文:石川
編集:BM
今回はDragon#280所載Vs. Sorcerers Taking out the Magic Missile Machineを中心に、スペルユーザーを何とかする方法を考察してみましょう。
<はじめに>
かつて、術者は本当に貧弱な存在だった。鎧を着ることは許されず、RPG界の永遠のやられ役、コボルドの一撃でさえ低レベルのメイジを死に至らしめるには充分だった。投射できる呪文の数はごく少なく、しかもその呪文は1分間のラウンドの間、投射前に攻撃されただけで失われていたのだ。とはいえ、呪文の多くは強力であり、冒険者パーティは「隊列の最後尾にメイジをおくとヘビにかまれて死ぬ」などと、半ば迷信に近い警句を胸に秘めながら、最後の敵の前までいかにしてメイジを無傷で――そして出来るなら呪文を全て持った状態で――連れていくかに腐心したものだ。
しかし、世は変わった。イヌ頭だったコボルドが、いつの間にかハ虫類系ヒューマノイドになっていたように、1ラウンドが6秒(なんと1/10だ!)となり、各種呪文の効果時間や詠唱時間が大きく変動したように。D&D第3版(以下3E)では、様々な理――システムの大幅な変更がなされ、そしてその変化は術者、なかでも魔道呪文arcane
spellsを得意とする者たち、すなわちウィザードとソーサラーをより強力な存在へと押し上げたのだ。
<どんなルールが術者たちを強くしたのか?>
・ HPの底上げ
一発食らったら終了。それがウィザードの宿命だった。これまでのRAINBOWでは「HP決定のダイスは一発降り」というアツいルールのもと、レベル6でHP8のウィザードなど、とにかく貧弱な術者が数多く存在していたのだが、3Eになって状況は一変した。なんと、3Eでは「1LV時のHPはMAX」とのルールが付け加えられたのである。たとえCON修正がなくても4HP確定。プリーストに至っては8HPである。これは強い!
・ 呪文数の変動
かつて、呪文――特に魔道呪文は貴重なものであった。1LVのウィザードが唱えられる呪文はわずかに1LV呪文1発。どの呪文を持っていくか前もって決定しなくてはならないAD&Dにおいては、術者の選択と投射タイミングは非常に重要なものであった。スリープやチャームパーソンを持っていってはみたもののアンデッドが出現して終了、という光景も、頻繁に見られるものであった。しかし、今やそんな心配はなくなった。3Eでは術者は自分の長所能力値(ウィザードならINT、ソーサラーならCHRなど)が高ければ、複数のボーナススペルが得られるのだ。かつてはプリーストにのみ許された特権が、魔道士達にも分け与えられたのである。また、0LV呪文が正式ルール化され、使用できる呪文数がさらに増加している。それまではスリープ一発撃ったらアフターファイブに思いをはせていた低レベルウィザードも、いまや人並みに冒険者として活躍できるのである。また、新クラスであるソーサラーの存在も見逃せない。彼らは呪文のボキャブラリーは少ないものの、1レベルの時点で少なくとも8回の呪文投射が可能である。TSRのライターJ.wyattは彼らをmagic
missile machineと称している。
・ 呪文投射制限の緩和
AD&D(2nd)では、呪文の行使はごく限られた条件下でのみ行われていた。術者は呪文の投射宣言後、自分の手番が来るまでに1ポイントでもダメージを受ければその場で呪文が消散Fizzleしていたし、呪文使用ラウンドには、事実上他の一切の行動を認められず、またタッチスペルは命中判定に失敗すればこれまた消散してしまう、という厳しさであった。特に低レベルのパーティにとって、プリーストによるキュアが最前線のキャラクターを回復できるかは非常に重要なポイントであり、そうしたキャラクターへのタッチスペルの失敗はパーティメンバー全てに絶望のため息をつかせたものである。
3Eでは、こうした状況が一変した。まず、多くの呪文の投射の前後に通常移動が可能になったのだ。また、たとえ詠唱時間の長い呪文であっても5ft移動は常に可能である。地味ながら、この変更は非常に大きなものだといえる。装甲や耐久力に乏しいウィザードにとって、敵の射程範囲で呪文を唱える愚を移動により避けることが出来るのは、ちょっとした鎧や防護呪文などより遙かに有用だ。同時に、仮にダメージを受けたとしても、concentrationチェックによるFizzle回避が可能であるなど、Fizzleしにくい仕組みが新設されている。
