Monk-Tips!
 001:即身成道アップデート
090326
モンク向上委員会
いしかわ・編


 即身成道。
 それは真にモンクとしての道を究めた者のみが得ることのできる究極の能力。
 無念無想の境地に至り、人界との関わりさえも断ち切る、精神の物質に対する勝利を体現する能力。

……のはずなのですが、ルールブックをよーく読むと、これがかなり微妙な能力だったりします。
 というわけで、即身成道の効果をPHBの51ページから箇条書きにしてみました。
・呪文や魔法的効果を判断する上で人型生物でなく来訪者として扱われる(蘇生は可能)
・ダメージ減少10/魔法を得る
 思わず「えっ!?」とか言っちゃうわけですが。

 ファイターの究極奥義《武器の極意》(in『PHB2』)は、微妙な部分もあるにせよなかなかに有効な性能でしたが、モンクの究極奥義はあちらと違って
有効な活用法というものがほとんどない死に気味能力になっちゃってます。
 要するに、いくつかのサプリに登場する「なっちゃう系上級クラス」のように来訪者になっちゃうわけではなく、あくまでも呪文やパワーや擬似呪文や超常能力なんかの対象として来訪者扱いになるだけだぜと。
 つまりホールド・パースンやドミネイト・パースンの対象外になるんだぜと。

……これにどれだけの意味があるのか、デザイナーサイドはわかってるんでしょうか?
 わたくしWotCの社屋に鷹爪拳と激震掌を叩き込んでやりたい気持ちでいっぱいですよ。もー! もー!

 PHBの呪文リストを見ればすぐわかるのですが、20レベルキャラにぶつけられるような高レベルな呪文で、対象が人型生物だけなものはまず無いです。
 大体このレベルで飛んでくるのはマス・ホールド・パースンドミネイト・パースンじゃなくてマス・ホールド・モンスタードミネイト・モンスターでしょう常識的に考えて。
 パースンかどうかとかもうほとんど関係ありませんっていうか、むしろ
エンラージ・パースンができなくなったりして微妙に弱体化してます
 これ逆に罰ゲームだろ。
 「だってオラ…来訪者だから…」とかそんなネタが笑い事じゃない不利益っぷりを醸し出してますよこのヤロウ。

 一方で、来訪者にだけ影響しない呪文なんて都合のいいものはそうそうありませんし、あったとしてもピンポイント過ぎて使いでがありません。
 最初、別次元界に飛ばされた時に、ディスミサルバニッシュメントをわざと食らうことで出身次元界へ帰る……なんて使い方ができるかもとか思ったんですが、両呪文は他次元界クリーチャーなら誰でも退去させられるので来訪者は関係ありませんでした……。
 レイズ・デッドだけでなくリヴァイブ・アウトサイダーでも蘇生できるくらいでしょうか、意味があるとしたら。


 そしてもう一つの効果、ダメージ減少。
 ダメージ減少はないよりはあった方がいいに決まってますから、もらえるものはもらっておけばOKなのですが、克服条件がただの魔法と残念すぎるクオリティ。
 もはやこのレベルではないも同然なのではないでしょうか。
 まあ、一応超強力な動物に襲われた時なんかは役に立ちますから、完全に無意味というわけでもないのですが、事実上無意味に近い効果でションボリ感が半端ありません。

 以上のように、モンクの最大奥義でありながら
残念きわまりない即身成道。
 他にも
こまめなモンクへの締めつけに余念がないスキップ・ウイリアムズ先生は、モンクになんか恨みでもあるのでしょうか。

 さて、そんな残念な即身成道に希望の光が差してきたのが
『信仰大全』
 ディヴァイン・クルセイダーという上級クラスにて、同名の能力が収録されたのです。
 こちらの即身成道の効果は「来訪者(原住)になり、ダメージ減少10/魔法を得る」と大変わかりやすい仕上がり。
 つまり、
即身成道が「なっちゃう系能力」として再定義されたわけであり、最初からそうしろ素晴らしいことです。

 これがモンクの即身成道とどのように違っているかと言えば、実際に来訪者になることによっていくつかの能力を得られる点が非常に大きい。

 モンスターマニュアルをお持ちの方は巻末の用語集を開いて、来訪者の項目をご覧ください。これによれば、すべての来訪者は種別の特性として以下の二つの能力を得られます。
 つまり、種別が来訪者になっちゃうことで、ディヴァイン・クルセイダーは次の能力を得られるわけです。

・すべての単純武器と軍用武器に対する習熟
・暗視60フィート


 やっぱりバランス感覚がおかしいとしかずいぶんな強化っぷりですね。
 もっとも、ディヴァイン・クルセイダーの前提条件、およびクラス能力的に考えると、イマイチありがたみがない気がしますが…?

 さて、話がそれました。
 D&Dには多様なデータが存在してますが、中には過去のデータを加筆修正して新たな能力とする例もあります。このような場合、原則として
「同名の能力が登場した場合は最新の記述で上書きする」ということになっております。
 つまり、
モンクの「即身成道」もまた、ディヴァイン・クルセイダーの「即身成道」の記述に合わせて修正されることになるわけです。


 ……あれ?
 ということは、
 ひょっとして、
 モンクなのに全武器習熟?
 暗視60フィートゲット?  


 
これは凄い。
 人間スタートでアイテム不要の暗視というのは大変ありがたいですし、武器習熟も(素手に比べれば落ちますが)まったく損なし。
 モンクの最後の能力とするにふさわしい…かどうかはわかりませんが、とにかく優秀な能力として生まれ変わったと言えましょう。


 コアのみでは微妙な性能だなあとか、使い勝手が悪いなあと思われていた能力が、サプリメントを丹念に読み込むことによって強化され、新たな可能性を開く。
 モンク向上の道は、D&Dのサプリを読む楽しさの先にあるとも言えるのではないでしょうか。








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