3歩目 キャラクターとクラスの「力」を知ろう!

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 さて、前項「2歩目」ではサンプルキャラを作ったわけだが、うまく作ることはできただろうか。

 AC、各種セーヴ、攻撃ボーナス、特技、技能など、ちょっとばかり専門用語が多い内容だったが、どれが何を意味しているか、ご理解いただけただろうか。

 

 え? 「わかるわきゃねえだろ!」って?

 

 いや、全くごもっとも。

 専門用語に数字の羅列。 どこを見れば「このキャラは強い/弱い」と言えるのかなんて、前回の説明でわかろうハズもない。

 そう、前回では「どこに何を記入するか」と「どこを見れば記入すべき値がわかるか」について触れただけで、それぞれが何を意味しているか、とかどれを高くするとどうなるのか、などといった点にはほとんど触れていなかった。

 よって、我らがホッジ・エレグソンが強いのか弱いのか、どうすれば強くなれるのかなんて事はわからないし、もちろん自分のキャラクターも作りようがないだろう。

 

 というわけで、3歩目はD&Dのキャラクターの「力」についてお話ししよう。

 

 キャラクター作成時にわかったと思うが、キャラクターは様々な数値を有している。これらの一つ一つにはちゃんとゲーム上の意味があり、それぞれがキャラクターの持つ「力」と関わってくるのだが、イキナリ全部説明されても使いこなせるはずがない。よって、以下には「キャラクターがゲーム中によく使う能力」を解説付きで挙げてみよう。

 

[能力値]

 そのキャラクターの基礎となる能力。「腕力がある」とか「すばしっこい」とかいう能力が、6種類の能力値(【筋力】【敏捷力】 【耐久力】【知力】 【判断力】 【魅力】 ) に分類されている。クラスごとに必要とされる能力値が異なっているが、HPを決める【耐久力】、ACを決める【敏捷力】の2つは高いに越したことはない、技能をたくさん使う職業なら【知力】が高いほうがいい(【知力】が高いほどたくさん技能ポイントがもらえるから)などが定説。また、クラスに必要な能力をより高めるために人間以外の種族を選択するプレイヤーもいる(初期キャラクターの能力値を18より大きくする唯一の方法である)。

 サンプルキャラクター(ホッジ)を作成したときのように「4d6して3つダイスを選ぶ」ロールを6回行い、好きな能力に割り振る形が一般的だが、DMによってはより自由に、かつ同じ条件でキャラクターが作れるよう「能力値割り振り(規定のポイントを割り振って能力値を「買う」)方式」をとるものもいる。

[ヒットポイント](HP)

 おなじみ、どのくらいまでなら傷つけられても生きていられるかを規定する値。

 この値が0になると意識を失い、-10になれば死亡する。おかげで昔よりは死に難い(笑)。

 クラスごとにHPを決定するダイス(ヒットダイス:HD)が異なっている。また、【耐久力】が高いほどHPは多くなる。

[アーマークラス](AC:Armor Class)

 いわゆる装甲値。高いほど相手の攻撃を受けにくい。盾/鎧のアーマーボーナスに【敏捷力】修正値、魔法ボーナスなどを加えた値。ほかのゲームと違い、D&Dでは受けたダメージを吸収する手段はほとんどなく、「当たって全ダメージか、外れて0ダメージか」の2択であることに注意。

[基本攻撃ボーナス](BAB:Base attack bonus)

 そのキャラクターがどれくらい敵に攻撃を命中させやすいかを決める基礎となる値。レベルアップ以外の方法で上げることができない(上昇の仕方はクラスによって異なる)。+6を超えると複数回攻撃が可能になる(モンクは素手なら+4から)。

[近接/遠隔攻撃ボーナス]

 基本攻撃ボーナスに、近接なら【筋力】修正値、遠隔なら【敏捷力】 修正値のほか、魔法や上質な武器のボーナス等を加えた値。戦闘時にはこの値にD20を加え、相手のACと比べて大きければ命中となる。ゆえに、(当然ながら)高いほど良い。

[セーヴィング・スロー](ST:Saving Throw)

 キャラクターが危機を回避する能力。高いほど回避能力が高い。頑健、反応、意志3種に分類されており、それぞれ【耐久力】 【敏捷力】 【判断力】 の能力修正値が修正として加えられる。クラスにより、回避能力が高い分野が異なっている。これは逆に言うと、クラスごとに回避能力が低い=弱点となる個所がある、ということでもある。これを埋めるために複数のクラスに就いたり、STにボーナスのつく<特技>をとるものもいる。

