Steal This Hook! | 11/21/2006 |
ロバート・ウィーゼ
人間の領域に住んでいるハーフリングはとかく悪い噂を立てられがちである。犯罪は常に彼らの仕業ではないかと疑われるが、常にハーフリングを疑われるので彼らが犯罪者となるのか、また多くの犯罪がハーフリングによって犯されるので彼らが疑われるのだろうか? どちらにせよ、結局のところハーフリングの適性クラスはローグなのである。ハーフリングと犯罪を絡めた今月のフックはこうした悲しむべきステレオタイプを助長することになるだろう。
ブレランドの首都であるロートはシャーンほど大きくも、また「活発」でもないが、にもかかわらずブレランドの政治および貿易の中心である。シャーンに事務所を構える商人たちもこの町を無視することは出来ない。この地に存在する多数の官僚と貴族はそれだけで巨大なビジネスチャンスを約束してくれるのである。そしてそう考えるのは何もまっとうな商人ばかりではない。二三週間前、ある一団がディヴァイア家の宝石店の倉庫に納められていた宝石を洗いざらい盗み出した。次の夜、オリエン氏族の邸宅に押し入った賊は合計にして一万gpを超える品物を再び盗み出した。そして同様のことが現在まで続いている。夜ごと新たな盗難が発生し、数千gpの品物や現金がどこかへ消えてしまうのだ。
そして一昨日の夜、初めて盗賊の手がかりが発見された。冒険者が居酒屋でのお楽しみを終えて下宿に歩いて(あるいは千鳥足で)戻る途中、彼らはハーフリングの一団が袋を運びながら倉庫の裏口から出てくるのを見た。ハーフリングたちは速やかに下水の穴ないしは同様の「大きな人」が入ってこられない場所の中に消えてしまう。
ロートにはいくつかの著名な“盗賊ギルド”も存在しているが、くだんの窃盗は頻度、大胆さ、被害の量のどれをとっても驚くべきものであった。近衛隊と市の警備隊はこの盗賊団を追跡するも、彼らはその努力をあざ笑うかのように盗みを繰り返し続けた。通常盗賊は損害が大きくなりすぎないようにある種の「紳士協定」を守る。盗みがささやかに行われるならば捜査の手が厳しくなることもなく、盗賊はそれを楽しみさえするし、時として買収によって難を逃れたりもするのである。しかしこの盗賊団による盗難は商人と貴族たちを心底怒らせており、彼らはこの問題について何か決定的な対策をとることを要求している。
ランド・ド・メダーニ大尉(コネよりも努力で成り上がった切れ者のハーフエルフ)は、言わば舞台裏で何かが進行中であると感じており、それが何であるか、ハーフリングのギルドを摘発する前に知りたがっている。警備隊には汚職と腐敗が蔓延しており、彼は日当20gpと危険手当を払って冒険者を雇う。加えて冒険者は盗賊団から奪ったものを(最近盗難されたものでなければ)彼に報告せずに自らの戦利品とすることが出来る。
d100ロール:動機
01-35 ランド・ド・メダーニは現在出世の階段をまさに駆け上がっている最中であり、彼は密かに行える限りにおいて最大限の支援を提供する。
36-80 ランドは誰が犯人であるか知っている(しかしはっきりとは言わない)が、その理由までは知らない。彼はその情報を自分のために利用できないかと考えているのだ。ちょっとした余禄を得る事をためらうほどに彼は高潔ではない。
81-00 ランドはハーフリング盗賊団のメンバーないしは協力者であり、わずかな報酬と引き替えに彼らを助けている。しかし彼は盗賊を根絶しようとする圧力を感じており、それが貴族からのものとあっては無視も出来ない。彼としては現状を保ちたいのだが、状況がそれを許さないのだ。
d100ロール:カスタマイズ
01-30 ハーフリングたちの故国は敵に脅かされており、彼らはそれを救うために必死で金(上納金、あるいは補償金や賠償金であろうか)をかき集めていたのである。冒険者たちがそれに気づくなら、彼らはその敵のグループのエージェントと、その異形のしもべと対決することになる。
31-55 ハーフリングは潔白であり、誰かが彼らに犯罪者の汚名をピン留めしているのだ。
56-75 ハーフリングの盗賊団など存在しない。目撃されたハーフリングは常命のものを買収するために資金を調達しようとしているデビル、ないしデーモンの変身した姿である。
