文 石川
編集 BM
Dungeon#87 The Shalm's Dark Songより(一部改変)
今回から
セリフ…ノーマル字体
説明…斜体
シナリオの重要キーワード…青字
強調…赤字
というフォーマットになっております(BM)
前回、どさくさの内に『神の卵』を奪回したPC達一行は、清浄な力を注ぐことで卵を孵化することができるという「力の井戸」に卵を運ぶことになった。
グラスク(DM):「ここの一番近くにある井戸はこの森の西に50マイルほど進んだところにある。かつて幾多の巨人を倒し、また森を襲った緑竜を倒したことで高名なレンジャー、ボグレンが終生をおくったとされるほこらの地下に、井戸が隠されているという」
レイン:「ああ、知ってる(*1)。『トネリコの社』でしょ?ボグレンが冒険者になるきっかけを、神様が作ってくれた、とかって伝説のあるところだよね」
グラスク(DM):「そう、その神こそ我らがアリス神であり、彼はアリス神の加護の元に冒険者としての生を全うしたのだ。今、社はクーレンという名のエルフに管理されている。彼に事情を話せばどうすればいいかがわかるだろう」
グラスクはアリス神のホーリーシンボル(*2)を託し、PCを送り出すのであった。
森を進む一行は、弓を構えたエルフに呼び止められる。気が付けば(*3)周囲を無数のエルフに取り囲まれ、逃げ出すこともできない。
エルフの隊長(DM):「止まれ。貴様ら、一体この森で何をしている!」
アレイ:「えーと、ホーリーシンボル見せてみようか。」
エルフの隊長(DM):「ふん、薄汚いアリス神の信者どもか。この森に何の用だ。この森は我らエルフ族がエローナ神に安住の地として下された場所、貴様らアリスの信者どもが立ち入ってよい場所ではないぞ!」
アレイ:「あれ?だめかよ。」
ホッジ:「はいはい、もうすぐ出ていきますんで、ええ、もう、はい。」
スタイン:「おやじ、何でそんなに卑屈になってるんだ(笑)。」(*4)
エルフの隊長(DM):「まて、その前に持っている武器を見せてもらおうか。」
いま、この付近で斥候のエルフが次々殺されるという事件が起こっているという。PCは(運良く)犯人と違う武器を使っているため、少しの尋問といくつかの呪文による検査で嫌疑をはらすことができた。
エルフの隊長(DM):「まあいい。この森には血の気の多い若い者も多い。犯人と思われて後ろから射られたくなければ、さっさと森を出て行くんだな!」
その後、”誰かに付けられてる感”いっぱいのまま森を進むPCは、正面方向に体格のいい鎧を着た男の姿を認めた。鎧の男はアレイの姿を見ると、にやりと口元をゆがめ、杖にしていた剣を引き抜いた。
男(DM):「人間のパラディンよ、先日の屈辱、晴らさせてもらう!」
アレイ:「え?・・・・・この前のホブゴブリンの隊長?」
ホブゴブ隊長:「我が名はゴグレグ!1対1の勝負、受けてもらおうか!」
突如始まった一騎打ち(*5)。ゴグレグの剣技は鋭く、アレイに倍する速さで剣を繰り出す(*6)。人間よりはるかに腕力に秀でたその一撃は、アレイの鎧をもやすやすと貫いた。
ゴグレグ(DM):「いえー。クリティカルで(ころころ)おお、22点!」
アレイ:「痛い。のでレイオンハンド。22点回復。」
ゴグレグ(DM):「・・・・・きたーねぇー!」
一進一退の攻防の中(笑)、2人の決闘を見守る一行は、どこからかささやくように流れてくる呪文の詠唱の声を聞く。
DM:「全員DC18のHearチェック。成功した人はみんなの東側に黒衣のドロウが呪文を詠唱している姿が見えます。そんでそれとは別に西側から物音が・・・・」
全員:「ぐわぁーー!きたーねえ!」
DM:「気付いてない人はflat-footedだね。西側の茂みからはやっぱり黒衣に身を包んだ2人のホブゴブリンが、ショートソードを片手に突撃してきます」
