Steal This Hook! 03/30/2007

"どうだ、手を組まないか"

ロバート・ウィーゼ


 

"俺とお前が組めば百人力だぜ" ・・・何という陳腐な決まり文句! だが一方でそれは紛れもない事実でもある。悪党は共通する目的のために手を組むのが好きなのだ。これらは短期的なそれか、あるいは単に分け前の取り決めかもしれないが、互いの敵に対してそれぞれ手を組んで当たれるので、双方にとって自らを強化できるメリットがある。今月のスティール・ジス・フックはそのような悪党どもの同盟、またはそれに対抗して同盟を結成する冒険者、あるいは同盟を申し出てくる異なった勢力、といったシチュエーションを扱う。

 

「求む、ドラゴンタートル」 ―― エベロン

海の底へ連れて行ってやろうか?コーヴェアの極東、ラザーの公子達は海を統べる。彼らの船は自らの領域をパトロールし、公子に属さない海賊達から自らの領土を守る(もっとも、血統的に信条的にもあらゆるラザーの公子は海賊の末裔そのものである)。しかしながら、中には他の公子を打倒しようとする勢力もいる。それは他の公子であったり、クバーラやヴァラナーからの異邦人であったり、現状が面白くないと感じている独立海賊や密輸商人であったりする。

ラザー公国連合の南、PCたちが船に乗っているとき、数匹のドラゴンタートルが船に近づいてくる。船長はドラゴンタートルを相手にケンカをする気はない(それに荷の遅れはとんでもない損害になる)が、ドラゴンタートル達は委細かまわず突き進み、船に体当たりを仕掛けてくる。それとともに甲羅の隙間に隠れていた何十人ものリザードフォークの戦士達が船に乗り込んでくる。PC達も、自分たちの生命を守るために否応なしに戦わねばならない!

冒険者達が生き残ったとしても、おそらく他の船が生き残ることは出来ないだろう。冒険者の実力を認識した時点で船の持ち主は彼らにリザードフォークどもをどうにかしてくれるように頼む。PC達が自分の命を助けるために戦っていた間も、リザードフォークは他の船を攻撃していたのだ。

 

d100ロール:動機

00-45 船の持ち主(ラザー公国のある勢力に属する)はリザードフォーク達を止めて欲しいと心底願っている。彼は今ドラゴンタートルが攻撃している別の船の船長(彼と同じ勢力に属している)の名前以外に何も知らない。

46-75 リザードフォークは本来PC達の乗っている船を襲撃するはずではなかった。船の持ち主が彼らに依頼したのは、今襲われている別の船を襲うことだけだったのだ。彼はリザードフォーク達が信用ならないと感じ、PC達にその排除を依頼する。ついでに自分の行為の証拠をも抹消したいのだ。

76-90 船の持ち主のライバル(ことによると公子)はPCにも接触を図る。彼はPCたちが船主の意志に反してリザードフォーク達と交渉によって何らかの合意に達することを望んでいる。

91-00 リザードフォークの行動は長期的な視点に基づくものである。彼らはラザーの公子を打倒し、自分自身の領土を得たいのだ。これは何年、事によったら何十年にもわたる計画の序章に過ぎない。

d100ロール:カスタマイズ

00-65 クバーラからやってきたリザードフォークの大部族は無限に広がる闘争の海を夢見ている。彼らは故国の近くで何頭かのドラゴンタートルを飼い慣らし、対価を支払ってくれる勢力であれば何であれ自らのサービスを販売している。現在彼らは南ラザーに混乱を巻き起こしたい独立海賊の集団に雇われている。

66-75 この襲撃はリザードフォーク達の望んだものではない。飼い慣らされたはずのドラゴンタートルが、野生のそれに出会い、その本能に引っ張られるように、飼い主の意図を無視して攻撃を開始したのだ。一方、向こうの船はドラゴンタートルたちのみによって襲撃されている。これらの船がリザードフォークの犠牲者と言えるかどうかは議論の余地があるだろう。

76-85 二人のラザーの公子がそれぞれリザードフォークを雇った。リザードフォークは双方の依頼に忠実に、双方の不利になる活動を行う。

86-00 リザードフォークの黒幕は指名手配中の、捕まれば確実に縛り首になるであろう海賊である。この海賊は公子への復讐のために動いており、人を使うようにリザードフォークを使ったに過ぎない。

キャンペーン適合

フォーゴトン・レルムの製品「Serpent Kingdoms」はリザードフォークについて詳細に述べている。君は通常のリザードフォークの代わりにモンスターマニュアルVからブラックスケール・リザードフォークやポイズンダスク・リザードフォークを使いたがっているかもしれない。そして「Stormwrack」は海の冒険にこれ以上無く役立つだろう。

