Heavy Gunner

   -------重火器手、重砲手 (オンライン版『英辞郎』英和辞典より)------

 

           「よいこのみんなー。パワープレイの時間が、はっじまっるよー」

                      ----ママと遊ぼうピンポンパンより(一部改変)---- 

 

 

 

 射撃戦を征するもの。それは火力だ。

 百発百中の腕があっても相手の装甲を貫けなければ意味がない。高い機動性で無敵の強さを誇ったゼロ戦が大戦中期には全く通用しなくなったのも、米軍新型機の厚い装甲の前に有効な打撃を与えるのが難しくなったことが大きな原因であることは間違いない。

 

 では強力な攻撃力を得るためには?

 

 高いストレングス?       (さほど)意味がない。

 FeatやSkill?           これじゃ無理だ。

 スニーク?                  効く相手が限られる。

 レンジャーになる?       ありえない。

 

 そう、弓矢のダメージをあげる方法は意外なほど少ないのだ。

 特に低レベルではMagic Weaponなどの呪文でちまちまダメージを追加するか、こそこそ相手の背後に回ってスニーク攻撃をするしか方法がない。

 ただでさえ弓矢はフランキングなどのボーナスを受けることができず、smiteやRageの恩恵を受けることもできないというのに、何という仕打ちだろう。最後の希望の星、スニーク攻撃でさえ、DMがエンカウントにアンデッドを選択した瞬間に全く効力を失うのだ。

 かつて最強伝説をうち立てたアーチャーは、いまや落日の際に立っていると言っても過言ではない。

 

 いや、まて。

 本当にそうか?

 弓で大ダメージを与えることは不可能なのか?

 

 

この項では弓で与えられるダメージの強化を追求してみたい。

 

 

 

 さて、ダメージ強化で手っ取り早く思いつくのは魔道呪文によるエンチャントの類だろう。

PHBだけでも呪文の解説ページは100ページも有るんだ。矢に炎を纏わせたり、矢が20本に増えたり、矢が命中した相手が即死するようなエンチャント呪文があるに決まってるさ」

 もし君がそう思っているなら、太平洋の向こうにあるWotC本社に向かって石を投げてやりたまえ。

 矢を強化したり、追加ダメージを与えられるような呪文は、実際にはごくわずかしか存在しない。そして、あたかもいやがらせででもあるかのように例外なく弱い。

 例えば3lv魔道呪文であるFlame Arrowを見てみよう。

Arcane3lv呪文といえばFire BallLightning Boltなどといった強力呪文が綺羅星のごとく集まったレベルだ。さぞかし強力な追加効果やダメージがあるに違いない。

 で、効果は?

Flame arrow呪文は術者のレベル本分の矢やボルトに炎を纏わせることができる。炎は矢が命中した対象に、術者のレベルの1/2の追加ダメージを与える(ST不可)』

 

 この呪文作った人は放課後職員室に来なさい。先生大切なお話があります。つうか死ね

 

 3レベル呪文でこのていたらくであるから、あとはおして知るべし。

 実際、「呪文で弓の攻撃力を上げているひまがあるならMagic Missileでも撃ってたほうがマシ」というのが呪文による弓矢の強化の実体でしかないのだ。

 強いて言えばGreater Magic Weaponの弓と矢への二重掛けが有効だが、それとて6lvウィザードなら3lv呪文を2発費やして+4の修正が与えられるのみである。こんな呪文の使い方をしていたら敵を倒す前に仲間の前線要員に殴り倒されるのは間違いない。

 

 つまり、魔道呪文で弓矢を強化しようとしても無意味である、ということだ。

 たしかに、True Strikeなど、命中率を劇的に上げる呪文があるから、全く不要と言うことではない。

 しかし、そのためにウィザードとして長い修行を積むのは、アーチャーとして全く無意味なのだ。

 

 では他に何がある?

 大きな追加ダメージを、矢に付加する方法はあるのだろうか?

