Steal This Hook! | 06/15/2007 |
ロバート・ウィーゼ
勇者大全の発売により、思考は自然と英雄的なもの、特に英雄的な戦士に傾く事だろう。英雄的な戦士の冒険譚のいくらかはパラディンであり、彼らは善と秩序のために探索に赴き、高き理想を追い悪を討つために戦う。今月のフックはパラディンに関わる物である・・・が、パラディンだけに関係するわけではない。なぜならば、D&D世界ではいかなるクラスの冒険者も勇者たり得るし、その英雄的な行為もそれを助ける仲間無くしては為し得ないからだ。これはパラディンとその勇敢な仲間達のためのフックなのである。
今を去る事数百年前、シルヴァー・フレイムのパラディンであるソーヤー・アスタルは、スレインの北西にあるベイネシアという小さな街を、ダスカランの東北の森に住んでいたワーウルフの部族の攻撃からたった一人で守り通した。当時は今ほどそれぞれの街に防備が無く、ワーウルフはその地域の小さな街を狙って襲撃を繰り返していた。そんなときベイネシアにやってきたソーヤーは、人々を勇気づけ、シルヴァー・フレイムの名においてワーウルフたちを撃退したのである。それが数ヶ月間続いた英雄とワーウルフの戦いの始まりであり、それはワーウルフの敗北で幕を閉じた。
戦いの終わりに、パラディンは何処ともなく消えてしまった。次にワーウルフが襲撃を掛けたとき、人々はソーヤーが存在するかのように偽り、既に大いに数を減らしていたワーウルフたちはそれを見てこの地域から完全に撤退していった。人々は歓喜し、ワーウルフを追い払ってくれた英雄としてソーヤーを讃えた。彼らはソーヤーの像を造り、街の広場にそれを置いたが、彼自身の手がかりは今に至るも何ら見つかっていない。彼は歴史の中に消えたのである。以来彼は伝説の英雄として何世代にもわたりパラディン達の憧れとなり、そして必要とされたとき、再び彼は現れるとされている。
近年賢者と歴史家はソーヤー・アステルの生涯に光を当てる試みをはじめた。そしてある女性賢者の調査の結果、彼はただ単に姿を消した訳ではないという結論が導かれた・・・彼はデーモンによって殺害され、その精神はベイネシアの中心にある彼の像の中に封じられてしまったのである。クラリステルという名のこの賢者は彼の存在を確かめ、石像の中から助け出そうとしている。
d100ロール:動機
00-45 クラリステルは本物の歴史家であるが、彼女はむしろパラディンその人より彼のアーティファクトの剣に興味がある。
46-85 クラリステルは全く誠実な人物である。
86-00 ソーヤーが撃退したワーウルフの子孫が現れ、彼らの古代の敵を蘇らせようとする行為を妨害する。
d100ロール:カスタマイズ
00-45 彼の戦ったワーウルフの子孫が戻ってきた。今や切実に英雄の復活が望まれている。ほぼ不老不死のハーフフィーンド・ワーウルフはソーヤーのアーティファクトである聖剣無くしては止める事が出来ない。しかしその剣は彼とともに失われてしまっているのだ。
46-70 かつてソーヤーは街の女性と恋仲であった。その子孫は今も街に住んでおり、彼は自らが聖なる剣を得るためにソーヤーが復活することを望んでいる。
71-85 ソーヤーは魂が数世紀にわたり幽閉されていたせいで精神に異常を来しており、蘇った瞬間、混乱して邪悪な行動をはじめてしまう。聖剣を見つけるためにも、彼がその邪悪な行いを償うためにも、誰かが彼を止めなくてはならない。
86-00 ソーヤーの剣はただの剣である。ソーヤーの内(あるいはかつての彼の体の内に)に変身生物を打ち倒す力が秘められていたのだ。彼はこれを自覚しているかもしれないし、そうでないかもしれない。自覚していないなら蘇った彼はかつての剣を探し出し、取り戻すが、それでも彼にはかつての肉体が必要となるだろう。
キャンペーン適合
当然ながら勇者大全。加えて「The AD&D Van Richten's Guide to Werebeasts」はいかなるワーウルフを想像する際にも役に立つ事請け合いである。
フォーゴトン・レルム:デイルランズ。それぞれのデイルと街はそこそこの独立性を保っており、かつ近くの森にはワーウルフが住んでいてもおかしくない。ダガーデイルとディーピングデイルであれば山にも近い。