また一方で、タッチスペル(およびray系呪文)は命中するまで魔力が消散せずに残る、との新ルールが追加され、キュアの無駄撃ちもごくまれな現象となった。さらに、goodプリーストの特権である「神聖呪文を同レベルのキュア呪文にコンバート」する能力は、パーティにおける回復力だけでなく、プリーストの汎用性を大幅に増した。地味ながら、2lv呪文にキュア系呪文が入っているのもパーティの戦略上重要な変更である(これまでは2lvには回復呪文はなく、「微妙に使いにくい」と評判だった)。これまでは呪文数の多くをキュアに費やしてきたプリースト達も、3Eでは様々な状況を想定して備えることが可能になったのだ。
・ 呪文フィズルルールの変更
そして、ある意味最大の変更を受けたといっても過言ではないのが、この「呪文Fizzleルールの変更」である。前述の通り、「呪文投射前にダメージを受けたらその呪文は消散」であったFizzleルールは、いまや「呪文投射の瞬間にダメージを与えた際、術者にconcentrationチェックを課すことが出来る」との大幅な緩和を受けたのである。
「つうかナニ?投射の瞬間って。相手が呪文唱えるまで待ってるのかよ?!」
そう、相手の呪文を邪魔するためにはready行動で「相手が呪文を投射した瞬間に攻撃する」というオプションを選択しなければならず、しかもその攻撃が命中し、かつ術者がconcentrationチェックに失敗したときのみ、呪文の投射は妨げられることになったのである。この変更により、呪文をFizzleさせることは非常に難しくなった。3Eでは自分の行動は自分の順番が来たときに決定できるため、相手がreadyしているなら呪文投射をとりやめ別の行動に変える、という選択が可能であるためだ。確かに呪文投射は回避できるものの、相手はFizzleとちがって呪文投射能力を残したままであり、しかも場合によってはreadyの最中を一方的に攻撃されるハメになる。
・ 装備に関する変更
今回、術者は鎧を着ることができる。ただしそれぞれの鎧には呪文の失敗確率が存在し、呪文投射ごとに投射失敗チェックをする必要がある。しかし、この失敗確率はSomaticコンポーネントがある呪文にのみ適用されるため、S(ソマティック)コンポーネントを必要としない呪文に関してはプレートメイルを着用していても問題なく投射できる。
こうした防具での大きな変更点の一つにタワーシールドがある。ご存じの通り、タワーシールドは使用者にCoverを提供する。40%の呪文失敗確率も、他のキャラクターあるいはヘンチマンに持たせ、自分を護らせることで問題にならなくなる。考えてみるがいい。タワーシールドの後ろからマジックミサイルを連発するソーサラーの姿を。9/10カバーはAC+10を提供し、さらにはブレスや直線的な魔法攻撃を少なくとも半減させる。そしてシールドを持つ者は、当然のように長柄の武器を持ち、10ft以内のもの全てにAoO攻撃を加えるのだ。
さらに、今回から全てのキャラクターは使用武器に制限がなくなった。Featが1スロット必要になるものの、その気になればウィザードがロングソードを握り、近寄ってくるファイターを待ち受けることすら可能なのだ。Readyで呪文投射を待つファイターがいれば、呪文投射を止め、とりあえずぶん殴ることが可能なのである。
<メイジを殺れ!>
というわけでやっと本題。Dragon#280:Vs. Sorcerers Taking out the Magic
Missile Machineより、どう術者に対抗すべきかのTipsを示そう。死ににくく、Fizzleしにくく、しかも呪文数の増えた敵の術者をどう料理するか。以下のTipsを参考に、現有戦力でのシミュレートを繰り返して、個人ではなくパーティとしての術者対抗手段のパターンを増やしておこう。でないと、以前(2nd時代)より遙かに苦戦を強いられることになる。
・ STを上げろ!
arcane魔法における危険な呪文――直接ダメージを与えてくる呪文の多くはReflexで回避できる(fire
ball, cone of coldなど)。ならば、lightning reflexes featを修得し、とにかく呪文をかわせるようにしてしまおう。地味ながら、シーフのevasion能力と組み合わされたとき、この選択は最大限の効果を発揮するだろう(STに成功することで、ダメージを無効にできる)。勿論可能ならwillやfortを上げておくに越したことはない。チャームやhold
personなどは簡単に低レベルパーティーを壊滅させうるし、fortで耐える呪文は即死や大ダメージを与える呪文が多い(power
word系、 finger of deathなど)。
・ とにかくくっつけ!
