9歩目 新たなる旅立ち----の前に

文責:石川

031017 
123,456hit記念

 

 

 

さて、ようやく自分のキャラクターも作り終わった。

練りに練ったキャラの出来栄えは正に完璧。

これ以上の1レベルキャラなどありえない!

さあ、早速冒険に出かけよう!

 

 

 

 

・・・・・・一人でか?

 

 

 

もし君が自分のPCが一人で冒険できると考えているならば、そしてPCの性格を「一匹狼的な、自信にあふれた男」として設定しているなら、君は次のキャラクターの準備をしておくべきだ。君のキャラはダンジョンに入ってまもなくこの世から姿を消すことになるだろうし、次のキャラクターを作っている間他のPCを待たせておかなくてはならなくなるのだから。

 

 

 

 断言するが、D&Dというゲームにおいては(少なくとも序盤は)一人での冒険などありえない

 なぜか?

 一人のPCが取りうる能力が、ごく限定されたものだからである。

「自分の持っていない能力を持つ他のPCと協力できなければ生き残れない」のがD&Dである、と言いかえてもいいだろう。

 

もちろん、多少成長した後ならマルチクラスによって「万能キャラクター」を作成し、一人で冒険することも不可能だとは言わない。しかし、そうしたやり方で生まれたPCは、長所の多くをスポイルされた中途半端なキャラに成り下がることが大半である。ウィザード/ファイター/ローグ/クレリックのPCを考えてみるといい。鎧は着れず、一人であるがゆえに挟撃も出来ず、キャラクターレベルは4なのに、術者レベルは1なのだ。

 

 よって、各PCは他のPCとパーティを組む必要がある。いや、むしろ『パーティを組むことを前提として、PCを作る必要がある』と言うべきか。

これまで5タイプのキャラクターの作り方について述べてきたが、これらはそれぞれのクラスの長所・短所を挙げているに過ぎず、実際どのような能力が必要とされるのか、もっといえば「パーティで必要とされるPCとなるにはどのような選択が必要なのか」といった視点が抜け落ちているのだ。

 

 では強いパーティはどうやって作ればよいのだろうか?

最も重要なのは、キャラクターメイキングの前にプレイヤー間で話し合うことだろう。

冒険に必要な役割をプレイヤー間で分け合い、それぞれ担当を決めた上で、個別にキャラクターを作成する。こうした道のりこそが、遠回りのようだが、実際にはゴールに到達する最短の道のりであるに違いない。

 

ところが、もし君がまったくの冒険初心者であるなら、話し合おうにも何を話し合えばよいのかもわからないだろう。何が必要で、どうすればそれが得られるのか。どこに気をつければ安全に冒険に出られるのか、etc. etc…

 

 そこで、以下にパーティにとって必要な能力を、評価とともに示した。これらの能力は、冒険中に必要とされる順に、つまり『冒険の一般的な流れ』に沿ってグルーピングされている。

 初心者はもちろん、何度か冒険に出た君も、冒険に必要なものは揃っているか、足りないならどんな補強を入れるべきかなどを考えるよすがとしていただきたい。

 

 

 

)事前準備

 冒険に出るためには、まずは冒険のタネを捜さなくてはならない。

 それはゴブリン退治やアイテム探しといった『依頼』の形でやってくるかも知れないし、お宝のウワサや地図という形で得られるかも知れない。いずれにせよ、そうした情報はどのようにして得ればよいのか、またそうした情報をどう扱えばいいのかを、技能を絡めて考えよう。

 

a−1)情報収集  重要度:A

 いわゆる”箱庭型”のプレイングスタイルの人はここでどんなシナリオになるかが決まる。依頼を受けるタイプのシナリオでも、その依頼の背景を見極めるのは非常に重要だ(その依頼者は本当に名乗ったとおりの人物なのか? 依頼内容は本物?実は墓泥棒の片棒担がされたりしてない? 隠された事実はないか?そもそもその依頼は自分たちの手に負える内容なのか? etc. etc.(*1))。

