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拡張コラム 
出目10を使い倒せ!
 060625 いしかわ
 65万hit記念


 先の記事でも示したように、出目10・出目20の利用によって、プレイにかかる手間と時間を大いに短縮することが可能となる。

 しかし、D20システムにおける出目10は微妙にでもある。

 何が損なのか?

 一つは20面ダイスの期待値は10.5であるという点。つまりロールを行わないことで、PCはチェックのたびに統計学的に0.5ずつ損をしているということだ。
 そしてもう一つは判定値が固定されてしまうがゆえに、「対象の難易度によってそれができるかどうかが固定される」点である。 〈捜索〉+能力修正値が10のローグが難易度21の隠し扉を見つけようとする際、通常通り判定していれば45%で発見できるものが、出目10なら100%発見できないのだ。
 もっともこれをデメリットと言い切ることは難しい。同じローグが難易度15の隠し扉を見つけようとするとき、出目10なら100%見つかるが、判定を行うなら20%の確率で失敗してしまうのだから。

 「簡単なものを確実にこなせる代わりに、チャレンジが必要なレベルのものは確実に失敗する」、よく言えば安定、悪くいえば男じゃねえ判定法が出目10なのである。

 とはいえ、使い方を考えれば便利であることは間違いない。
 そこで、どうすればより上手く出目10を利用できるのかを4レベルキャラを例に考えてみよう。
 どの技能でも基本的には同じだが、ここでは出目10を頻繁に用いそうで、かつ冒険における最重要技能の一つといえる〈捜索〉を例にしている。

 敵を知り己を知らば百戦危うからずと故事に言う。まずはその技能にどれくらいの達成値が必要とされるのかを知ろう。
 これに関してまず参考になるのはPHBの技能の章である。ここの各技能の説明にはその技能でできることと、それに必要な標準的な達成値とが記載されている
 とはいえ、ここで出される例の値と実際必要とされる値の間に大きな隔たりがある技能もあったりするので、可能ならDMGやシナリオなどの記述も調べておく方がいいだろう。例えば〈装置無力化〉技能の説明では「簡単:10・厄介:15」などと記載されているが、DMGの脅威度別の罠リストを調べてみると脅威度1の罠でさえ最低14、最高で25の達成値が必要とされる。てか25って「悪辣」じゃねえかお前。1レベルのPC相手にそんなモン出すな。

 では、PHBの技能の章、〈捜索〉の稿を見てみよう。捜索するものと、それに必要な標準的な達成値が書かれている。
 冒険で重要そうなものを挙げてみると、
隠し扉・罠   20
魔法の罠    25+呪文レベル
難しい罠    21以上

 なんかがある。「罠」と「難しい罠」がどうやって区別されてるのか良くわからんとかどうでもいいつっこみはさておき、ここで重要なのは「隠し扉は(通常)20の達成値が必要」「魔法の罠(これにはグリフ系呪文やシンボル系呪文など、致命的な呪文も含まれている)は達成値25+呪文レベル」というあたりだろう。
 ということは、普段の通路のチェックを出目10で済まそうと考えているなら、出目10したときに少なくとも20,できれば25以上はあった方が良い、という計算が成り立つ。また、魔法に限って言えば25+9(呪文は最大9レベルなので)34、よって修正値が+24あれば(少なくとも)呪文による罠は全て感知できると言う計算が成り立つ。
 まあ修正値が+24というとかなり遠い将来の話になってしまうが、自分の目標をどの辺におくべきかを考えておくことは将来設計を行う上でも重要である。こうして「必要なランク」がわかれば技能ポイントを無駄なく使うことも可能になるしね。

 どれくらいの難易度が必要なのかわかったら、次にその技能に対してPCがどれくらいの達成値を稼げるかを考えよう。
 先ほどの4レベルローグで【知力】が+2だとすれば、技能を最大まで取っていたとして7ランク、よって出目10とあわせれば素で達成値19は稼げることになる。
 先に調べたように、〈捜索〉 には少なくとも20は欲しい。となればなにかで達成値を上げる方法を考えておく方が良さそうだ。
 以下にいくつか例を挙げておこう。
○最も手っ取り早い手段はおそらく魔法のアイテムの利用である。さしあたって一番有効なのはDMG所載の「ゴーグルズ・オヴ・マイニュート・シーイング」を使うことだろう。かのアイテムは〈捜索〉に+5のボーナスを与えてくれる。価格も1250gpとマジックアイテムの中では比較的安いので、懐が許す限り最優先で購入すべきアイテムだと言える。また、”エリクサー・オヴ・ヴィジョン”(なぜこれがポーションの項に書かれていないのかは永遠のナゾだが)は1時間の間〈捜索〉に+10というヤケクソ気味な性能を誇る。一本250gp。
 また、関連能力値を上昇するアイテムを利用するという手もある。〈捜索〉は【知力】の修正値がそのまま反映されるので、【知力】を上げるアイテムでボーナスを稼ぐこともできるのだ。こちらは4000gpでボーナスが+1しか得られないなど効率が今ひとつだが。