[技能]

 キャラクターが「できること」のうち、D20でチェックするタイプの能力。キャラクター作成時およびレベルアップ時にポイントを支払う形で「ランク」を修得し、各技能にあった能力値修正とD20を足して判定する。かなり細分化されているうえ、クラスごとに修得できるものとできないものが決まっているなど、結構複雑。しかし、使いこなせると戦闘や冒険で有利になる技能も数多い。また、ランクが0ランクでも判定を行える技能と、ランクを修得していないと判定できない(【知力】系の、[知ってるかどうか]をチェックするような技能に多い)技能とがある。人間はほかの種族より少しだけ多く技能ポイントを受け取れる。 

[特技]

 キャラクターが「できること」のうち、判定を必要としないもの。多くは「この特技を持っていればXXを行うことができる」などといった形の、いわゆる「特殊能力」に近い。キャラクター作成時、全員1つの<特技>習得を許されるが、人間はさらにもうひとつ余分に<特技>を受け取ることができる。

[呪文]

 ファンタジーではおなじみの超常能力。D&D3eはPHBだけで200以上の呪文があるため、選択の幅は広い。

 秘術呪文信仰呪文2系統があり、またそれぞれが「バード呪文」「ドルイド呪文」などとグループ分けされている。それぞれに特徴があるが、秘術呪文のほうがペナルティが多い代わりに強力、信仰呪文は回復や防御に力を発揮する、といった傾向がある。

[特殊能力]

 「暗視(暗闇で目が見える)」などといった身体的な能力や、「バーバリアンの激怒」「金剛身」などといったクラス特有の能力までさまざま。なかにはターンアンデッドやパラディンのレイオンハンズのように、[呪文]のように機能する能力もある。

 

 ほかにもイニシアチブや移動力、装備など、いろいろ重要なキーワードはあるのだが、主に使うのはこのあたりだろう。いずれも「値」なら高いに越したことはないし、「能力」なら数多いに越したことはないが、「ほしいものがすべてもらえるわけではない」のが世の常である。よって、キャラクターを作る君は、「何がほしいか」、つまり「どんなキャラクターにしたいか」を考えた上でクラスを選ばなくてはならない。

 上の説明文を読むと、あちこちに「クラスによる」といった言葉が散見されるのに気が付くだろう。そう、これらの能力は、クラスによって与えられるものが多いので、その選択には厳重な注意が必要となる。

 

なお、実際にゲームをプレイする際にはほかのプレイヤーと話し合った上でクラスを選択するようにしてほしい。これをおこたると「ファイターばっかり」「ローグばっかり」のパーティができたりする。「バードだけのパーティ」などができた日には、冒険者だか旅芸人の一座なんだかわからなくなってしまうではないか。TRPGはコミュニケーションのゲームなのだ。ゲーム開始前から話し合い、譲り合ってクラス決定をしてほしい。

 

 さて、君がなりたいキャラの大まかな方向となる「クラス」だが、前述のとおり、PHBに掲載される基本クラスだけでも11クラスある。この中から「好みのクラス」を選ぶ、といってもなかなか簡単にはいくまい。

 そこで、この項ではクラスをいくつかのグループ(タイプ)に分け、それぞれを大雑把に説明していこう。

 

1)     純戦士:持っている能力のほとんど(あるいはすべて)が戦闘用にデザインされたクラス。単純に「武器を持って殴る」などといった前線要因としての能力を強化する。

ファイター(p45):戦闘系の基本クラス。たくさんの武器/防具に習熟し、戦闘用の《特技》もたくさんもらえるので、《特技》を使った多彩な戦術を駆使できる。どちらかといえば鎧を着込み、前線で戦う重戦士向き。しかし一方で(戦闘力の底上げには十分役立つものの)「これ」といった特典もなく、上級クラスの「下敷き」にされがちなクラスでもある。また、〈技能〉が絶望的に弱い(もらえるポイントが少ない上、選択肢が狭い)、言ってみれば地味なクラスでもある。

バーバリアン(p39):いわゆる「蛮族」型戦士。戦場の暴れ者。ファイターより少しだけHPが多め(HD=d12)。ファイターのようにたくさんの《特技》はもらえないが、「激怒」(特殊能力)で攻撃力を上げたり、「直感回避」で急所攻撃や挟撃を回避したり、といった能力を持つ。また、移動力を10ft分増加する「高速移動」が地味に強力。が、重装鎧に習熟していなかったり、重装備にすると高速移動能力を失ったりする。序盤ではファイターより有利、中盤以降は不利といわれているが、実際には両者を組み合わせる(マルチクラス)のが良いだろう。

