はじめの一歩 8歩目  自分のキャラを作ろう(5) 

 技能活用クラス編

 030709 

030726 バード編追加

 文責:石川

 

 

 #この原稿はPHBとダンジョンマスターズガイドDMGの記載のみ

 #もとに書かれています。本当はクラスブックなどを入れると強力なのですが、初心者向けと

 #いうことで、中級者〜ベテランの方はご勘弁を。

 

 

 

読んで字のごとく、「技能活用クラス」とは、呪文や《特技》よりも、<技能>を活用して冒険する『技術者』たちである。また、彼らは急所攻撃や各種回避能力、呪歌、呪文などといった特殊能力をも同時に兼ね備え、様々な状況に対応できる万能性を有している。

しかしながら、両者のパーティ内での役割は大きく違う。ローグが罠の発見・解除などといった能力中心の「ダンジョンの技術者」であるのに対し、バードは驚異の能力バード知識を用いる「情報収集のプロ」であるためだ。そしてまた、ダンジョン内では前者は急所攻撃ダメージを利した軽戦士クラスであるのに対し、後者は呪文(特に幻術や心術)を用いた、いわば「からめ手」を得意とするクラスなのだ。

 

では、両クラスがどんな技術者であるのかを具体的に確認してみよう。

 

 

<総論>

いつもはここで総論を述べるのだが、今回は少々難しい。

 

技能活用型としてくくったものの、パーティ内での働きと重要性が異なっていること、そして両者(特にローグ)の応用力が高く、一般化が難しいためである。

代わりに各論をちょっと長めに書いているので、今回はそちらを参照してほしい。

 

では、さっそく各論に移ろう。

 

 

 


[ローグ]

ローグはAD&Dから3eへの 移行にともなって、もっとも大きく改変されたクラスであると言えるだろう。

ドアないし宝箱が出るまで仕事のない、パーティの宝物探知機とさえ呼ばれていた彼らは、しかし今日戦闘系クラスの主要なマルチクラス要員として、また単体ででもウィザード並の大ダメージを与え得る火力要員として、パーティになくてはならぬ存在となっている。

 

 では、いかなる能力が旧D&D・AD&Dにおけるお荷物クラスを一戦級の万能戦士へと押し上げたのか?

 ローグを形成する特徴を一つずつ見ていこう。

 

 

 Sneak Attack(急所攻撃)>

 この恐るべき能力は、その名の通り相手の急所を突く攻撃を行うことで追加ダメージを与えるものである。ローグ以外のクラスは獲得できない(*1)この能力は、多数回攻撃すべてに追加ダメージを与える事も可能な上、30ft以内であれば飛び道具はおろか魔法にまで(*2)載せることが可能であるなど、非常に強力な能力である。

 しかし、効果のある相手が決まっていたり、発動条件が厳しかったり、といった欠点がある事に注意しなくてはならない。急所のない生物(アンデッドやゴーレムのような命のないクリーチャーやスライムのような生物)には効果はなく、また相手の不意を突くなどしない限り急所を攻撃することはかなわない。急所攻撃が可能な状態は以下の通り。しっかりと頭にたたき込んでおくこと!

 

・挟撃している

・攻撃側が不可視   

・防御側が朦朧、戦慄、バランスを崩した状態

・防御側が不意打ちor立ちすくみ       

・防御側が組み付かれor押さえ込まれ中 

・〈はったり〉技能によるフェイント(和p73)    

 

 こうした条件のいずれかを満たし、視界が確保(=視認困難ではない)状況で、かつ相手が急所を持つ生物であるならば、君のローグは急所攻撃を行える。中でも「挟撃中」および「不意打ち/立ちすくみ中」という状況は比較的よく発生するし、プレイヤー側の工夫によって生じる場面も少なくない

 何より、これらの条件を満たしてさえいれば、そのラウンドの攻撃全てに急所攻撃ダメージが有効になる点に注意!つまり、奇襲や挟撃に成功すれば、君のファング・オブ・ロルスは1ラウンドに最低6回のスニークアタックが可能であるということだ!仮に君の腕が6本に少し足りなくたって、レンジャーお得意の両手攻撃やモンクの連撃能力、《速射》特技による射撃武器の連射など、複数回の攻撃によるすべてにスニークダメージを乗せることが可能なのである(なので、この目的のために1レベルだけレンジャーやモンクを修得するものも少なくない:後述)。

 

 かように強力な急所攻撃ではあるものの、これを行うにあたり大きな不安が一つある。

 それは、ローグの防御力の低さだ。ローグは軽装鎧の習熟しか修得しておらず、盾も装備できない。より重い鎧や盾を装備できないわけではないが、そうすることで<忍び足><聞き耳>などといった、ローグにとっての飯の種となる各種技能にペナルティが付くし、回避能力が使用不可になってしまうなどするため、うかつに装備することができないのである。また、彼らのヒットダイスはD6であり、平均すればファイターらの1/2ほどのHPしか持っていないことになる。挟撃による急所攻撃はどうしても近接攻撃でなければならないし、全力攻撃による複数回急所攻撃を行いたければやはり接敵するのが望ましい。

 

 よって、なるべくなら攻撃は遠隔攻撃で済ませてしまいたい。君子危うきに近寄らず、装甲の薄いローグなればこそ、無理して前線に出ず、後方からそっと忍び寄って敵の見えないところから矢を放ちたい。HFOとかいう、殴られたり範囲呪文に巻き込まれたりするのがとりえの奴隷階級が群がる敵を体を張って食い止めている間に、君は一方的な殺戮の喜びに浸る。それこそがチームプレイってもんだよ。・・・まあ、たぶんね。

 さて、遠隔攻撃で急所攻撃を行うにあたり、前述した条件のうちで最も頻繁に発生する状況といえば「防御側が不意打ちor立ちすくみ」の時であろう。こうした状況を作るためには、まずPC側が先に敵を発見し、可能なら待ち伏せや急襲を行う必要がある。待ち伏せできれば最低1回、その後イニシアチブが取れればさらにもう1回(以上)の急所攻撃が可能となるし、仮に急所攻撃の無効な敵であっても先手を取れるメリットは計り知れない。よって、遠隔攻撃を中心とするローグには高い<視認>ないし<聞き耳>能力、そして速いイニシアチブが必須といえる。

 