D&D一般設定:狼男、それに襲われるやや孤立している村ないし街。必要な物はそれで全てである。
グレイホーク:ヴァルナかファーヨンディ、ヴェスヴェ森林かアイウーズの領地と接した地域がいいだろう。ソーヤーはハイローニアスのパラディンという事になる。
モダン:狼男関係であるからしてヨーロッパが適当であろう。北スコットランド、ないしは中央スコットランドが良い。北部イングランドも悪くはないが、現代ではやや人口密集地に近すぎるか。あるいはウェールズないしドイツならいくつか適切な場所もあるかも知れない。
レイヴンロフト:この冒険は特にレイヴンロフト、邪悪が全ての善をゆっくりと崩壊させていくあの地によく似合うだろう。むろん、その先には悲劇的結末が待っているに違いない。
PC達は何らかの理由でペイル神聖国のレイカーヴェイルにいる。おそらくラティクに行く途中か、レイカーで冒険を求めているのだろう。午後、彼らは壊れてひしゃげたフルプレートを着て、よろよろ歩く女戦士が北西の方からやってくるのを見る。そして彼女は目の前で倒れた。彼女の名前はサイータ・オロダ。フォルタスのパラディンになろうとしている。その場でPCによって介抱されたのであれ、後で再会したのであれ、彼女はPC達に次の事を語りはじめる。
「かつて私は憎悪のあまり家族を裏切り、トロル沼地のトロル数匹に奴隷として彼らを売り渡したのだ。フォルタスの光に私は啓示を受けた。そしてパラディンになるためには自らの罪を償い、可能な限り多くの奴隷達を解放しなければならないと"まばゆき光"のクレリックは言った。私は私の家族を奴隷とするトロールを追った。弟は既に殺されていたが、残りの家族はまだ奴らの元にいる。私は戦ったが奴らの数は多かった。フォルタスの助けなくば、私は失敗し、もはやかの神の祝福を得る事はかなわないだろう」
d100ロール:動機
00-60 サイータは彼女の夢と贖罪に対して誠実である。彼女は本当に貧しい生まれであり、心からフォルタスのパラディンになりたがっている。
61-80 サイータは家族を救うのではなく、トロールの持つ貴重な宝物を盗もうとしている。フォルタスの聖職者へそれを捧げるのか、あるいはその力そのものを欲しているのかもしれない。
81-00 サイータはトロルの居留地にPCを誘い出して殺そうとしており、その正体は変身したドッペルゲンガーかフィーンドである。おそらく彼女はあなたのキャンペーンにおける主たる敵役となる悪の組織の尖兵であろう。
d100ロール:カスタマイズ
00-30 トロルはブラックドラゴンのために働いており、彼らのキャンプは竜のねぐらである。
31-50 そこにはほんのわずかなトロールしかいない。アンダーダークへの入り口の上にトロルのキャンプは存在しており、実のところ彼らはマインドフレイヤーの奴隷である。トロルに買われた人々は地下へ連れて行かれ、イリシッドの奴隷・・・あるいは食事になってしまったのだ。
51-75 トロルの居留地には恐ろしく堅固な砦があった。彼らはペイル神聖国と本気で戦争をする気なのだ。
76-00 PCが到着したとき、トロルのキャンプには全く人影がない。加えて長い事放置されていたようにも見える。慎重に調べるならばトロルは最近トロル沼の奧に引っ込んでいった事がわかる。それを追うならば、PC達はトロルの死体が森の奧に点々と散らばっているのを目撃する。何か真に恐ろしいものがトロルと、その奴隷の人間達を襲ったのだ。
キャンペーン適合
トロルはどこにでも存在する。古典的な怪物が常にそうであるように。強化する場合はバーバリアンないしスカウトのレベルを与えるか、もしくはモンスターマニュアルVから亜種を持ってくるのがいいだろう。
エベロン:シャドウ・マーチが適している。あるいはゼンドリックか。とらわれの両親は船ないし飛行船で移送されたかもしれないのだ。
フォーゴトン・レルム:あなたは高湿原の近くに舞台を設定する事が出来る。トロルは沼沢地か霧森に存在するのだろう。
D&D一般設定:あなたはトロルが住んでいる地域を必要としている。・・・え、それだけかって?