 また依頼を受けることに決まったのなら、今度は依頼を果たすための情報収集も必要になる。行き先、その場所の歴史的/地理的/宗教的/魔法的な事実、周辺でのうわさ、行き先までの交通の便、旅路の補給先、などなど。バードが(ほとんど唯一)輝ける場面だが、【魅力】がベースになってる〈技能〉で解決されるので実際にはパラディン、クレリック、ソーサラーや、〈技能〉ポイントが豊富なローグがこの役割を担うことも多い。

 ちなみに〈情報収集〉には時間がかかるので最後の手段にしておこう。〈交渉〉 や〈はったり〉、時には〈威圧〉 で聞けるだけの事を聞き出してからチェックしても遅くはない。個別の情報集めが終わり、『今日はもうやることなし!』という状態になって初めて全員でaidしつつ〈情報収集〉するのがもっとも無駄がないだろう。

 また、〈技能〉のみならず、コネ(ウィザード関連、知識の神の神殿、図書館など)を使ったり、レベルが上がったら“占術”で行き先や探し物を探査してみるといった手段もある(もっとも前者はそのコネ先での〈交渉〉が、後者は〈念視術〉技能がそれぞれ必要になるのだが)。【魅力】ベースの技能にはこの手の情報収集に有利なものがたくさん含まれている。技能一覧(PHBp59〜)を確認しておこう。

 

a−2)交渉   重要度:B

 〈交渉〉技能は冒険のさまざまな場面で役に立つ。

 依頼人との条件闘争も、高い交渉技能があれば容易になる(賃金や報奨金だけでなく、現地までの移動費や運搬手段の貸し出し、仕事中の食事や矢弾の支給、道案内人の斡旋や地図の貸与など、サポートの種類はたくさんある。こうした形での報酬の追加は『賞金を増やせ』などといった直接的な要求よりも(なぜか)認められやすいのも見逃してはいけない)。また出発前の買出しや、戦利品の売り払い、国境の関門通過、敵モンスター(特にデヴィルやデーモン・ドラゴンなど)との降伏交渉など、さまざまな場面で役立つ。

 a-1)同様、バードの(ほとんど唯一の)見せ場である(つうかこれが無ければバードはコモナー同然である)が、〈交渉〉は使用頻度が高いので、【魅力】が高いクラスなら取っておくに越したことはない。戦闘力に欠けるバードが真っ先に戦死して、その蘇生費用を値切るべく交渉、なんてことも良くあることだからだ。そして技能値の低いものは当然他のキャラをサポートする。なあに、よっぽどひどい【魅力】でなけりゃ、達成値10なんざ2回に1回くらいは出るもんさ。どうせ失敗したって何のペナルティもないんだから、どんと振っとけ(*2)。

 なお〈交渉〉技能はチャームやヒプノティズムなど精神作用を持った呪文を使用する際に効果を発揮する場合がある。まず魔法で味方だと信じ込ませておいて、相手を説得する、というやり方で物事を解決しようとするなら〈交渉〉技能を上げておくのも有効だ。ただしこちらは失敗した場合のリスクが非常に高い(ファンタジー世界ではこうした呪文の使い方を法で禁じている場合が多い)。かつての仲間に賞金首として追跡されるということにもなりかねないので、特に街中での使用時には充分気をつけること。

 

a−3)情報の整理・分析   重要度:S

 手に入れた情報がいかなる意味を持っているのか?はたまたその真贋は?これを知ることこそが情報解析の意義である。

 ここでは情報収集で得た知識を総合し、何を準備すべきなのかを想定する。

〈知識〉技能やバード知識は、直接対象について知ろうとするばかりでなく、こちらが得た情報を一つ一つ検証してゆくのに用いることでより、明確な情報をDMから引き出すことが可能になる。