しかし、「先手を取る」戦術は、当然ながら敵に先手を取られたときには1度も急所攻撃出来ず終わる。たとえ前衛2人に挟撃されたクリーチャーに矢を打ち込んでも、急所攻撃にはならないのだ。自分の姿を不可視に出来る能力があればよいが、レベルが上がってウィザードなどの他クラスとマルチクラスするなどしなければ、なかなかそのような力に恵まれることはないだろう。

 そこでオススメしたいのは〈はったり〉技能の使用である。和PHBp73にあるように、〈はったり〉技能は戦闘時におけるフェイントとして利用できる。すなわち、標準アクションで相手にフェイントをかけることで、次の攻撃時の対象の【敏捷力】ボーナスを失わせ(*3)、急所攻撃の対象とすることが可能なのである。対象は〈真意看破〉で対抗ロールできるものの、前衛系のクラスやクリーチャーでこの能力を持つものは少ない。標準アクションなので、「フェイント+攻撃」には2Rかかることになってしまうものの、攻撃を《近距離射撃》+《速射》で行えば、都合弓による急所攻撃を2度出来ることになるので採算はとれるだろう(ただし〈はったり〉→急所攻撃は「フェイント後の次の攻撃」にのみ有効である:よって、2射しても最初の射撃にしか急所攻撃ダメージは付かないことに注意)。なお〈はったり〉の距離そのものについては特に指定がないので、30ftギリギリまで離れて行うことも(たぶん)可能である。(*4)

 同様に、〈はったり〉は「相手に気付かれているとき〈隠れ身〉を行うための一瞬の隙」を作るためにも使用できる。急所攻撃の条件である「不可視になる」には、魔法的に「消える」だけでなく、〈隠れ身〉によって相手の視界から消え去ることも含まれている(隠れる場所とその好機さえ作れれば、だが)。無論、1対1で向き合っているような状態では完全に「消える」ことは難しいだろうが、集団戦においてはどさくさまぎれに隠れて攻撃することだって不可能じゃない。

 この両者を使いこなすことで、パーティ火力は大きく向上するだろう(*5)。

 

一方、「2Rに一回の攻撃なんて貧乏くさいこと出来るか!」という剛の者は、近接戦での急所攻撃を好むだろう。

たとえ君がそんな愚か者剛の者でなくとも、何らかの理由で前線要員が足りなくなったり、無能な前線要員が敵兵の突破を許したりすれば、近接戦を強いられる場合もある(そしてもちろん戦闘終了時には、そんな間抜けを後ろから一差ししなければならないだろう)。では、近接戦で有効に急所攻撃を使うにはどうしたらいいだろうか?

 

実をいえば、近接攻撃の方が、急所攻撃可能条件に当てはまるチャンスが多い。遠隔射撃で述べた条件(不意打ち、立ちすくみ、<はったり>など)に関してはすべて近接戦時にもあてはまるし、「挟撃」「組み付き中」などによるチャンスが得られることを考えると近接戦の方が頻繁に行えるのは自明であろう。特に、挟撃は乱戦中には頻繁に発生するので、うまく立ち回れば戦闘中ずっと急所攻撃し放題!といった状態にまでなり得るはずだ。

しかし、前述のようにローグの防御力は総じて低い。【敏捷力】ボーナスが(通常)高いという事を考えに入れても、魔法の助けなしにACが20を超える事はまれだろうし、なによりHPが低い。なので、なるべく相手に攻撃されない、少なくとも相手に挟撃or包囲されることを避けるような立ち回りを考える必要がある。

 そのために重要となる<技能>といえばやはり<軽業>をおいてほかにない<軽業>が十分高ければ、敵の間合いの中を移動することも、敵のいるマス目を突破することも簡単に行える。どんなに包囲されても脱出できるという安心感を得られるのみならず、挟撃を行う際に自分の望む位置へ自由に移動できる能力というのは相当なアドバンテージをもたらしてくれるだろう。

 同じ目的のため、《強行突破》を修得するのもいいだろう。この特技は機会攻撃による攻撃を受けたとき、ACに+4のボーナスを与えてくれる。とはいえ、ローグは《特技》修得数に富むとは言えないので、前提条件として《回避》が必要なこの《特技》を取るのは少々キツい気もするが。

 また、前述の<はったり>によるフェイントは近接戦時でも有効なので、いざというときのために覚えておくといいだろう(機会攻撃を受けないとはいえ、前線で2Rに一回しか攻撃できない、というのは微妙な感じがしないでもないが)。

 

なお、挟撃・組み付きともに他のキャラクターとの協調がなければ機能しない。冒険前、あるいは戦闘前には味方前衛としっかり意志の疎通を図り、あるいはミーティングや仮想戦を行って、君の急所攻撃が戦術的に有効に運用できるよう最大限の努力を払おう。幸いローグである君は高い<はったり>や<交渉>を有するチャンスに恵まれている。渋る味方前衛を言いくるめ説得し、時にはおだて、なだめすかして自分が安全な位置で敵を挟撃できるような展開に持っていくことを忘れずに!(地味ながら、こうした日々の努力こそが君のPCの寿命延長に大きく寄与するのである)。

さらに、術者たちのサモンモンスター(通称お犬様)も挟撃の際には非常に有効に機能する。他の補助呪文(インヴィジビリティ、ヘイスト、ブラーなど)もまた、君の急所攻撃を助け、君の命を守ってくれるはずだ。一生懸命自分がどれほどパーティの役に立ち、彼らの所持金を増やすことができるのかをアピールしておこう。

え?ファイターのときと対応が違う?君には虎と猫の区別もつかないのかね?虎には媚び、猫はこき使う。これが老獪なキツネの生き方だ。ローグをプレイする君は、彼らが力でなく知恵を頼りに生きているということを、しっかり心に刻みつけておくべくだと思う。

 

なお、実は急所攻撃には武器制限も装備制限もない。つまり、ローグ9/ファイター1のキャラがフルプレートにラージシールド、ヘヴィランスを装備した状態で騎乗突撃したって、相手が適切な状態であったら急所攻撃ダメージは発生するのだ(*6)。また、基礎攻撃回数の増加や、二刀流や《速射》による多数回攻撃がある場合は、そのそれぞれの攻撃について、個別に急所攻撃が可能である。ただし、シュリケンのような武器(1回の判定で3本まで同時に投げられる)の場合は、3本の内1本にしか追加ダメージは適用されないことに注意。

 