そう、これはゴグレグとアレイに注意を引きつけておいての奇襲だったのだ。
ドロウの呪文により攻撃力・防御力共に向上しているホブゴブリン達は、スニークアタックで術者を攻撃。前線参加が可能な者たちは何とか術者達を助けようとするが、Darknessをはじめとするドロウの呪文がそれを阻む。混乱の内にアレイはついにゴグレグの剣に倒れ、さらにはドロウが召喚したアースエレメンタルがPCに迫る。絶体絶命の危機に陥るPC達は、しかし突如現れたエルフ=ドルイドの回復呪文を得、また「いらねえ!」と100回ほどいいながら修得したIron
will featのおかげでドロウのHold personをしのいだホッジがローグを倒し、さらにはエディンの神聖呪文やレインの弓、そしてエレーネのsummon
monster ?ワンドがうなりを上げた結果、ついに敵の一団を撃退することに成功した(*7)。
エルフ(DM):彼は「いやあ、危ないところでしたねぇ」といいながらケガしてる人にキュアをかけて回ってるよ。
スタイン:「あんた、だれ?」
エルフ(DM):「あ、どうぞお気遣いなく。あなた方の行動を監視するように命令されてるだけですんで」
レイン:「え?だれに?」
エルフ(DM):「あ、さっき会ったでしょ?エルフの隊長さんです。私はイベリオス。この森のドルイドです。」
イベリオスはPCがエルフ隊の隊長に、エルフ殺しの犯人として依然として疑われていたこと、武器や傷口の様子から、その犯人こそが今まさにPC達に倒されたことなどを飄々と語った。
イベリオス(DM):「隊長も根はいい人なんですけどねえ。故郷が廃都になってからは、どうもよそ者が信用できなくなったらしくて・・・」
エディン:「え?廃都って」
イベリオス(DM):「The Scarのことはご存じですか?あの呪われた地が出現したとき、その腐敗の力は私たちエルフ族が都としていたドランナーの街まで及び、結果として我々はドランナーを放棄せざるを得なくなったのです。そのため我が一族の一部のものはその原因となったアリス神を毛嫌いするようになりました。」
レイン:「はぁー、なるほどー。」
イベリオス(DM):「ところでみなさん、これからどちらへ?」
スタイン:「これから『トネリコの社』ってとこに行かなきゃいけないんだけど」
イベリオス(DM):「ああ、それならここから1日ほどのところにあります。やや藪が濃いですが、方向さえ間違えなければ迷うことはないでしょう。では、お気をつけて」
アレイ:「ああそりゃどうも・・・って、なんであんたついてくるの?」
イベリオス(DM):「ああ、どうぞお気になさらず。私、あなた方を秘密裏に監視する任務がありますので。命令違反すると隊長に怒られるし」
アレイ:「・・・・・・だったら危ないから、できれば隊列の真ん中で監視してくれないかな。君、鎧着てないし。」
イベリオスをパーティに加えた(?)一行は、彼の案内のおかげで深い森にも迷うことなく、小高い丘に建てられた小さな社にたどり着いた。社は丸太を組み合わせて建てられたもので、周囲をたくさんのツタに覆われている。社の正面には素焼のレリーフが掲げられており、その中央にはトネリコとおぼしき木が、またその左右にはアリス神とObei-Hai神の肖像が見受けられる。入り口の扉は大きく開け放たれていて、社の中庭までが見通せる。
DM:イベリオスは社を見上げながら「かつて、アリス神は土着の神として、我々エルフにも崇められていたんです。今では『下等なデミヒューマンの崇める野蛮な神』ってことにされてしまっているんですけどね」と寂しそうにつぶやいている。かれはドルイドだから、自然の神には敬意を抱いているんだろうね。
スタイン:「人影はない?じゃあ『だれかいませんか』と声をかけながら中に入ろうか」
