2001/10/23
by 石川
メイジを生業として選んだ者なら、その最大にして究極の目的はもちろん魔道----異界の理を極めることだろう。その唯一にして崇高なる目的のために、古来よりウィザード達はその人生の大半を数万巻にも及ぶ魔道書やスクロールとの格闘に費やしてきたのである。
しかし、魔道士が魔術を極める上で、本当に必要なこととは何だろうか?
魔法知識の理解? ノー。
魔道実験の実践? ノーだ。
古代魔道の研鑽? それもノー。
ろうそくの作り方。 そう、必要なのはそれだけだ。
トーム・アンド・ブラッド(以下T&B)所載のウィザード向けプレステージクラスであるキャンドルキャスターは、市井のろうそく職人たちが最強のスペルキャスターとなりうる夢を与えるベーブ=ルースやアル=カポネのような存在である。下賤の出であっても力と権力を手にすることが可能であることを実証する、偉大にして崇高なる象徴たるかの職に就くために必要な条件は以下の通り。
・ 製作(ろうそく造り) 6ランク
・ Great Fortitude Feat
・ 3レベル魔道呪文の投射能力
・ 100回分以上のtindertwigsを所持していること
そう、もし君がろうそく職人だったら、5レベルのウィザードになるまで邪悪なクリーチャー達への暴行・傷害・殺害や、その巣穴(ええと、英語ではダンジョンとかって言うんだっけ?辞書で引いてみたら「地下牢」って意味らしい。まあ、小汚いクリーチャーどもにはお似合いの場所さ)への不法侵入、器物損壊、場合によっては強盗致傷を繰り返せばいいってことだ。君がマジックミサイルとスリープとファイヤーボールしか撃たないつもりならソーサラー6レベルまで待ってもいいし、女の子の気を魅きながら魔道を極めたいっていうなら7レベルのバードになるまでがんばったってかまわない。
でもまあ、有限なる時間と、そして命より大切な経験値(おお、なんと甘美なる響き!)を浪費するのが嫌いなら、迷わずウィザードとしてろうそく造りの基礎を学ぶことをお薦めするよ。女の子にもてたいなら、チャーム呪文を練習するほうが早そうだし。スリープ呪文ならもっと話が早いかな?
Great Fortitudeフィートだって、5レベルになる間に少なくとも3つのfeatが得られるウィザードなら簡単に習得できる。もっとも僕が冒険者になるならこんな(中略)なフィートは必要になる直前まで取らないけどね。他にもImproved
InitiativeとかCombat castingとか大事なフィートはいっぱいあるんだから。ところでなぜろうそくを作るのにGreat
Fortitudeが必要なのだろうか?ある知識人はかのfeatが体力的な耐性を示すこと、そして一部の人々の間でのろうそくの特殊な使用方法(荒縄とか鞭とかを共に使用するようだ。何かの魔法儀式だろうか?)について説明してくれたが、両者の間にいかな相関があるのかは未だ不明のままである。
え?ろうそく職人でない僕はどうしたらいいの、だって?馬鹿言っちゃいけないよ。誇り高き魔法使いがわざわざ下賤のものにろうそく造りを学んだり、100本ものtinderwigsを持ってたりするわけないじゃないか(それじゃまったくアホウ使いってもんだ、そうだろ?)。そうさ、キャンドルキャスターはろうそく職人の子に生まれた者にのみ許された、輝かしき特権なのだ!・・・・・・
まあ、たぶんね。
さて、必要な条件がそろい、晴れてキャンドルキャスターになれた君には栄光の日々が待っている。呪文ろうそく作成能力の獲得である。
呪文ろうそくとは、キャンドルキャスターの特殊能力の一つであるScribe
Candle能力によって製作される特殊なろうそくである。魔力を有したこのろうそくは、普通のろうそくと同じく5フィート四方を明るく照らすが、術者が望まない限りその火が消えることはない。そして(これが重要なのだが)このろうそくにはスクロール同様の手間とコストをかけた上で、スクロールと同様、呪文を封じ込めることが可能なのだ。
「じゃあスクロールでいいじゃん」だって?確かに1レベルの時点ではそのとおり。ろうそくに封じ込めた呪文を解放するにはスクロールから呪文を喚び覚ますための作業(ろうそく制作者のレベル+1をDCとしたキャスターレベルチェックと呪文の詠唱)が必要だし、使用前にstandard actionで火を付けなくちゃいけない。その時近くの敵に邪魔されればconcentrationチェックが必要になるし、AoOで邪魔されないためにdefensiveに火を付けなきゃいけないときだってある。全てはスクロールと同じってことで、むしろ火を付けなきゃいけない分、そして呪文が発動するのが火を付けた次のラウンドの行動の最初の瞬間まで発動しない分だけ扱いづらいとさえいえる。
