はじめの一歩のいっぽ先
     −−前衛[モンク]編:誕生の章−−  
070808 (080229:細部の表記を統一し、誤記を訂正)
 文責: T_N 

■第1項:モンクを(普通に)作るといかに難儀なキャラになるか


 モンク(特に5レベルくらいまで)の一般的な傾向として、すげえ弱いよ! というほどでもないものの、何というか、選択の余地が狭く、結果としていいところの少ないキャラクターができてしまうことが多い。
 モンクの評価が不当に低い理由は、第一にこれだろう。最初に、この問題をじっくり検討してみたい。
 つまり、モンクがいかに難儀なクラスであるのかについてだ。



 まず、モンクはいったいどんなことができるのか?


【5レベルまでのモンクにできること(非戦闘時)】
  @ローグと一緒に隠密偵察に出ることで、偵察任務の安全性を増す
  Aローグのかわりに隠密偵察に出る
  B罠がありそうだが発見できなかったエリアに踏み込む、向こうに何かが待ち構えていそうな扉を開ける


 @Aはローグが十分優秀なら不要じゃん、という話である。そもそも隠密行動できる人間が二人いないと解けないシナリオとかにそう頻繁に存在されても困る。
 Bについても、十分有能なローグが調べたら後はファイターが危険を冒せばいいのでは、という話である。モンクでなければならない理由はない。そして、罠発見技術の関係から、ローグがいなくてモンクがいるパーティーというのはちょっと考えにくい。

 つまり、非戦闘時にいないと困るキャラじゃないのだ。でも、D&Dのほとんどの前衛クラスはそうなので気にする必要はない(技能選択によっては隠密行動要員として動けるだけマシとも言う。上記の通りいなくても何とかなるという点は微妙だが)。非戦闘時にやることがなければ、ファイターと一緒に泳いだり跳ねたり馬の世話をしていればいい。どれもモンクのほうが倍はうまくできるはずだ。

 ……では戦闘中は?

【5レベルまでのモンクにできること(戦闘時)】
@敵を殴り倒す!
 前衛クラスの端くれとしては、当然そうあるべきだろう。
 だが、残念ながら、命中率、ダメージともに他の前衛に対して大幅に不利なモンクにはそれが困難なのだ。
 とりあえず、ファイターとの格差を並べてみよう。
●命中判定(命判)
 基本攻撃ボーナス(BAB)が低い(1レベル時で-1、以降も格差は開く)
 1レベル時に《武器熟練》を取れない(3レベルまで-1)
 魔法の武器によるダメージ上昇が見込めない(−パーティレベル÷3〜4)
 連打を使うとさらに下がる(−2)

●ダメージ
 素手の威力が低い、威力の大きい両手武器を持てない(期待値で−2〜−3)
 魔法の武器によるダメージ上昇が見込めない(−パーティレベル÷3〜4)
 4レベル以降の武器開眼によるダメージ増強がない(−2)
 連打を使ってようやくファイター並み(両方命中すれば)

●防御力・耐久力
 アーマー・クラス(AC)は1レベル時点で盾を持たないファイター並み(以後も引き離されるばかり)
 ヒット・ポイント(HP)は他より低い(ヒット・ダイスがD8)
 平たく言うといいとこなしである。特に命中判定とダメージの両方が無視できないほど低いのは前衛として致命的だ。両手武器を持ったクレリックや、レイピアを持ったローグの方がよっぽど強い。
 クレリックは防御力が高く、ローグはダメージが高いからまだいいがモンクはどちらも低い。これでは戦闘中に前線要員として活躍するのは難しい。
 連打を使えば攻撃回数が1回増えるが、それはタダでも低い命中率をさらに下げる。攻撃というものは当たらなければ意味がない。その上、低レベルのモンクの拳は当たっても敵に与える損害はたいしたものにならないのだ。
 さらに、上記は筋力がファイター並み、敏捷力がローグ並みであることを前提としているが、その分は当然他にしわ寄せが来る。
 作ってみないと実感できない事実として指摘しておきたいのは、モンクは能力値が厳しいことだ。心身のみを武器にするのがモンクだが、ポイントバイやダイスロールの方式が他のキャラクターと同じである以上、心身の総合性能は同じ。となれば武器防具の分だけ単純に弱い。
 たとえばファイターなら【敏】は13でいいが、モンクは鎧を着られないのだから、せめて14にしておきたい。【判】も低くては意味がない。となると必然的に、ファイターよりも筋力が低くなる。そうするとタダでも低い命中判定・ダメージがさらに低下する。特技選択によってはそれほど必要ない【知】や【魅】をぎりぎりまで削るのはすでに前提としてもだ。「モンクをやるのは能力値の出目がいいときだけ」という声がちらほら聞かれるのもむべなるかな。
 ……つまり戦闘中に先頭きって敵を殴り倒すのは難しいわけだ。



