Steal This Hook! 07/18/2005

暴虐なるかなこの目玉

ダグ・ベイヤー


ほれほれ、そこのダンジョンマスターどの。モンスターマニュアルのビホルダーのページを開いてにやにやしているあなた。"Deathknell"ブースターパック(訳注:DDMこと"スカーミッシュ"の追加パックの一つ)で眼球の暴君を引いて狂ったように高笑いしているあなた。「Lord of Madness(異形クリーチャーについて述べた未訳サプリ)」を嬉々としてコピーし、それでPC達を打ち倒・・・おほん、キャンペーンに取り入れるのを待ちきれないあなた。あなた達のことですよ。今日のSteal this Hook!!はまさしくあなたのためのもの。今回は最初から最後まで眼球の暴君・・・そう、みんな大好きビホルダーで一杯だ!

(注:この記事の幾らかは「Lord of Madness」の併用が前提になっています)

 

クラシュラシュタット(Kragxulashtut)の貪欲な眼差し

アルカニクスの浮遊塔は神秘学的文献の専門家達をサポートしている。ウィザードの図書館と魔法史博物館の間のどこかにミリア・ワドラガン(Milia Wadrugan)という名のノームに守られた「ワドラガンの展示場」(Wadrugan Display)があるという。ドラフ(Draph)という名の人間の若者の助手とともに、彼女は富裕かつ影響力のある後援者が彼らの希少な魔法の遺物をこの展示に加えるように熱心に働きかけ、それらの魔法の遺物がそれに相応しい注目を浴びるように努力してきた。しかし彼女が説明なしに幾つかのもっとも古い、そして貴重な展示品を地下倉庫に移動させた事でドラフは疑問を抱き始める。彼女の地下倉庫を調査するように誰かに進言しようかと彼が悩むうち、最初の事件は起きた。

マクネイガスと言う名の魔術師("ワドラガンの展示場"の筆頭学芸員)が「食べ残し」となって見付かったのである。それも、地下倉庫のすぐ側で! ドラフは調査のため、即座にPCに連絡をとった。

実はミリアはクラシュラシュタット(Kragxulashtut)という名のビホルダーによってチャームされていたのである。クラシュラシュタットはワドラガンの展示場から運び込まれた上質で多彩なマジックアイテムを眺めて楽しんでいたのだが、最近地下倉庫の下のねぐらに隠れているのに退屈して、外をうろつくようになったのだ。マクネイガスは運悪くそれに出くわしてしまったのである。PCたちは上手いことこれを解決できるだろうか?

 

ねじれてねじれてビホルダー

堕落した人間とドワーフたちによって率いられるビホルダー崇拝カルトがカルナスの小さな田舎町にやってきて、改宗者を作り始める。当地の行政長官は冒険者たちを雇い、このカルトのリーダーを生死にかかわらず彼の前に連れてくるように依頼する。加えて、背後に存在するビホルダーを対峙するなら追加の報酬が支払われる。しかし、この組織については多くの噂があった。まずPCは実はカルトの後ろにビホルダーがいないのではないかという証拠にぶち当たる。ビホルダーと信じられていた物は、幾つかの幻術呪文の組み合わせに過ぎないかもしれないのだ。しかし、英雄達はその後ビホルダーの隠れ家を発見する(これによってPCたちが偏執狂的なビホルダーが自身が実際には存在しないかのごとく装っているのではないかと疑うように誘導する)。

しかしながらこの「ビホルダーの隠れ家」ですら入念に準備された策略の一部であるかも知れず、それを辿れば最終的にたどり着くのはPCたちの雇い主である行政長官かもしれないのだ。彼はカルトの真の黒幕かもしれないし、逆にビホルダーを殺すことに執念を燃やすアボリッシャー(abolisher、異形ハンター。「Lord of Madness」所収上級クラス)、はたまたライバルの存在に嫉妬を燃やすもう一体のビホルダーですらあるかもしれないのだ。この錯綜しきった情報の中、PC太刀は真実にたどり着けるだろうか? ビホルダーが存在するならばそいつはいったい物語のどこに絡んでくるのか、あるいは登場人物の誰かが眼球の暴君の恐怖を武器として用いているにすぎないのだろうか?

 

トンネルはエルデン・リーチを喰らう

エルデン・リーチでドルイドたちが発狂した。彼らは皆口々にその心を苦しめる恐るべき「音楽」について訴え、一人また一人と狂気に屈していった。英雄の調査によって森の下に数体のビホルダーが作り上げた集合都市があり、それが拡大しつつある事、そしてビホルダーの幼生が繁殖しつつある事が判明する。ビホルダーたちは丸く曲がりくねった地下トンネルをディスンテグレイトの光線によって掘りぬき、森に闇の力をもたらし、自然を蹂躙しようとしているのである。"門を護る者"の強力なドルイドとシフターの部族は地下都市を滅ぼすためのこの戦いに英雄たちが参加する事を認める。これは、間違いなく吟遊詩人に歌われるような伝説的戦いになるだろう!

 

恐るべき荒野にて

英雄達は傷つき疲れきっている――だがその目に宿る強い意志はいまだ失われていない。手がかりを辿り、仕組まれた対決を切り抜け、彼らはついに目的地・・黒き竜ドレッドウェイル(Dreadwail、「恐ろしい風の音」ほどの意)のねぐらを探し当てる。彼らは大長虫の眠る部屋にまで辿り付くが、驚くべき事だ、そこで見つけたのは拳のような眼柄を生やし、装甲のような皮膚にコケをまとわりつかせ、悪臭を放つイメンス・エルダー・オーブ(immense elder orb 、「Lords of Madness」41ページ)。そして、それに喰われているかつてドレッドウェイルだったものであった。やがて英雄たちの周囲を旋回し始めたそれは11の瞳、うち丸く見開かれた10で好奇心旺盛に、細められた中央の一つは瞳に悪を湛えて英雄たちを見つめ、針のような歯がぞろりと生え揃った口からはしゅうしゅうと怒りに満ちた金切り声の咆哮を上げた。

しかし、だ。ちょいと遡って考えてみよう。PC達がこんな状況に陥っているのは一体何が原因だろう。被害を撒き散らすヤング・ブラックドラゴンの首にかかった賞金が目当てだったのか? このビホルダーは縄張りを巡ってヤング・ブラックドラゴンと争い、結果として今ドレッドウェイルを美味しく頂いているのか? PCたちはこの片田舎に歳経りたビホルダーが住み着いているという情報を掴んでいたのか? 状況によっては故意にこのビホルダーをドラゴンの洞窟に誘導し、ドラゴンとぶつけ合わせる事すら出来たのではないか? 或いはこのビホルダーはデルキールの軍隊の幹部の一人で、コーヴェアの厄介な竜族に対する刺客として送り込まれたのかもしれない。

 

ミニフック