76-00 盗品はすでに都市の外、あるいは別のどこかに移動している。調査を要求する人々は盗賊団の逮捕よりもむしろ盗まれたものが戻ってくることを望んでおり、盗品を回収できない解決策は絶対認めようとしない。それらの品々は今頃は商人の荷物の中で世界の果てか、あるいはブラックドラゴンのねぐらにあったりするのかもしれない・・・
キャンペーン適合
ハーフリングのローグはエベロン限定というわけではない。それこそあらゆるキャンペーン世界で使って欲しい。ハーフリングについては「自然の種族」が役に立つし、ロートに関しては「五つ国――ファイヴ・ネイションズ」に詳しい情報がある。
フォーゴトン・レルム:ウォーターディープがベストである。もっともこの都市については色々な情報があるので、それらをチェックして上手く適合するように注意しなくてはならない。
D&D一般設定:どんな都市にでも適応できるが、商業と政治の中心であればなおよい。その二点の要素を加えることによって、より緊張感を増すことも出来るだろう。
D20モダン:現代に生きるハーフリングについては「アーバン・アルカナ」に記述がある。それらを使用したくなければメデューサ、ゴブリン、またはマッドサイエンティストの作り出した小型ロボットでもかまわない。要は誰かが現在至急に大量の現金を必要としていると言うことなのだ。カイロ、ワシントンDC、ブラジリア、ロンドンなど各国の首都が舞台としてふさわしいだろう。
テシア、かつての戦争から回復しつつあるこの国には支配層の人間のみならず、ここを故郷とする多くのハーフリングが存在する。大都市に住んでいるハーフリングもいるが、多くの者は都市の近くの、しかし十分に山に近い自分たちの共同体で、昔ながらの田舎暮らしを楽しんでいる。そして今、サラダッシュとマー森にほど近い、そうした共同体の一つが咎無くして災いを得ることとなった。
ザゼスパー=サラダッシュ間の通商路に沿って、人々が行方不明になる事件が起こり始めた。まず強盗の報告がいくつか入るようになる。犠牲者は概ね一人旅か小集団の旅人だったが、商人のキャラバンも二つほど襲撃を受けた。そのうち一つは襲撃者を撃退したが、もう一方は全滅してしまった。これらの被害者の証言は一致しており、ハーフリングの三人組がモンスターの一団を率いているというものだった。
サラダッシュにほど近いハーフリングの共同体、ライドスキンズ・グロット(Lydeskin's Grotto、ライドスキンの岩屋)と呼ばれるそれに対して、近隣の人々は不安を抱き始めた。被害者の生き残りは揃ってハーフリングの事を証言したからである。人々はこの集落のハーフリング全てがこれらの襲撃に関わっているのではないかと信じ始めており、この事件がいずれこの国からのハーフリング全ての追放につながってしまうのではないかとあらゆるハーフリングは恐れている。窮したライドスキンズ・グロットのハーフリングはこれらの犯罪の後ろにある何かを発見できる傭兵、冒険者、または正義の味方を探し始めた。
d100ロール:動機
01-35 PCは三人のハーフリング(その正体は変身したハグ)の接触を受ける。彼らは犯罪の黒幕であり、自らへの疑いをそらすために活動する。
36-60 あらゆるハーフリングに対する不安が急速にふくれあがっている。PCたちの雇い主は全てのハーフリングを抹殺するように命じる(ハーフリングを全て殺せばその中にきっと犯人もいるはずだ)。
61-90 ハーフリングたちは本当に助けを必要としている。テシアからの追放や虐殺が今にも現実のものとなりそうなのだ。
91-00 犯罪の裏には本当にハーフリングが存在する。用心棒稼業で稼ぐために、三人組のハグと組んで貿易を混乱させているのだ。
d100ロール:カスタマイズ
01-65 その都度異なった姿を用い、変身ハーフリングの三人組は犯罪を重ねている。彼らは特にライドスキンズ・グロットに恨みがあるわけではなく、単に自らの犯罪をハーフリングのせいにしようとしているだけなのだ。彼らは用心棒として数匹のオーガを引き連れている。
66-90 悪漢たちの跡を追うとマー森林にたどり着く。マー森林には二つのエルフの部族と邪悪なゴブリン類、トロール、オーガが生息している。
91-95 マー森の北には衰えたミサルがあり、悪漢たちは追跡者を払いのけるのにこれを利用する(このミサルは有用な魔法の効果を有害な効果に変えてしまう)。
