Eberron Under the Glass 11/29/2004

呪われた魔法のアイテム

ショーン・K・レイノルズ


 

「エベロン・アンダー・ザ・グラス」へようこそ。ここはいつも遊んでいるD&Dがエベロンではどう変わるか、という点について述べるコラムである。キャラクター達はいつものように、例えば失われたアーティファクトを探索しなくてはならなかったり、古文書から知識をあさったり、はたまたゴブリン達の暴動に対処しなければならなかったりするわけだが、エベロンではこれらがみな多少違った風に行われることになる。本シリーズは、エベロンで遊ぶプレイヤーやDMの皆さんがこの世界における「それらしさ」を理解する一助となるはずだ。

今回はエベロンにおける呪いのアイテムについて見ていこう。

 

それは何故存在するのか?

DMGで述べられている如く、標準的なキャンペーンにおける魔法のアイテムは、大体以下の三つのうちどれかに当てはまる。まず最初に製作過程の失敗、恐らく不注意の結果として生み出された、望まれざる失敗作。二番目にエントロピーなり混沌なりによってすでに存在する魔法のアイテムが変調をきたしたもの。そして最後に邪悪であるか狂った呪文使いによって意図して作られた物。この三つの分類の中で、我々は更に無数の呪われたアイテムを目にすることができる。例えばさも正常に働いているように見せかけるが実際には何ら機能していない物、時々しか働かない物、根本的に異なった機能を持っている物など。エベロンのキャンペーンではこれらの分類それぞれにさらにちょっとした捻りが加わる(そして、DMGで述べられない第四の分類も存在する)。

 

エベロンにおける呪いのアイテムの分類

製作過程の失敗作:エベロンの設定を他のワールドと異なるものにしているものの一つが、マジックアイテム製作が一握りの優秀な呪文使いではなく多くの職人に支えられている産業であるということである。標準的キャンペーンに比べてより多くの人々が魔法のアイテムを作れば、より多くのミスをする機会があることだろう。

面白い冒険のアイデアとして、特定の職人を原因とする呪われたマジックアイテムの追跡というのが考えられる。アイテム作成に必要な物質要素を使い果たしてしまった彼は粗悪な代用品を用い、とんでもない副作用を持つ呪われたアイテムを製作し続けているのだ。更にひどいことには彼は他の職人にこの手法を教え、呪われたアイテムの拡大再生産を始めてしまっている。エベロンの冒険者は物事が見た目どおりである事は滅多に無いのを知るべきである。「呪われたアイテムによってコーヴェアを転覆しようとする大陰謀」が、実は職人のちょっとした手違いに単を発しているかもしれないのだ。しかし一方で、代用品を使うことを提案し、それを用意したのは冷酷さを感じさせる謎の人物であり、彼は何らかの意図を持っていたのかもしれない・・・

幸い、大量生産されたアイテムの中で瑕疵を持つ物があっても、その大部分は使用者に深刻な害を引き起こすようなものではない――キュアライトウーンズのポーションが二日酔いを引き起こしたり、ブラーのスクロールが使用者をピカピカ光らせたり、その程度の話である。そのくらいならば呪いというよりもむしろ不便というレベルであろう(ダンジョンマスターズガイドにある致命的なアイテムいくつかと比べて、の話だが)。

エントロピーと混沌:エベロンはすでに存在する魔法に対して強い影響を与える場所が5つも存在するという点で珍しい世界である。うち二つは物質界に、残り三つは次元の彼方に存在する。すなわちカイバー、モーンランド、セラニス、キスーリ、そしてゾリアットである。これらの領域で作成されたか、これらの領域に充分な間置いておかれた(場合によってはその次元界が隣接しているだけでも)アイテムはこれらの影響を受けて変質し、呪われた特性を獲得してしまうかもしれない。カイバーはアイテムを邪悪な者にしか使えないようにしてしまったり、善なる領域でそれが作動しないようにしてしまったりする。モーンランドは治療のアイテムを一見働いているのに働かないようにしてしまったり、ランダムにしか働かないようにしたり使うたびに魔法的バックラッシュを受けるようにしてしまったりする。キスーリはアイテムに呪いをかけ、断続的にしか働かなかったり、アイテムの機能を正反対だったり全く異なったりするものに変えてしまう。セラニスの影響を受けたアイテムは使用者を欺いたり、何らかの欠点を持っていたり、持続時間や射程距離が短かったり長すぎたりする。ゾリアットは断続的に機能するか、異なったり反対の機能を持たせたり、または奇妙であったり不快であったりする欠点や使用条件を付加する。

