Steal This Hook! 04/20/2007

悪党のための邪悪な冒険

ロバート・ウィーゼ


 

いつもあなたがこのコラムで読んでいるフックは善良な冒険者が利益ないし何らかの意図のために英雄的行為を成し遂げるものであるだろう。しかし、そうしたプレイの向こう側では、邪悪なキャラクターが同様に、ただし正反対のベクトルで行動している。あなたはどうするべきだろうか? 今月のスティール・ジス・フックは邪悪なPCのためにある。これらは善良なPCを目標にしたフックであり、望むならばあなた自身がこれらをひとひねりして自分なりのフックを作ってみても良いだろう。

作者注:私は悪属性のPCを遊ぶことをおすすめしない。そして現実においてもゲームにおいても邪悪な振る舞いを容赦するつもりはない。

 

使い魔には重すぎる ―― エベロン

留意せよ、物事は全て見た目通りとは限らないそれはたまにはあることらしい。そしてシャーン・インクィジティブの隅で素っ気ない一行記事になったりもする。そう、ある裕福な老人が死んで、家族や友人や公共のためにではなく、その遺産の全てを自分のペットに残すのだ。

最近、それがまた起こった。二流のソーサラーにして珍しい呪文物質要素の製造を家業にしていた家の当主、キャロライン・ブラックカッターが92歳で大往生した。遺言の執行者は彼女は財産全てを彼女の使い魔であるミスター・ピプキンスに遺し、その中にはこの猫の世話と保護をするための基金も含まれている。

シャーン・インクィジティブの読者が苦笑と微笑を誘われている一方、全ての者がそうであるわけではない。遺言状には何かがミスター・ピプキンスに起こった場合、バートルメウス・ブラッチャー(遺言の主執行人)に全ての財産が委譲されるという一節がある。しかし、当然ながら彼自身が猫の死に関与するわけには絶対に行かない。そこで彼は秘密の会合を開き、莫大な報酬と引き替えに猫の殺害をパーティに依頼する。慎重なプロであるPCたちはブラックカッター家の地所に侵入し、ピプキンスの場所を見つけて殺害しなくてはならない。ブラックカッター家の財産がブラッチャーに渡れば、彼は狂喜して大枚の報酬をPCたちに支払ってくれるだろう。加えて、PCが何を持ち出そうがそれはPC達の財産となる。

d100ロール:動機

00-40 ブラッチャーは自身で語ったとおりの人物である。猫を殺して財産を奪おうとしている強欲な男、その所有権を得るために長年財産を管理してきた男である。

41-75 ブラッチャーはまだブラックカッター家の地所で働いている。財産は猫が死ぬと自動的に彼に渡るわけではなく、キャロライン女史の遠縁に渡る。猫が自然死できるくらいに長生きした場合だけ、彼はそれに対する報酬を受け取ることが出来るのだ。彼の依頼はブラックカッター家の屋敷の防御と警備兵をテストするためなのである。彼は最終的に自分の立場を明らかにして、PC達を外まで安全に連れ出すことだろう。

76-00 キャロライン・ブラックカッターは実のところまだ生きている。彼女は死を装い、自分のスタッフのうち誰が本当に信じられるのか試してみることにしたのだ。そう、ミスター・ピプキンスこそキャロライン・ブラックカッターなのである。必要ならば彼女はPCに自分のことを明らかにして、彼らの雇い主の名前を聞き出そうとするだろう。状況が混乱していたとしても、彼女には自分を守る力がある。

d100ロール:カスタマイズ

00-60 ブラックカッター家の屋敷は完璧に防御されている。庭の警備兵から猫の直接の護衛まで手練れ揃いで、屋敷にはびっしりと防御呪文がかけられている(壁の上を猫が歩いても反応する)。間違っても簡単に片付けられるヤマではない。

61-90 さらに厳重に猫を保護するため、地元の警備隊の多くが護衛に紛れて屋敷に張り込んでいる。(ブラッチャーに財産を譲る遺言が本当なら)彼らはブラッチャーが猫を殺して財産を得ようとしていると考えたのだ。彼らは猫を守り通すことを堅く誓っている。

91-00 (これは三番目の動機が使用されていない場合に限る)結局のところ使い魔は単なる猫ではない。それは動きやすいように猫に化けたラークシャサなのだ。彼はキャロラインを隠れ蓑にして長年この屋敷を支配しており、当然彼女も彼の手駒に過ぎなかった。今や直接財産を管理する身になった彼は、当たり前だがそれが持ち去られたり、あるいは自分の正体が明らかになることを好まない。

