Steal This Hook! 07/13/2007

モンスター! モンスター!

ロバート・ウィーゼ


 

時折、D&Dのキャラクターはモンスターと戦うために生まれてきたように思える。そして今月「モンスターマニュアルV」が発売されたからには、その思いをなおさら強くするとしても無理はないだろう。そこで今月のこのコラムではモンスターとの戦いをテーマにする。もはや待ったなしだ。あなたのプレイヤー(そしてキャラクター)が単なる戦いを超え、より素晴らしい冒険を行うため、以下のフックを使って欲しい。私はあなたに戦いを提供するが、そこから先をどうするかはあなた次第である。

私は「フィードバック」という考えがとても好きだ。このコラムのフックを使うなら私にメールして、どのようにシナリオが展開したか教えて欲しい。それは私が何があなたの役に立って、何が役に立たなかったかを知る手がかりとなるだろう。

 

ここより木の根。近づくべからず ―― グレイホーク

ファーヨンディの農地は見渡す限り地平線の彼方まで続き、アイウーズとの戦争でいくらかは荒れてしまった物の、それでも膨大な量の食物を生産する事が出来る。あなたはチェンドルに向かって昨日リトルバーグを発ったばかりである。朝から天気が良く、日の光を楽しみながらあなたは旅を続ける。そして正午頃、この分なら明日にはチェンドルにつけるかと思ったとき、あなたは100フィートほど先になにやら騒動の種になりそうなもの――地面の下をうごめく何か――を見つけてしまった。それは驚異的な速度であなたたちに近づき、数本の太い根が地面から現れたかと思うとあなたたちに襲いかかってきた。

新クリーチャー、バロウ・ルーツこの謎の生物はMMXで追加されたモンスター、バロウ・ルーツ(地中を掘り進む根、ほどの意)である。MMXを持たない場合、あなたはこれをブレイに置き換えて良い。

d100ロール:動機

このような導入はそれ自体がPCに動機を提供する。しかし、PCは事件を調査するうちにこれらの問題が解決する事を望む多くの人々に出会うだろう。それがまた新しい動機となるはずだ。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 バロウ・ルーツは悪属性のドルイドが農民を追い払って、より自然に近い状態にするためにこの地域に放ったものである。

41-75 バロウ・ルーツは恐怖を通して民衆を動揺させるため、アイウーズの手先によってここに植えられた。数百のバロウ・ルーツがこの地域のいくつもの「巣」のなかで成熟しつつある。放置しておけば大規模な混乱を起こすだろう。だが民衆の後ろでうごめく何者かを見つけ出すのは、植えられた木の根を取り除くより遙かに難しいかも知れない。

76-85 バロウ・ルーツはそれを植えた人間のコントロールを離れ、現在暴走中である。

86-00 バロウ・ルーツは数ヶ月も前からこの地域を暴れ回っており、いくつかの村はそれを駆逐しようと努力を続けているが、バロウ・ルーツは危険が迫るとすぐに逃げてしまうために根絶にはほど遠い状況である。農民は作物と家畜を失い、しかも対抗する手段がない事に鬱憤を募らせている。

キャンペーン適合

バロウ・ルーツはどこにでも出現しうる。今回のような使い方はほんの一例に過ぎない。より強力な敵によって操られる、丁度いい尖兵だと言えよう。

エベロン:ブレランド中央部が適しているだろう。国境近くに舞台を置くなら、最終戦争に端を発する紛争と結びつける事も出来る。

フォーゴトン・レルム:デイルランズ。ここではこれらの事件について容易くゼンタリムの仕業だと断定することができる(悪の組織ってのは便利だね)。もちろんこの背後にいるのがゼンタリムである必要はなく、ドラウやその他のデイルの敵、例えばセンビアの貴族や商人であってもよい。

D&D一般設定:この冒険は何らかの権力、グループ、個人がその特権によって恐れられている農村地域に舞台を設定すべきである。近くの小さな街はこれを助けるだろうし、いくつかの村もそうするだろう。首謀者は地元に存在する何者かであるのが理想だ。

 

 

羊飼いを返して ―― フォーゴトン・レルム

それは果たして、本当にワイヴァーンなのだろうか?山脈、森林、河、あらゆる点でテシアは美しい国である。人口は海の近く、西方に集中しているが、東の方にも大きな都市、サラダッシュとリアタヴィンがある。PCはサラダッシュからリアタヴィンまでの(近年通行量が増えつつある)細い道路を北へ向かって移動している。ひょっとしたら彼らは最近「三匹のハグ」事件を解決したのかもしれないし、そうではないかも知れない。ともあれ彼らはこの道を旅している。ここ数時間は自分たち以外何者の姿も見ていなかったが、その時東の方、半マイルほど先に小さなドラゴンが飛んでいるのを目撃する。視認判定に成功すればかぎ爪の一つに羊、もう片方に何か小さなものをつかんでいるのがわかるだろう。聞き耳判定に高いレベルで成功すれば、助けを呼ぶ声も聞こえるかも知れない。このクリーチャー(ワイヴァーン)はそのままPC達から遠ざかり、オムララディン山脈の方に飛び去る。彼らにわかるのは、恐らくかぎ爪に羊と人間がそれぞれ掴まれていた、という事だ。