ウィザードやバード、また一部の知識(宗教関連など)ならクレリック・ドルイドの出番である。

 

 例えば行き先まで自分たちの足でどれくらいかかるか、途中に補給できるところはあるか、そこを定期的に通るキャラバン/パトロール/団体はあるか、どんな勢力に支配された地域かを調べるのは、特に低レベルなPCの生存にとって重要なことである。どんなワンダリングモンスターが出現するのかなどは、序盤では遭遇が致命的なクリーチャーがワンダリング表に平然と含まれているD&Dでは重要なポイントとなるだろう。

また、これから向かう先が古代の墓所だとわかっているなら、スリープなどの強力な、しかし精神に作用する呪文(つまりアンデッドには効果がない)を用意しても無駄に終わる可能性が少なくないのは簡単に想像できるし、逆に敵がゴブリンやオークの集落であるというならスリープやチャームを用意するべきだと判断できる。

こうした情報の多くは<知識(地域)> <知識(歴史)>などからもたらされる。自分達で調べが及ばないようなら補給品をそろえる商人や軍隊、バード、冒険者、図書館、地図屋など、情報源となるところは無数にあるだろう(〈技能〉が足りない、というときでさえ、その道のエキスパートを雇って調べることも可能なのだ。あきらめてはいけない)。

 

ここで重要なのは、一度得た情報をどのようにして分析するか、言い換えれば一度得た情報をどの技能で調べるか、という点である。

例えば『XX山の古代王朝の遺跡』について調べたい場合、直接「遺跡について調べたいんだけど」などとDMに問うてはいけない。こう問えばDMは単に君達に〈知識(歴史)〉あたりを要求し、君達の振った目を見て無慈悲に(そして多くの場合侮蔑の混じった口調で)「何もわからなかったよ」と告げることだろう。また、PCが都合よく必要な〈知識〉をもっているとも限らない。〈知識(ノーム工学)〉なんぞを要求された日にはその場で冒険が終了しかねない。 

こうした場合、君達は今ある情報について、細部にわたって分割してDMに質問するべきだ。

例えばXX山の地理・地形、場所、周辺にある王朝ゆかりのもの、周辺でのモンスター出現情報、王朝の歴史、有名な事件・人物、遺跡の概要、なぜ遺跡となったのかの歴史・・・など。こうして細分化することの効果は3つある。1つはある1つの事項を数回のロールに割り振ることで、全ての情報を得られなくても何分の一かは得られるようになり、情報のとりのがしを防げること(テストの解答欄には、答えがわかんなくても何かしら書いとけって言われなかった?部分点でも0点よりゃましってことさ)。もう1つは質問を細かく分けるうちに一度取り逃した情報でも別の面から調査できる可能性があること。そして細部にわたって(DMが設定してないような部分まで)しつこく追い詰めることでDMをウンザリさせ、1つ1つ質問に答えるのを面倒くさく感じさせることでさっさと正答を引き出すことが可能になることである。

ちなみにバードの知識や一部の呪文は、こうした手順を一切踏まずに正答を引き出してしまう能力を有している。特に高レベルのそれはDMがしっかり対策を立てないとシナリオそのものが崩壊してしまうほど強力だ。詳しくは本稿8歩目参照。

 

 ただし、情報収集で得られた情報は、断片として、あるいは雑多で広範な情報としてもたらされたりする場合が多い。これらの情報をつなぎ合わせ、その真贋を判定し、“data”を“information”に変えるためにはPCよりむしろプレイヤーの能力が問われる場合も多い。技能や呪文はあくまでその手助けにすぎず、最終的に情報の価値を判断するのはプレイヤーであることを忘れずに。

 

 

 

b)出発!---目的地へ

 ようやく一稼ぎできそうな情報にありついた君たちは、すぐさま宿屋のドアを蹴り開け旅立つ。

 鼻息荒く、幾度かのワンダリングモンスターの襲撃を退けた君たちは、ついにお宝の眠るという遺跡にたどり着いた!