 

"それをよこせ" ―― フォーゴトン・レルム

ゴーレムにだって心はあるんだ!?オームーは歴史ある国であり、多くの偉大なウィザードを輩出してきた。彼らは常に魔術、作り上げるアイテムの独自性、あるいは思いつく限りのその他全てにおいてライバルを凌ぐべく研鑽を積んで来た。そしてムランにおいて、そうしたウィザードの一人がゴーレムに関する画期的な進歩を成し遂げた。この女性ウィザード、チャヨーシャ・トゥイーズは精神に関する効果に完全耐性を持たせたまま、真の意味での知性を持つゴーレムを作り出すことに成功したのである。彼女はすぐさまこの秘密を厳重に守ることを決意し、彼女の塔を守るためにこれらの新種のゴーレムを数体生み出した。

だが、どれだけ厳重に守ったとしても、秘密というのは漏れる物である。この場合それを見つけたのは彼女のライバルであるミスティック・シーアージ、ブラシウス・エルドメルムはチャヨーシャが何か凄いゴーレムを作り上げたことは知っていても、それが具体的に何であるかは知らない。それを調べるために彼はチャヨーシャの塔に潜入して完全に機能しているゴーレムを一つ盗むべく、適当な傭兵ないし盗賊ないし冒険者を捜し出す。報酬として彼は通常PCが利用できない魔法的な訓練(呪文や特技)へのつてを提供することも申し出る。魔法的でない物を望む場合でも、そうした訓練へのつてを紹介することが出来る。さらにかつて冒険者であった頃に手に入れた宝の地図を提供することも考えている。

d100ロール:動機

00-30 ブラシウスはこの仕事に関しては誠実である。もっとも、PC達にこれ以上のことを教えてくれるわけでもないが。

31-50 ブラシウスは実のところチャヨーシャのしもべである。彼女は新しいゴーレムの性能テストのために、その実験台を必要としているのだ。むろん、モルモットが生きようが死のうが彼女にとっては大したことではない・・・しかし、結果がどう転んでもPCを無事に帰す気は全くない。

51-75 チャヨーシャは自分が死んだと見せかけたいと思い、その為に傭兵の手にかかって死ぬのがいいのではないかと思いつく。ゴーレムの情報はリークされた物であり、ブラシウスはまんまと引っかかったのだ。

76-00 ブラシウスの依頼の真意はPCの死である。彼は目的に近づくのに十分な情報(そして、塔から逃げられないようにするために十分な偽情報)をPCに与える。ゴーレムの話もその為のフェイクに過ぎない。ブラシウスは消えることのない恨みをPCに対して抱いている。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 他の誰かが同じ目的のために冒険者か盗賊を雇った。そしてPCは塔の中でライバルと遭遇する。当初は敵対的な態度を見せるライバルだが、果たして・・・?

41-55 チャヨーシャは既に死んでいる。彼女の新しい創作物に殺害されたのだ。いま、それは彼女の塔をさまよっている。

56-75 チャヨーシャのゴーレムは精神攻撃に対する耐性を保持しつつ「生きた」知性を持っており、様々な複雑な兵器と戦術を使いこなす。

76-00 口封じのため、ブラシウスは地元当局にPC達のことを密告する。PC達が塔から脱出しようとするとき、既に周囲を警備兵が固めていることだろう。

キャンペーン適合

多くのウィザードがいるならばこのフックは上手く働く。ウィザードを肉付けするために秘術大全と魔道士大全、都市の描写のために「Cityscape」、加えて魔術師の塔を作るに当たっては「Dungeonscape」が役に立つだろう。

エベロン:カルナスの「夜の街」アターがいいだろう。ここはアンデッドの研究の中心地であり、人造をテーマにした冒険を行うのは死体に関する「骨折り」仕事の丁度いい息抜きかも知れない。

D&D一般設定:どこででも絶対にうまくいくだろう。たとえ荒野に塔だけが立っている状態でさえ。必要なのは魔法使いの塔、そこに住む(あるいは住んでいた)魔法使い、そしてそれについて知っている誰か、それだけである。

グレイホーク:「大王国」のウィザードはこの種類の研究を盛んに行うのみならず、しばしば悪のPCを必要とするだろう。アーンスト公国から東であればどこでもよい。

モダン:ドイツのインゴルシュタット。フランケンシュタイン博士がかの怪物を生み出したこの地は、非常に皮肉の利いた舞台だろう。

 

