アラート・ファクター Alert Factor
From Polyhedron #154 (Dungeon #95)
Improved Initiative:Alert Factor
by Mike Meals
抄訳・改編:石川
#久々のDRAGON以外の記事翻訳ですな。
#なお、文中#このように書いてある部分は、訳者である石川が使用に際してこうした方がいいかも、
#とか、こんなの付け加えた方が使いやすいかも、と思ったことを書き加えてあります。
ダンジョンってやつはファンタジーゲームじゃおなじみのモンだよね。
それぞれの部屋は、シナリオやそれについてるチャートにその詳細が書いてあったりする。
でも、時々ボクはこいつに違和感を覚えるときがあるんだ。
だって考えてもごらんよ。
1の部屋(まあ、ここでは最初の部屋ぐらいに考えといてくれ)に入ったPC達は、当然1の部屋のモンスター達と一戦交えるわけだ。で、戦い終わったPC達は2の部屋へ向かい、その部屋のモンスターと一戦やらかすわけだけど、このとき1の部屋と2の部屋のモンスター達って同じ対応取っていいのかな?
だって、2の部屋が1に間近な部屋だったとしたら、2の部屋のモンスター達は1の部屋で起きてる喚声や戦いの音に気付くはずだろ?知性のないモンスター達ならともかく、彼らは1の部屋で起こっている何かに対して、何らかのリアクションをしてもいいとは思わないか?
そこでボクはアラートファクターってものを考えた。
元々はFiery Dragon Productionの“To Stand on Hallowed
Ground”とか“The
Giant’s Skull”って本に載ってる概念なんだ。どっちも組織化された兵力を持つ団体に侵入する話なんだけど、アラート・ファクターはこういう話にうってつけだと思う。
で、ボクはこれを普通のダンジョンにも持ち込もうと考えた。こいつをうまく応用できれば、ダンジョンをもっと危険に----もちろん、単にPCを殺すためにじゃなく----、PC達に「より慎重に、考え抜かれた行動」を取らせることが可能になるんだ。「ファイヤーボールやコーンオブコールドの支援を受けながら大声を上げて突撃」なんて行動をとれば、その物音に気付いたダンジョン中のモンスター達すべてを招き寄せることになる----なんて思えば、PC達も単調なハックアンドスラッシュをする気にはならないだろう?そう、アラートファクターはPC達によりクレバーになることを要求するんだ。
<アラートファクターの初期値>
アラートファクターは、様々な状況に置ける、クリーチャー達の警戒状態を表している。モンスター達だって、自分の部屋で休んでいるときと、最前線で歩哨に立っているときとじゃあ、装備や備え(防御呪文など)が違うのは当然だろう?
ダンジョンの設計が決まったら、以下の指針に合わせて各部屋におけるアラートファクターを決めて欲しい。
ちなみにここではアラートファクターが高いほど、モンスター達の警戒度が高いと考えてくれ。
アラートファクターの初期値表
0-4 典型的なダンジョン。衛兵も気を抜いている。キッチン、リビングなどの非武装地帯。
5-9 典型的な警戒区域。衛兵たちは兵長、重要人物、宝物庫などの重要地域を守っている。
また、精鋭、ハンターなど鍛え上げられたものたちのリビングエリアもこの区分に入るだろう。
10-14 前線の衛兵詰め所。精鋭の歩哨。見張り塔の兵士など。
例えば、ダンジョンの入り口付近に設けられた衛兵所では、衛兵達の注意や戦闘への準備度を反映してアラートファクター(以下AF)は10になる。一方、ダンジョンの最奥部や滅多に使われない通路の監視所などでは、戦士達はトラブルを全く予期していないとみなし、AFを0と考えて差し支えないだろう。
緊迫度の高いところほど高いAFを持っている(最大15程度)と考えて良いが、全ての部屋についていちいちAFを決めておく必要はない。ダンジョンの警備体制がどの程度かのみ考えて、アドリブで当てはめていくのが簡単だろう。