 遺跡の入り口は、垂直に切り立った崖を80mほど降りた先に見えている。

 

「・・・・・誰かロープ持ってるか?」

「・・・・・あるけど、50ftしかない。つうかどこに固定するんだ?」

 

 この項では、こんな目に遭わずに済むにはどういう準備が必要かを考えてみよう。

 

 

b−1)出発準備   重要度:S

 「段取り8分」という言葉を聞いたことはあるだろうか?

 仕事にまつわる格言のひとつで、「仕事がうまくいくかどうかの8割は、仕事の前の段取りで決まる」といった意味の言葉だ。序文で示した例にもあるように、出発前の準備が冒険の成否を大きく左右する場合がある。

 そしてこれにはa-1およびa-3で述べた、事前情報が大きく関わってくる。

 たとえば移動中に行き倒れることの無いよう水と食料を用意するには、目的地までの旅程と障害に関する情報が必須である。少なくとも目的地までの距離がわかれば、パーティの移動力から消耗品をどの程度用意しておけばよいかを逆算するのは難しくはない。また、道中に宿場町や村があり、食料が補給できるようなら持ち歩く量を減らして移動力を上げることも可能になるかも知れない(「探しながら移動」というオプションもあるが、それはあくまで最後の手段であることを肝に銘じておくこと。探索しながらの移動では移動力が半分になり、結果ワンダリングモンスターとの遭遇確率が2倍になるのだから)。

 また、行き先が高山だとわかっているなら道中の障害を乗り越えるためのロープや縄梯子を準備したり、高所の寒冷に備えて防寒具などを用意することも出来る。道が不完全であることがわかっているなら馬車でなく、ラバやロバに直接荷を背負わせたほうがいいかもしれない(無論、足手まといになる可能性もあるので「連れていかない」という選択もあるだろう)。

こうした地味な努力はダンジョンに到着するまでの時間を、ひいては危険に遭遇する機会を確実に減らしてくれる。D&Dというゲームにおいては、ちょっとした工夫や投資で危機を回避できるというなら、その手間を惜しむべきではない。なんとなれば、D&Dほど事細かにPCを苦しめるルールが充実したゲームは稀だからである。

 

b−2)移動   重要度:B

 準備が出来たなら、今度は実地の移動である。

 高レベルになればテレポート呪文等でさっさと現場に向かうことも可能だが、低レベルのうちは付近の農民や行商人をはじめとする愚民どもと一緒に地べたを這いずり回らねばならない。どんな英雄にだって下積みの時代はあるものさ、術者としての力を蓄えるまでの辛抱だ。と、かのエルミンスター先生も仰せである。

 

 徒歩の移動となれば、問題になるのは移動速度であろう。PHBp142にはPCの【筋力】と所持可能重量が記されており、従って各PCがどのくらいの重さのものを持てば移動力が下がるかがわかるわけだが、実はこの制限がかなりつらい。特に急いで移動したいときなどは、【筋力】の低いウィザードは自分の呪文書をそこらに捨てていこうかと思ってしまうほどである。無論グレートヘルムなんぞかぶってる場合じゃない。

 しかし、だ。忘れてはならない。人間には知恵がある。

 そう、PCは人間の3大発明のひとつ車輪を用いることで、より旅を快適にしかもすばやく行うことが可能なのだ。とはいえ、D&D世界には大八車の類はなぜか販売されていないので、実際には、動物を購入して車を引かせたり、単に荷物を背負わせたりすることになるのだが。なお、こうした移動手段ののデータはPHBp143に掲載されているので参照のこと。

一方、そのようなときには移動速度が20ftのドワーフやハーフリング、ノームはかなりの足でまといになる(*3)。なので、彼らは人間よりも真剣にポニーやドンキーの利用を考えねばなるまい。特にドワーフはその特性から中装以上の鎧を着ることが多く、その場合移動力はさらに減退する。ゆえに普段重装しているドワーフやSサイズPCは、移動時用に軽装鎧を用意する必要に迫られる場合もあるだろう。