そんじゃできることなんかねぇよコンチクショウ。



 ……まあ待て。

 上記はパーティーの剣としての役割でしかない。戦闘中にできることはほかには無いのか? 「D&D始めの一歩」によれば、戦闘中にパーティーメンバーが負うべき役割は主に4つ。剣、盾、ガーディアン、シューターだ。
 この4つの役割のそれぞれを、モンクはどの程度こなせるのかを検討してみよう。

●剣ダメージディーラー。敵陣を切り開く。攻撃力重視
 −−上記の通り、前衛職としてはかなり微妙。
●盾壁。敵の進撃を阻止。防御力・ストップパワー重視
 −−AC、HPのいずれも低いので防御力は論外。
   ストップパワーはコンバットオプションによっては多少得られる。
   (コンバットオプション=足払いや朦朧化打撃などの特殊攻撃)
●ガーディアンキュア・補助呪文要員
 −−呪文は使えません。
●シューター遠距離攻撃。秘術呪文使いとかアーチャー
 −−大した飛び道具は使えません。

 つまり、モンクが戦闘時にできることは、「剣」と「盾」のいずれかなわけだ。
 そして上記の通り、どちらもあまり得意ではない

 モンクがいかに難儀なクラスであるか、お分かりいただけただろうか?


 逆に言えば、ここを改善できれば、モンクをプレイする意味は十分にあるのだ。
 プレイする意味があるというのは、要するに戦闘で活躍できるという意味だ。なぜなら、モンクをやるプレイヤーは、普通はモンクが戦闘職だと思ってモンクを選ぶのだと思うからだ。

 一般的なイメージで言えば格闘家だろ? 戦闘で活躍したいじゃないか。


そんなことないなんて、自分に嘘をつくのはやめたまえ。
本気でそう言っているのなら、考えを改めたほうがよい。


 一般にモンクのウリであるとされる「機動力を生かした戦法」は、序盤での威力がささやかな上に、使える局面が限られている。
 D&D3.n版の楽しみは第一に戦闘にあるのだから(少なくとも戦闘職にとってはそうだ)、こうした特殊な局面だけでなく、どんなシナリオにもほぼ必ず存在する「平坦な広所での戦闘/乱戦」でも活躍できるほうが楽しいはずだ。
 だいたいプレイヤーは良くても、DMが気を使う。正面切って敵と戦う能力の低いモンクがいると、毎回脈絡もなく屋根の上の戦闘シーンを演出したり、風呂場での襲撃を計画したりせねばならず、色々面倒なのだ。
 モンクをプレイしていて楽しいのは、ガチで殴り合っているファイターとモンスターの周りを跳んだり跳ねたりしているときではなく、急所を衝いて相手を悶絶させ、苦痛に朦朧とする怪物の頭蓋を己が拳で叩き割るときなのだ! 戦闘職にとって真に重要なのは、命中判定とダメージダイスのみである!!