しかし、呪文ろうそくの、ひいてはキャンドルキャスターの真価が発揮されるのは2レベル以降になってからである。その真価の意味、そしてその強烈さを知った君は、必ずや転生した暁にはろうそく職人の家に生まれますようにと祈らずにはいられなくなるだろう。
その真価とは何か。高レベルキャンドルキャスターにのみ製作が許される、強化魔法ろうそくの存在である。
キャンドルキャスターはレベルが上昇するにつれ、meta-magic featの効果を持った魔法ろうそくを作成できるようになる。その効果はextend(2LV;効果時間の延長)に始まり、enlarge(4LV;範囲の拡大)、empower(6LV;効果1.5倍)、heighten(8LV;高レベル呪文として扱う)、そしてMaximize(10LV;効果を最大に(!))に至る。そして当然のことながら、これらろうそくはアイテムとして持ち運びが可能であり、これまた当然のことながらキャンドルキャスターはろうそくの所持数とは何の関係もなく(そして普通のウィザード同様に)呪文を投射することが可能なのである。
また、ポーションのような作用を持つunfetterd(3LV)、2種の呪文を自動的に連続投射するDipped(5LV)、2種の呪文を同時に投射可能(!)なStriped(9LV)などの各ろうそくも製作可能である上、7レベルに至れば呪文
ろうそくが点火と同時に呪文を解放するようになるQuick light能力まで修得する。
そしてこれらの強化魔法ろうそくを作るために、わざわざfeatを修得する必要はない。そう、わずかな経験値と材料代を支払うだけで、彼らはめったに使わない(けれども必要に迫られたときには重要な)呪文をすべてろうそくに変えて持ち運び、Maximizeされたファイヤーボールを1Rに2発連射し、さらには万人が使用可能なUnfetteredのろうそくでもってパーティのファイターやレンジャー(そう、平常時には荷物を運び、雑用をこなす、また戦闘時には時に君の盾となり、しばしば呪文に巻き込まれて死ぬのが仕事の者たちだ)が「長持ち」するのを助けることすら可能なのだ。もちろん最後の一個はおまけに過ぎないが(むしろ強化された呪文は彼らが呪文に巻き込まれて死ぬのを確実にするかも知れない。まあそれもやむを得まい。彼らは不幸にしてろうそく職人の家に生まれなかったのだから)、君がいかなる生命にも生きる権利があると
考える博愛主義者であるならば、その目的のためにクレリックレベルを上げておいてもいいだろう(恐ろしいことに、呪文ろうそくに封じ込めることのできる呪文は魔道呪文に限られていない。いつWotCお得意のエラッタだかエンハンスドだかが出るかは知らないがね)。
これだけ様々な能力を擁しながら、呪文投射能力の成長はレベル毎+1LV。そう、普通のウイザードと同様である。もちろん文章読解能力に優れた君ならT&Bの隠れたテーマが「普通のウィザードでいる奴ぁ馬鹿だ」であることはとっくにわかっているはずだよね。ああ、まったくだ。Acolyte of the Skin とかBlood Magusになるなんて奴は気が狂ってるとしか思えない(大した能力もないくせに、呪文の投射能力が2LV毎に1しか上昇しないなんて!)。それともロールプレイだかロールケーキだかが3度の飯より大好きな*#@どもに違いない。ああ、神聖にして父なるスキップ・ウイリアムズの天からの声が聞こえてくるよ
(「新たなるルールブックを買う者こそは幸いである。
買ったルールが新しいほど、強いキャラクターが作れるのだから」)。
ハレルヤ!
結論。
キャンドルキャスターは強い。単に強いウィザード。ていうかろうそくが強い。
キャンドルキャスターがいる世界は、ろうそく職人ギルドの長が魔術師ギルドの長を兼任する慣習があるに違いない。宮廷魔道師はみんなろうそく職人出身。魔法使いの屋敷はろうそく屋敷で、魔術師の塔はろうそくの塔。むしろ魔術師はみんなろうそく職人でその弟子もみんなろうそく職人。
高貴にして偉大なるろうそく職人達に栄光あれ!