 <防御能力>

 急所攻撃があまりに強烈すぎるため取りざたされる事は少ないが、実はローグは特定の攻撃に対して強力な防御能力を有している。その能力とは身かわし直感回避である。

 2lvで修得できる身かわしは、反応セーヴによってダメージを1/2に出来るような攻撃----ファイヤーボール呪文や一部のドラゴンブレスなど----に対して、セーヴに成功することで全くダメージを受けずに済むという超絶能力である(*7)。なお、軽装鎧より重い鎧ではこの能力を発揮することは出来ない事に注意。

 一方直感回避は奇襲や挟撃などへの耐性である。たとえば3lv時には、ローグは立ちすくみ状態でも、また不可視の相手からの攻撃によっても【敏捷力】ボーナスを失わない(=急所攻撃にならない)。また6lv時には挟bノよっても急所攻撃をされないようになる(敵が自分より4レベル以上高いローグレベルを持っている場合はこの効果は無視される)。

 前者はモンクが、後者はバーバリアンがともに有しているが、ローグはこれに感覚系技能がお得なセットメニューになっている。そのため、サバイバリティを向上すべく、前衛系キャラにローグを混ぜる人も少なくない。参考まで。

 

 

 <技能>

 先に〈軽業〉や〈はったり〉を急所攻撃に重要な技能として挙げたが、ローグの仕事は戦場だけではない。彼らは基本クラス中最大の技能ポイント(なんとファイター4人分だ!)を有し、また31種のクラス技能をエントリーしている。この技能群には、ローグ特有技能といえる〈解錠〉〈すり〉〈捜索〉〈装置無力化〉などのいわゆる「シーフ技能」のほか、<視認><聞き耳>などの感覚系技能、〈忍び足〉〈隠れ身〉などの隠密系技能、〈交渉〉〈真意看破〉〈はったり〉などの交渉系技能、そしてマジックアイテムをムリヤリつかってしまう超絶技能〈魔法装置使用〉を修得できるなど、非常にバラエティに富んでいる。

 どれもさまざまな状況で有効であり、魅力があるが、パーティでのローグとしての役割を考えるに以下のものが候補に上がってくるだろう。ちなみに青字は未習得使用可の技能である。

 

1)   パーティの目と耳〈視認〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈隠れ身〉
 先行して偵察するような場面も多いローグは、前者2つが高いことが望ましい。
 また、後者二つは隠密行動の必要なさまざまな場面(もちろんここには不意打ち、
 すなわち奇襲攻撃も含まれる)で生きてくる

2)   ローグの『仕事』〈捜索〉〈解錠〉〈装置無力化〉
 〈捜索〉 は誰にでも可能であるが、唯一ローグにのみ、難易度が21以上の罠(それがたとえ魔法の罠であっても!)を発見することが可能となる。後2者は鍵/罠を無力化する。鍵を開ける呪文はあっても罠を除く呪文は無い。また、罠は魔法の罠(イクスプローシブ・ルーンなど)であっても解除可能。なんじゃそら。

3)   汎用(どこでも役に立つ)〈はったり〉〈魔法装置使用〉

 前者は戦闘や<隠れ身>のきっかけのほか、NPCとの会話に有用(うそをつく場合はたいてい<はったり>と<真意看破>の抵抗ロールを要求される)。後者は難易度が高いので高レベルになってから一括修得でもいいかも。

 

 こうやって見ると『欲しい』技能ばかりになってしまうが、実際欲しいのだから仕方がない。

 とはいえ、【知力】修正抜きで32ポイントもの技能ポイントを獲得できるローグなら、さほど問題にはならないだろう。1lvキャラ最高値である4ポイントずつを割り振ったとしても8種類の技能を修得できるのだ。これで文句をいってたらファイターに殴り殺される。

 実際割り振るなら、解説にも書いたように<魔法装置使用>を除くか、高い【敏捷力】で埋め合せの効く<忍び足><聞き耳>を少し低めにすれば問題なく修得できるだろう。君が高い【知力】 を有しているのなら、書かれているすべてをとってもおつりが来ることになるのだが。

 

 

 <特技>

 技能に恵まれたローグではあるが、《特技》に関してはさほどバラエティに富むとはいえない。というのも、上級クラスに付くための条件を除けば、ほとんど自動的に決まってしまうからだ。

 まず、必ずや《イニシアチブ強化》をとる必要がある。ローグにとって相手の先手を取れるというアドバンテージは果てしなく大きい。また、単騎偵察に出たとき、ばったり敵と出くわすようなハメに陥ってもイニシアチブが早ければ無傷で逃れることが可能になる。

 ついで、戦闘系《特技》が優先されるだろう。<技能>が仕事の中心なのだから<技能>を上げたいところだが、《技能熟練》はあまりにコストパフォーマンスが悪い。それなら戦闘面を強化して金を稼ぎ、<技能>を補佐するアイテムを買う方が効率がいい。

 ローグに有効な戦闘系《特技》は、《回避》から始まる一連の防御系《特技》か、《近距離射撃》から始まる射撃系《特技》のいずれかを選択することになるだろう。本当なら両方ほしいところだが、それをするには少々《特技》数が足りない。《攻防一体》系の《特技》(足払いや武器落としを強化)もローグらしくて良いのだが、有効な相手が限定されるのが少々困る。その点、《回避》系であれば自由な位置取りが可能になるので挟撃しやすくなるし、射撃系は単純に命判、ダメージ、攻撃回数を増加できる。どちらも有効なものなので、どちらをメインの戦法にするかによって決めていくといいだろう。

 なお、近接戦型であれば(武器は限定されるが)《武器の妙技》も良いだろう。基本攻撃ボーナスが+1必要とされるのでキャラクター作成時に修得することは不可能だが、君の【敏捷力】によっては命中率の大幅な向上が見込める。武器は軽い=低ダメージのものに限定されるが、「ダメージは急所攻撃で補う」と割り切ってしまえ。急所攻撃が効かない相手にはどうするのって?君は何のために<隠れ身>技能を修得したのかね?