"あれぇ? ここらへんにあったと思ったんだけどな・・・" ―― エベロン

アンデール、ガリファー湖畔にあるアルカニクスは秘術研究のメッカであり、見習いや導師を含む老若男女の秘術使いの集うところである。秘術評議会の浮かぶ塔に住んでいる者もいるが、多くの者は地上の村に住み、秘術評議会から利益を得ようとしている。魔法の知識や魔法使いの集中する場所だけに、ここでは不思議な出来事もそう珍しくはない。

昨日、ラザミリ・ナイゼと言う名のウィザード(彼女はうっかりしていることで有名である)は同僚のレラット・デンドラにロッド・オブ・ワンダーを貸し、そして盗賊が彼からロッドを盗んでしまったのだ。彼は盗難を彼女に告げず、彼女はロッドを貸したこと自体を忘れてしまっていた。

昨夜、アルカニクスの市場と歓楽街の人々はそれまで見た中でもっとも多様な魔法的な現象を目撃した。石の建物にびっしりと草が生え、物が透明になり、人々は緑色に染まり、ライトニングボルトが人々を貫いて死傷させた。PCは市場でこうした奇妙な現象を目撃したかも知れない(DMGのロッド・オブ・ワンダーの項を参照して、ランダムな効果を発生させること)。しかし彼らは蝶の群れのような発生源を特定しやすい効果に対してすら、それを特定することが出来なかった。魔法使いの見習同士が魔法で遊んでいたのではないかという者もいたが、多くのものは村に降りかかる闇の魔法と破滅についてささやいていた。

村、あるいは秘術評議会の中にさえ邪悪な野心を持つウィザードがいる。それらのうち一人がPCたちに接触してきた。彼はこの事件にロッド・オブ・ワンダーが用いられていると考えており、それを持っているのは村の中でもただ一人、ラザミリしかいない。このウィザードはロッドとラザミリの命を望んでおり、それらと引き替えであるなら報酬を惜しまない。

d100ロール:動機

00-35 依頼者のウィザードは嘘をついておらず、背後関係もない。

36-70 依頼人はPCが任務で倒れることを望んでいる(ロッドは彼の別のしもべが回収する)が、その他の点においては彼は誠実であり、直接妨害や罠を仕掛けたりはしない。

71-90 依頼人はPCとラザミリが戦った後、ロッドを確実に奪いPCたちの口を封じるために暗殺者を何人か雇った。

91-00 ラザミリは奇妙な二重の人生を送っている。そのもう一つの顔は誰あろう、PCの依頼者なのだ。PCが仕事を引き受けて彼女を殺そうとするなら、彼女はPCが邪悪であることを知っているし、侵入してきた時点で即座に殺そうとするだろう。そして、彼女は準備万端にPC達の侵入を待ち構えるに違いない。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 ロッド・オブ・ワンダーを盗んだ盗賊のグループは、昨夜存分にその効果を調べ尽くした。彼らは(お気に入りの酒場をエーテル化させた後で)このロッドの有用で邪悪な使用方法を発見した。彼らは今彼らの盗みを隠すためにそれを使用しようとしており、もはやロッドを手放す気はさらさら無い。

41-50 このロッド・オブ・ワンダーにはそれを使用した人間を透明化するという副作用がある。昨夜どうやっても効果の発生源を辿ることが出来なかったのもこの副作用と、使用者がロッドを使うたびに移動していた事が原因だ。ロッドは使用者を消すことによって自らを雲隠れさせるのである。

51-65 ロッド・オブ・ワンダーは副作用として使用者に呪いを植え付ける。使用者は次第に邪悪に、偏執的になっていくのだ。昨夜これを使った盗賊も既にかなり影響を受けている。この偏執狂はよりロッドを大切にするようになり、PCたちの仕事は困難になるだろう。

66-80 ロッドは通常通り働くが、盗賊がそれを盗み、かつ使用した場合、ランダムに怪物を召喚する(サモン・モンスターTからZまでランダムに)。振るう人間が不可視でない場合、モンスターは使用者をまず攻撃する。そうでない場合は無作為に目標を決めて攻撃する。昨夜の騒ぎも、召喚されたモンスターによる被害が多い。

81-00 多くの者達がロッドに興味を持っている。ラザミリは近辺では唯一のロッド・オブ・ワンダーの所有者であり、ウィザードであるならば誰もがそれがラザミリの物だとわかっている。ある者はラザミリにそれを自分で手渡すため、ほかの者は自分のためにロッドを必要としており、PCから盗もうとしたり(あるいはその為に誰かを雇ったり)、交渉しようとしたりする。PCたちがこうした仕事をしていることを誰もが知っていることについては突っ込まないように(占術魔法は偉大なんだ、それでいいじゃないか!)。

