワンドを腕がしびれるほど振り続け、仲間からは「救急箱」「キュアマシーン」「ホイミスライム」などと呼ばれる屈辱すら味わわされることだってある。



 すなわち、クレリックは強力であるが故に自分を殺さねばならない場面の多い職業なのである。


 この点をもって「クレリックは強いけど面白味に欠ける」とするプレイヤーも少なくない。

 なので、「アグレッシブなプレイをしたい」とか、「他人の面倒なんてまっぴらだ!俺は俺の道を行く!」というような人は、パーティのメインクレリックという役割にはストレスを感じるかもしれない。
 これが2人目、3人目のクレリックなら、勝手気ままに振る舞っていても害は少ないのだろうけれど。

 逆に言えば他人の世話が好きな人や、「縁の下の力持ち」的なキャラが好きな人にはうってつけのクラスであるともいえる。自分のやりたいことを抑え、自らが信仰する神の使徒として、神のなすべきところをなし、パーティの面々を身をもって守る。
 うーむ、シヴい

 メインクラスとしてクレリックを選ぶ人は、自分はなぜクレリックを選ぶのかをよく考えてほしい。
 もちろん、それが「強いから」であったとしても、それは非難される性質のものではない。
 けれど、「神に身を捧げる」と言うことがどのようなことなのか、それを考えながらキャラクターを作れば、君のクレリックはより深い背景と、より深い個性を持ったキャラクターとなるだろう。



 なお、以下には当サイトに集いし猛者たちが作り上げた1レベルクレリックたちが示されている。 

    

Hall of cleric

 もし君がクレリックの作成に困ることがあったら、まずはこちらをご参照いただきたい。
 これらはすべて1レベルのキャラクターであり、各ページをそのままプリントアウトすることでPCとして利用できるよう作成されている(ただし一部のキャラクターはフレーバー的データ(身長・体重など)は空欄のままになっている。この辺はルールを参照しつつ自分で埋めてほしい)。これらのキャラクターにはいずれにも得意とする戦術や「やるべきこと」が記載されており、プレイングの際にも大いに参考になるはずだ。
 君はこれらのキャラクターをもちろんそのまま使ってもいいし、特技や技能、装備を入れ替えて使っても良い。
 まずは「習うより慣れろ」。いろいろなキャラを試して、自分にとっての最適解を見つけて欲しい。

これらのキャラクターはいずれも
   能力値:28ポイントでの購入形式
   所持金:各クラスの最大値
   使用ルール:PHB,DMGのみ

 というRPGAの推奨するグレイホーク・キャンペーン用レギュレーションに基づいて作成されています。






7歩目:基本クラスの4 ウィザード

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* 1:今は領域呪文といえば単にクレリックのボーナスとして扱われているが、2nd(AD&D)ではプリースト呪文はウィザードの呪文系統のように領域によって小分けにされ、しかも神ごとに使用できる領域が決められていた。一般に強力な神は多くの領域にアクセスできたが、貧弱な神だと4つ程度しか領域を持たず、場合によっては「俺の神、2lvに呪文が無い!」「俺の神は1lvの呪文アイデンティファイだけだ・・・」「俺の神なんてキュア系呪文持ってないぞ」などという切ない事態に陥ることもしばしばだった。癒しの力持ってない神はNPC専用やんそんなん。

* 2: 「特定の神に仕えない」場合はリストから好きな領域を2つ選んで良い、とPHBp30にはあるが、勢いマンチな方向に走りがちなため、このオプションを好まないDMもいる。またフォーゴットンレルムのように「信仰する神を決めなければならない」土地もあるので、「特定の神」を決めないクレリックを作る場合には事前にDMに確認しておく方が良いだろう。

* 3: ちなみに属性が中立(ないし神が中立)のPCは、キャラ作成時にどっちに任意発動できるか決められる。

* 4:ようやく日本語版が発売となった戦士大全信仰大全などの追加ルールには退散/威伏の使用回数を消費して攻撃力や防御力に変換する特技やクラスが掲載されている。参考まで。

* 6:まあ、よその世界にはいっぱいいるんだけどね。フォーゴットンレルムとかサイオニックハンドブックとかさ。

*8:ちなみに秘術呪文(ウィザードとかソーサラーの使う呪文体系・後述)は装備によって”呪文失敗確率”が決まっており、ふつう重装備であるほど呪文の投射に失敗する確率が上がる。

*7:なお、ワンドはどのクラス人が作ったものでも(自分の呪文リストに入っていれば)使用できるが、スクロールは信仰呪文のものしか使用できないので注意。つまり、クレリックにはバードの作ったキュアのワンドを使うことは出来ても、スクロールを使うことは出来ないってことだ。これには当然領域呪文も含まれており、ゆえに領域呪文でフライなんかを持っていても、一般に売ってるウィザードなんか用のフライのスクロールは使えない。自分や同門の人が作ったものなら使えるけど。間違いやすいのでご注意を!

*9:最近知ったのだが氏といしかわは自宅が200mほどしか離れていなかった。あらびっくり。読者はこの偶然を神に感謝すべきだ。ご近所でなければこの原稿が寄稿されることはなかったはずなのだから。 【そんなことはない】

*10:ちなみに呪文使用時にはどっちかの手が空いている必要がある点に注意。つまり、ヘヴィシールドと武器を持っていると、武器を地面に落とさないと呪文が使用できないことになる。なお、バックラーは装備してさえあればACが+1できるし、呪文の行使を邪魔しないのでクレリックに非常に良い。他の盾は取っ手をつかむ必要があるので盾のACを捨てないといけなくなる。

*11:もし君が秘術大全を持っているなら話は別だ。君が修得すべき特技は《Sudden Maximaze》である。この特技は1日1回、望む呪文の威力を(呪文レベルの上昇なしに)最大化できる。もっとも前提条件に他の呪文修正特技が必要となるので、人間以外では1レベルでは修得できないが。

*12:なお、信仰呪文は神から「いただく」ものであるため、信仰呪文の使い手は呪文の覚え直しのために8時間の睡眠をとる必要はなく、特定の時間に1時間の祈りを捧げ、瞑想を行うだけで良い(PHBp177)。強ッ!

*13:  「常に必要とはされないけど時々あると便利つうか無いと終わるような呪文は記憶しておくよりも、むしろスクロールとして1-2本持っておくようにした方が賢いかもしれない。こういう呪文はセーヴ関係なかったりするしね。

*14:そうやって変換した呪文に限ってあとで必要になるのも世の常というものだ。ドンマイ。