モダン:モダン世界ではトロルはひょっとしたらどこにでもいるかも知れない。例えば日本やヨーロッパの犯罪組織のメンバーであったり。また、エヴァーグレイズに生息する残忍な生物として設定する事も出来る。
ドラゴンコースト地域を旅していたPC達は、テジアとイースティングの間の街道で善の戦士の死体を見つける。彼が槍と剣で殺されてからまだ時間は経っておらず、血はまだ固まっていない。スピーク・ウィズ・デッドを使えば、彼はオーロン・キャラウェイ、多くの悪と戦ってきた戦士であり、最近パラディンの召命の声を聞いたばかりだったという答えが返ってくる。数人の男女によって不意を打たれて死んだとき、彼はまだパラディンになっていなかった。彼はエルヴァースルトの生まれであり、そこに埋葬して欲しいとPCたちに頼む。彼は蘇生を望んでいない。彼は力の限り悪と戦い抜き、そして天に召されたのだから。
PCが彼の遺体をエルヴァースルトに運ぶなら、オーロンの家族は彼の友人であるPCたちに葬儀への出席を願う。しかし、そこで問題が起きた。遺体を教会に運ぼうとするところで男女数人のグループ(人型種族であれば何でもいいが、人間がベスト)が現れ、葬儀に参列していた人々を攻撃しはじめたのだ。これらの襲撃者は黒いマスクをつけており、葬儀の客、特にオーロンの家族を集中して狙おうとする。PC達が阻もうとするならば彼らは逃走するが、その場合でもオーロンの家族を拉致しようとする。
d100ロール:動機
00-35 オーロンの一族はPCがこの攻撃の裏にいる何者かを捜し当てて、二度と起こらないようにして欲しがっている。
36-65 イリパーの近くに住んでいるオーロンの又従兄弟は、オーロンの一族を皆殺しにして自分が全ての財産を相続するために盗賊ギルドに依頼を行った。
66-80 攻撃の黒幕は実はオーロンその人である。オーロンは実際に死んでいるが、一族が全滅した後で蘇生させてもらうつもりなのだ。彼を殺したのは容疑をそらすために彼自身が雇った盗賊達である。スピーク・ウィズ・デッドで話す際、彼は事件と自身の関わりについて答える事を避ける。
81-00 生き残った家族は盗賊への復讐、皆殺し(捕縛ではなく)を叫ぶ。盗賊どもを雇ったのは彼ら本人であり、依頼に応えて盗賊は葬儀に出席した商売敵を消したのだ。この場合オーロンはこの家族にとって「善の道に墜ちようとしていた」厄介者であり、体よく利用された駒に過ぎない。
d100ロール:カスタマイズ
00-30 襲撃者は人間(あるいはエルフなりなんなり)に見えるだけであって、実際の所は下方次元界より現れたデーモンである。
31-50 襲撃者は夜仮面団、ウェストゲートの強力な盗賊ギルドの人間である。下手に関われば、PCは今度こそ抜き差しならぬトラブルに巻き込まれるだろう。
51-75 オーロンの一族の宿敵は何十年も彼らに対する復讐を考えている。最近ヴァンパイアと化した彼は新しく得たパワーで熟達の暗殺者を何人も支配した。
76-00 オーロンの一族は海賊諸島の海賊の一部と同盟を結んでおり、襲撃者も他の海賊である。実の所この事件全体が海賊同士の抗争の一部であり、PC達は真実を見極めるために海賊諸島に赴かなければならないだろう。
キャンペーン適合
多くの人型種族が敵として登場する冒険であるので、勇者大全、魔道士大全、(そして特に)無頼大全、及び必要と思われる大全シリーズを使うのがいいだろう。ユアン−ティが好きならば「Serpent Kingdoms」があったほうがいい。
エベロン:ブレランドには舞台とするに十分な多くの陰謀と裕福な一族がいる。争いがサイアリの難民を巻き込むように出来る点でアルデヴはよい。またハセリルも適しているし、もちろんシャーンでも良い。
D&D一般設定:子弟が邪悪と戦い、パラディンになろうとする(訳注:つまり彼が働かなくても家族が食っていける、ということ)事が出来る(もしくは財産等のために自身の家族を裏切る理由がある)程度には裕福な一族がいる都市ならば問題ない。加えて大抵の事は何か別のそれに置き換えられる。例えば海賊を陸の密輸業者にするとか。
グレイホーク:アーリッサ。特にチャットホールド。また緋色団によって支配されてしまったシー・プリンスなどもいいだろう。
モダン:アジアかオーストラリアの小都市がいいだろう。アジアならサムライの冒険のようにアレンジする事が出来ていい感じかも知れない。オーストラリアでは未開の地域で行うのがいいだろう。