キャンペーン適合

フォーゴトン・レルム:ウォーターディープに非常に適した冒険である。多くのウィザードがそこには存在している。

D&D一般設定:健忘症のウィザードが住んでいる都市があればどうにでもなる。そのライバルとしての別のウィザードは悪くないが、ウィザードではない、別の種類のライバルであっても問題ない。

グレイホーク:グレイホークの世界においては殆どどこででもこの冒険を行える。筆者はグレイホーク直轄領のハードバイをおすすめする。女性君主による統治が行われているそこでは、女性ウィザードに対する対応が(特に男のPCにとっては)難しい物となるに違いない。

モダン:他の次元から持ってこられない場合、ロッド・オブ・ワンダー等のアイテムは現代世界には存在しない。あなたのモダンキャンペーンにおいてはこの点を無視してシナリオを構成するべきだろう。

 

"鏡よ、鏡" ―― フォーゴトン・レルム

ウェストゲート(夜仮面団の本拠地)は盗賊と悪党で知られている都市である。夜仮面団は以前は都市の非合法活動に大きな影響を持っていたが、「顔なし(Faceless)」の死とともにより小さい独立ギルドも時々現れるようになった。これらのギルドは夜仮面団の庇護下にないため、容赦なく法権力によって取り締まられる。夜仮面団のリーダーシップ無くしてはこれらもただの雑魚に過ぎない。

酒場の噂によれば英雄的パラディン、ザラー・ミストフ(盗賊を追跡し、逮捕することで知られていた)が最近盗賊を捕らえるのではなく、皆殺しにするようになったという。それらは当初ただの噂であったが、最近はより頻繁に殺害が繰り返され、目撃者はその地域でザラーを見たとか、降伏した盗賊を虐殺する彼を目撃したとさえ証言する。

言うまでもなく、ザラーの「熱意ある行動の目標」である小さな独立ギルドは非常に神経をとがらせており、可能な限り早くこの英雄を殺すために傭兵を捜す。彼らがパラディンを見つけ出して殺すことが出来るなら、PCたちはこれらの小ギルドの全てから同じ依頼を受け、それぞれから報酬を得ることも可能かも知れない。

 

d100ロール:動機

00-00 ひねった動機は全くない。誰もが英雄の死を待ち望んでいる。

d100ロール:カスタマイズ

00-50 盗賊を虐殺するザラーは邪悪な複製であり、本物はこの複製によって殺害された。盗賊のグループを追跡するとき、彼はミラー・オブ・オポジションの罠に引っかかり、複製が彼を殺した。そして複製はザラーの正反対であるが故に盗賊を殺し始めたのだ。

51-60 ザラーは夜仮面団の新しい頭領のマインドコントロールを受けている。彼は小さなギャング団を取り除くための道具として使われているのだ。PCがこれを破壊するならば、少なくとも何人かの夜仮面団の幹部の手がかりをつかむことが出来るだろう。

61-85 邪悪なザラーはウェストゲートの下水道に自らの住居を作り上げた(どこの世界であれ、大きな盗賊ギルドのある都市には必ず下水がある)。彼自身は護衛のクリーチャーを用意していないが、数体の凶暴な水棲の怪物が周辺をうろついている。

86-00 ザラーはあらゆる意味で邪悪ではない。彼は自らの邪悪な複製を殺した。彼が盗賊を殺すのは、生きて捕えた彼らが改心することが全くなかったからである。今、彼の意志はアダマンタインよりも堅い。

キャンペーン適合

盗賊に関しては無頼大全、パラディンに関しては勇者大全が役に立つ。ウェストゲートの情報はフォーゴトン・レルム関連の製品に記述されているが、他の都市にそれを移すために「Cityscape」を用いても良い。

エベロン:当然シャーンが筆頭に来るだろう。明白すぎるほどだ。第二の候補としてはアンデールのフェアヘイヴン。望むならゼンドリックのストームリーチでも良い。

D&D一般設定:複数の盗賊ギルドがある都市ならばどこでも。

グレイホーク:グレイホーク市がぴったりである。他の都市でも問題ないが、この自由都市には盗賊に関する冒険を面白くするいくつもの要素がある(例えばレン人の盗賊との人種問題とか)。

モダン:いくつもの犯罪結社・・・要するに犯罪カルテルやマフィアなどが必要である。例えばニューヨークとか。