 

 

 <装備>

 ローグとしての仕事を全うしようと思うなら、まず最初に君が買うべきアイテムは盗賊用具(30gp:p108)である。これなしでは、<解錠><装置無力化>に-2のペナルティが与えられてしまう。序盤の低い技能値では-2は結構痛い。なお、盗賊用具には高品質のもの(100gp)もあり、こちらは各技能に+2のボーナスを与えてくれる。(*8)

 ほかにも引っかけ釘(1gp)+ロープはローグの活躍の場を広げてくれるだろう。できれば軽くて<縄使い>にボーナスを与えてくれる絹ロープにしたいところだが、そこらへんは財布と所持重量と相談ということになろうか。

 そしてもちろん、金があるなら技能強化型のマジックアイテムを購入しよう。もともと判定値の高いローグがブーツオヴエルブンカインド(<忍び足>に+10(!))何ぞを履いた日には君のローグは偵察し放題、不意打ちし放題のスーパークリーチャーになること間違いナシだ。この性能で2000gp。買うしかねえ。

 

 さて、ローグとしての能力をすべて活用することを考えると、鎧は軽装鎧まで(それもできれば判定ペナルティの極力少ないもの)に抑えたい。鎧による判定ペナルティはローグに重要な技能である<隠れ身><軽業><忍び足>などを減少させる。また、ローグはそもそも軽装鎧にしか習熟していないし、移動力が落ちると位置取りにも不便なので、それ以上重い鎧や盾を持つのは得策ではない。よって、達成値の低い序盤では、判定ペナルティのないレザーが賢明だろう(前衛に頻繁に出ることになりそうで、かつ金があるならスダデッド・レザーorチェインシャツでもいいが)。

冒険後、金が入ったなら、なるべく早く高品質の鎧に換えよう。高品質の鎧は元値+150gp(PHBp114)で購入でき、判定ペナルティを-1減少してくれる。これを利用すればバックラー(など)をペナルティ0にして装備することも可能だから、君の美的センスがローグに盾を持たせることを許すならこちらも併せて購入しよう。

 

武器はp53にローグ用武器として指定されたものがあるので参照のこと。序盤ならショートソードかレイピアあたり、そして(金があるなら)ショートボウでいいだろう。前2者には《武器の妙技》も適用できる。参考まで。

ちなみにショートボウなどの飛び道具はダメージに【筋力】のボーナスは付かないのに、ペナルティはしっかり付いてしまうPHBp8)。なので、【筋力】の低い人はクロスボウが良いのだが、一方でこちらは(矢の装填に移動相当アクションが要求されるため)《速射》特技による連射ができない。うーん微妙。

なお、素手ないしサップ(いわゆるブラックジャック。砂を詰めた靴下とか)なら急所攻撃を非致傷ダメージにすることも出来る(PHBp53)。誘拐や奴隷狩りを生業とするローグはぜひ。

 

あと、金に余裕が出来たら各種回復アイテム(キュア・ライト・ウーンズポーションなど)を買うようにしておこう。ローグがhpに劣るから、ではなく、「範囲型攻撃呪文や奇襲をうけても死ににくいから」がその理由である。つまり、回復アイテムをもつ君の任務は「一撃で倒れてしまった回復役を回復させること」だ。回復呪文に富むクレリックの生死は、そのままパーティの生死に繋がるといっても過言ではない。『最後の切り札』として、最低1つはこの手の回復アイテムを持とう(そうやってクレリックに恩を売っておくことで、君は恒常的な回復力を手に入れる事が出来るのだ。安い投資ではないか。エビでタイを釣ることこそが、知恵に生きる君の使命なのである)。

 

 

 <キャラクターメイキング&将来設計>

 さて、これらの特徴を踏まえて実際のキャラクターメイキングを考えてみよう。

 まず種族。これはエルフハーフリングが良いだろう。両種族はローグにとって最も重要な能力値である【敏捷力】に+2のボーナスが付く。また、エルフは感覚系技能に種族ボーナスを持っているし、夜目も効く上、ロングボウを使うことが出来(ローグは普通ショートボウの習熟しか持っていない)、隠し扉発見能力(なんと近くを通っただけで発見する可能性がある!)をも有している。地味ながら、この「夜目が効く」という特徴は、暗がり(特にダンジョン内)での闘いに非常に有用である。前述したように視認困難な状態、すなわち「かなりの暗闇」より暗いところでは急所攻撃が出来なくなってしまう(*9)からだ(PHBp133)。一方でハーフリングはACと<隠れ身>にサイズボーナスを、<忍び足><聞き耳>に種族ボーナスを得ることが出来、また投擲武器やセーヴィングスローにボーナスを得られる一方で、移動力がやや低い(基本20ft)という特徴がある。ローグ能力の向上を考えるなら前者、戦闘能力(とくに生存能力)を考えるなら後者といったところか。

 例によって<技能>ポイントと《特技》を余分にもらえる人間でも良いのだが、各種種族ボーナスほどの効果があるかどうかは微妙なところだろう。

 

 

 さて、能力値であるが、優先順位としては

 

【敏捷力】>【耐久力】>【知力】>【判断力】>【筋力】【魅力】

 

 といったところだろうか。

 各種ローグ技能の判定には【敏捷力】が要求されることが多いし、装備によるACの低さをカバーすることも可能になる。他クラス(特に戦闘系クラス)では【知力】がないがしろにされることも多いが、もらえる技能ポイントが減少するとローグとしてのアドバンテージが得られない。最低でもア0,できれば+修正がつく程度の能力値を割り振っておきたい。【判断力】は下位に入っているが、感覚系技能の判定基本値として使われたり、低くなりがちな意志セーヴの基本値にもなる事に注意。近接戦をメインにするつもりなら【筋力】の順位をもう少し上に置いてもいいかも知れない。

 ただ、ローグは他クラスとのマルチによって大きく強化され得るクラスなので、できれば将来設計を考えてから能力値を割り振るようにした方が良いだろう。たとえばウィザード/ソーサラーとのマルチを考えているなら【知力】を12以上にしておくとか。

 

 最後に。

 ローグはマルチクラスを考えずにただひたすらローグ道を邁進しても強力だし、他クラスを混ぜても強力になる、という希有なクラスである。秘術魔法使いと組み合わせて急所攻撃を強化してもいい(遠隔接触呪文による急所攻撃は脅威である。命判が接触判定で良いのだから。ほかにも不可視化や命判の強化、行動力の増加など、とれば有利になる魔法は枚挙にいとまがない)。バーバリアンの機動力+高いHPとの組み合わせも相性がいいし、モンクの防御力&多数回攻撃力も捨てがたい。同様にレンジャーの二刀流も急所攻撃と相性がよいといえる。《特技》を強化する意味でファイターとマルチクラスしてもいいし、いっそ隠密行動能力を捨てて盾と鎧で重装備にしてしまう事も可能だ(武器や鎧は急所攻撃に影響を与えないのである。また、<聞き耳><捜索>などローグの「仕事」の大半には鎧のペナルティは影響しない:*10)。クレリックとは多少相性が悪い(互いの長所能力を生かしにくいという意味で)かもしれないが。