#いちいち個別にAFを決めるのが面倒なら、初期AFは0,5,10,15しか使わないことにしてもいいだろう。
#これなら、「AFの変化」を記録するのも簡単だし。
これらのモンスター達は、通常以下のような状態にあると考える。
アラートファクターと状態
0-4 戦闘要員でも武装しておらず、術者は呪文を使っていない
5-9 戦闘要員は鎧/盾を装備しているが、武器は鞘にしまったままである。
術者は防御などの有用な呪文で、効果時間が4時間以上の呪文を使用。
10-14 戦闘要員は鎧/盾を装備しているが、武器は鞘にしまったままである。
クロスボウがあれば矢を装填している。術者は効果時間が1時間以上ある
呪文を使用している
15-19 戦闘要員は鎧/盾を装備しているが、武器は鞘にしまったままである。
クロスボウがあれば矢を装填している。戦闘に有利な場所(coverが
受けられる場所、待ち伏せ可能な地点など)にいるかもしれない。
術者は効果時間が30分程度の呪文をも使っている
20+ 戦闘要員は武器/防具のすべてを準備済みであり、戦闘位置で(可能
なら)飛び道具を発射できる態勢をとる。また、突撃に備えて長得物
を準備するかもしれない。術者は可能な限りの呪文を使用して戦闘
に備える
例えば、休息所にいるメイジ(AF0)は呪文を温存しているが、最前線に配備されたメイジ(AF10)なら効果の長持ちする呪文を使用し、非常時に備えている。また、AFが15に上がったなら、差し迫った戦闘のため、効果時間が30分程度の防御呪文や攻撃補助呪文をも使用している、ということになる。一方AF5の兵士はパトロールの際でも武器を準備していないし、クロスボウの弦もゆるめておくが、戦闘区域(AF15)ならクロスボウに矢をセットしたままにしておく。いつ敵が現れるかわからないからだ。
<アラートファクターの変化>
AFは、ダンジョン内で生じた出来事に応じて変化する。
例えば、ダンジョンに侵入者が現れたとおぼしき物音----戦いの喚声や、呪文の爆発音など----はそれを聞いたもの全てに危機への対応を迫るだろう。また、聞き慣れない物音や場にそぐわない存在・音声は、すぐさま戦いへの準備を呼ぶものではないにせよ、警戒心を抱かせるかも知れない。見かけない人間が通ろうとしたときや、邪悪な寺院に善の神のホーリーシンボルを身につけた男がやってきたような場合がそれだ。逆に、良く見知った人間や、善の寺院であれば、警戒されることはなく、AFも上昇するようなことにはならないだろう。
AFは以下の指針に従って変化する。
警報(ホーン、ベル) +10
伝令による警報 +10
戦いの騒音 +5
呪文の音(fireball, lightning) +5
聞きなれない大声 +2
場違い・奇妙な人物 +2
#このほか、±2〜5の範囲で変化させて良いと思う。
#また、「敵が去ったとの情報」など、AFが下がる様な出来事もあるだろう。
当然ながら、音などは聞こえる場所でなければ変化しない。よって、戦いの騒音などはその部屋から離れている距離に応じてHearチェックを行い、成功した場合のみ適用される(当然、このチェックはPC達が騒音を立てている間中毎R行われる)。
ただし、警戒心を強く持つ者と油断しきったものではこうしたチェックにも成功率の際が現れてしかるべきである。
その修正を以下に示す。
アラートファクターによる感覚への修正
AF値 技能への修正
0-4 -2
5-9 +0
10-14 +1
15-19 +2
20+ +4
これらの修正はListen,
Sense Motive, Spotなどの技能に適用される。また、初戦闘ラウンドのイニシアチブや、侵入者への準備のチェックにも適用してよい。
