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Dungeons & Dragons Basic Game
D&D ベーシックセット
2005/08/12
B.M(びいえむ)

 ベーシック。
 甘美な響きである。
 なんとなく、どんな人間でも受け入れてくれる寛容さを備えている気がする。
 どんなゲーマーでもスルっと入れるような気がする。
 ここから、俺のD&Dライフが始まるような気がする。
 ──そう、俺たちの冒険はここから始まるんだ!!【完】


§このセットの使い方
 D&Dサード(以下D&D)を始めてみようと言う人がぶち当たる壁とはなんだろうか。
 それは「人集め」、「ルールの理解」ではないだろうか。人がいないとゲームができない。当然のことだ。なにしろ、元々のルールブック(『プレイヤーズ・ ハンドブック』)といえば軽い参考書以上の文章量がある。これを読んでゲームをやれ、というのはかなりハードルが高めである【値段も高め】。嘘だ と思うなら試しに友人にコアルール三冊を手渡して『これでキャラ作って。ポイントバイ32ね』と言ってみるが良い。華麗に『また今度ね』と、スルーされる で あろう。
 D&D はルールが多く、特にTRPGなんか触ったこともない人に薦めるにはチトきっつい。そりゃあもう『きっっっつい』と、ミカムラ博士の娘も言っている(言っ ていません)。そんなわけで、いかにして簡単にD&Dを勧めるかというのは実は悩ましい問題であったりする。
 ところが!
 この「D&D ベーシックセット」を使えばそれが簡単に解決できちまう!
 なぜか!?

 必要最小限のものが入っている

 からである。
 おっと。それじゃ、分かりにくいか。
 もっと的確に書こう。

 必要最小限のものしか入っていない

 からである!
 ゲームを始めるのにギリギリ必要なものしか入ってない。
 買って、蓋を開けて、フィギュアを並べてダイスを握ったら……もう、開始できるのだ。余計なことを考えず、ボードゲーム並の簡易さ(いや、難しいボード ゲームに比べれば遙かに容易に)で開始できる。これは大きい。

 さて、内容物をチェックしながら、どれぐらい簡単なものかを説明していこう。



§コンポーネントの紹介
(1)16体の着色済みミニチュア(冒険者4体、モンスター12体)
(2)4枚の両面マップタイル
(3)キャラクターシート4枚
(4)ダイス7個セット
(5)入門ルール(上級ルールブックに綴込み)
(6)最初の冒険の書
(7)上級ルールブック


 さあどうだ!(いや、どうだって言われても……)
 ヒャッハー!!
 【無意味に“汚物は消毒”風】


(1)ミニチュア
 この視覚的効果は大きい。いちいち説明しなくてもファイターのミニチュアを渡して『君の戦士はこんな感じね』と言えば、説明が2秒で終了!
 敵を出す場合も、まずフィギュアを置いて『こんなヤツが出てきました』と言えば、説明が苦手なDMもOK!
 モンスター12体は少ない気もするが、このセットのアドヴェンチャーをやる分には申し分無し。足りなかったらケーキ『D&D ミニチュア』で補充するのもナイス。 使いたいモンスターのミニチュアを引かない可能性大だが──いや、そういう時は『引いたモンスターを出しちゃる!』というレッツ・ポジティヴシンキンで汚 物は消毒だ!(何) プレイヤーはDMがビホルダーを引かないように祈ろう。
 あと、説明に『ミニチュアは プレート・メイル着てますけど、実際には持ってませんよ!』と書いてあったのが笑った。


(2)タイル
 これも便利。マップの臨場感が抜群。『君達はここにいる』と言いながらタイルを置けば、完了!
 そしてタイルの上にキャラクターを置く! 敵を置く!
 あとはダイスを振るだけ!!

 なかなか個性溢れる部屋が揃っている。キノコ部屋が個人的にヒット。D&Dといえばキノコ。キノコといえばD&D。
 怪しいキノコとD&Dは切っても切れない深い関係だとモンテも言っていた(嘘言うな)。


(3)キャラクターシート
 よーするに『プレロールドキャラクター』のこと。事前にキャラクターが作成されているので、なんと、キャラクターを作らなくてもゲームを始められるの だ。早い。とにかく早い。
 ハーフリングの盗賊リダ、ドワーフの僧侶エベルク、エルフの魔術師アラミル、そして我等が人間戦士男レグダー。イラスト付きのフルカラーキャラクター シートなので、やっぱり視覚効果は高い。僧侶の呪文は準備済みだし、アラミルはソーサラーなので“呪文の記憶”をやる必要がない。
 それにしてもアラミルよ……おぬしはやはり《Toughness/追加hp》か……《Toughness/追加hp》なのか……
 ……《Toughness/追加hp》なの さ!!
 (まあ1レベルで死ににくくなるので良いんだけど)


(4)ダイス
 ありがたや。
 みんなで仲良く使えばちゃんとゲームできる。
 無くすなよ!


(5)入門ルール
 綴じ込みの冊子。
 簡単なルール説明がされている。驚く無かれ、一枚の紙でゲームを始めるためのルールが網羅されているのだ。こんなに限られたスペースなのに、ちゃっかり とAttack of opportunity(機会攻撃)について説明されているのがオツだ。
 武器のもちかえがキツいのと、呪文を使うのが大変なことに注意。

 最後の『その他、君の思いつ いたことを何でもやってみよう!』に涙が出そうになった。
 これぞD&D精神。これぞ冒険。
 先人の魂はここに継承されている。
 何でもやってみよう!