 よって、マルチクラスするならパーティに足りないものを補う形で成長させるといいだろう。

 もちろん、各種クラスブック(特にソードアンドフィスト、ソングアンドサイレンス、トームアンドブラッド)にはより強力なローグ用上級クラスがある。ぜひこちらも参考にしてほしい。

 

 

 

 

 

[バード]

 バード、いわゆる吟遊詩人をフィーチャーしたこのクラスは、2種の良好なセーヴと31種(これはローグと並び全クラス中最多である)のクラス技能、中装鎧までの《鎧習熟》 と多くの《武器習熟》、秘術呪文(これにはウィザードにすらない、キュア系回復呪文までが含まれている!)の使用能力に、バード独自の能力である呪歌(まがうた)までをも有している万能クラスである。

WotCのライターの一人 Sean K ReynoldsはDRAGON誌の記事PowerPlay内で、バードの万能ぶりについてこう述べている。

 

 

*****

 

バードこそは究極の何でも屋たりうるクラスである。3lvになりさえすれば、彼らは他のクラスの仕事を全て請け負えるのだから。

 もし彼がキュア・ライト・ウーンズプロテクション・フロム・イービルを修得し、《技能習熟〈治療〉》、〈治療〉、〈呪文学〉、〈魔法装置使用〉技能を学び、さらにInspire Courage(勇気を与える)の呪歌を組み合わせれば、クレリックやドルイドとして活躍できるだろう。また、グリース、サモンモンスター、スリープなどの呪文を覚え、《戦闘発動》などの魔法操作特技を修得、かつ〈精神集中〉、〈呪文学〉、〈魔法装置使用〉を覚えられれば、彼はソーサラーやウィザードとして活躍できる。

同様に、ファイター等の戦闘系クラスや〈解錠〉などの技能に長けたローグ(*11)として活動することも可能だ!

(訳:石川)

 

*****

 

 

 おお。何とすばらしい。

 クレリックとしてもウィザードとしても、そしてファイターとしても仕事を請け負えるなんて!

 こりゃもうバード以外のクラスなんて作ってらんねえ!

バードで行くしかねえだろ!

 

 D&Dの秘密を見出した喜びでいっぱいの君は、勇んでコンベンションに参加する。

 そこで、君は不思議な光景を目撃することになるはずだ。

「・・・・・なんでみんな、バードやってないんだろ。こんな強力なクラスなのに」

 

 

 

 

 

前述Reynoldsのコメントはウソではない。

バードほどの万能性を有したクラスは、少なくとも基本クラスには含まれていないといえる----いくつかの欠点から目をそむけ、いくつかの長所を拡大解釈できるならばの話だが。

 

実際には、D&Dにおけるバードの最大の特徴は中途半端さに尽きるといっても過言ではないだろう。

 

バードの万能性とはどの程度のものなのか、そして何がどのくらい中途半端なのか。

まずはバードの能力を検証してみよう。

 

 

 

 

 バードはローグに近いクラスであるといえる。

 HDはd6だし、基本攻撃ボーナスの上昇度も同じ、《特技》よりむしろ〈技能〉に重点をおいたキャラクター製作を行う点や、基本的には軽装・軽武装である点など、非常に共通点が多い。いや、武器に関して言えばショートボウなどの小さな武器しか使えないローグより優秀であるとさえ言えるかも知れない。装備にしても、中装鎧まで+盾の《習熟》を持っているという意味ではローグより優良であるといえる。

 さらに、バードは1レベルから秘術呪文の使用能力を有している。呪文の記憶形式はソーサラーに同じく、呪文書を必要としないかわりに、記憶している「修得呪文」を1日の使用制限回数まで好きなように消費できる(いわゆる『ウィザードリィ』)方式で、ボーナス呪文数や抵抗の難易度が【魅力】で決まる点もソーサラーに同じである。

 また、バード独自の能力として呪歌(まがうた)能力を有している。こちらは1日にバードレベルに等しい回数だけ使用可能な能力で、効果範囲内の対象全てに効果(“勇気を与える“”ファッシネイト“など精神作用を与えるものが多い)を与える。〈芸能〉の技能ランクによりどの呪歌が使えるかが決まり、その抵抗判定も〈芸能〉の達成度により変化する。

 

 なんだ。いいことばっかりじゃないか。

 

 

 ああ、そのとおりさ。なんせ、いいことばっかり書いてるからね。

 いいことばかりでは公平性が保たれない。次は悪い点を。

 

 

 まず、バードは秘術呪文の使用能力を有している、と先に述べたが、この能力が非常に貧弱である。

 1日の使用回数はウィザードより少なく、呪文記憶数はソーサラーより少ない。呪文リストもなんだかピリッとしない、「これだ!」といえるものに欠ける編成である(*12)。唯一の救いは秘術呪文であるにもかかわらずキュア系呪文が呪文リストに含まれている=キュアのワンド使用能力がある、という点であるが、某氏いわく「だったらクレリックやれよ」とのこと。まったくもってごもっとも

 

 また、秘術呪文使用のためには、鎧が着れないのは先刻ご承知のとおり。よって、「ローグより優れた」点である《鎧習熟(中装)》 も、実際には活用は難しい(そして呪文使用能力を捨てることをよしとするくらいなら、最初から前衛系クラスを選べばよいのである)。

 

 技能はローグと同じく31種をクラス技能として有している。が、得られる技能ポイントはローグの半分程度で、「権利はあるけど行使できない」という切ない現実に突き当たる。いくら選択の余地が広くたって、財布の中身が伴わなければ買えるものが限られてくる、というのはどこの世界でも一緒なのだ。

 

 さらには呪歌であるが、これまた効果がいまいちなものが揃っている。PHBのバードの解説を見てみよう。「あれば便利」であるのは間違いないが、「ないよりはまし」の域を越えるものではない呪歌がリストアップされている。