シナリオによっては道のない森や草原を歩かねばならないこともある。こうした場合、迷わずにいられるかどうかの判定は〈野外知識〉で行われる。数少ないレンジャーの見せ場なので、同行するドルイドをお得意の二刀流で黙らせてでもパーティに先行するよう心がけよう。草原はまだしも、森で道に迷うことは、特に低レベルの冒険者達にとって『かないっこないクリーチャーとの遭遇』の可能性を上げる危険な行動だ。もっとも、「道に迷わずに進む」ために必要な難易度はわずか15。【判】が+2あって、1レベル時に技能ポイントを最大までつぎ込めば、出目10で常に道に迷わずに済むことになる。とりあえずは技能修正値5を目指しておこう(*4)。

 

b−3)索敵   重要度:A

 準備が整った。さあ出発だ。

 とまあ移動を開始した一行が、移動中最も気を使わなければならないのは、この索敵であろう。繰り返しになるが、標準的なD&D世界では、そこらをうろついているワンダリングモンスターがかなり強力である場合が多い。例えばドラクエならスライムやドラキー程度しかでてこないような平原でさえ、ダイスの気まぐれによってはワイバーンやドラゴンがでてくることもあるし、ゴブリン程度のエンカウントであってもそれぞれが4HDもある巨大な狼に乗っていたりする場合もある。ある程度のレベルになればこれらのモンスターを狩って経験値稼ぎをすることも可能であるが、それにはやはりそれなりの実力が必要とされる。「隣町までの移動」でさえ、冒険初心者にとってはまさしく「冒険」であるということを忘れてはならない。

 こうした危険を避けるには、まず相手を、相手より先に察知する能力が必要となる。これにはPCの能力である<聞き耳><視認>が重要な役割を果たす。技能値ももちろん重要であるが、デミヒューマンらが持つ特殊視覚も結構ばかに出来ない。エルフらの持つ夜目は奇襲を受けやすい暗がりの中でもたいまつ等による光源がもたらす視野を2倍にしてくれるし、ドワーフ・ハーフオークの持つ暗視にいたっては完全な暗闇でも見通すことが可能となる(この能力のためだけに、パーティに一人はドワーフかハーフオークを入れておくべきだとする主張もある)。

 また、敵の発見が可能なのはPCだけでないことを忘れてはいけない。例えば使い魔だ。3eにおいては【耐久力】が2増える(!) ガマガエルを選択するのが定石と考えられている。実際HPと頑健セーヴという、秘術系術者の弱点を同時に埋めてくれるカエルの魅力に抗うことは難しいのだが、ここであえて高い索敵能力を有する使い魔を選ぶことで、パーティ全体の生存率を上げる、という選択もある。鷹、蝙蝠、フクロウなどがその候補に上げられるだろう。特に蝙蝠の暗視120ftはその場所の明暗に関わらず機能し、また蝙蝠そのものもありふれた存在であるだけに偵察に出しても目立たずに済むだろう。 

 

 

c) 冒険中に必要な能力

 無数のワンダリングモンスターの手をかいくぐり(序盤ならその多くは「逃げ回り」と言う表現のほうが正しいだろうが)、ようやく目的地についたPCたち。さあ、探検だ!