 …………………………失礼、つい興奮してしまった。
 以上は極論だが、一面の真実でもあると信ずる。
 そのためにも、まずはファイター並みの……とまではいかないまでも、なるべく高い正面戦闘能力を確保した上で、そこからどの程度のものを支払うかをよっく考えるべきなのだ。考えた上で技能系のモンクを作ったり、敵の回りを思うさま飛んだり跳ねたりするのならそれもよし。
でも最初から諦めることはない。



 ……と、思いたい。




■第2項:難儀でないモンクを作ってみよう

 モンクを(戦闘職として)マシなクラスにするには、「剣」と「盾」としての性能をもう少し強化する必要があるわけだ。強化の方策を、キャラクター作成の各段階から探ってみよう。
 具体的には、種族選択、能力値配分、技能選択、特技選択だ。

※なお、この記事の内容は、明記がない限り、プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)、ダンジョンマスターズ・ガイド(DMG)、モンスターマニュアル(MM)のいわゆる「コア3冊」のみを使用する環境を想定している。D&Dのサプリメントは無数にあるので、そのすべてを網羅して可能性を検討するのは不可能だ。だが、どんなレギュレーションでプレイしていようともコア3冊だけは必ず使うはずなので、ますはこの基本的な環境で様々な可能性を検討しておけば、新しいルールや特技を導入する時にも「これはコア3冊の○○よりも有効なのか?」という点が判断基準となるだろう。


●種族
 まず、小型種族をすべて選択肢からはずす。低レベルではただでも貧弱なダメージがさらに貧弱になる上、組み付き・足払いといったコンバットオプションにも大きなペナルティを受ける。小型種族のモンクで高い戦闘能力を達成するのは極めて熟練を要する困難事だ。
 中型4種族(*)は正直甲乙つけがたい。だが、ポイントバイでの能力値の割り振りだけ考えて優劣をつけるなら、以下の順番になる。

  ハーフオーク > ドワーフ > 人間、エルフ

 ハーフオークは最重要能力値である【筋】にボーナスがあり、ペナルティを受ける【知】と【魅】はモンクにとってそれほど重要ではない。
 ドワーフも、いらない能力値である【魅】が減少し、代わりに最低10は欲しい【耐】が上がる(最低10になる)ので、そのぶん他の能力値を高くできる。エルフは【敏】と【耐】というどちらもある程度必要な能力が増減するだけなので、実質的に人間と変わらない。
だが、種族選択は能力値以外の要素も絡んでくる。
 人間の特技+1個は魅力的だし、エルフの剣と弓も序盤はかなり役に立つ。
 ドワーフの対呪文・対毒その他の各種ボーナスはモンクの高セーヴとあいまって非常に死ににくいキャラを作り出すし、デミヒューマンの特殊視覚は隠密行動したいならとても便利だ。
 なので、好みで決めてもいいと思う。あえて言うなら、人間が無難でやりやすいだろう。個人的な趣味でいえば、ドワーフの生残性が魅力的だと感じる。

(*)ツッコミをいただくまで、ハーフエルフのことを完全に忘れていた。正しくは「中型5種族」ですね。ハーフエルフのモンク適性については、まあそのなんだ、私が忘れてたこと自体が十分な説明になっていると思う。そっとしておいてあげてくれ。


●能力値
 能力値の割り振り優先度は、

  【筋】>【判】【敏】>【耐】【知】>>【魅】

 といったところ、ではなかろうか。

 ちなみにここでは、28ポイントバイでの割り振りを基準に考えている(私の周囲の環境は28ポイントバイと32ポイントバイが多いので。足すのは楽だけど削るのはたいへんだから)。