 ある。それは魔法だ

 ああ、なんと大いなる矛盾であろうか。

 しかし、魔法を有効に使えば、十分な追加ダメージが得られる。そう、Arcane Archer(DMG)の特殊能力Imbue Arrowさえ有れば。

 Imbue ArrowArcane Archer2lv時に獲得できる特殊能力で、矢を打ち込んだ箇所を呪文の焦点にすることができる。

 つまり、君が放った矢にファイヤーボールをくっつけておいて「命中したところを中心に大爆発」の矢を作ったりする事ができるということだ。これは、単純に考えれば魔法のダメージに直接弓矢のダメージを載せることを意味する(よしんば矢が外れたって矢が触ったところで呪文が発動するのだ。よっぽど的はずれなところ----君の目の前で戦ってるファイターの背中とか----に当たったのでない限り大した問題にはならない(ファイターが死ぬのはいつものことだから大した問題ではないが、ファイターの背中からわき上がる爆風に巻き込まれて君が怪我をするのはまことに深刻な問題であるといわざるを得ない)。

 

 

 

 「なーんだ。結局呪文がメインなのか。だったらアーチャーの修行する時間でろうそくでも造ってたほうが強いじゃん」だって?

 ああ、全くその通りだ。

 ウィザードとしての能力をメインにするならウィザードとしてだけ修行を積めばいいのであって、わざわざFeatやレベルを費やしてまで弓を使う必要は全くない。

 

 

 

 なんだ、じゃあやっぱりダメなんじゃないか。

 いよいよ八方ふさがりか?

 

 

 いや、そんなことはない。 

 僕たちには、ニヒルなアイツがいるじゃないか。

 そうさ。Ghost Walker(S&F)が、アーチャー最後の希望となるんだ。

 

 Ghost Walkerには特殊能力として、レベル毎+1のPainful reckoning能力が備わっている。これは『エンカウンターの最中、現HPの1/2以上を失ったとき、レベルと同値のAC, Attack, ダメージへのボーナスを得る』という能力だが、いかんせんいまいち使い勝手が悪い能力だった。そりゃそうだ。HPが1/2になった状態で敵と肉弾戦なんて、いくら+修正もらってたって割に合わないことこの上ない。

 かといって、飛び道具を使っていると、今度はHPを1/2にするのが難しい。

Master SamuraiとマルチクラスしてハラキリでHPを調整?

いや、意地悪なDMどものことだ(意地悪じゃないDMもいるって?それは猫をかぶっているか、あるいは君を懐柔しておいて最後に大どんでん返しを狙っているに違いない。だまされるな!)。「あー、ちょっと切りすぎたね」とか何とか言って死亡したことにされるに違いない。

 

 そこで、本稿ではパラディンとのマルチクラスをオススメしたい。

 パラディンにはご存じの通り、多くの特殊能力がある。その戦闘用能力はmeleeに特化されていることもご周知の通り(なるほど、アーチャーにはSmite evilなど気休めにもなるまい)。

 それでもなおパラディンを入れたい理由はなにか?

 理由は一つ。Divine Sacrifice(Par1:DofF所載)呪文の存在だ。

 Divine Sacrifice呪文は膨大な呪文数を誇るD&Dの中でもちょっと毛色の変わった呪文といえるだろう。この呪文は、自分のHPを支払って効果を「買う」。術者は自分にこの呪文をかけたラウンドから毎ラウンド(R/lv間有効)、free actionで自分のHPを消費でき(最大10ポイント)、その2ポイントごとに次に命中した攻撃(すばらしい!)に追加の1d6ダメージ(=最大5d6)を与えるのである。例えば8lvのパラディンなら(パラディンは術者レベルを1/2レベルと見なすから)呪文は4R有効である。この間、毎ラウンド10ポイントずつHPを消費し続け、毎ラウンド5d6ダメージを付加し続けられるのだ。しかも「追加ダメージ」なのでSTもなにもなし。EversionもMettleも関係ない。最高!