 

c−1)索敵能力  重要度:S

 b−3の内容とかぶってしまうが、ダンジョン内でも索敵能力は非常に重要なものである。いくつかシナリオをこなしたことのある君なら、「D&Dで戦闘を左右するのは戦力よりも状況である」事をすでに悟っていることだろう。先に相手を発見し、さらには待ち伏せることができれば、多少戦力差があっても何とかなってしまうのがD&Dの戦闘なのだ。逆にいえば、さして強敵でもない相手であっても、先手を取られてしまうと圧倒的に不利な状況に陥ってしまうこともある。藪に隠れていたオーク・バーバリアンに斧で殴られて3レベルファイターが即死、という光景は、D&Dでは決して珍しい場面ではない。こうした悲しい出来事を避けるためにも、<視認><聞き耳>はなるべくなら全キャラが高値を維持しておくべきである。とくに、3eでは<聞き耳> で敵を発見するチャンスが非常に多い。不可視化している敵の位置を探り当てるのも<聞き耳> だし。なので、もし「<視認> と<聞き耳> どっちかしかとれない」という状態になったなら、とりあえず<聞き耳> を取っておくといいだろう。

 そしてもう一つ。索敵能力として忘れてはいけないものに魔法的索敵能力がある。いわゆるディテクト系呪文のことだ。ディテクト系の呪文は範囲内であれば木のドアや壁でも貫通し、視線が通っていないところにいる敵でも発見できる優れものだ。時に強大な力を探知するとショックでスタンしたりする事もあるが、それでも待ち伏せや透明化した敵でも発見できるという点において非常に優れている。中でも、0レベル呪文に含まれているディテクト・マジックと、1レベル呪文にしてパラディンの特殊能力であるディテクト・イビルは非常に優秀だ。前者は魔法の罠や構造物の敵だけでなく、魔法で隠されたものや魔法の宝を、また後者は(D&D世界における敵の多くを占める)イビルのものを発見できるという点において非常に優れている。特にパラディンはこの能力を無尽蔵に使える能力を有しており、その便利さは一度使い始めると「パラディンなしでのダンジョンアタックなど考えられない!」という状態になってしまうことウケアイだ。

 ちなみにディテクト・マジックはワンドが50回分375gpで購入できるので、これも購入しておくことをおススメする。たった400gp足らずの投資で価値の高い宝を見逃さずに済む、というのは非常に大きい。

 

c−2)〈捜索〉・〈解錠〉・〈装置無力化〉    重要度:A

 ローグの特典3つ、といった趣であるが、実際この3つのために、ローグはパーティに一人はなくてはならない存在となっている。DC20以上のトラップはローグでなければ発見・処理できないし、〈装置無力化〉に関して言えばローグのみがクラス技能として持っている。さらに、ローグは(どうやってか)魔法の罠を処理する力を持っている。魔法を使用せずに魔法の罠をはずせるのは非常に貴重である。

 また、〈捜索〉 はシークレットドアや壁や床に残された各種のヒントを発見するのに有効な技能である。特にアメリケェェンなシナリオでは何の複線もなくしつらえられた隠し部屋に莫大な財宝が眠る、なんてことは(恐ろしいことに)良くあることだ。財力がそのままPCの強化につながるD&Dにおいて、財宝をサルベージしそこなうことは経験値欄に修正液をこぼす行為に等しい。世にはこの目的のためだけにエルフ(彼らはD&D世界に非常によく順応した強欲な種族であるため、〈捜索〉に種族ボーナスがつく上、シークレットドアのそばを通るだけで発見チェックが行えるというエロ種族なのだ)を選択するプレイヤーもいるほどだ。

 

c−3)判断力   重要度SS

 PCの能力ではなくPLの能力としての判断力が重要であることは、D&Dに限らないことであろう。

 D&Dではこの傾向が顕著である。PCが死にやすく、しかも蘇生手段も限られた序盤では、「無理」と思ったら撤退する判断力、言い換えるなら勇気が非常に重要になる。ここで帰ったら経験値にならないよ、などというDMの甘言に惑わされてはならない。自キャラを殺され慣れ、キャラクターへの愛を喪失している不感症なDMの操るNPCとは違い、君のPCは世に1人なのだから。しかしながら、虎穴に入らずんば虎児を得ず、との故事にもあるように、少しの危険も冒すことなく大きな力を手に入れることができないのもまた事実である。