96-00 ハグはグリーンドラゴンやドラウの部族などの勢力のために働いている。特にグリーンドラゴンはグリーンスポーン・レイザーフィーンド(greenspawn razorfiends)やグリーンスポーン・スニーク(greenspawn sneak)を従えているかもしれない。
キャンペーン適合
「自然の種族」に加え、「モンスター・マニュアルW」ではグリーンスポーン・オブ・ティアマットを紹介している。
エベロン:西ブレランド、シャヴァラントの近くに当てはめて欲しい。この地の人々はサイアリの避難民にうんざりしており、サイアリとハーフリングの共同体を関係づけることによって、冒険をより危険なものとすることが出来るだろう。
D&D一般設定:必要な怪物を出すのに十分な森などの住処と、通商ルートや交易の中心地の双方に近い立地にあるハーフリングの村が必要となる。
D20モダン:D20モダンキャンペーンのためにハグを何かに置き換える必要がある。ハグの代わりになるのは変身する怪物であれば何でもよい。一方ハーフリングは、ただ自分たちが自分たちであるためだけに自らに疑いを集め、またそれを晴らすための努力をするような奇妙な連中かもしれない。おそらくアイルランドやウェールズがよく似合うだろうが、東欧や南アフリカでも面白いかもしれない。
ドレイヤー・ミンス(Drayer Minoe)はセルゴントにおいて多くの顔で知られている。残念ながら最も重要であったそれ――大盗賊としての顔は愚かな仲間によって露呈してしまっているが。センビアでもっとも大きな商業都市にふさわしく、この町には多くの盗賊が存在するが、ドレイヤーはその中でも特に重要ないくつかの犯罪に関わっていた。さらに市当局と二つのライバル盗賊団の双方を怒らせており、彼らは皆ドレイヤーの死を望んでいる。問題は、彼ら全員が自分の手でドレイヤーを殺したがっており、しかも死体が二度と見つからないようにしたいと思っていると言うことだ。
ある者は颯爽とした高貴な血の一族として、またある者は物静かな哲学者として、またさらにある者はすばらしい芸人として彼を記憶している。彼はセルゴントで友人となった多くのハーフリングと共通した物を持っている・・・唯一、その6フィートの身長を除いては。彼のハーフリングの友人は魔法で彼の姿を変え、彼らのキャラバンの一人として町から脱出させた。そして魔法が六日後まで解けないならば、彼は故郷から完全に脱出することが出来る。しかし、何者かがセルゴントの勢力全てに(それぞれ情報料を取って)彼の居場所を密告した。つまり、ドレイヤー・ミンスを連れ戻す(もっとも、法の裁きにかけられるとは限らない)ために、セルゴントの多くの勢力が冒険者や傭兵を雇いこのハーフリングのキャラバンを捜し出そうとしているということだ。
問題はたった一つ。セルゴントにこの情報が漏れて以来、ハーフリングのキャラバンが姿を消してしまっていることだ。それも全く痕跡を残さずに。冒険者達はおそらく、それを見つける初めての人間となるだろう。
d100ロール:動機
01-35 ドレイヤーはセルゴント市警備隊を買収したり影響力を及ぼそうとしたりしているあらゆる勢力から独立した存在であるため、警備隊は彼を欲しがっている。警備隊の隊員の懐に流れ込む金の流れの絶妙なバランスが崩れるより先に(つまり特定の勢力にドレイヤーを奪われる前に)彼を見つけるため、フリーのエージェントが大急ぎで探し出される。もっとも警備隊はそのような本音はおくびにも出さず、犯罪者は罰せられねばならないので捕獲すると主張している。冒険者がドレイヤーを警備隊に引き渡すなら、彼は(必要ならでっち上げて)たくさんの容疑、特に海賊であった罪をもって「処刑」され、死体は二度と見つからないように葬られる。
36-70 彼らに保護料を支払っていた貴族からドレイヤーが盗みを働いたため、クリムゾン・ダガー(小さい、しかし有能な盗賊ギルド)は彼の身柄を欲しがっている。場合によっては信用と仕事の両方をいっぺんに失うからだ。くだんの貴族はドレイヤーが盗んだ物を取り戻すことを要求しており、クリムゾン・ダガーはドレイヤーの身柄そのものは必要としないが、盗品を回収するために彼を必要としている。冒険者達が彼らにドレイヤーを引き渡すなら、彼はしばらく後で奴隷商人に売り飛ばされるだろう。
