アロフロス王国に伝わる勇者伝説
知られざる歴史の闇をついに紐解く!!


アラガーン勇者伝説 第1話
2003/02/11
by B.M

アロフロス王国で最も大きな町、アラガーンは常に人々の羨望の的だった。
そこへ行けば何か儲け話があるかもしれない。
そこへ行けば素晴らしい知識が手に入るかもしれない。
そこへ行けば、冒険者として輝かしい未来を約束されるかもしれない。
人々の希望や欲望を飲み込んでアラガーンは大きくなってきた。
そして、いつの時代もアラガーンは王国の中心であった。
今日もまた薔薇色の明日を夢見てこの町に辿りついた若者が一人。

 ここはアラガーンで最も古い酒場”海の砂亭”。狭いながら常に屈強の男たちでひしめき合っている、いわば冒険者の店と言えよう。あちこち傷が入ってはいるが丁寧に磨き上げられたカウンターの奥から野太い声が響き、あどけない顔をした若者を貫いた。
『おい、アンタ新米だな?アラガーンの冒険者ギルドは登録制だぞ。』
 グラスを磨きながら声をかけるのは日焼けした、いかにも海の男といった感じの中年男。体に似合わぬエプロンをしている所を見るとこの男がこの店の主人なのだろう。
『は、はい。えーと、実はここに来たのは初めてなんですが…』
 頬を染めてそう答えたのは、いかにも新米といった風の少年。ウォーハンマーとタワーシールドを後生大事に握り締め、落ち着かなげに辺りを見回している。どれも傷一つ無く、買ったばかりといった感じである。
『あ、あの…ボクは…ジャルガンみたいになりたくて…。』
 オドオドと答え始めた少年を、オヤジが一喝する。
『そんなことぉ、聞いてるんじゃねぇや。登録してないヤツにゃぁ仕事は回せない、って言ってるんだよ。』
 口調は怒気を含んではいるが、その実は楽しんでいるような表情でもある。カウンターの周りの客は”オヤジの新人いびりが始まったか”とでも言いたげな表 情で笑いをこらえている。オヤジの剣幕にびっくりして口を閉じてしまった少年だったが、意を決したように再び口を開いた。
『登録にはいくらかかるんでしょうか?』
『そうさな。そんなことよりはアンタの冒険者としての資質だな。それが問題だ。』
『はぁ…?。』
『ま、それは後でジックリ聞くとしよう。聞きたがっているヤツも大勢いそうだしな。』
 オヤジがチラっと視線を移した先には、野次馬と化した冒険者の顔、顔、顔。彼らは品定めするように少年をジロジロと眺めていた。すでに何かの賭けが始まっているらしく、あちこちでコインのやり取りがされている。
それを見て小さく溜息をつき、何やら口の中でブツブツ言ったかと思うとオヤジは少年に向き直った。
『さてさて。まずはアンタの事を聞かないとな。アンタの身の上を聞かせてくれよ。』
『えーっと、ボクはHumanで…Fighterで……Otokoです。』
酒場を哄笑が満たした。
(第1話 終)

※注:気付いている人もいると思いますが第2話はありません。
※注:現人虫さんごめんなさい。何にも思いつかなかったのでそのまま書きました(笑)。つまり…意味は無いです。