Eberron Under the Glass | 12/13/2004 |
ショーン・K・レイノルズ
「エベロン・アンダー・ザ・グラス」へようこそ。ここはいつも遊んでいるD&Dがエベロンではどう変わるか、という点について述べるコラムである。キャラクター達はいつものように、例えば失われたアーティファクトを探索しなくてはならなかったり、古文書から知識をあさったり、はたまたゴブリン達の暴動に対処しなければならなかったりするわけだが、エベロンではこれらがみな多少違った風に行われることになる。本シリーズは、エベロンで遊ぶプレイヤーやDMの皆さんがこの世界における「それらしさ」を理解する一助となるはずだ。
今回はエベロンにおける次元界の扱いと冒険とのかかわりについて見ていこう。
殆どのD&Dのキャンペーンにおいて、他の次元界は非常に神秘的かつ伝説的なものである。一般人は恐らく「デーモンはアビスから来る」とか「デビルはバートルから来る」とかその程度にしか他の次元界を知らない(その二つにしても混同していることが殆どである)。こうした一般人が混沌の次元界やゴーストの世界について尋ねられても、そんな正気の人間が行きそうにもない場所のことなど知ったことではないし、第一今年の収穫のほうがよほど重要であるというだろう。
対照的に、エベロンでは次元界の運動が解明されており、物質界と次元界との距離や顕現地帯の関係が広く一般人にも理解されている。例えばシャーンの住民は彼らの都市の塔がここまで高いのはシラニアの顕現地帯に存在するからだということを知っているし、ゴーストはドルラーが隣接しているときによく現れること、ラマニアが遠方にある時は動物が余り子供を産まなくなることも知っている。
しかしエベロンでさえ、それぞれの次元界がどう言うところか、またどんな生物が生息しているかという事まで一般人が熟知しているわけではない。例えばブレランドのメイジライトに、どんな生物がフェルニアに生息しているか聞いてみよう。彼は『エベロン・ワールド・ガイド』に記載されてるようなモンスターをすらすら挙げるだろうか? いや、恐らくは「炎の怪物」と答えるに留まるだろう。軍事国家カルナスの有能な司令官でさえシャヴァラスで戦う軍の将軍や、かの地に存在する要塞の名前を答えることは出来まい。次元界の名前と特質は広く知られているものの、冒険者にとって価値のある情報を知っているのは普通は学者だけである。
ダンジョンマスターズ・ガイドでは、高レベルのキャラクターにとって次元間を移動する冒険は良くあることだと述べている。しかしエベロンではPCクラスを持つキャラクターはそれ自体が珍しく(そしてNPCクラスであるアデプトとメイジライトにはいかなる次元間移動の呪文もない)、プレイン・シフトが使えるほど高レベルのキャラクターはさらに稀であり、結果として次元間移動は非常にまれな物となる。
しかし、稀ではあるがないわけではない。そして賢明な冒険者はそのような冒険を行う前に自分達が行く予定の次元界について十分に調査する。例えばダーンヴィは秩序の次元界である。しかし、誰が――或いは何が、この次元界を支配しているのか? 彼らはどのように中立、ないし混沌属性の訪問者を扱うのか? セラニスは妖精の宮廷であるが、統治機構や地理はどんな物であろうか? いにしえの偉大なる英雄達がそこには眠っていて、やがて必要とされたときに甦るべく、その時を待っているのだろうか?
エベロン世界の次元界はエベロンそのものとのみ関係を持っており(外方次元界が複数の物質界と関係を持つような一般的なD&D多元宇宙とは違う)、過去も、そして現在でもエベロンで起きる出来事には何がしかの形で次元界が影響を及ぼしている。D&D宇宙観には北欧神話の神々の家であるイスガルドが存在し、これはキャンペーンの物質界に北欧神話的な文化があるか否かを問わない。対してエベロン宇宙観では、あらゆる次元界は何らかの形でエベロンという物質界およびその文化に影響を及ぼしている、或いはかつて及ぼしていたのであり、そうではないどんな次元界も、そうした次元界に住まうクリーチャーも存在しない。エベロンにおいて冒険者が他の次元界に赴かねばならないならそれは何らかの意味でエベロンにとって重要であるか、時として叙事詩的な意義すら持つべきであり、単なる気まぐれの結果であるべきではない。エベロンの英雄がイリアンに赴くなら、それはアルコンとちょっとおしゃべりを楽しむためではなく、シャーンに迫る雲霞の如きレイスの大群を打ち払うべく、かの光の軍団の助力を請うためであるべきである。同様にシャヴァラスに赴くのは単にフィーンドとの戦いを楽しむためではなく、かつてエンジェルによって建設され、今はデビルによって支配されている塔の下に埋められた、失われたアーティファクトを取り戻すためである。エベロンにおいて戯れに次元界を渡る事があってはならない・・・それは常に深刻な事態を意味するのだ。
エベロンから別の次元界への移動は稀であるが、残念なことに逆方向の移動ははるかに頻繁に行われている。隣接状態にある次元界からは善悪を問わず来訪者が訪れるし、他のあらゆる次元界にはエベロンに侵入する隙を虎視眈々と窺う凶悪なクリーチャーが存在する。古来、死すべき者達は世代を超えてエベロンをこれらの侵略から守りつづけ、侵略者を元の次元界に押し戻してきた。通常のキャンペーンにおいて他の次元界からの侵攻は驚きと恐怖、混沌と混乱をもたらすだろう。エベロンにおいてもそれは同様だが、そうした侵略に対する剣と呪文の備えが忘れられた事はかつて無いのである。