 

 

 賢明なる諸君はもうおわかりだろう。パラディンとゴーストウォーカーのマルチクラスの君が為すべき事を。

 

 そう、敵を発見したらDivine Sacrificeで追加ダメージを付与 → Painful reckoning発動 → 攻撃だ!

 このコンボの利点は

1)Divine SacrificeのHP減少をうけても前線にでなくて済む

2)Painful reckoningが戦闘の最初から有効に使える(Painful reckoningの有効時間はエンカウント終了(か、HP回復時)まで。たっぷりと一方的に優勢な状態が楽しめる事うけあいだ)

 の2点にある。

 

 高貴にして強壮なるパラディンたる君が前線にでて命を危険にさらす必要などない。

 そんな仕事は意志も感情もないアンデッドやサモンモンスター、あるいは食料さえ与えておけば文句を言わないファイターどもにでも任せておけばいいのだ。

 君はただ、呪文と持てる特殊能力の全てを使って敵のリーダーを倒せばそれでいい。

 高貴なものには高貴なものなりの責任があるのだということを雑兵どもに良く教育しておくことは重要である。

 

 このコンボの実行に必要なのは

1)パラディン1レベル呪文の投射能力=パラディン4レベル(Wisが低ければ6レベル)

2)なるべくたくさんのGhost Walkerレベル(高いほどPainful reckoningが高くなる=強い)

3)「ルールこそは絶対であり、ロールプレイなんてウマにでも食わせておけ」といい放てる強い精神力

 の3つである。この項を見ているみんなは当然3)は充たしているよね?(BMの言葉を借りるなら、『君はCoolか?それともFool?』ってとこだ)

 

 じゃあさっそくキャラクターづくりに移ろう。

 

 パラディンをメインに考え、かつ将来の転職を見据えるなら、種族はやはり人間がいいだろう。はじめにFeatが一つおまけに付いてくるのはやはり大きい。ただでさえGhost Walkerになるためにいらんfeatを3つも(そう、3つも、だ!)取らなければならないのだから。

 余裕があるならmonkTemplerを取りたい(EversionとMettleのため:HPが1/2になるんだから、対魔法防御は重要だ)ところだが、ここでは措いておく(早めにDeepwood Sniperになるつもりなら話は別だ。モンク(ローグ、レンジャーなどでも可)を1レベルでも混ぜておかないと必要条件であるHideなどのスキルが足りなくなる)。 *ジャック氏のアドバイスに基づき加筆

また、Painful reckoningが「追加ダメージである」こと、つまりクリティカルでダメージ増加が見込めることを考えれば、Deepwood Sniperを1lv、できれば2lvまで混ぜておきたい。

同時に、一発が大きいので、Rapid Shotが欲しいところ。

などといった条件を加味していくと、以下のようなキャラクターになるのではないだろうか。

 

 

<低レベル域サンプル:9lv

Fgt2, Par4, GW3

Divine Sacrifice使用Painful reckoning発動後、Point blank とRapid shotを使用

攻撃 +13/+13/+8
 (base+7, dex +3, point blank +1, rapid shot-2, weapon focus +1, Painful reckoning +3)  

ダメージ 1d8+7 [+初弾 Divine〜ダメージ]
 
mighty composite longbow +3, Painful reckoning +3, point blank +1

 
 


<ヘビーガンナーの人生設計>

 

ファイター:2lv

↓ ・Point blank shot, Rapid shot, Endurance(屈辱),

             Iron Will(屈辱)を修得

           ↓ ・BAB+2

パラディン:4lv

↓ ・BAB+4

↓ ・1レベル呪文投射能力

↓ ・その他特殊能力

<高レベル域サンプル:1lv

 (Fgt2, Pal4, GW10, DwS1)

Divine Sacrifice使用Painful reckoning発動後、Point blank とRapid shotを使用

攻撃 +30/+30/+25/+20/+15
 (base+17, dex +3, point blank +1, weapon focus +1, raid shot-2, Painful reckoning +10)  

ダメージ 1d8+17(19-20;×3)