モンク(p47):僧院で修行を積み、素手での戦いに習熟したものたち。素手でのダメージが通常より大きく、レベルの上昇に伴い最大1d20ダメージまで増加する。セーヴ値も高く、レベルが上がればAC・移動速度が上昇するほか、ほぼ毎レベル身体能力を強化するような特殊能力を得る。身体能力だけでいえば最高級のクラス。しかし、武器/防具を持つと能力の大半を失うという欠点のため、今ひとつ使いづらい印象を受ける(魔法でないと傷つかない相手を倒せないし、身体能力が高くても、結局魔法武器/防具での強化のほうが強い)。上級者向き。

 

2)複合型戦士:戦士としての能力のほかに便利な能力を持っているグループ
パラディン(p42):聖戦士。ファイター並みの戦闘力とあふれんばかりの特殊能力、そして(わずかながら)信仰呪文も使用可能、と単クラスでは最強といっても過言ではない能力を持つ。特に【魅力】修正値がすべてのセーヴ値のボーナスになる「信仰の恩寵」や手を触れるだけでレベルX【魅力】ボーナスの傷を癒す「レイオンハンズ」、アンデッド退散などの諸能力は確実にパーティの危機対応力を増加してくれるだろう。しかし、【魅力】が低いとこれらの特典は生きてこない。その一方で、呪文使用能力を得るために高い【判断力】が、また戦闘要員として前線で戦うために【筋力】【耐久力】【敏捷力】が必要であることを考えると、ほとんどすべての能力値が高くないと『強い』パラディンにはなれない(まあ「【魅力】だけ高ければ十分」という人もいるが)。また属性が[秩序にして善]でなければならず、ロールプレイ上の制約が多い。

・レンジャー(p50):『指輪物語』でいう「野伏り」。野外活動に特化したファイターと言えるだろうか。4レベルから信仰呪文(レンジャー呪文)を使用できるものの、呪文数は少なくパッとしない。特殊能力も《追跡》と「得意な敵」(その敵に対し、少しだけ優位に立てる)とさして有効なものはなく、『最弱クラス』『ファイター以下』『1レベルマルチクラス専用』などと不名誉な称号を持つ。実際、必要な能力の高さに対してのコストパフォーマンスは低く、初心者にはお勧めできない。

 

3)魔法使い:秘術呪文での問題解決を得意とするグループ

ウィザード(p24):秘術呪文使いのスタンダード。HPが低く、武器・防具の大半を使用できないが、1日に決まった数の秘術呪文を使用できる。自分の呪文書に書かれた呪文を毎日覚えなおし(銃に弾を込めるようなものだ)、必要なときに発動する、というやり方で呪文を使用する。発動に柔軟性を欠くものの、呪文書にはスクロールなどから呪文を書き写すことが出来るため、広い選択肢が得られるのが特徴。呪文数も「専門化」(特定分野の呪文が得意になる代わりにいくつかの分野の呪文を使用できなくなる)で呪文レベル毎に1つずつ増やせる(とはいえどの領域の呪文をあきらめるのかが難しいので初心者にはオススメしない)。あと、100gpかかるが「Familiar(使い魔)」もさりげなく強力。使い魔は種々の特殊能力(セーヴ強化、能力値増強、〈技能〉ボーナスなど)を主人に与えてくれるので、有効に活用したい。 

ソーサラー(p32):ウィザード同様、秘術呪文を生業としているが、ウィザードと違って呪文の準備が不要で、知っている呪文を好きなときに発動できる。また、1日の呪文使用数もウィザードより多い。しかし、ウィザードのように呪文のレパートリーを増やすことは出来ず、またレベルアップによる新呪文の獲得も、ウィザードよりやや遅い。よって、獲得呪文の選択が非常に難しく、呪文それぞれを良く知っていないと有効な術者になれない場合もあるため、ウィザードより上級者向きであるといえる。ちなみにウィザードとは異なり、【魅力】が高いほど呪文能力が高くなる。