 例えば最も使用頻度が高いと考えられる勇気を与える”呪歌は、恐怖に+2、攻撃とダメージに+1の士気ボーナスを与える。しかし、この呪歌は使用後5Rまでしか持続せず、使用時には(歌を歌っているわけだから)他の呪文などを使用できない。しかも、「士気ボーナス」ということは1レベルクレリックの定番呪文「ブレス」と効果が完全にかぶる、ということでもある。クレリックの呪文を一回温存できる、とポジティブに考えることも不可能ではないが、だったらクレリック2人のほうが・・・・というのが正直なところだろう。

 

 

 ようするに、だ。

 バードは確かにさまざまな長所を有している。

 しかし、その長所はそれぞれが互いをスポイルするものであるか、あるいははっきり言ってしまえば「使えない」ものがほとんどなのだ。

 しかもそれらの長所も別のクラスでいいじゃんなどと言われてしまうような、「バードならでは」と呼べるほどのものではない。

 

 ああ、これを中途半端と言わずしてなんといおうか。

 

 

 

 しかし、である。

 そうした中途半端なクラスが、唯一輝けるときがある。

 それはいつか?

 そう、情報収集の場面でこそ、彼らは光り輝けるのである。

 

 

 

 なぜか?それはバードのみが持つ特殊能力、バードの知識によるところが大きい。

 “Bardic Knowledge(バードの知識)”はバードが何か(それが何でもかまわない)について、知っているかどうかをチェックするものである。バードレベル+【知力】ボーナスで判定を行い、達成値によっては「強力なウィザードの子供の頃のあだ名」などといった「何でそんなこと知ってんねん」DMがうめき声を上げるようなことまで「知っている」事にされてしまう地獄の能力である。この能力の恐ろしいのは、この「知っている」ことになると言う点と、そして非魔法的な能力であると言う点だ。「知っている」ことになる、と言うことは、図書館で調べ物をする、などと言うのとは違って『その情報はここにはなかった』と言うことができないことを意味している。もちろんDM権限で「それを知ることはできない」というのは簡単なことだ。しかし、『それって「ウィザードの子供の頃のあだ名」なんてトリビアルなことよりもマニアックな情報なの?』とプレイヤーに聞かれたとき、そのプレイヤーを納得させられる答えを私は知らない。そしてもうひとつ、非魔法であるがゆえに、対象が魔法による探知妨害手段(たとえばマインド・ブランク(Wiz8lv)とか)を使っていても関係なく、相手の居場所をある程度特定できてしまうことだってあるいう点だ(「君は風のうわさにXXはマインドブランク呪文で呪文探知から逃れつつ、○○山に隠された塔で復讐の牙を研いでいると聞いた」など)(*13)。

 また、バードは通常【魅力】を高く設定することが多く、〈情報収集〉や〈交渉〉を高値に維持できるし、〈芸能〉で人を集めて話を聞く、なんてことも可能である。ダンジョンでは役立たずなバードとしては、「荷物もち以上の仕事が出来る」と示せるのは冒険前の情報収集のみなのだから、ぜひ活発に行動して欲しい(*14)。

 

 

 さて、バードの能力について理解が深まった上で、なお君がバードをプレイするというのなら、それはそれで仕方がない。実際のキャラクターメイキングの話に移ろう。

 「病気になるまで病気の苦しさはわからない」という言葉もあることだしね。

 

 

 まずは能力値。

 バードの呪文能力は【魅力】で決定される。バードは最大6レベル呪文までしか使用できないから、【魅力】が16あれば良い、ということになるが、前述のとおり呪文数が少ないバードのこと、ボーナス呪文数ならびに呪文のセーヴ難易度が高いにこしたことはない。と考えると、やはり「高いほど良い」ということになろうか。【魅力】は同時に〈情報収集〉や〈交渉〉などでも頻繁に使用するので、その意味でもなるべく高値にしておくほうが良いだろう。

 次に重要な能力値は、なんと言っても【知力】であろう(むしろこっちを優先させる、と言う選択もアリだと思う)。少ない技能ポイントを補うだけでなく、“バードの知識”のベースとなる能力値だからだ。“バードの知識”のないバードなど、麺のないラーメンも同様である。出目10すら出来ないこの能力を強化するのは能力値かレベルアップしかないのだ。がんばれ(このように、バードの作成には理論を超越した、例えば“根性”とか“気合”とか“忍耐”とかいうものが往々にして重要であるということを、バードプレイヤーの君は肝に銘じておいてほしい。それらはバードの作成後、集まってプレイする度に、とくに他PCのレベルアップ時に大いに必要になるものだからだ)。

 あとはまあ、いつもどおり。

 

【魅力】【知力】>【敏捷力】>【耐久力】【筋力】>【判断力】

 

 大方こんな感じになるだろうか。

 ちなみに【敏捷力】が3番目に入っているのは、バードは戦闘能力にもやや欠けている(まあ、満ち足りている部分を探すほうが難しいのだが)ので、せめて射撃戦だけでも参加できるようにしたいためである。全体的に能力値が高いのなら【耐久力】【筋力】を強化して接近戦が出来るようにしても良い(後述)が、それなら最初っから別のクラスを選べ、という気がしないでもない。

 

 

 さて、能力値が決まったら、君には選択して欲しいことがある。それは、君のバードのスタイルだ。

 前述のとおり、バードは中装鎧までの《鎧習熟》に《盾習熟》、そしてロングソードやロングボウに習熟している。ところが、秘術呪文使用を滞りなく行おうとすれば、当然ながら重い鎧や盾を身につけることはできない。

 

 しかし、もし君が呪文使用能力が多少制限されてもいい、と考えるなら、無論前線クラスには及ばないものの、装備の強さで多少なりと戦える、いわば「2戦級の戦士」としては活躍が見込める可能性がある。幸い、バードの固有能力のひとつ呪歌には装備による失敗確率は適用されない。呪歌は戦闘しながらでも使用できるし、どうせ呪歌の使用中には呪文が使用できないと割り切ってしまえば、「戦闘補助能力のある準戦闘員」くらいの活躍は見込めるかもしれない。

 もしこのタイプを選択するならば、君は中装鎧でのAC強化に重点をおいて武装を準備すればよい。個人的には軽装鎧であるチェインシャツにして〈軽業〉を使えるようにするほうが好みであるが、バードは技能ポイントがさほど潤沢ではないし、HPも高くはないのでわりと危険おとなしく中装鎧でガードを固めるのも良いだろう。出来ることなら敵に近づかずに済む間合いの長い武器で戦いたいのだが、《武器習熟》がそれを許してくれない。無念ながらロングソードなどで我慢することになりそうだ。