 つまり、PC(むしろPL)は、「冒険を続行できるかどうか」そして「相手に勝てるかどうか」を判断する力が非常に重要となる。しかし、こうした、いわば『値踏み』は一概に説明することはできず、結局のところPLとしての経験をつんで覚えるしかない。パーティの能力と敵の能力、そして(実はこれが一番重要なのだが)闘うにあたっての状況によって、勝敗の天秤はたやすく揺れ動いてしまうからだ。

 それでも強いてポイントを上げるならば、

1)相手を倒しきれるだけの戦力はあるか?自分の攻撃は相手を傷つけることは可能なのか?各個撃破は出来ないか?

2)相手の特殊攻撃への対策はあるか?回復手段は?

3)相手の戦力は把握できているか?相手の得意技は?途中でであった敵への尋問や、クリーチャーの生態、ダンジョンの様子など、敵の主力を知る努力を

 

 といったあたりだろうか。

 これらのうち、少なくとも2つが満たされていなければ、一度帰って対策を用意するべきである(もっとも、そう簡単に行ったり戻ったり出来ないのが世の常であるのだが)。

 

 

 

 どうだろう。君のパーティはこれらの問題に対応し、解決する能力を備えているだろうか?

 

 プレイヤーの人数や嗜好によってはこうした能力全てを揃えることは出来ないかも知れない。

 いや、むしろ全てが揃わないことの方が多いだろう。

 しかし、気にすることはない。

 パーティに欠けたものを、持ち前の知恵と勇気で解決し、障害を乗り越えていく。

 これもまた冒険のひとつの姿なのだから。

 

 

 

 

 

 

 え?

 きれい事はいいから、実際どうしたらいいのか教えろって?

 なんだい、上手くまとめたと思ってたとこなのに。

 

 あーあー、わかったよ。

 そんじゃ、パーティ編成の例を示してみようかね。

 

 

※ここでの例は成長や将来についてを考えず、単に1-3レベルキャラを作っての一発セッションのためのものです。

 キャンペーンをやったりする場合のキャラ作り(人生設計)や装備に関しては別章にて。

 

 

<3人パーティ>

1.パラディン

2.ローグ/ソーサラー

3.クレリック

 3人だとかなり厳しいが、人が集まらないときもあるだろうから一応。

 3人1レベルというのは相当苦しいので、DMに泣きついてせめて2レベルスタートにしてもらった方がいいだろう。それでも1レベルから、というのであれば、しょうがないので2.をローグにし、クレリックの領域のひとつを“魔術”領域にして秘術系の巻物やワンドを使えるようにしておくしかない。

 また、一人(できればローグ)をエルフに、一人をドワーフかハ−フオークにしておくといい。前者はシークレットドア探しに、後者は暗闇での奇襲予防にそれぞれ役立つ。

 知覚関連の技能に重点をおいて技能を割り振り、まだあまるようなら交渉に振り分けるのが無駄が少なそうだが、一方で「とりあえずチェックできるチャンスを増やす」ということで“未訓練不可”の〈技能〉を1ポイントずつ、薄く広く習得しておくのもアリかも知れない。頭数が少ないのを補うにはこれしかないような気もする(そして一方で、重要技能(〈精神集中〉や〈聞き耳〉など)には高値を割り振らなければならない。つらい)。

 とりあえず知覚系技能を高めにしておき、プレイングにも慎重を期しつつ、とにかく先手を取れるようにしていけばそれなりに戦えるように思う。がんばれ。

 

<4人パーティ>

1.パラディンor重装型戦士

2.ローグ

3.ソーサラーorウィザード

4.クレリック

 WotC推奨のプレイング人数であるが、実際にプレイしてみると結構つらい。いちおう必要なものは全て揃うものの、「遊び」の職業を入れられる余裕はないのが悲しいところ。とはいえ、3人のときに比べれば一人一人の負担はぐっと小さくなっている。

