Monk-Tips!
 003:モンクのダメージディーリング能力を検証する
    (副題:モンクはアビスをめざす)
090410
モンク向上委員会
いしかわ・編


 モンクがイマイチ使われない理由として、モンクが前衛として火力不足だという話を複数の場所で聞きました。
 防御力はそこそこ高いけど、攻撃力が頼りないから使いにくいんだ、と。

 しかしこの手の発言、結構な割合でイメージだけで言ってることが多々ありまして、そのまま聞いてるととんでもないことになったりします(歴史上の科学的発見やなんかにも、直感に反する事実というものがたくさん転がってるわけで)。
 平たく言うと、「それ計算してから言ってんだろうなンンー?」と。

 ということで、この場を借りて検証してみました。
 条件は以下の通りです。

・ファイターとモンクの通常時/連打時のダメージ期待値を算出して比較
・ファイターは《武器熟練》ありバージョンとなしバージョンをそれぞれ算出
・ファイターの武器はロングソードとグレートソードの2種類
・モンクの武器はクオータースタッフ両手持ち
  (素手打撃と同じ威力で、かつ両手持ちのダメージボーナスがあるため)
・すべて筋力16(+3) ・1レベル ・中型サイズ ・攻撃相手のACは10-20まで  


 これでファイターとモンクの火力にどれだけの格差があるのか解き明かしてやろうじゃねえかというわけです。
 モンクのパワー見せたるわー!



●何はなくとも
 まずはベースになるロングソード持ちファイターの火力から。

a-1.ファイター、ロングソード 攻撃ボーナス:+4(1d8+3/19-20)
   ダメージ期待値:7.5
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 75% 6.1875=(7.5*(0.75+0.075))
11 70% 5.775=(7.5*(0.7+0.07))
12 65% 5.3625=(7.5*(0.65+0.065))
13 60% 4.95=(7.5*(0.6+0.06))
14 55% 4.5375=(7.5*(0.55+0.055))
15 50% 4.125=(7.5*(0.5+0.05))
16 45% 3.7125=(7.5*(0.45+0.045))
17 40% 3.3=(7.5*(0.4+0.04))
18 35% 2.8875=(7.5*(0.35+0.035))
19 30% 2.475=(7.5*(0.3+0.03))
20 25% 2.0625=(7.5*(0.25+0.025))

    a-2.ファイター、ロングソード、《武器熟練》 攻撃ボーナス:+5(1d8+3/19-20)
       ダメージ期待値:7.5

AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 80% 6.6=(7.5*(0.8+0.08))
11 75% 6.1875=(7.5*(0.75+0.075))
12 70% 5.775=(7.5*(0.7+0.07))
13 65% 5.3625=(7.5*(0.65+0.065))
14 60% 4.95=(7.5*(0.6+0.06))
15 55% 4.5375=(7.5*(0.55+0.055))
16 50% 4.125=(7.5*(0.5+0.05))
17 45% 3.7125=(7.5*(0.45+0.045))
18 40% 3.3=(7.5*(0.4+0.04))
19 35% 2.8875=(7.5*(0.35+0.035))
20 30% 2.475=(7.5*(0.3+0.03))
 ACが20ある相手であっても、期待値的には毎ラウンド2点はダメージが通るというのはちょっと意外。
 そして《武器熟練》がダメージ期待値をおよそ0.4ずつ押し上げていることにも注目していただきたい。この0.4のために幾多のプレイヤー達が《武器熟練》を取っているわけですよ。まったく地道な努力です。


●両手武器使うだろ常識的に考えて
 ファイターが武器をグレソに換装するとこうなる。
 そーいえば両手武器と片手武器の威力の差を検証してるサイトって見ないなぁと思いつつ。

c-1.ファイター、グレートソード 攻撃ボーナス:+4(2d6+3/19-20)
   ダメージ期待値:11
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 75% 9.075=(11*(0.75+0.075))
11 70% 8.47=(11*(0.7+0.07))
12 65% 7.865=(11*(0.65+0.065))
13 60% 7.26=(11*(0.6+0.06))
14 55% 6.655=(11*(0.55+0.055))
15 50% 6.05=(11*(0.5+0.05))
16 45% 5.445=(11*(0.45+0.045))
17 40% 4.84=(11*(0.4+0.04))
18 35% 4.235=(11*(0.35+0.035))
19 30% 3.63=(11*(0.3+0.03))
20 25% 3.025=(11*(0.25+0.025))
c-2.ファイター、グレートソード、《武器熟練》 攻撃ボーナス:+5(2d6+4/19-20)
    ダメージ期待値:11
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 80% 9.68=(11*(0.75+0.075))
11 75% 9.075=(11*(0.75+0.075))
12 70% 8.47=(11*(0.7+0.07))
13 65% 7.865=(11*(0.65+0.065))
14 60% 7.26=(11*(0.6+0.06))
15 55% 6.655=(11*(0.55+0.055))
16 50% 6.05=(11*(0.5+0.05))
17 45% 5.445=(11*(0.45+0.045))
18 40% 4.84=(11*(0.4+0.04))
19 35% 4.235=(11*(0.35+0.035))
20 30% 3.63=(11*(0.3+0.03))
 表のどの部分を見ても大体ロングソードの1.5倍くらいに収まってるあたりは興味深い。また、片手武器と両手武器の威力の差が、実際の効率という面から考えると、そこまで大きなものでもないということがおわかりいただけるでしょうか。
 個人的には、《強打》のバランスさえ見直されれば、3.5版のシステムでも片手武器と両手武器のバランスはほとんど問題ないと思うのですが、どうなんでしょうね?