 そして戦闘時は呪文のことはきれいさっぱり忘れつつ、呪歌(“勇気を与える”か“打ち消しの歌”が良いだろう)を力の限り歌い続けるのが君の仕事になる。これらの呪歌は効果範囲もそこそこ広いし、特に前者はなにかの理由で途切れても数Rは効果が継続するので比較的使いやすい。相手を見ながら(相手方にウィザードが多いようなら“打ち消し”、戦闘系中心なら“勇気”とか)使いわけるのが良いだろう。

 

このタイプのバードを選ぶなら、ローグ的な技能(〈忍び足〉とか〈隠れ身〉)を選択する必要性は低い。いくら技能ランクを上げても鎧のペナルティで帳消しにされるので、いまいち上げる気になれないというのが正直なところだ。なので、いっそ情報収集系技能に特化してしまうほうがよいように思う。〈真意看破〉〈交渉〉〈情報収集〉〈はったり〉などがその候補に上げられるだろう。また、とる者の少ない〈解読〉や〈知識〉を取っておくのも悪くないし、高レベルになってからなら〈魔法装置使用〉でワンドを使いまくることも可能だ。あと、(意外にも)〈言語〉がクラス〈技能〉になっているのは全クラス中バードのみである。他のPCがヒィヒィいいながら2ポイントを支払ってドラゴン語やらゴブリン語を学んでいるのをしり目に、君のバードはたったの1ポイントで必要な言語を学習できるのだ。技能関連では唯一独特といえる能力なので、コンプリヘンドランゲージ呪文のことはキレイサッパリ忘れて大切に使おう。

 

《特技》はなるべく防御的なものを選択するほうが無難だろう。《回避》→《強行突破》などはこのタイプと相性がいいはずだ。また、「呪歌をより強く」と考えるなら《技能熟練〈芸能〉》を修得するのも悪くない。打ち消しの歌などは〈芸能〉達成値でその効果が決まるからである技能強化アイテム買えばいいじゃんとか言うな ちなみにソングアンドサイレンス(未訳:バード&ローグ本)には呪歌の回数を増やす《特技》が追加されてたりするのだが、日本語版には含まれていない。無念。

 

 「呪文のことはきっぱり忘れて」などとは言ってみたものの、実際には動作要素の必要ない呪文は鎧や盾による呪文失敗確率とは関係なく使用できる。ので、(その数は少ないものの)そうした呪文を選択しておくのも良いだろう。トゥルーストライク呪文はそうした呪文の代表格である。まあ、バードの呪文リストには入ってないんだけどね!

 同様に、ワンドは使用時に動作要素を必要としないのでどんな鎧を着ていても使用に支障はない (FAQによれば、ワンドには(巻物とは異なり)秘術・信仰呪文による区別はないそうである。つまり、バードは秘術呪文使いでありながら、クレリックが作った信仰呪文のワンドを(その呪文がバード呪文リストに入っていれば)使用できると言うことだ) 。どんどん使え。

 

 

 一方、呪文を中心としたタイプのバードをプレイしたい場合には、上記“戦闘型”のように重装備をするわけには行かない。重い鎧には高い呪文失敗確率が付随するからだ。いや、たとえ重くない鎧であっても、例えばACが1しか変わらないパデットでさえ5%の失敗確率が付く。生死を分ける場面で使うことも多い秘術呪文には、1%であっても失敗確率をつけたくないのが人情というものであろう。

 また、よくあるバードのイメージを大切にしたい君ならば、もとよりバードに重い鎧などもってのほかだろう。鎧はなるべく薄めにして、手にはリュートとロングボウ。腰には細身のレイピアあたりがこのタイプには似つかわしい。

 いずれにせよ、この手のバードには防具の装備をオススメできない。強いていえば「行軍中のみラージシールド所持→戦闘開始直後に落とし(*15)て呪文投射or攻撃」というあたりがせいぜいだろうか。この装備法だと全ラウンド呪文が使いにくくなってしまうが、奇襲されてもACに+2は残るし、そもそもバードが使いたい全ラウンド呪文は多くないので、君の美的センスが許すのならば装備しておきたい。

 

 さて、防具が纏えないとなれば、武器は遠隔武器にしておくほうが無難だろう。幸いバードはロングボウに習熟することができる。序盤の乏しい資金では少々苦しいかもしれないが、なんとか工面してロングボウを装備しよう。【筋力】に難があるようならクロスボウでも良いが、やはり《速射》の可能なロングボウのほうがよいと思う。

 

 このタイプのバードの任務はウィザードやソーサラーと変わらない。呪文を使用するタイミングを計りつつ、時には呪文で、時には呪歌でもって前線を支援する。呪文の数・質ともに専業の秘術使いに負けまくっているという話もあるがいまさらこんなことでがたがたぬかす奴にバードを選ぶ資格はない。なお、呪文リストには戦闘補助系の呪文が多く含まれている。補助系の魔法というのは比較的汎用性に富んだものが多いが、他の術者と修得呪文がカブったりするととたんに無用なシロモノになってしまいがちだ。パーティにとってどの呪文が必要なのか考えつつ、他の術者(特にソーサラー)の呪文リストを良く見ながら呪文を修得してくれ。幸い、2レベル呪文以降ならそれなりに使える呪文も混ざっている。使えるようになるのは最短で4レベルからだけどな。

 

 技能についてはウィザード/ソーサラーと同様の選択をすることになるだろう。つまり、〈精神集中〉〈呪文学〉などを中心に、〈魔法装置使用〉や〈知識〉系技能を修得していくことになる。情報収集系技能にも手を出したいところだが、いかんせんそれができるほどたくさんの技能ポイントが得られるわけではない。まあ、薄く広く取っておくのもひとつの戦略ではあるのだけれど。

また、序盤はさておき、多少レベルが上がって死ににくくなってからなら、ローグ的技能(〈忍び足〉や〈視認〉〈捜索〉)を取って偵察要員になる、という手もある。せっかくの軽装も生きるし、インヴィジブル呪文なども(選択してれば)利用できるのでそれなりに働くこともできるだろう。

 一方《特技》は前述のように《速射》に連なる《近距離射撃》か、あるいは防御系の《特技》でいいと思う。呪文操作系の《特技》は生かすチャンスに恵まれるかどうかはやや疑問だ。ある程度レベルが上がってからなら考慮に入らないでもないが。