 まずは【筋】だ。意外に認識されていないことだが、モンクにとって【筋】は高ければ高いほどよい。命判とダメージを上昇させる手段に乏しいモンクにとって、戦闘能力に占める【筋】の重要性は他の前衛クラスより大きいのだ。仲間のファイターよりも大きいことが望ましい。最低でも16は確保したい。
 【判】【敏】はモンクにとってほぼ同じ意味を持つ。
 どちらもACを上昇させてくれるが、【判】は意思セーヴ、【敏】は反応セーヴにボーナスがつくので、どちらを重視するかは好み次第だろう。能力値15以上はポイント的に割高なので、両方を平均的にそれなりの水準にしておくのが有利ではなかろうか。個人的には比重は同じ程度だと考えているので、両方を14にするくらいがちょうどよいのではないかと思う。
 なお、どちらかを重視する場合でも、特技習得の関係から【敏】は13を確保したい。
 【敏】と《武器の妙技》で命中率を稼ぐという戦略は少なくとも最初はオススメしない。最終的な性能は同レベルなのに、特技が余計に一つ必要だからだ。(個人的な好みは攻撃重視なので、より弱いという気さえする)
 【耐】は前衛なのだからあるに越したことはない。が、だからといってこれを高くしてもともと低い攻撃力を下げるのはよくない。「可能なら+1つくと嬉しいな」というくらいではなかろうか。頑健セーヴはどんどん成長するのだし。ここを欲張るほどの贅沢はなかなかできないことが多い。
 【知】は、特技と戦闘オプションで戦うつもりなら13は必要だが、そうでないなら8とか6でも何とかなる。一方、モンクは技能職でもある(後述)ので、高くしておけばきちんと見返りがあるのも確かだ。
 【魅】についてはギリギリまで削らないと厳しいだろう。

●技能
 モンクはファイター・クレリック・ウィザードといった専門バカ2倍の技能ポイントをもらえるので、【知】が高ければローグ並に、低くてもそれなりに選び甲斐がある。戦闘には直接関係ない場合が多いので、ここでは簡単に書く。
 まず、戦闘時の機会攻撃を避ける〈軽業〉は高くしておくべきだ。〈軽業〉に相乗ボーナスがある〈跳躍〉も5ランクは欲しい。
 上記を抑えておけば、あとは自由だ。モンクのキャラクター作成において、数少ない、豊富な選択肢がある(そしてそれが報われる)局面といえよう。
 【判】が高いので〈視認〉〈聞き耳〉を伸ばすのも有利だし、鎧を着ないので〈忍び足〉〈隠れ身〉を伸ばせばローグ以上に優秀な暗殺者になれる。〈跳躍〉〈登攀〉〈平衡感覚〉といったレアな(他の者がまず伸ばさない)スキルも、伸ばしておくと活躍できる機会は意外にある(マスターの趣味によるが)。
 〈知識:宗教〉は上級クラスの前提条件として先々必要な可能性がある。迷うようなら〈知識〉〈呪文学〉といった、「何人かでダイスを振れることが重要」な技能を取っておくのも悪くはない。フレーバーを重んじるなら、低い【魅】を補うべく〈威圧〉〈交渉〉を伸ばす事だって可能だ。
 ローグのようにいろんな技能をレベル相応のランクで持っている必要はない。極端な話、毎レベル伸ばさねばならない技能は〈軽業〉だけなので、(知力が高いなら)2〜3回のレベルアップで得たポイントをまとめて突っ込むことで、ドシロウトだったスキルを短期間に実用レベルに持っていくことも可能だ。
 上級クラスの前提条件となる技能ランクも割と簡単に満たせるのも、明るい材料とはいえる(上級クラスの選択肢が少ないのが問題なのだが)

●特技選択@ 命中判定(命判)・ダメージ重視の場合
 BABやACといった基礎的な戦闘力で劣るのであれば、特技で戦闘力を(できればファイター並に)補強できないか?
……残念ながらこれは厳しい。

《強打》

 命中率とダメージのトレードオフなので両方が低いモンクには無意味だ。そもそも3.5版の《強打》は両手武器を持って使うものだ。

《武器熟練》
 1点だけだがストレートに命判を上げてくれる《武器熟練:素手》は有益だが、何と1レベルでは取れない。3レベルでようやく取れるので取った方がよいのだが、3レベルまで待ってた日には、特技大尽のファイター様はたいていこの特技を取っている(連中唯一の特権である《武器開眼》の前提条件なのだ)。したがって、差が縮まるわけではない。

《武器の妙技》
 同じく1レベルでは取れない。これを3レベルで取ることをアテにして筋力を低くしておくと、3レベルまでのあいだ、ファイターと比べたときの命中率は悲惨な感じになる(命判に4以上の格差が出る)。
 3レベルになって《武器の妙技》を習得し、命中率が改善されても、相変わらずダメージは低い(たったの1D6。槍を持ったソーサラーと同じだ!)。
 D&Dの白兵戦の基本はあくまでも、命中判定とダメージの両方にボーナスがつく【筋】である
 【敏】に頼って戦うことにしたらその時点で戦闘職にはなりえない。そんなキャラの戦闘力はローグ以下である(急所攻撃がないからね)。