71-00 シャドウ・ナイフ、クリムゾン・ダガーより遙かに巨大なこのギルドは全く異なる理由でドレイヤーの身柄を欲している。彼が持っているはずの貴族と商人に関する情報が欲しいのだ。頭を裂いて情報を取り出した後のことなど、誰が知るだろう? しかしながら、彼らはドレイヤーの亡命とセルゴントにずっと住む手段を提供したいと申し出てくる。もし英雄達がこの口車に乗るならば、ドレイヤーは死霊術師の研究室を守る、心を持たないアンデッドと化すだろう。
d100ロール:カスタマイズ
01-30 ハーフリングのキャラバンはドラゴンカルトが巣くうアーチ森のすぐ近くを通り過ぎる。グリーンスポーン・レイザーフィーンドに率いられたカルトの信者はキャラバンの多くを殺し、同じくらい多くの捕虜を得た(その中にはドレイヤーも含まれている)。冒険者が彼らを救わないならば、囚人達はカルトの司祭によって何らかのおぞましい運命をたどることになるだろう。
31-55 キャラバンは本道を迂回しようとしてポータルをくぐってしまい、アビスの第七十一層スピラック(Spirac)に迷い込んでしまった。ハーフリングとドレイヤーはそれに気づいて困っているが、入り口は一方通行のため誰かの助けなしでは戻ることが出来ない。スピラックはデーモン共の狩り場であり、人間を狩り殺したがっているデーモンには事欠かない。
56-75 キャラバンは独自の理由でドレイヤーを捕らえたがっていた何者かによって仕組まれた罠だった。ひょっとしたらそれは彼の前の恋人の仕業で、復讐、ないしは再び彼の愛を得るためにこのような真似をしたのかもしれない。悪魔のようなDMどもはサキュバスやリリトゥ(魔物の書Tを参照)を恋人に設定するかもしれないが。ハーフリングは偽装のために雇われたサクラであり、馬車は空ないしダミーの荷物を積んでいるだけである。彼らはオーデューリンでそれらを乗り捨てており、ドレイヤーと彼の恋人にして捕獲者もまだそこにいるかもしれない。
76-00 ドレイヤーは殺しの達人でもあり、彼らと友人となって信用を獲得した後のある夜、彼はキャラバンを皆殺しにして死体をアーチ森に埋めた。彼はそのままアーチ森を突っ切ってアークヘンデイルに向かい、そのまま消息を絶った。なんらかの魔法的手段でなければもはや彼を追うことは出来まい。
キャンペーン適合
あなたのキャンペーン世界でそれが起こりうるならば、是非この謎めいたハーフリング・キャラバンの事件を起こして欲しい。前述のように、ハーフリングについては「自然の種族」、いくつかのカスタマイズを用いるなら「魔物の書T」と「モンスターマニュアルW」が役に立つだろう。
エベロン:カルナスの首都、コースから始めるのがうまくいくだろう。キャラバンが消えたとき、彼らはコーヴェアにおけるハーフリングの故国であるタレンタ平原に向かう途中だったのかもしれない。次元界の接続を取り入れたいのなら、戦いの野シャヴァラスか沸き立つ混沌キスーリを隣接させるのがいいだろう。
D&D一般設定:複数の盗賊ギルドを持つ大都市が必要であるが、その後はどこにでも行くことができる。
D20モダン:多くのハーフリングが大きなトラックの列をなし、ラスベガスからニューヨークまでの道中にオハイオかネブラスカのどこかで消えるという状況を想像してみて欲しい。ロード・トリップ(車での長距離旅行)みたい? まぁそんなものだ。
現金以外の報酬上記のフックのように異なったグループが冒険者を雇う可能性がある場合、現金以外の報酬も複数がありうる。センビア人がよく知っているように、現金以外にも貴重な物はあるし、ある種のそれは他の同じ価値を持つ物ほどに高価ではない。 市の警備隊に雇われた場合:都市の警備隊は多くの物を冒険者に提供できる。
クリムゾン・ダガーに雇われた場合:クリムゾンダガーは最低限の物しか提供できないが、良質な物品を制作することが出来る。
シャドウ・ナイフに雇われた場合:シャドウ・ナイフは報酬を支払うくらいなら利用した後に殺したほうがましだと思っている。おそらくPC達に対してもそれを実行するだろうが、仕事を引き受けさせるためには何らかのエサを用意する必要がある。
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