 

 

 

 さて、ここでは2つのバードタイプを示したが、どっちを選んだとしても「パーティで2番目以下」という地位を脱却できるほどの実力を持つことはできないだろう。近接戦は言うに及ばず、魔法能力とてしょせん専業クラスにはかなうべくもない。〈技能〉・《特技》共に他クラスに秀でた部分は少なく、唯一他クラスより抜きんでた点である“バードの知識”はレベルアップ以外の方法で上昇させることはかなわない。つまり他クラスとのマルチクラスは最大の長所をスポイルすることになってしまうのである。

 

 

 つまり、だ。

 

・他のクラスとマルチクラスするくらいならはじめから別のクラスではじめた方がいい。

・バードのみで成長させてもめざましい活躍は見込めない。

 

 バードの将来設計についてまとめるとこういうことになる(*16)。

 

 

 

   * タメイキ *

 

 

 

 まあ、それでも、だ。

 どんなにゲーム的に不利でも「僕はバードがしたいんだ!」という者もあるだろう。

 それはそれで、もちろん間違った考えじゃない。

 キャラクターの強さなどにはこだわらず、知恵と勇気と機転と機知でもって活路を開いて行くのもまた、“冒険者の道”というものさ。

 その道が細く険しく危険きわまりないものであるということが周知の事実だとしても、君が困難を楽しめるだけの度量があるというのなら、あえてその道を選ぶのもまた楽しいプレイングなのかも知れない。

 

 

 

 

 

 その困難が君の自己満足でなく、同卓のプレイヤーが共に楽しめるものだという前提条件さえ充たすなら、きっと楽しいプレイのはずさ。

 

 

 

 

 まあ、たぶんね。

 

 

 

 

 

 

9歩目:新たなる旅立ち----のまえに

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*1:DMGや各種クラスブックには急所攻撃持ちの上級クラスがたくさんあるのでご安心を。

*2:魔法の場合には「命中判定を必要とする魔法(遠隔接触呪文とか)」という制限がある点に注意。つまりレイオブフロストなら可だが、マジックミサイルは不可ということだ。これは急所攻撃が「敵の急所を狙って当てる」攻撃だからであろう。

*3:〈はったり〉を成功させたものの攻撃に対してのみの効果である点に注意。君が誰かにフェイントをかけても、その相手に接敵してるファイターが利益を受けることはないのである。

*4:ちなみのこのフェイントを移動相当アクションにする=「1Rの間にフェイント→急所攻撃を可能にする」能力を持つ上級クラスがSword&Fist(ファイター・モンククラスブック:未訳)に掲載されていたり、同様のことが出来るようになるQuicker than the Eyeという特技がSong&Silence(ローグ・バードクラス本:未訳)に掲載されていたりします。また、Races of FaerunやDragon誌などにはよりローグを強力にするクラスや《特技》が掲載されてたりするので興味のある人はどうぞ。

*5:このへんの事情はアーチャーを極めよ!企画に詳しい。上級者向けの内容だが、ひまな人はこっちもチェックしてみよう。

*6:騎乗突撃に成功してダメージが増加した際、急所攻撃ダメージまで増加することは無い、という点に注意;武器のダメージとSTRや魔法による固定追加ダメージ(=ダイスロールするダメージは不可)ならば増加できる

*7:この能力のおかげで世のウィザードたちは反射セーヴに頼らずに済む(代わりに効果の今ひとつな)呪文を修得しなければならなくなった。つーかダメージなしはありえねえだろ。せめて1/4とかにしてくれえ。

*8:アームズアンドエクイップメントガイド(未訳)には、このほかにも各種<技能>にボーナスを与えてくれるアイテムがある。このサプリメントは面白いので、持ってない人は是非。

*9:急所が判別できなくなるから、ということだろうが、暗がりで急所を突いてくるのがローグではないかという気がしないでもない。ともあれ、このルールのおかげでウィザード達はローグ対策としてブラーを用意することが多い。

*10:《鎧習熟》 のある鎧に関しては。《鎧習熟》 のない鎧を着けている場合は、通常ペナルティを受ける技能に加え、〈騎乗〉〈解錠〉〈装置無力化〉などの各技能にもペナルティが加わるの(p86)で、「重装ローグ」を目指すならファイターなどとマルチクラスするのが良いだろう。もっとも〈軽業〉に影響を受けるし移動力も落ちるので飛び道具型ローグでないと苦しいかもしれないが。

*11:実際には〈解錠〉はローグのみクラス技能となっているので、ローグの代わりにはなりえない。つうかバードで「ローグの代わりになる」と言うのなら、ウィザードでもクレリックでもバーバリアンでも代わりになりうる。だって他の全てのクラスでクラス外技能になってるし〈解錠〉。

*12:ソング&サイレンス(未訳)を導入すると、いかにもバード!といった呪文がたくさん入るのでちょっと楽しいのだが。効果時間中ずーっとリズムを刻みつづけてくれる呪文とか。冒険の役に立つか否かはこっちにおいとく必要があるけれども。

*13:実際にはこの辺はDMごとのサジ加減になる部分ではある。よって、より弱く判定するDMも当然いると思われるので、この辺は自分のDMと話し合って決めて欲しい。石川的には達成度と「それが成し遂げうる事」の例から判断して、「このくらいはできる」と判断し、処理しているが。まあ、バードの見せ場となる部分がこの辺しかなく、〈念視術〉や秘術魔法でできるくらいのことはさせてやろう、という親心がバードに(それも甘く)作用していると言われれば否定することは出来ないのだが(笑)。

*14:まあ、RAINBOWで言うところの「アメリケェン」なシナリオだと、えてして「君達は洞窟の入り口にいる」とか言われてしまい悶絶する羽目になるのだが。

*15:フリーアクションで可とするDMもいるが、石川的には移動扱いアクション。盾は腕に固定するものなので、持ったものを落とす(フリーアクション)よりは手間がかかると思うので。参考まで。

*16:絶望的なことをいうようだが、クラス本や各種サプリメントなどの各種未訳データを活用しても、この図式を覆すことは難しい。せめて呪文使用回数がもう少し多ければ・・・・・。

 

 

 ※この原稿はETMさん、通りすがりのおやじさん、朋さん、スカルヘッドさん各氏のご示唆を受け、加筆・訂正してあります。ありがとう!