010415
文責:石川
〜CDS:PE転職ガイド その7〜
Forsaker ----魔法を捨てろ!そして壊せ!---
魔法は邪悪なり。魔法は誘惑なり。魔法は人を邪悪に導くものなり。魔法は堕落なり。(本文より)
ハンドブックシリーズ最後の一冊として発売されたMasters of the Wild(以下MoW)は、購入者の評価が大きく分かれる一冊であるように思われる。この本を購入する最大の理由であろう、この本に掲載されたプレステージクラスが、非常に好みの分かれるものだからだ。いや、「強いんだけど使いにくいんだよね」ってクラスと「おもしろいんだけど使えないんだよなー」ってクラスが大半を占めてるといった方が正しいかもしれないが。
そんなMoW所載のプレステージクラスの一つが今回紹介するForsakerだ。こいつはMoWを象徴するようなクラスといえるだろう----「強いんだけど使いにくい」「おもしろいんだけど使えない」という意味において、だが。
Forsakerは、かなり異例のクラスといえる。「職業」というよりは「生き様」とでもいうような制限と特徴を持ち、与えられる特殊能力もその「生き様」を支えるべくして付加されたものだからだ。そうした意味合いではHealerやPilateなども「生き様」を表す職業といえるだろうが、Forsakerはその点が図抜けている。
魔法を拒否し、魔法を否定し、魔法を破壊する。それがForsaker--『魔道を見捨てし者』の全てだ。Forsakerはこの目的のために、非常に強力な能力を与えられている。まず、毎レベル、望む能力値が1ポイント成長する(!)。さらに、スペルレジスト能力(レベルアップに応じて成長:最大20)、Fast Healing(1Rに1ポイント(のち3ポイントまで強化)ずつHP回復:最大50ポイント)、ダメージリダクション(最大11/+5)を得ることが出来る。これらだけでもこれまでないほどの強力さである。しかし、Forsakerはこれに加えて3lvにTough DefenseとNatural weapon能力を得る。前者はConボーナスをそのままACボーナスとする能力であり、後者は自分の有する武器をナチュラルウェポンとみなす能力である。地味ながら、魔法を捨て、マジックアイテムに頼らないForsakerにとって、後者の能力は特に重要だ。「武器をナチュラルウェポンとみなす」ということは、自分が持つのと同値までのダメージリダクションを無視できるということだからだ。銀や魔法の武器でなければ傷つくことのない狼男をありきたりの棍棒で殴り倒し、素手で引き裂くことすらForsakerには可能なのである。さらに6lv時にはSlippery Mind(mind系呪文のSTに失敗しても、次Rもう一回STを行える能力)を得るが、もはやこんな能力は蛇足に過ぎない。そう言ってしまえるだけの強力さがForsakerにはある。
一方で、強力な長所を持つだけに、課せられたペナルティも大きい。
例えば、前述したダメージリダクション能力はただで与えられるものではない。ダメージリダクション1に付き100gp以上の価値のあるマジックアイテムを破壊するという、いわば維持コストを24時間毎に支払わなければ、その能力を発揮できないのだ。もっとも、この欠点はそう大きなものではない。パーティの友人に、「いざというとき壊す用マジックアイテム」(できれば簡単に壊せるポーションや小物がいいだろう)を持っててもらって、強力な相手が現れたときに壊せばいいだけの話だからだ。最大のリダクション値である11/+5の時でさえ500gpのものを破壊すればいいのだから充分元が取れる、むしろポーションやスクロールで得られない能力であることを考えれば安いくらいのコストだ。
なにより大きいのは、「一切の魔法を受け入れない」という制約である。あらゆる魔法(回復呪文も含む)はもちろん、マジックアイテム(Forsakerになる際、すべてを破棄または売却することを要求される)やspell like abilityも自発的に使用できず、もし自発的に使用すれば1年と1日の間、Forsakerとしての全ての能力を失うのである。また、仮にmind系の呪文でコントロールされて使ったとしても1週間は能力を失うし、回復呪文などの友好的な呪文に対してもスペルレジストやSTを適用し、普通なら自動的に効果を発揮するdisplacementやneutralize
poisonなどをも無効化するというから徹底している。
回復呪文すら拒絶する。これはプレイヤーにとっては恐怖だろう。高レベルのアドベンチャーになるほど、敵の攻撃はえげつないモノとなっていく。自慢のスペルレジストやダメージリダクションも毒や細菌、モンスターの特殊能力には関係ないし、STに成功してすら能力値にダメージを与えるようなものだって珍しくないのだ。そんな敵のさなかに回復呪文なしで飛び込んでいくのはガソリンをかぶって焚き火にあたるようなものである。