 1.をクレリックにしてクレリック2人が前線に立つ、という編成もあるが、やはり戦闘要員は専従のものがいた方が良いと思う。4人パーティであれば少なくとも【盾】としての役割を果たせなければ困るからね。とはいえ、1レベルであれば所持金の関係で「重装」出来ないことも多いので、後の成長のことを考えなければ盾を持ったバーバリアンなどでもいいだろう。また、2レベル(以上)スタートならファイター1を混ぜて、《特技》をひとつ稼ぐのも有効。戦闘要員が足りない分を、《特技》(《迎え討ち》など)で補うためである。

 それから、<3人>のとき同様に、エルフと暗視もちを1人ずつ入れておくといい。エルフは秘術魔法使いかローグ、暗視もちは戦士かクレリックあたりがいいだろう。

 

<5人以上のパーティ>

1.前衛クラス

2.ローグ

3.ソーサラーorウィザード

4.クレリック

5.X

 この辺から構成に多少の余裕が出てくる。つまり、いくらか遊びの入ったPCが入ってもパーティが維持できるようになる。とはいえ、基本的には<4人パーティ>の構成に一人追加(X)を加える、という形になることが多いだろうが。

 Xには2人目の前衛クラスやクレリック、秘術魔法使いなどが考えられる。また、前衛とクレリックの中間的なクラスであるドルイドも悪くない。

 パーティには、できれば1人は重装型戦士を入れておくほうがいいと思う。とはいえ、“純戦士”の項でも書いたように、作りたてのキャラクターでは所持金の関係から装備に大きな差は出にくくいので、モンク以外はどの前衛系を選んでも大きな戦力差は出ないかも知れない(特殊能力の強力さなどでパラディンが一歩ぬきんでているのは否めないところではあるのだが)。それから、もしレンジャーやモンクをやりたければ前衛が2人以上いる時にしたほうがいいだろう。“複合型戦士”で述べたように、彼らは概して軽装になりがちであり、特にHPの低い序盤では自分の特性を生かした戦い方が難しい。

 ちなみにバードは5人パーティでは参加が難しい。まあ、残りの4人がしっかりしていればどうにかなるレベルではあるが、特に1レベルのバードは交渉以外に出来ることがほとんどない(何人パーティでも状況は変わらないという説もある。君が他のPCが戦闘中、呪歌と飛び道具だけで十分楽しめるのであればそれでもかまわないのだが)。なので、シティアドヴェンチャーであることがわかっているとか、シナリオが交渉中心になるとDMに宣言されてでもいない限りは避けておくのが無難かも知れない。

 

 

 

 

 とまあ、駆け足ながら解説してきたわけだが、少しは参考になっただろうか?

 ここに示したのは、いわゆる「良くある状況」という奴ばかりであり、これら全てに対応できたからといって常に安心できるというわけではない。しかし、このように起こりうる事態に対して筋道立てて考えることで、冒険者にとって重要な『判断力』、そして『応用力』が身につけられるはずだ。

 

 さあ、冒険に出よう!

 

 

10歩目 装備を考える

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*1:重要だからといって、あんまりしつこくするとDMに嫌がられる(笑)。この手の情報は疑い始めるときりがないので、プレイ時間も鑑みてほどほどにしておくのが他のプレイヤーにも優しいプレイングだと思う。

*2:何か納得行かないルールだよなあ。へぼい奴が周りをうろちょろしてるとかえって邪魔になることもあると思うのだが。というわけで、石川的には「難易度10で他人の補助成功(達成度+2)、ただし失敗したら-2」あたりを推奨します。

*3:後にテレポートで移動するようになると、今度は体格の大きいハーフオークや人間(男)が足手まといになるのは皮肉な話である。

*4:もっとも、濃霧や濃い茂みなどにより視界が確保できなかったり、雪原で目印のないようなところでは幾ばくかのペナルティが課されるだろうから、やっぱり高いに越したことはないのだが。