               [+ 初弾 Divine〜ダメージ]

 mighty composite longbow(+3),
Painful reckoning +10, point blank +1,
Divine Might +3

 
           ↓ ・3,6lvで Toughness(屈辱)Weapon Focus feat習得

Ghost Walker: 10lv

             ・BAB+10

             ・Painful reckoning 10、特殊能力いくつか

             ・CCスキルとしてHide, Move Silently, Spotを4ランク

  ・Far Shotを習得してDeepwood Sniper1lvとる。

     なれるときで可。(BAB+1, Crit19-20に)。

             ・Divine Might feat修得(ほえほえ氏のアイデアに基づき加筆)

 

 

 <総評>

 ごめん、低レベルのヘビーガンナー、ムリ。

 ヘビーガンナーは低レベルに向きません。これならシャープシューターのがずっと

マシ。ゴーストウォーカーは3lv程度ならあってもしょうがないので、いっそパラディ

ン→テンプラーの方が無難。あるいはウィザード(トランスミューター・スペシャリスト)

9lvでGreater magic weapon重ねがけの方が強いかも。

 しかし、高レベルになれば当初の目的である「飛び道具で大ダメージ」は充分果た

せる。サンプルキャラの場合、+15〜+30という高命中率で5射が可能であり、その

ダメージは各1d8+17。全てあたれば最低でも90ダメージである(平均107.5)。

このダメージはスニークと違って30ft以上離れていても問題なく機能するし、ここに

さらにDivine Sacrificeのダメージがのることを考えると、ちょっとした重戦士のチャ

ージくらいのダメージは出ているのではないだろうか(そしてチャージと違う点は、離

れて攻撃できるガンナーの方が明らかに安全であるという点である)。本当はこれに

HasteMany Shotコンボを付け加えたいところだが、いかんせんFeat数が足りない。

 ちなみに彼の矢がクリティカルすれば、その矢は一本につき3d8+51ダメージ

(平均61.5)を与えることも忘れずに(そしてその機会は理論上2Rに一回訪れる!)。

 

 

 蛇足ながら、Divine Sacrificeが何点になるか概算してみよう。

 

[低レベルサンプル]HP平均=10+(5.5x9)+(3x9(CON))=81

 よって42ポイントまで使用可 → 追加ダメージ計 21d6

[高レベルサンプル]HP平均=10+(5.5x16)+4.5+(3x17(CON))=153.5

 よって78ポイントまで使用可 → 追加ダメージ計 39d6

 

 1R間に与えられるダメージではない(毎R 5d6まで)が、弓そのもののダメージと合

わせれば軽く100ポイント超のダメージが叩き出せるだろう。

 なお、パラディンレベルが4の場合、Divine Sacrificeは2Rしか保たないことに注意。

まあ、Divine Sacrificeワンドを買ってしまえばいいのだが、Painful reckoningへの移行

をスムーズにするため、つまりはDivine Sacrificeの持続時間を延長するためにパラディ

ンレベルを上げるのもいいだろう。パラディンは5lvでスペシャルマウントがもらえるし、

6lvになればもう1つ1レベル呪文を投射できるようになることだし。最初のファイターを

1lvにするかあるいは止めてしまうことにすればいいだろうが、この場合はもらえる

featが2つ減るため、15lvまでDeepwood Sniperになることができなくなるし、Rapid shot

を9lvまでとれなくなる。それにさえ目をつぶれるなら、むしろパラディンで6lvのほうが明

らかに強力である。また、単にファイター2・パラディン6として、ゴーストウォーカーを減ら

し気味にするか、Deepwood Sniperを諦める方が実際には有利だろう(「低レベル」で

は完全にただのファイターになるが(笑))し、パラディンを8lvまで上げてDivine Sacrifice
extendして使うことでより効率よくHPを減少できる、なんて方法もある
Easy氏案)

 

 

 

 

D20掲示板にて「Divine Sacrificeはタメ撃ち不可」とのご指摘を頂いたので、

当該文面を修正しました。 031114