これだけではまだ興味を覚えさせるには足りないかも知れないが、どのみちリアタヴィンまではまだ丸一日以上かかる。この地域には農場や牧場が多数存在するため、宿を借りるに困る事はないだろう。そして住人からは最近オムララディンの北の平野とリアタヴィンの南にワイヴァーンが出没し、農民と羊飼いをさらっていくという話が聞ける。羊がさらわれるだけならばそれほど珍しい事もないし、全体としてはそれほど大した被害でもないので諦めて慣れる事も出来たのだが、人がさらわれるというのは今まで聞いた事もないという。農民達もワイヴァーンが人間のような大きな動物を獲物にする事はないと知っている。襲撃の頻度は最近ますます増えており、人々は不安におののいている。援助の申し出があれば、何であれ最大限の感謝とともにそれを受けるだろう。

PC達が野宿でもしてこれらの話を聞かなかったならば、次の日彼らは羊の群れの近くを通り過ぎる。三人の羊飼い(兄と妹二人)に先導された羊の群れは街道から600フィートほどの所におり、暢気に草を食んでいる。PC達が通り過ぎようとしたとき、二匹のワイヴァーンが飛来して女羊飼いのうち一人を爪でつかんで飛び上がる。続いてもう一匹がもう一人の女羊飼いをつかみ取り、そのまま二匹は手を出す間もなく飛び去ってしまう。残された兄はPCたちに妹を救ってくれるように懇願する。

注意:この冒険はブラックウィング(モンスターマニュアルX)に置き換えてもうまくいく。

d100ロール:動機

悪党の動機は変えられるかも知れないが、この地に住む全ての人々は空飛ぶ怪物からの助けを必要としている善良な民である。陰謀に関わっている農民も羊飼いも一人としていない。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 オムララディンに住むワイヴァーンの群れはアンダーダークから現れたマインドフレイヤーの一団によって支配されてしまった。彼らは奴隷と食物を集めるためにワイヴァーンを用いている。ワイヴァーンの脳は彼らにとって食うに耐えないひどい味の代物だから。

41-65 ワイヴァーンにさらわれた生存者の一人が山脈のすぐ北の村にいる。この女性、ゼラルドゥ・エルドミナはワイヴァーンにさらわれて、山に墜ちたところを助けられたのだが、自分の故郷などそれ以外の記憶を殆ど失ってしまっている。森に隠れ、それから何日も掛けて山から脱出してかろうじて一命を取り留めたらしい。実は彼女の記憶を奪ったのはマインドフレイヤーであり、彼女は現在ドミネイトされて彼らのスパイと化しているのである。

66-90 ワイヴァーンを動かしているのは何か恐るべき目的を持ったハーフフィーンド・ワイヴァーンである。これがオムララディンのワイヴァーンをまとめ上げ、一大勢力に仕立て上げたのだ。

91-00 農民や羊飼いを襲っているこれらのクリーチャーは実はある種の変身生物である。PC達がいくらワイヴァーンを殺そうとも問題の解決にはならない。彼らは裏にあるものを見つけ出さなければならないのだ。

キャンペーン適合

おそらく、あなたのキャンペーンにはこの冒険を導入する余地があるだろう。あなたがワイヴァーンの代わりに変身するフィーンドを採用するなら、「魔物の書」TおよびU、あるいはマインドフレイヤーを採用するなら「Lord of Madness」が有用だろう。

エベロン:ドロアームにはワイヴァーンもマインドフレイヤーもいるが、善良な農民はたぶんいない。ワイヴァーンをアンデッドに置き換えてカルナスにしてみるのがいいかもしれない。

D&D一般設定:鍋にいくつかの農場を入れて煮立たせます。メインとしてワイヴァーン、隠し味にマインドフレイヤーないしフィーンドをお好みで入れ、よくかき混ぜて注意しながら数時間煮込みましょう。火を止めたらハイでき上がり。

グレイホーク:ワイヴァーンが近くの森から飛んでくるペイル神聖国ないしはテン公国。南の方ならアーリッサも良い。

 

おっきなむしさん ―― エベロン

見よ!城をも崩すこの巨体!最終戦争の間、コーヴェアの国々はそれが可能であればどんな国とも同盟を結んだのと同様、(DMに取っては都合のいいことに)どんな生物も戦争に使っていた。これはその最後の数年において特に顕著であり(資源が枯渇していたためだ)、その中でもサイアリは特になりふり構わないところがあった。彼の国はコーヴェアの中央に位置し、最終戦争の間常に周囲から攻撃を受けていたからだ。サイアリの指導者はカニス氏族の創造物と他の次元界からのクリーチャーを併用していた。そして運命の「悲嘆の日(デイ・オブ・モーニング)」。これらの生物は思い思いの方法で自分たちが生き残るための行動を取った。