上位arcane魔法は範囲呪文が多い。効果範囲の広い呪文は一度に多くの敵を巻き込み、ちょっとした集団を一撃の下に崩壊に追い込むに充分な威力を持っているが、ひとたび接近してしまえばその投射が難しくなることを意味する。そう、術者は範囲呪文の投射によって自分自身を巻き込んでしまう危険が生じるのである。
また、複数のキャラクターで接敵できれば「的」を分散する事にもなり、readyやAoOなどによる呪文投射停止のチャンスも増加する。さらに、hold,
grab, tripなど、様々な方法で術者の精神集中を妨げることも可能だ。ただしready攻撃は高レベル戦士の多数回攻撃(→full
attack)を諦めねばならず、またAoOは相手がdefensive castに成功すれば適用されなくなることに注意。一方holdやpinは術者の投射能力を大幅に制限する。Holdされた術者はCTが1
actionでsomatic componentを必要とせず、material component(またはspell
focus)をすでに手に持っていない限り呪文を投射できない。ウィザードはそれでもmetamagic
featによってこれらの危機に備えることもできるが、Featの少ないソーサラーやプリーストにとっては大きな脅威となるだろう。これらの目的のためにドルイドやレンジャーのanimal
companionやクリーチャーを召喚するのも有効かもしれない。とくに、improved
grabを有するクリーチャー(ライオン、クマ、トラ、dire系の動物など)は有用である。
・ 散開しろ!
前述の通り、arcane呪文で危険なのは広い効果範囲を持つ呪文である。多くのこうした呪文は15-20ftの有効半径を持つ。これは逆に言えば、各々が30ft以上離れていれば、少なくとも一度の呪文での全滅を免れることを意味する。そして、高レベルになるほど散開する方法は増えていく。たとえばfryやlevitate呪文による立体的な散開、またinvisible呪文により敵の視界から消え去ったり、mirror
imageや幻覚系の呪文で相手に的を絞らせないのも散開の一種といえるだろう。ちなみに遠くに離れるのはあまり意味がない。たとえば12LVのソーサラーが投射するchain
lightningは880ftの距離まで到達する。この呪文を避けるべく離れ、こちらがロングボウで攻撃したとしても、その際適用されるペナルティは-16。相手が防具を一切持っていなくとも、命中させることは難しいだろう。
・ 呪文だ!
術者の呪文投射を邪魔する事の出来る呪文は数多く存在する。ルール的にはカウンタースペルというルールが新設されたが、しかしこれはさほど有用ではない。Readyせねばならない上、同じ呪文を使用せねばならず、しかも使用者はspellcraftチェックに成功しなければならないなど、効果の割にリスクとコストが高い(どうしても使わねばならない場合は勿論ある。たとえば要人警護の際、一番危険なのはマジックミサイルであろう;これを止めるにはshield呪文かカウンターしかない)。しかし、カウンターに頼らずとも、たとえばsilence呪文は効果的に術者のverbal
componentを阻害する。また、blindnessなどは術者の視覚を奪い、呪文の照準を困難にするだろうし、聴覚を奪う
deafnessはVerbal mponentを20%の確率で阻害する。そのほか、体の自由を奪うような呪文はすべて有効に機能するだろう。
・ そして複合技
たとえばsilence呪文をかけられたモンクが術者をgrappleしたら?術者はたとえgrappleから逃げ出してもsilence範囲から逃げ出さない限り、呪文を投射できなくなる。同様のことはファミリアを使っても可能だろう(この場合、friendship
monsterやsummoned monsterではあまり役に立たない。
Mnd linkのあるファミリアなら声が伝わらずとも命令を伝えられるが、これらのクリチャーでは無音状態では命令の変更が出来ないからだ。もっとも『使い捨て』できるsummoned
creatureなどなら関係ないだろうが)。