4)信仰呪文使い:信仰呪文を使用できる、パーティの守護者となり得るものたち

クレリックp28)いわゆる「僧侶」。特定の神を信仰し、その力を呪文という形で使用する人たち。加えて、自分が信仰する神格の持つ「領域」から呪文を得たり、特殊能力を得たりすることもある。また、アンデッド退散(属性が悪のものなら威伏)などの特殊能力や、任意発動(準備した呪文を治癒/ダメージ呪文に変換して発動する)など、強力な能力を備え、また武器/鎧にもかなり習熟している。何より、回復呪文を使用できるため、パーティには欠かせない存在であり、また欠点らしい欠点を持たない点から『クレリックこそ最強』を唱えるプレイヤーも多い。

・ドルイド(p34)クレリック同様、信仰呪文を使用するが、彼らは特定の神からではなく自然からその力を得る(呪文そのものも「ドルイド呪文」として独特の選択がなされる)。そのため、自然知覚(動物と植物の見分けなど)、森渡り(茨などを何の障害もなく通過できる)など、自然に関係した特殊能力を数多く得る。中でも手足となって働いてくれる「動物の相棒」や動物への変身能力である「ワイルド・シェイプ」は有用。しかし一方で、金属を好まないという特徴から、結果的にクレリックより防御力が低く、また呪文数もクレリックに劣る。何より任意発動を持たないため、その回復能力はクレリックより格段に低く、「パーティ2人目のクレリック」として使用されることが多い。やや運用が難しい。

 

5)技能活用クラス:情報の収集と処理能力に優れる。技能の活用が能力の中心。万能型ともいえるグループ。

ローグ(p52):いわゆる盗賊。単に罠や鍵を解除したりするだけでなく、魔法の罠や仕掛けを発見したり、使用したりすることの出来るクラス。どれも冒険には必須の能力であり、パーティに1人はローグが必要だろう。また、〈聞き耳〉〈忍び足〉 や〈交渉〉〈情報収集〉などの情報収集能力にも優れ、それらを構成するスキルポイントもたくさんもらえるため、かなりの万能性を発揮できる。戦闘においても、「身かわし」や「直感回避」など、とっさの回避能力に優れ、また不意を討ったり挟撃(仲間と挟み撃ち)した時に「急所攻撃」による追加ダメージを与えられるため、やりようによってはファイター以上の活躍も見込める。ただし、体力、ACともに低くなりがちなので、うかつに前線に出ると瞬殺されるという欠点もあるのだが。
バード(p36):吟遊詩人。ウィザードの1/2ほどの数ではあるが秘術魔法(バード呪文)を使用できる(ただしレパートリーはソーサラー同様増えにくい)ほか、歌や詩によって他人に効果を及ぼす呪歌(まがうた)を使用できる(呪文への抵抗力を高めたり、攻撃力を高めたり、と補助的な効果を持つものが多い)。また、ローグのように罠を発見したりは出来ないものの、魔法の道具・装置を使用する〈技能〉(〈魔法装置使用〉)を修得できる。そしてバード最大の「力」は、1レベルで取得できる『バードの知識』である。バードはたとえそこが世界の果てであっても(チェックの達成値が高ければ)その土地や伝説などについてさまざまなことを知ることが出来るのである。この能力は達成値が30を超えると「強力なウィザードの子供のころのあだ名」などという非常にあいまいな知識でさえ「知っている」事にされてしまうため、実にマスター泣かせな能力なのだ。とはいえ、その戦闘能力は低く、また使用できる呪文も少なくて使いづらいため「ダンジョン内で出来ることが少ない」『何でも屋にして器用貧乏』なクラス。上級者向き。


 どうだろう。この11種の中に、君のキャラクターイメージと合うものはあっただろうか?

 

 もちろん、どれかひとつに絞る必要はまるでない。「剣も魔法も使いたい」というのであれば初レベルでファイターを選択し、成長したところで魔法を使えるクラスを取得する「マルチクラス」(文中にも何度か出てきた言葉だ)という方法がある(p55参照)。ただ、マルチクラスはそれぞれのクラスの欠点を知らないとうまく出来ないので、ルールに慣れてから試したほうがいいとは思うけど。


 まずはこの5グループの中から、どれがやってみたいかを決めて欲しい。

 そして、「習うより慣れろ」の精神で出来ればそのグループのなかで「上級者向き」と書かれていないクラスを試しに作ってみて欲しい。

 

 え?ムリ?

 ・・・・・・・まあ、こんなおおざっぱな話じゃあねえ。

 では、次回は職業別の攻略法に移ることにしよう。




 4歩目:(今度こそ)自分のキャラを作ろう!(1) 純戦士編

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