追加特技
 モンクの追加特技があるじゃないかって?
 1レベルの追加特技は《朦朧化打撃》《組み付き強化》だ。低レベルモンクの朦朧化打撃はあまり効果がないし、回数がきわめて限られているので、運がよくないと効果を発揮しない。
 つまり全く当てにならない(*)……のだが、これをいまここで取っておかないと、次のチャンスは12レベルまで待たねばならない(BAB8が前提条件)。ここは取っておくべきだろう。《組み付き強化》を選んだとしても、命判やダメージを上げてはくれないのだし。

 2レベルでは《矢止め》《迎え討ち》だ。
 《矢止め》欲しいかね? いらんだろう。
 一方の《迎え討ち》は非常に有効だが、悲しいかなこの特技も受動的で、攻撃力を上げてはくれない。
 つまりモンクに取得できる特技では低い命判とダメージを補うことができない。

(*)当てにならないとはいえ、《朦朧化打撃》は成功すればかなり嬉しい効果だ。それに、『戦士大全』をはじめとするサプリメントを導入すると、朦朧化打撃の回数を消費して様々な効果(ダメージ増加とか)を得られる特技が手に入るので、かなり話が変わってくる。さらに『プレイヤーズ・ハンドブック2』ではモンクの成長の指針として《朦朧化打撃》《能力熟練:朦朧化打撃》を推奨しているのだが、《能力熟練》でDCが+2された朦朧化打撃はかなりイヤな攻撃になりうる。……少し先の話ではあるが。



●特技選択A コンバットオプション重視の場合
 というわけで、次はモンクが特殊な戦闘行動で低い正面戦闘力を補えるかを考えてみよう。
 時々モンクは確かにBABが低いけど、その分多彩なコンバットオプションがあるじゃないか! などとニコヤカに妄言を吐く人がいるので、その辺について小一時間考えてみたい。
 ……つーか、小一時間考えるまでもなく、コンバットオプションだって基本はBABが成功率なので、特に低レベル帯で役に立つものではないのは解るはずなのだが。
 それでもまあ、イマイチなりに最適解を探してみよう。
 ……探してみた。
 結論としては、モンクが序盤に習得可能なコンバットオプションで本当に有効といえるものは意外に少ない――使えないものが使えないレベルで入ってくるような悪意ある配置になっていると思うのは被害妄想だろうか?(*)
 1レベルと2レベルの追加特技の選択は、前記の通り、《朦朧化打撃》《迎え討ち》でほとんど選択の余地はないように思う。
 そうなると、1、3、レベルでもらえる特技は2つ、人間で3つだ。
 どんな選択肢がありうるだろうか?

(*)1レベルで《朦朧化打撃》を取りのがすと、2レベル、6レベルの追加特技習得、あるいは3、6、9レベルの通常の特技習得のタイミングではこれを選択できない。なぜだ。ファイターに比べて選択肢自体は狭いんだから、もう少しフレキシブルに取れてもいいと思うんですが。ようするに1レベルでは朦朧化打撃を取れってことなんだと思うが、だったらいっそ選択じゃなくて一択にしとけよ、と言いたい。

《組み付き強化》
 まず、《組み付き強化》はなるべく取っておく方がよい。
 命中判定やダメージは増加しないものの、術者を拘束できるし(*)、武器ダメージと防御力で自分より有利な戦士や怪物を絞め殺して悦に入ったりもできる。
 前提条件は【敏】13のみとかなり緩いので、これはモンクのボーナス特技ではなく、他のどこかで習得しておくといいだろう。それもできれば低レベルのうちに習得しておくと、活躍できる機会が増える。組み付きのルールをちゃんと読んでおく必要があるが、その価値は十分にある。