ヴァラナーは隣人(モーンランドではなくカルナスとタレンタ平原)に襲撃を掛け続けている戦闘狂のエルフの国である。しかしその中でもいくらかのエルフはより平和な暮らしを送っており、そうした小規模な共同体がブレード砂漠とモーンランド近くの北方に存在する。PCたちがヴァラナーの都市に滞在しているとき、北方で何らかの事件が起こったという噂が流れる。「何でもない」というものから「一つの村が蟲のデーモンによって滅ぼされた」というものまで、噂は一貫せず、真偽のほどもあきらかではない。

リランダー氏族はこの国の北部に土地を持っており、この氏族の下位メンバーでゼラドゥという名の男が彼の行きつけの酒場にPCたちを招待する。彼は噂についてはあまり信じていないが、氏族の上位のメンバーが心配しているのだという。彼はPCたちに、北部に赴き、リランダー氏族に関わりがあるかどうかも含めて実際に何が起こっているのか確かめ、報告して欲しいと依頼し、報酬として現金ないし氏族のサービスの提供を約束する。

d100ロール:動機

00-45 ゼラドゥはこの「危機」に対する迅速な行動が氏族の上位メンバーの目にとまり、注目される事を望んでいる。彼は実際に何らかの重大な問題が存在し、また自らの信用のためにもPC達が問題の解決に当たって細心の注意を払う事を望んでいる。

46-75 ゼラドゥはこのエルフによって支配された国が大嫌いであり、ここで功績を挙げて別の国に栄転する事を望んでいる。PC達に依頼するときも彼はそれを隠し切れておらず、彼の栄転のためであればエルフが何人死のうと気にもしないだろう。

76-00 ゼラドゥは何者かによって体よく操られている。この「人形使い」はゼラドゥの野心(最初の動機を参照)を知ってはいるが、今回の噂は事実無根であり、つまり依頼は無駄足であると考えている。乗せられたゼラドゥが資産を浪費する事によって評価を落とす事を望んでいるのだ。そうすれば彼はゼラドゥを氏族から追放する事も出来るかも知れない。彼らはひょっとしたら一人の女性を競っている仲なのかも知れない。

d100ロール:カスタマイズ

00-75 村も、そして小さな街も破壊されている。「戦いの野」シャヴァラスのシージ・ビートル(攻城用甲虫、ほどの意。モンスターマニュアルXより)は最終戦争の頃サイアリに召喚され、未だにエベロンに残っている。彼らは食物を探して国境からブレード砂漠を歩き回っている。彼らはモーンランド南部で死体を漁っていたがそれを食い尽くし、ヴァラナーにやってきたのだ。彼らは対象が武装していようが何だろうが襲いかかり、それを食い尽くす事しか頭にない、愚かな害虫である。

76-90 シージ・ビートルは存在する。ただしたった二匹。ヴァレス・ターンの攻撃に消耗したカルナスの軍がこれらを捕らえ、攻撃に使用しているのだ。彼らはヴァラナーの略奪部隊を誘い出し、罠に掛けるためにこの甲虫どもを使用しているのだ。

91-00 シャヴァラスのデーモン・プリンスはヴァレス・ターンの一団がその城塞に侵入し、またデヴィルの諸侯の軍に大きな損害を与えたため、エルフに報復しようとシージ・ビートルを送った。これらはハーフフィーンドであるかも知れず、その他のデーモンが同行して柔らかいエルフの肉を引き裂く時を待っているかも知れない。PCもヴァラナーにダメージを与えるためのデーモン・プリンスの計画の一部かも知れないのだ。

キャンペーン適合

シージ・ビートルは人が大勢死んだ場所の近くに現れるか、もしくは呪文使いによって使役されるため、この冒険に丁度ぴったりという舞台は中々無い。しかし、それさえあるならば後はコアルールとモンスターマニュアルXだけで十分だ。

フォーゴトン・レルム:この冒険は高湿原周辺が非常に適している。高湿原は伝説的な魔法で破壊されたマイエリターのエルフ王国の巨大な墓地であるからだ。ひょっとしたらこの地域で防備を確立しようとした何者かの手によってアケロンから呼び出されたのかもしれない。

D&D一般設定:これらは死体を食べるため、戦場、特に荒野が望ましい。

グレイホーク:古戦場はそうどこにでもあるわけではないが、アイウーズの領域に接するシールドランドは適しているだろう。多くの戦いがそこで起こった。ならばその地域にシージ・ビートルが呼ばれて何ら不思議はない。