DM:ふむ。中庭には立派なトネリコが植えられている。どうやらこれが社の名前の元になったトネリコのようだね。君たちがその木を眺めていると、奥の方から人の良さそうな顔をした中年の男が出てきたよ。緑のローブと聖印から見て、どうもObei-Hai神のプリーストのようだ。「当寺院にいったい何のご用ですかな?」
アレイ:「えーと、クーレンさんは?」
DM:「ああ、私ですが」
レイン:「え?この人人間だよね。エルフだって聞いてきたけど・・・」
クーレン(DM):「おや、何のことでしょう。この寺院にクーレンという名のものは私しかおりませんが」
なんだ?どういうこと?との疑問をよそに、食事をはじめるクーレン。PCはクーレンに探知呪文を使用していいかと訪ねるが、露骨にイヤな顔をされたため止めてしまう。『井戸』について訪ねても、不思議そうな顔で「は?井戸って何ですか?」と聞き返されるしまつ。八方塞がりになったPCは相談の末、『卵』を見せて相談してみることにした。
クーレン(DM):「おお、これは・・・・なるほど、すごい魔力を秘めていますね。よろしい、では神にこれからあなた方がどうすべきなのか、お伺いを立ててみましょう」といいながら、彼は中庭を出て奥の間へと向かった・・・・・瞬間に素早く振り向いて呪文の詠唱を始めた。同時に君たちの足下の草がタコの触手のようにぐねぐねと動き始め、君たちの足やにからみつく。Ref.
STどうぞ。」
一同:「きたーねぇ!」
エディン、スタイン、レイン、アレイ、イベリオスがSTに成功し、一斉に草むらから飛び出そうとする。
DM:「さらに屋根の上から、エレーネに向かって槍が飛んできた・・・・・命中。11点。」
エレーネ:「痛い痛い痛い!死んじゃうって!(残り6HP)」
DM:「屋根の上にはオーガが一匹。オーガは笑いながら剣を抜くと、さっと屋根から飛び降りた。」
ホッジ:「ぐわー!まずい、動けねえって!殺られるって!」
エディン:「うーん、しょうがない、使っとくか。<ディスペルマジック>!」
DM:「ほう・・・・・・お、元気よく動き回ってた草が急に動かなくなったぞ」
エディンの機転により「動けないところをオーガに殴られる」危機は何とか回避したものの、クーレンを名乗る男はさらに2体のゴーレムと一羽の鷹を召喚する。無論ねらいは術者である。一方オーガは機敏に動き回り、PCに召喚されたイヌたちを次々切り倒してPCを殴りつける。エレーネが召喚したアースエレメンタルが何とかゴーレムを押さえつけているものの、いつ防衛線が破られるかわからない。そしてオーガは、といえば・・・
アレイ:「くっそー!こいつ腕長げえよ!」
そう、オーガは攻撃範囲が10ftなので、迂闊に近寄るとAoOで無条件に一回攻撃されてしまう。よってどうしても攻撃が遅れてしまう。しかもclave
featを修得しているため、いつもの「雑魚を召喚してフランキング戦法」も通じない。一刀のもとに切り捨てられたうえで攻撃されてしまうからである。さすがはアメリカ人、考えることがエロい(笑)。
とはいえ人数で上回るPCは回復手段のないオーガをちょっとずつ傷つけていく。特にアレイの「一発喰らってもいいから近寄って」スマイトイービル&ディバインマイト、そしてスタインのスニークアタックは巨躯のオーガにも相当堪える一撃となった。
一方、ホッジとスタインは術者らしいクーレンを攻撃すべく奥の間の方へ駆け込んだ。クーレンは素早くダークネス呪文で自らの身を隠す。何とか闇の領域を抜けたホッジは、クーレンが輝く壁の中に飛び込もうとする後ろ姿を見つけた。ホッジは素早く駆け寄り、剣をクーレンの背に突き刺すが、刃には手応えはなく、そればかりか輝きの消えた壁に切り取られるようにして剣先が消え去ってしまった。
ホッジ:「あーぶねー!飛び込まなくてよかったぁ。おっと、それよりオーガをやりに行かなきゃ!」
再び闇の領域を越えたホッジが見たのはオーガと戦うスタイン&アレイであった。