(*)序盤のモンクは非力なので、相手が魔術師であっても短時間で殴り倒すのは意外と難しい。一方で術者というのは一手番でも与えると何をするか分からない生き物なので、姿が見えたら即座に殺すか呪文発動を封じることが望ましい。その点、組み付きは成功しさえすればほとんど全ての呪文が発動不能になるので有効だ。一度組み付けば非力な術者にとっては離脱がかなり難しいという点で、1ラウンドで自動的に回復してしまう朦朧化打撃より優れている。
《強打》>《なぎ払い》>《なぎ払い強化》
 まず《強打》は、そこに割り振れるだけのBABがないので役に立たない(将来的にもおそらく役に立たない)し、低レベルではダメージの低いモンクにとっては、《なぎ払い》で敵を倒してもう一発を狙うのも厳しいだろう。
 《強打》の先には《武器破壊強化》もある。モンクにとっては心惹かれる特技だが、これは15点以上のダメージを安定して出せるか、拳がアダマンティン扱いになるレベルにならないと使い物にならない
 つまりこの系統の特技は、取ったとしても役に立つのはずっと先だ。

《回避》>《強行突破》>《一撃離脱》
 前衛へのヒットアンドアウェイ時や、前衛を突破して後衛を攻撃する際に、機会攻撃を食らう可能性が減る。
 だが、命中率やダメージには寄与しない。さらに、突入&撹乱の成功率が上がっても、突入したあとの危険性はそのままであることは覚えておかないと、足を止めるとすぐ死ぬ
 また、敵前衛に対してヒット&アウェイをして意味があるのは「ヒットしたときのダメージが大きく、戦闘で死なれると後で困る人(つまりローグとか)」または「全員でヒット&アウェイができるパーティー」だけだ。
 なぜなら自分が逃げても他の人間が殴られるだけなら、パーティーが受ける損害の総量は同じだ。
 ローグのダメージを前衛が肩代わりするなら意味はあるが、モンクのヒットポイントへのダメージを他の前衛が引き受けることに意味があるとは思えない。そのぶんの特技を命判かダメージを上げるものに変えて、普通に足を止めて殴りあう方が有効だろう(あるいは立ち止まった状態でもACを上げる特技があればいいのだが、残念ながら存在しない)。
 《回避》だけはささやかながら常に有効なので、選択肢に入れてよい。コンバットオプションの習得というより基礎戦闘能力の底上げが目的にはなるが。

《攻防一体》から習得できる各種コンバットオプション
 魅力的だが、【判】【敏】【筋】の全てを高くする必要があるモンクにとっては【知】に13を振り、その上で使い道の少ない《攻防一体》を取らねばならないのはかなり厳しい。
 しつこいようだが、トレードオフに意味があるのはどちらかに余裕がある場合だけで、モンクはACにも命中判定にも余裕がないので《攻防一体》自体にはあまり意味がない
 その先で得られるオプションは《足払い強化》《武器落とし強化》《フェイント強化》と魅力的だが、一番使える《足払い強化》が6レベルのモンク追加特技なのが、また涙を誘う。6レベルまで待つか、使えない《攻防一体》を取るかの2択はなかなか悩ましいのだ。
 そんなこと言ってても仕方が無いので、低レベルで戦闘オプションを増やそうと思えば、多少の無駄を覚悟して知力を上げ、《攻防一体》を習得するしかない。そうすれば、1or3レベルで《足払い強化》が取れる。
 この方式は強力な攻撃オプションである足払いが低レベルで使えるのが魅力だ。
 だがしかし。
 前提条件を満たさなくても6レベルで《足払い》がもらえるんなら、【知】を13にしたり《攻防一体》を取ったりせずに、そのぶんの能力値と特技を別のことに振り向けた方がいいんじゃないのかという気もする。
 【筋】を上げれば命判とダメージが上がるし、《武器熟練:素手》を取れば命判が上がるのだ。


 結論としては、モンクがコンバットオプションを増やす方向で特技を取るなら、《朦朧化打撃》、《組み付き強化》、《攻防一体》、《足払い強化》(または《攻防一体》を前提条件とするなにか)がよいのではないかということだ。
 ただ、3レベルになったら《武器熟練:素手》はかなり有力な候補になることを忘れずに。