○「高品質アイテム」などにより修正が加えられる場合も少なくない。たとえば〈聞き耳〉 なら冒険者大全所収の”聴音コーン”で、わずか20gpで+2の状況ボーナスを得ることができる。また〈解錠〉 や〈装置無力化〉 に+2できる盗賊道具(高品質)などもコストパフォーマンスが良い。

○魔法のアイテムだけでなく、呪文を使う手もある。
 〈捜索〉 なら【知力】を上げる呪文でも達成値は稼げるのだ。2レベル呪文フォクセス・カニングで【知力】を+4にすれば技能への修正が+2になる。この種の呪文で長時間有効な呪文は少ないので常に発動しておく、と言う種のものではないかもしれないが、ワンドやポーションなどのお手軽な方法で+2が稼げることを覚えておいて損はない。

○もし君がこれからキャラクターを作成するなら、種族をエルフ(ハーフエルフ)にしてみよう。かの種族は感覚に優れているため、〈捜索〉に+2(+1)のボーナスがつく(*1)。他にも石造りの建物を調べる場合に+2のつくドワーフなど、各種技能に対しボーナスが得られる種族は少なくない。

○技能によっては5ランクあれば別技能にボーナスがつく場合もある。〈捜索〉には「〈知識(建築学および工学〉により隠し扉や隠し部屋を捜す際の〈捜索〉 に+2がつく」というなんか微妙っていうかむしろDMが困んじゃねーのコレ的なものしかないが、腐っても+2だ。また、他の技能についても同様の例はたくさんあるので、PHBp66のまとめ表をよく見ておくと良いだろう。 

特技によって技能にボーナスを与える、という手もある。
 君のDMがトラップ大好きだったり、無駄に広いダンジョンが大好きだったりコーデルだったりするなら《技能熟練(〈捜索〉)》で技能に+3しておくのはそう悪い選択では無いかもしれない(もっとも最後の例の場合は全人類のためにもコーデルを再起不能にして(以下略))。 他にも「2種の技能に+2」という形でボーナスを与えてくれる特技は少なくない。〈捜索〉 なら《探偵》とか。
 この辺は君のキャラクターの特性、そしてパーティで果たすべき役割に合わせて選択すると良いだろう。とはいえ、+2とか+3のために特技一つを使うというのはけっこうな勇気が必要とされる。特に戦闘型ローグなんかにしている場合は欲しい特技が山のようにあるので、こっち方面に思い切るのはなかなか難しいかもしれない。

チェック時に仲間に手伝ってもらうのも良い手段といえる。そう、援護ルールだ。
 〈捜索〉 するときに援護してくれる人がいれば達成値に+2できる。〈捜索〉はランクなしでも試行できるので、使い魔やサイクリスタルにやらせてもいい(*2)。残念ながら援護の際に出目10を使って良いとするルールが見あたらないので援護してくれる人たちには援護の度に目標値10のチェックを行ってもらわねばならないが、目標値が決まっていれば
「d20でいくつ以上」出せばよいかがわかっているので回数分ロールするのはそう大変ではないだろう。
 なーに、技能を持ってなかろうが関係能力値が低かろうが、失敗したってなんのペナルティがつくわけでもないし、コストがかかるわけでもない。力の限り援護してもらいまくりつつ出目10を使いまくれ。


 
上に挙げたように、技能の達成値を稼ぐ方法は少なくない。
 簡単にできるものとできないものの差はあるが、それでもいざというとき何をすれば達成値が上げられるかを知っておけば何かと訳に立つことは間違いない。
 今回の記事では〈捜索〉を例として解説しているが、他の技能でも(〈聞き耳〉 、〈装置無力化〉、〈精神集中〉 など)でも「必要なランクを見極め、足りない分を埋める方法を考える」という流れは一緒である。特に相手の能力によらず達成値が決められる〈精神集中〉や〈交渉〉、〈呪文学〉 あたりはこうした「目標」を立てやすいといえる(*3)。