●きたぞわれらのモンクさん  
 そして我らがモンクの火力はこうだッ!

b-1.モンク、クオータースタッフ両手持ち 攻撃ボーナス:+3(1d6+4/*2)
   ダメージ期待値:7.5
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 70% 5.5125=(7.5*(0.7+0.035))
11 65% 5.11875=(7.5*(0.65+0.0325))
12 60% 4.725=(7.5*(0.6+0.03))
13 55% 4.33125=(7.5*(0.55+0.0275))
14 50% 3.9375=(7.5*(0.5+0.025))
15 45% 3.54375=(7.5*(0.45+0.0225))
16 40% 3.15=(7.5*(0.4+0.02))
17 35% 2.75625=(7.5*(0.35+0.0175))
18 30% 2.3625=(7.5*(0.3+0.015))
19 25% 1.96875=(7.5*(0.25+0.0125))
20 20% 1.575=(7.5*(0.20+0.01))
b-2.モンク、クオータースタッフ両手持ち、連打 攻撃ボーナス:+1 
   (1d6+3/*2)*2 ダメージ期待値:6.5
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 60% 8.19=(6.5*(0.6+0.03))*2
11 55% 7.5075=(6.5*(0.55+0.0275))*2
12 50% 6.825=(6.5*(0.5+0.025))*2
13 45% 6.1425=(6.5*(0.45+0.0225))*2
14 40% 5.46=(6.5*(0.4+0.02))*2
15 35% 4.7775=(6.5*(0.35+0.0175))*2
16 30% 4.095=(6.5*(0.3+0.015))*2
17 25% 3.4125=(6.5*(0.25+0.0125))*2
18 20% 2.73=(6.5*(0.20+0.01))*2
19 15% 2.0475=(6.5*(0.15+0.0075))*2
20 10% 1.365=(6.5*(0.10+0.005))*2
 AC20の相手に限り、連打しない方が効率がいいという事態が発生しているのに注意!
 モンクを使う時は、連打と通常の攻撃とで効率が逆転する可能性があることを把握しておいた方がいいかもしれません(そんなことは滅多に起こらないでしょうけども)。  なお、連打時のダメージへの筋力ボーナスは、両手持ちだろうとなんだろうと1倍なのはお忘れなきよう。


●考察
 計算結果から読み取れるのは、こんな感じでしょうか。

・単発の攻撃ではモンクは常にファイターの後塵を拝する (ロングソード持ちの場合は期待値で0.5〜1点程度、グレートソード持ちの場合は1.5〜4点程度の差がある)
・連打を行った場合、モンクの攻撃は相手のAC次第でロングソード以上のダメージ効率を得る (通常はAC17以下でモンクの方が高効率、ファイターが《武器熟練》ありの場合AC15以下でモンクの方が高効率)
・連打を行っても、グレートソードよりダメージ効率では劣る
 

 つまりは、こと全力攻撃での攻撃力に限って言うならば、

    片手武器ファイター<モンク<両手武器ファイター  

 という構図があるわけです。
 1レベル時点でAC15越えの敵というのはそんなに多くないですから、この構図はどこの卓であってもほぼ揺るがないでしょう。
 で、AC的に両手武器ファイターと張り合う程度なのに、攻撃力的には片手武器ファイターと競うあたりである、という点が、「モンクは微妙だ」というイメージの源泉となっているのではないかと思われます。
 しかし、劣る劣ると言ってもロングソード使いと比べたらそこまで圧倒的な差がついてるわけでもないし、連打時にはグレソほどじゃなくても結構高いダメージが出るし、セーヴやなんやの耐性や移動速度(ファイターは中装鎧を着るだろうから)ではモンクの方が高いので、引き合っている…と思おう。思いたい。思わせて……。