状況による変化はそのダンジョンを構成するクリーチャー達の性質にも左右される。例えば良く訓練され、組織化されたホブゴブリンの一団は、争乱の音によりよく反応するだろうし、逆に間抜けなオーガの一団であれば、そうしたサインも見逃してしまうかも知れない。大まかな指標として、ローフルであったり、アグレッシブなクリーチャーの集団であれば、そのAFは平均より+2〜+5高いと考えて良い。一方、カオティックであるとか怠惰な性質を持つクリーチャーには−2〜−5修正を与えてもいいだろう。
なお、高いAFを維持するのは非常にストレスのかかる作業である。よって、AFが変化してから30分が過ぎるごとに1ずつ減少し、元の値にもどっていくことにしてもよい。
<アラートファクターと行動>
AFが変化したときには、それぞれのAFに応じ、以下のような行動をとる。
アラートファクターによる対応表
0-4 異常を感じる事無く、通常どおりの活動を続ける。
5-9 不安を感じたり、警戒をはじめる
#このとき、変異の正体を確かめに行くか否かはWISチェックなどで。
10-14 武器の準備をはじめ、戦いに備える
15-19 ダンジョン全体が警戒態勢に入る。戦闘要員は侵入者を撃退すべく、バリケードや不意打ちの準備をはじめる
20+ 完全な戦闘態勢。侵入者は見つかり次第攻撃される
例えば、聞き慣れない大声を聞きつけた(AF+2)のが見張りに立っている兵士(AF10)であれば即座に武器の準備を始めるが、休息区にいる兵士(AF0)であればいま仲間としているポーカーに夢中で何もしない、などといった具合に使用する。
また、伝令や伝達呪文(sendingなど)によって知らせを受けたり、ダンジョン全体に行き渡るような警報や轟音が起これば、ダンジョン深部にいるクリーチャー達は装備をしっかり固めた上で、前線か、待ち伏せに適した箇所に移動するだろう。他の仲間達と連絡を取り合おうとするかもしれないし、訓練を受けた者たちなら侵入者を挟み撃ちにしようとするかもしれない。
さらに、ダンジョンそのものすら変化させられるかも知れない。ふだん(生活に邪魔なため)起動していなかったトラップの安全装置を解除したり、侵入に備えてトラップワイヤやバリケード、非常扉、跳ね橋などを活用する可能性もある。
<運用>
このように、AFは幅広い活動をカバーしうる。では、DMが現実にシナリオ上で利用するにはどうすればいいだろうか。
まず、AFを管理するためのシートを作成するといいだろう。シートには「部屋No」「AF」「メモ」などの欄があればよい。
「部屋No」はダンジョンマップの部屋のナンバーに、また「AF」はその部屋固有のAFを記入しておく。
#わざわざ別シートにしなくてもマップに直接書きこんでもいいと思う。
そして「メモ」欄にはAFの変化に応じた行動を書いておく。たとえば6番の部屋にいるモンスターは「AFが10になったら19の部屋に移動し、戦闘準備」とか。その部屋にPCが入ったときのAFに応じ、DMはその部屋の状況説明を変更するのである。
また、AFに応じてワンダリングモンスターとの遭遇率を変えるのもいいだろう。その場合にはAF管理シートにAF値と「d20していくつ以下が出たらエンカウント」の対応表を作っておく。例えばAFが0-5なら1か2で、6-10なら1〜5で、など。
#さらに、AFに応じてエンカウントする相手を変えるのもいいかもしれない。AFが低ければ非戦闘員と出会うことも多いだろうが、AFが15のときに出会うのは稀だろう:この場合、エンカウント相手の大半は武装した兵士ということになる。このようなオプションを追加したければ、ランダムエンカウント表をAFの区分に応じて複数用意しておくか、単に1d10+AFで判定(10までは非武装、10以上なら衛兵、20以上ならロイヤルガードなど)というふうに分けておけばいいだろう。
#あと、シートの端にでも『全体でのAF』欄を作っておくと便利かもしれない。ダンジョン全体のAFがあがった時には個々の部屋のAFに、この『全体〜』の値を加えて計算するのだ。
このアラートファクターの概念は、D20ゲームのみならず、様々なゲームも利用できるだろう。
どこかに潜入するようなミッションのシナリオをするときには、ぜひ利用して欲しい。