しかし、Forsakerになるための制約は指定されたFeatを3つ取ることと、『魔法攻撃によって死にかけること』でしかない。指定FeatがIron willなどの「指定されでもしなけりゃ取らない。てゆうか取るはずがない」Featであるということを除けば----つまり、最初からForsakerになるつもりでキャラクターを作成するなら----条件がFeat3つしかないというのは非常に簡単な条件である。人間生まれなら3レベルで達成できるのだから。もう一つの条件----魔法攻撃で瀕死の目に遭う----は普通に冒険していれば簡単に満たせる(そんな目にあったことがないって?そんな幸せな君はForsakerになる必要はない。基本クラスの組み合わせでがまんしたまえ)。よって、他の職業との組み合わせによって、弱点のいくつかを補うことは十分可能であろう。
まず、ローグを2lv、できれば3lv取るというのが考えられる。HPは高いものの、回復能力に劣るForsakerにとって、ref ST呪文のダメージが確実に減少するEvasion能力は重要だ。マジックアイテムによるダメージ増大をはかれないから、スニークの存在もうれしい。また、Uncanny Dodge能力もまた、奇襲によるスニーク攻撃を受けずに済むなどの効果がある。ローグとして成長する意味はもう一つ、Ref STが上昇するという点にある(実はrefが上昇する職業は基本職ではローグとバードしかないのだ)。
レイオンハンドやリムーブディジーズ、神聖呪文が使えなくなるのは悔しいが、ディバインヘルス(病気にかからない)やディバイングレース(STにCHRボーナス追加)を持つパラディンもよい選択だろう。ナチュラルアビリティなのでスマイトイビルやアンデッドターンなども使用できる。よって、6lvまでパラディン、7lv目でテンプラー(DoF)を取って、8lv以降はForsakerという組み合わせもいいだろう。
また、基礎能力が高いモンクもいいかも知れない。良好なSTと各種防御能力(ACボーナスやImproved evasionなど)はForsakerの欠点を埋めてくれる。武器や鎧の制限が大きいものの、魔法の鎧が着れないForsakerにとってはそう大きなペナルティにはならず、全ての能力値が高くないとつらいモンクの能力値強化が図れるという意味ではよいかも知れない。欠点としてはForsakerのために必要な能力(Diamond body)が11lvまで得られないこと、そして(これはパラディンも同様だが)以降モンクとして成長できなくなるということだろう。レベルの上昇がダメージの上昇と直結しているモンクにとって、成長できないのはやはりつらい。
呪文能力を捨てることになるが、Dragon disciple(T&B)というのも手かも知れない。必要条件のKnowledge(Arcana)8ランクがややつらいが、あとはソーサラーが1lvでもあればよい。彼らはナチュラルアーマーと能力値上昇、そして爪と牙とブレスウェポンを得ることができる。
ちなみにサイオニクスはspell-like abilityなので使用できない。ちぇっ。
こうして、防御面での欠陥は経験値の支払いによって何とか埋めようもある。
しかし、ファンタジーには付き物の魔道器をも一切否定する、という欠点はやはり痛い。
敵の本拠地に乗り込むためには魔法円を通らなければならない、という場面に出くわしたら?
別のプレーンに行かなければ目的が果たせないとしたら?
深海に沈む王宮に、求める宝があるとしたら?
いずれの場合も(高レベルキャラであれば)なんの問題もない障害である。しかし、ForsakerにはForsakerであるということそのものが絶対の障害となってしまう。死やダメージに依らずともキャンペーンに参加できなくなる危険は、やはりプレイヤーをしてForsakerになることを躊躇わせる要因となろう。もっとも、こういうキャラがPCに含まれた場合、一番困るのはDMなのだが。
結論。
Forsaker、無理。
どうしても使いたい場合はマスターを説得しまくり、魔道器を使わないとクリアできない障害を出さないでもらうしかない。
マジックリッチなFRなどでは日常生活も難しいかも知れないが、逆に魔法の貧弱な世界(実世界キャンペーンとかクリン(ドラゴンランス)とか)ならいける(かも)。まあ、つらいのには結局かわりがないけれども。
え?こんな結論なら、わざわざレビューするな?
使えないクラスを紹介してもしょうがないだろうって?
君は勘違いしているよ。
レビューはプレイヤーだけのためのものではない。
そう、今回は、マスターのためのレビューなのだ。
想像してみたまえ。
Forsakerが群れをなしてPCの一団を襲う姿を。
メイジの呪文はSRに阻まれ、前衛の刃もダメージリダクションが全てはねのける。
能力値の高い彼らはなべて強力な攻撃力を有し、しかも多少の傷は自力で回復してしまう。
NPC(てゆうか敵)であるから魔道器使用不可によるゲーム終了におびえる必要もなく、また他職業との組み合わせによる特殊能力はPCを恐怖のどん底に陥れるに違いない。
立て、全国のDM達よ!
そして使え!地獄の死者Forsakerを!
その名の通り、プレイヤー達をforsakeさせるのだ!
forsake(他動) 見捨てる、(習慣を)やめる、あきらめる (デイリーコンサイス英和辞典より) |