■第3項:たぶん難儀でないモンクの例
 色々見てきて難儀なことは十分お分かりいただいたことと思う。
 だが、それでも我らは生きてゆかねばならない。
 強い……いやいや、かろうじて弱くないモンクを考えてみよう。

 実のところ、ファイターと肩を並べて戦うことをすっぱりあきらめて、ローグと一緒に潜行することを重視するのも手ではないかという気もする。《隠密》とか取るとローグなみかそれ以上に静かに動ける。

 だがあきらめなければ光明がある。
 上記の考察を経て、戦闘力において最適と思えるモンクをいくつか考えてみよう。


 28ポイント・バイで3レベルのモンクを考える。
 使うルールはコア3冊のみだ。


@何とかして命中判定とダメージを上げる方向性
A:ハーフオーク
 筋18(10) 敏14(6) 耐10(2) 知10(4) 判14(6) 魅6(0)
  1レベル時習得特技:組み付き強化
  1レベルモンク追加特技:朦朧化打撃
  2レベルモンク追加特技:迎え討ち
  3レベル時習得特技:武器熟練:素手
 命中判定:BAB2+【筋】修正4+《武器熟練》1=+7(連打 +5/+5)
 AC:14
 ダメージ:D6+4

B:ドワーフ
 筋18(16) 敏14(6) 耐10(0) 知8(0) 判14(6) 魅6(0)
  1レベル時習得特技:組み付き強化
  1レベルモンク追加特技:朦朧化打撃
  2レベルモンク追加特技:迎え討ち
  3レベル時習得特技:武器熟練:素手
 命中判定:BAB2+【筋】修正4+《武器熟練》1=+7(連打 +5/+5)
 AC:14
 ダメージ:D6+4

C:人間
 筋17(13) 敏14(6) 耐10(2) 知8(0) 判15(7) 魅8(0)
  1レベル時習得特技:組み付き強化
  1レベル人間追加特技:回避 or イニシアチブ強化(*)
  1レベルモンク追加特技:朦朧化打撃
  2レベルモンク追加特技:迎え討ち
  3レベル時習得特技:武器熟練:素手
 命中判定:BAB2+【筋】修正3+《武器熟練》1=+6(連打 +4/+4)
 AC:14
 ダメージ:D6+3
(*)人間追加特技は考えどころ。《回避》《イニシアチブ強化》は単体で役に立つという理由で選んでいるが、あるいは転職を見越して《持久力》など上級クラスの前提条件となるものを取っておくのも良い。
 《頑健無比》《技能熟練:軽業》《持久力》《疾走》《軍用武器習熟(ギザームなど)》《特殊武器習熟(スパイクトチェインなど)》《隠密》《軽業師》などが候補に挙がるだろう。



Aコンバットオプションでがんばってみる方向性
A:人間
 筋13(5) 敏16(10) 耐10(2) 知13(5) 判14(6) 魅8(0)
  1レベル時習得特技:攻防一体
  1レベル人間追加特技:足払い強化
   (でも筋力が低いので微妙。フェイント強化のほうがよいかも)
  1レベルモンク追加特技:朦朧化打撃
  2レベルモンク追加特技:迎え討ち
  3レベル時習得特技:武器の妙技
 命中判定:BAB2+【敏】修正3=+5(連打 +3/+3)
 AC:15
 ダメージ:D6+1

B:ドワーフ
 筋16(10) 敏14(6) 耐10(0) 知14(6) 判14(6) 魅6(0)
  1レベル時習得特技:攻防一体
  1レベルモンク追加特技:朦朧化打撃または組み付き強化
  2レベルモンク追加特技:迎え討ち
  3レベル時習得特技:足払い強化
 命中判定:BAB2+【筋】修正=+5(連打 +3/+3)
 AC:14
 ダメージ:D6+3



 えーと、こんな感じだろうか?
 スペックだけ見れば、命判、AC、ダメージのいずれも微妙なのはたしかなんだけど、でもそれなりに活躍はできるんじゃないだろうか。
 ここからさらに、モンクを楽しく遊ぶためのもろもろについては、活躍の章をごらんいただきたい。