ホッジ:「チャーンス!!オーガに駆け寄ってスタインとフランキングになるようにします!」
スタイン:「え?おやじ、それって・・・・」
ホッジ:「行くぞ、スタイン!親子合体!!エレグソンスラーッシュ!!」
スタイン:「・・・・・・・」(うわ、やっぱり・・・・)
悔しいことに両者の攻撃は命中。「こんな攻撃で死ぬのはいやだー!」というDMの叫びがこだまする中、エレグソン親子の手(主にスタインのスニークアタック)により、ついにオーガは息絶えた。
その後、この社に祀られていたレンジャー、ボグレンの幽霊と出会ったPC達は、トネリコの樹下に眠る『井戸』へ『卵』を無事納めることに成功。さらに、クーレンはすでに殺され、オーガの腹の中に消えていること、ニセクーレンとオーガはこの神殿に隠されているゲート(*8)を調査に来たらしいこと、そしてそのゲートは『廃都』のはずれにある魔道士の塔に通じていることなどを聞き出した。
『卵』の幾末を気にかけていたPC達だったが、イベリオスの口利きにより『廃都』で何が起こっているかを明らかにすれば、エルフ達が『井戸』を護る、という契約に成功した。ついでに都へ帰還したアレイは上層部の説得にも成功して、まずは順風満帆・・・・なのだが、『廃都』に何が潜んでいるのか、PCの胸には不安が去来するのであった。
*2:アリス神は広大な森を自分の体そのものとする自然神で、ルール的にはAD&D2ndでいうintermediate
powerという設定(亜神demigodと小神lesser powerの中間に位置する、『地方の土着の神』くらいの力を持つ神だとでも思ってください)。森の生命全ての母と考えられているため、そのホーリーシンボル(キリスト教でいう十字架)を持つ者は森の動物に友好的に迎えられるようになる。
*3:エルフのレンジャー部隊なので、当然みんなクロークオブエルブンカインドとブーツオブエルブンカインドを装備しています。いやあ、本当に隠れてるのばれなくなるなあ(笑)。
*4:ホッジのプレイヤーは新サプリメント“Tome and
Blood”を読んで強烈にやる気をなくしています。“Sword and Fist”と比べたら哲也とダチンくらい違うもんなぁ(笑)
。つーかスペルユーザー優遇され過ぎ。ファイターはこのままダメ人間用職業としてスポイルされていくのであろうか。嗚呼。
*5:パラディンは「正義の騎士」をイメージしたクラスなので(普通)一騎打ちを断ることはなく、また不意打ちや奇襲を好まない。それを知っているのでPC達は手出しをせずに見守っているのである。
*6:3eから攻撃回数の決定法が変更になり、ファイター系は6レベルから2回攻撃が可能になった。ので5レベルパラディンのアレイ(1回攻撃)の倍の速さで剣を振ってるということになります。ちなみにこの変更もファイターをダメ職業にした一因。2ndでは序盤の多数回攻撃はファイター特権(ファイター『系』でなく、ファイター『だけ』の)だった。
*7:ちなみにゴグレグは突然現れたドルイドに「持ってる剣にヒートメタル→ホールドパーソン」のコンボを喰らい、右手に大やけどを負った末、ホールドパーソンが切れたところで戦闘終結。『今日はこんなもんで勘弁しといてやる』との言葉を残して脱出することに成功した。幸運なり。
*8:『魔法門』との邦訳が当てられている。魔法的な仕掛けで人や物を別の箇所に運ぶ魔道器。ここにあるのは社から廃都そばへの一方通行のものであるが、ホッジの「俺なら絶対待ち伏せする」という主張からゲートの使用は取りやめとなり、陸路で廃都へと向かうことになった(ちなみにこのゲートは“pool
of radiance2"のシナリオに繋げるため、dungeon誌のシナリオに付け加えたもの。なのでこの社はかつてエルフの魔道士の研究所であった、という設定となっている)。