●アビス帰りのモンクのぱわぁ
 表を見たらモンクもそこそこやれなくもないっぽいと分かった。
 でもなんかこう微妙な感じが拭えない…そんなあなたにオススメなのがこちら《獣の爪》[アビスの末裔]!
 魔物の書 1 奈落の軍勢』所載のこれは、「肉体武器の命中とダメージに+1(以上)不浄ボーナス」という、レッサー武器体得とでもいえそうなステキ特技。むしろ前提条件がないぶんこっちのが上かもしれないくらいですよ奥さん。
 まあ他の[アビスの末裔]特技を取った瞬間に属性が混沌になってexモンクになっちゃうけどドンマイ。
 というわけで早速《獣の爪》を持たせた場合のモンクの素手打撃の効率を検証。両手武器が片手に変わった影響で単発攻撃時のダメージが増えてないのはご愛敬です。

d-1.モンク、素手打撃、《獣の爪》 攻撃ボーナス:+4(1d6+4/*2)
   ダメージ期待値:7.5
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 75% 5.90625=(7.5*(0.75+0.0375))
11 70% 5.5125=(7.5*(0.7+0.035))
12 65% 5.11875=(7.5*(0.65+0.0325))
13 60% 4.725=(7.5*(0.6+0.03))
14 55% 4.33125=(7.5*(0.55+0.0275))
15 50% 3.9375=(7.5*(0.5+0.025))
16 45% 3.54375=(7.5*(0.45+0.0225))
17 40% 3.15=(7.5*(0.4+0.02))
18 35% 2.75625=(7.5*(0.35+0.0175))
19 30% 2.3625=(7.5*(0.3+0.015))
20 25% 1.96875=(7.5*(0.25+0.0125))
d-2.モンク、素手打撃、《獣の爪》、連打 攻撃ボーナス:+2(1d6+4/*2)*2
   ダメージ期待値:7.5
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 65% 10.2375=(6.5*(0.6+0.0325))*2
11 60% 9.45=(6.5*(0.6+0.03))*2
12 55% 8.6625=(6.5*(0.55+0.0275))*2
13 50% 7.875=(6.5*(0.5+0.025))*2
14 45% 7.0875=(6.5*(0.45+0.0225))*2
15 40% 6.3=(6.5*(0.4+0.02))*2
16 35% 5.5125=(6.5*(0.35+0.0175))*2
17 30% 4.725=(6.5*(0.3+0.015))*2
18 25% 3.9375=(6.5*(0.25+0.0125))*2
19 20% 3.15=(6.5*(0.20+0.01))*2
20 15% 2.3625=(6.5*(0.15+0.0075))*2
 つえー《獣の爪》超つえー
 クリティカルレンジが狭い分を除けば熟練なしのファイターと互角にやれてますよ? それどころか、連打時には敵AC13までならグレソ持ちを上回る効率を発揮してしまうハッスルぶり。
 3レベルで素手打撃への熟練を取れば、さらなるパワーアップが期待できそうです。

●結語にかえて  
 というわけで、モンクの火力をファイターと比較してみたわけですが。
 結果として、低レベルのモンクは連打をいかに叩き込んでいくかがすべて、という一点に集約されそうな勢いです。
 モンク使いを目指すなら、全力攻撃を使える位置取りなどを研究していくのが大事だ、ということですね。
 そのあたりについては、いずれ書くこともありましょう。
 そして、モンクの火力は片手武器を持ったファイター、いわゆるソード&シールドスタイルと釣り合うようにバランスが調整されていることもお分かりいただけたと思います。
 平均的に強い片手武器ファイターをやるか、連打が使えれば強まる素手打撃でモンクをやるかという選択肢が発生しているわけですね。
 ただ、そこで大部分のプレイヤーが片手武器ファイターをやるか、両手武器ファイターをやるかという選択を行いがちであるがために(そして両手武器ファイターの方が火力とACのバランスでトレードオフしている感がわかりやすいために)、今一つ特性が分かりづらいモンクを敬遠してしまいがちであったということも、なんとなくですが見えてきたのではないでしょうか
 しかしこれからは違います。
 モンクとファイターの火力の特性の違いがこのように明確に表となって提示されたわけですから、その差を把握して、「モンクか、ファイターか」という選択がなされていくであろうと期待するものであります。
 それにしても《獣の爪》は強い。グレソ持ちファイターにまで勝てそうなパワーがあるとは…これなら他の前衛職に比べて弱いとか言われることも


 e.バーバリアン、グレートソード、激怒 攻撃ボーナス:+6(2d6+7/19-20)
  ダメージ期待値:14
AC 命中率 1ラウンドあたりダメージ期待値
10 85% 13.09=(14*(0.85+0.085))
11 80% 12.32=(14*(0.8+0.08))
12 75% 11.55=(14*(0.75+0.075))
13 70% 10.78=(14*(0.7+0.07))
14 65% 10.01=(14*(0.65+0.065))
15 60% 9.24=(14*(0.6+0.06))
16 55% 8.47=(14*(0.55+0.055))
17 50% 7.7=(14*(0.5+0.05))
18 45% 6.93=(14*(0.45+0.045))
19 40% 6.16=(14*(0.4+0.04))
20 35% 5.39=(14*(0.35+0.035))
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