(6)最初の冒険の書
 キャリオン・クロウラーはいないけれど、これが3.5版の“最初の冒険”である。
 タイルをどうやって使うか、詳細に説明されている。
 丁寧な解説と図解入りなので、初めてDMをやる人でも問題無い。
 誰かさんの説明の少ないシナリオとは大違いである!(ごめんなさい)

 “準備のしかた 準備その3”の中の
 『プレイヤーたちにそのこと を教えてあげる必要はない』
 がイカす!(笑)
 前後の文章も秀逸(『本当のところ……』とか)。
 DMとしてのスキルをこうやって学ぶわけだ。
 オークのミニチュアを一生懸命用意してたかと思うと、突如としてスケルトンのミニチュアを置くという。
 フェイントマーーーン!!

 巻末の『ダンジョン・マス ターの決めること』はとっても重要。
 DMをより良く、円滑にこなすためのテクニックが書かれている。
 一言一句、噛みしめて読みたい。
 (熟練DMでも、初心に返るために読んでみると良いだろう)。


(7)上級ルールブック
 上級。
 ……そう、これがまさにAdvanced Dungeons and Dragonsなのだ(嘘)。
 ルールとシナリオの二部構成になっている。


■ルール
 まず“僕が考えた強いキャラクター”を作るルールが含まれている。
 レグダー4人で 冒険するのに飽きたら使ってみるといい。
 もちろんポイントバイなんていうチキンな作成法は無しだ!
 なんたって、これはアドヴァンス・ルールなんだからな!

 ちなみに、アドヴァンス・ルールでは
 『イニシアチブが同じ数値の 場合、モンスターが先に行動する』
 ことになっている。
 さすがアドヴァンス!
 その容赦なさに憧れるゥゥ痺れるゥゥ!!
 ジョナサン=トゥイート最高!

 《Cleave/薙ぎ払い》がファイター専用特技になっているのも良い。
 ジョナサンって、いいヤツだよな(知ってるのか)。


■ゲームに潤いを
 そうそう、Attack of opportunity(機会攻撃)の説明が最高にイカしているので全D&Dファン必読。
 これのためにこのセットを買うと言ったプレイヤーもいた(笑)
 まず“移動”のところに

 『自分のターンの始めにモンスターの隣にいた場合、君は1マスしか移動できない』

 とある。
 そして、

 『それ以上移動すると、君は危険な目にあう』

 と続く。
 なんだ危険な目って(笑)
 プレイヤーを脅すな。
 ……で、どの辺が危険かは“逃走”のところに書いてあり、まず

 『これらのルールを破ることもできるが……』

 と念を押す。
 なぜにそんな恫喝調なのか(笑)
 子供泣くぞ。
 ルールを破ったものは……

 『罰を受ける』

 のである(笑)

 罰なのかよ!!

 ──これを読んで以来、RAINBΦWではAttack of opportunity(機会攻撃)のことを『罰』と呼ぶようになっ た。
 「お前……それ以上動くと、罰を受けるよ?」
 「よし、罰来い」
 「くらぇぇ! 俺の罰を!!」
 「ヤバい、罰死に(ばつじに)」
 とか。

 重ねて言うがジョナサン最高(笑)。
 この『上級ルール』には、こんな罰テイストが満載である。
 そう、ルールブックって、読んで楽しくなきゃいけない。
 『罰を受ける』に比べて『敵から機会攻撃を誘発する』の、なんと味気ないことよ!
 楽しくゲームやろうぜ!
 俺には、ジョナサンがそう言っているように思えてならない。
 (ホントかよ)


■シナリオ
 さらなる冒険。
 タイルを全て使ってのアドヴェンチャーはD&Dの基本を押さえたドラマチックな作り。
 醍醐味満載だ。
 もちろん随所に罰テイストが 溢れているので、プレイしながら満喫して欲しい。


§まとめ
 というわけで、手っ取り早くゲームを始めるのに最適なセット。
 間違いなく、これを買えばD&Dが始められる。
 すでにD&Dを始めている人で、知り合いに薦めたい場合には最適ではないだろうか。

 これからD&Dを始めようという人の場合、選択が2つになる。

(A)プレイヤーズ・ハンドブックを買う
(B)ベーシックセットを買う

 かかる費用は同じようなものだ。
 (A)で行けるに越したことは無い。しかし、その場合さらに二冊(ダンジョン・マスターズ・ガイドとモンスター・マニュアル)を入手しないと厳しいし、 シナリオも考えなくてはいけない。シナリオを買うなら更に投資が必要だ。ダイスとミニチュアもできれば欲しい。

 ……もう、(B)の選択の利点がお分かりだろう?
 ベーシックセットさえ買えば、そこでゲームを始めるための準備が完結しているのである。ぶっちゃけ、やたらに多いスキルやフィート、目もくらむような呪 文リストというのは、“初めて”のプレイヤーにとってはお世辞にも優しいとは言えない。キャラクターメイキングだってめんどくさい。エンターテイメント業 界一痺れる優しいDMが言うのだから間違いない。それならば、プレイし易いように整えられたセットの方がやり易いに決まっている。このセットで楽しみ、興 味を持ってから次のステップに進めば良いのだ。

 実際にプレイしてみた結果、熟練D&Dプレイヤーからは

「余計なルールがなくて、むしろやり易い」
「実はルールってこれぐらいで良いんじゃないの?」
「罰」

 といった声を聞くことができた。
 入門に、勧誘に、使いこなして欲しい。
 あなたに数多くの罰が降りかからんことを!(ぉぃ




[EOF]