 また、一部の技能、たとえば〈装置無力化〉あたりは達成値が同じであっても、〈捜索〉と比べてその難易度(というか危険度)は低い。そらまあ罠の解除に失敗すればローグ本人が重篤な危機に陥る危険もあるわけだが、「罠が見つからずにパーティ全員がいてこまされる」ことを考えればその被害はごく小さい。しかも〈装置無力化〉は5差までなら失敗しても罠が発動せず、解除の再試行さえ可能なのである。「見つからなければそれで終了」な〈捜索〉 と比べると相当ヌルい。見つけてしまいさえすれば、解除できなくても回避はできるし、サモンモンスターなどを生贄に罠を作動させてしまう手だってあるのだから。
 逆に〈視認〉 や〈聞き耳〉 など敵の有無を知るような技能や各種〈知識〉(*4)は1回しくじるとパーティ全体に大きな損害を与えかねないため、「可能な限り高く」しておきたい。

 ついでに、出目10したときの達成値が14とか19なら、多少無理しても15や20にしておこう。メタ的なアレになってしまうが、キリのいい数字が達成目標値である場合は意外と多い。特に〈知識〉系なんかだと「15ならXX,20なら○○」なんて具合に5刻みにわかることが区分されてる場合もある。
 
 メタ的な話をもう一つ。パーティ単位で行動してるなら、特に〈視認〉 や〈聞き耳〉・ 〈捜索〉 などの場合で「なんかやばそう」な時には出目20を使ったり、「一人は出目10,一人は通常通りロール」なんてやり方でリスクを分散しておこう。出目20の有用性は言うまでもないが、「出目10+ロール」は「確実性」と「最大の値(を得られる可能性)」の両取りができるという意味で非常に有用である。パーティ人数が少ないときにはなかなかうまくはいかないだろうが、上記した、いわゆる感覚系技能だけでもそうした措置を取っておくことで、君たちに降りかかる危難を少なくすることが可能となる。ぜひ覚えておいて欲しい。





なにやら散文的な内容になってしまったのでそろそろまとめー。
●出目10を有効に使うには
 1.その技能を使うのにどれくらいの達成値が必要かを知ろう
 2.達成値を上げるには何が必要かを確認しよう
 3.可能ならみんなに援護してもらおう
 4.怪しいところは出目20ないし(一人は)ダイスロールにしておこう
 
●技能ランクを決定するには
 1.技能の重要性と致命度を考えよう 
 2.必要なランクがいくつなのかを考えめよう
 3.技能によってはキリのいい数字に合わせておこう


●あとコーデルは死ね

 もちろん、技能ポイントが足りないとか、想定外の出来事で達成値が足りなくなる、なんてことはよくある話である。
 しかしそうした困難な状況に陥ったときこそ、君が頭を捻って技能を選び、何が必要かを考えた経験が生きるのだ。
 考え抜かれた技能の習得は、数値的な問題ばかりでなく、必ずや君のプレイングをも良いものにしてくれるだろう。
 



 Good Gaming!
 Bang! Bang!

  【4mの金網ケージの上から真っ逆さまに落とされながら】



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*1:その上「通りがかっただけで隠し扉が見つかる(かもしれない)能力」や「睡眠不要・4時間のトランスで良い=夜の行動・見張りに最適」などローグに適した能力を持っている。【敏捷力】も上がるし、これで【耐久力】-2でさえ無ければのう・・・。
*2:一度に何人まで手伝えるかはDMにより変わってくると思われるので要相談。動物は普通〈捜索〉 持ってないからちょっとしんどいかも。サイクリスタルはなぜか技能ランク持ってたりするんだが。
*3:特に〈交渉〉 は相手が”敵対的”でも達成値50が出てしまえば"協力的"になってしまうため、〈交渉〉 が40超えてるようなキャラは”ディプロマンサー”として一部で畏れられている。これで「言葉が通じなくても意志が通じる」テレパス能力なんて持ってたらもう。
*4:軽視されがちだが、相手の能力がわからない、というのは結構コワい。特に相手がアンデッドのときのエネルギー吸収の有無とか、デヴィル・デーモンの時のダメージ減少や呪文抵抗の有無なんかは生死を分ける。