意図的に作成されたもの:標準的なキャンペーンでは魔法は全く一般的ではないために呪いのアイテムを作るのは正直割に合わない。敵を倒したいなら暗殺者を雇ったほうがよほど安くつくし、混沌を広めたいならそれを使うものだけを傷つける魔法のアイテムより自分たちの側にだけ有益なアイテムを作ったほうが効率がいい。つまり標準的キャンペーンでわざわざ魔法を作るような人々は、よほどに邪悪であるか狂っているかのどちらかである。一方エベロンではこれらの世界とは比べ物にならないほど魔法が一般的であるために、異常と言うほどではないものたちでもそうした手段に訴える可能性は高い。

例えば二人の貴族が反目しているとする。片方がアーティフィサーに呪いの剣を作るよう依頼し(+2のロングソードを作るための8315gpの費用は貴族にとって大した物ではないし、エベロンでは殆どの小都市にそうした下級マジックアイテムを製作できる職人がいる)、第三者から相手の貴族にそれが渡るように仕向ける。そして相手に決闘を挑むのである。今まで効力を発揮していた魔法の剣は突然重くなり、最初の貴族は勝利する。それは傍目から見れば全く正々堂々とした決闘に見えることだろう。この貴族達が生きるよりもずっと長い間剣は存在しつづけるだろうが、それでも最初の貴族の家系の者に出会えば再び鉛のように重くなることだろう。

またエベロンには世界に混沌を広めるのに熱心な二つの主要な勢力がある。一つはロード・オブ・ダストであり、彼らは強力にして邪悪、自らの目的のためだけに世界に混沌をもたらす。彼らには呪われたアイテムを作るのに充分な時間とリソースがあり、こうしたアイテムが死すべきものの手から手へ渡り、不幸と恐怖を振りまくことに喜びを覚える。歪んだ形で願いを叶える「猿の手」などはまさにこうした目的で作られたものであろう。

混沌を広める今ひとつの勢力はトラベラーのカルトである。この神は世界を放浪し、混沌を広げているといわれており(しかし、実際のところ彼は他の全てのエベロンの神と同じく物質界には存在しない)、彼の崇拝者はしばしば彼の影となってその意志を遂行する為に呪われたアイテムを作り、世界に広める。よく言われるとおり「トラベラーの贈り物には気をつけろ」なのだ。ドッペルゲンガーやチェンジリングのアーティフィサーなどは一年もの間ある都市で生活しながら呪われたアイテムを作りつづけ、それらが効力を発揮し始めたのを見届けてから、別の都市に移り住み、名前も姿も変えてまた別の計画を練り始めるといったことを繰り返すこともある。

キャラクターの行動によるもの:ある種の呪いのアイテムはそれらが使用される過程で生まれる。例えばデルキールの返り血を浴びた鎧は着用者に血への渇きを誘発するかもしれない。心正しき聖職者を殺害したホーリー・アヴェンジャーは永遠に呪われ、シラニアが隣接している間か聖なる空間でのみ使用できるようになるかもしれない。強力なリッチを打ち倒したスタッフ・オブ・パワーは魔力の逆流により、起動されるたびに使用者の生命力を少しずつ奪っていくかもしれない。エベロンでは物語が常に何もかも丸く収まるわけではないし、お気に入りのアイテムにこうしたペナルティがついてしまうのはそうしたテーマに反映に繋がるだろう。

呪いのアイテムがランダムである必要は無い。それらは冒険にでる理由であったり、解決策へのとっかかりであるかもしれないのだ。それは貴重なアイテムでありながら不便だったり予期せぬ欠点を持つのかもしれない。歴史的に重要な価値のあるものかもしれない。現在進行中のキャンペーンで現れては消えるキー・アイテムかもしれない。言い換えれば殆どの呪われたアイテムにはそれ独自の物語があり、あなたのキャンペーンにそれがどうかかわるかということが問題なのだ。