フォーゴトン・レルム:リザードフォークはチュルト・ジャングルから来るので、輝海の周辺にこの冒険を当てはめることが出来るだろう。

D&D一般設定:いくつかの、あまり仲の良くない共同体が並ぶ沿岸地域であることが必要になる。加えて近くにリザードフォークの住処が無くてはならない。もっとも、近くと言っても比較的でかまわない。

グレイホーク:ギアナット海とレルマー湾の周辺がいいだろう。リザードフォークは大沼沢地からやってきたのだ。

モダン:ドラゴンタートルはモダン世界ではかなりまれな存在だが、ドラゴンタートルに類似したリザードフォークの潜水艦、というのはありだろう。日本またはオーストラリア沿岸、あるいはシアトル近辺がいいだろう。

レイヴンロフト:ドラゴンタートルはスケルトン、あるいはドラゴンタートル・ドラコリッチにすらなったかもしれない。リザードフォークはマミーになったか、あるいはヴァンパイアに変化している。ラモーディア(Lamordia)かデメントリュー(Dementlieu)の海岸沿いに冒険の舞台を設定するのがいいだろう(私としてはラモーディアを推す)。

 

ハグも時には船上にありて ―― フォーゴトン・レルム

我らこそは野に潜む恐怖、自然の暗き力の象徴なりデリンビーア河ははるか北東のネザー山脈に発し、高森、高湿原、ダガーフォードを流れてソードコーストに注いでいる。ラウドウォーター近くにある輝きの滝(Shining Falls)によって全域を船で通行することは出来ないものの、ラウドウォーターから海岸まで、また滝から源流まで航海することは可能である。従って、特にラウドウォーターから海までは水上交易が活発に行われている。運ばれる品があまり高価ではないこと、また山賊が陸路にたびたび出没することもあって、ラウドウォーターからの水運は安全であり非常に盛んになっている。しかし河には河の危険がある。小舟に乗った水賊がラウドウォーターから下流、高湿原に巣くって船を襲うことがあるのだ。通常こうした賊はさほど問題ではない。一度か二度叩いてやればすぐに消えていく。

最近、商品を盗まないタイプの新しい海賊の話がセコンバーとラウドウォーターに入った。彼らは積み荷を奪う代わりに河を封鎖し、通行料を請求するのだ。数日が経過して、これらの街はこの水賊を排除するために実力行使に出るが、水賊は常に天候を味方につけており、魔法を使っている(ないしは運かよほど綿密な計画)のではないかと考えられた。結果としてこの水賊の被害を止めることは出来ず、ある者は殺され、またある者は捕らえられ、そして大部分の船長は通行料を支払うことを余儀なくされている。

セコンバーの商人、スルタイ・オレオはこの新タイプの水賊のせいで多くの損失を被っており、彼女はそれに対して何らかの対策を打たねばと考えている。当局が当てにならないため、彼女は冒険者を雇う。彼女はPCにかなりの報酬を提示し、商売っ気のあるPCであれば事業のパートナーとしてもかまわないと考えている。

d100ロール:動機

00-55 スルタイは気前よく前払いをする。彼女のビジネスがこれ以上打撃を受けては困るのだ。

56-80 スルタイはこの件には全く無関係である。ハグ(以下参照)の一人が魔法で彼女に化けて、PCを雇ったのだ。このハグは彼女の「パートナー」が取り除かれて、彼女との関係を絶つことを望んでいる。

81-00 スルタイは報復を望んでいる。彼女は海賊と取引しようとしたが、にべもなくはねつけられたので彼らを排除しようとしている。それに比べればビジネスの損害はさほど重要ではない。

d100ロール:カスタマイズ

00-30 水賊達の中にウィザードがいるわけではない。彼らは高湿原に住まうハグの群れと取引し、ハグは収入の半分と引き替えにウェザー・コントロールと様々な呪文、及び物理的な支援に至るまでを提供したのだ。ハグは水賊と関係ない何らかの計画に資金を投じており、水賊達が殲滅された場合でも別の金儲けの手段を見つけるだけである。

31-50 ハグは存在しない。それらの正体は高湿原に住む邪悪なフェイの作り出した虚像である。水賊達が捕らえられた場合、彼らは口先三寸で自分たちの正体を隠そうとする。

51-75 スルタイのライバルは彼女の船が他の船より多くの金額を請求されるように手を回す。これによって彼は手を汚さずに彼女を破産に追い込めるのだ。

76-00 水賊に通行料を支払った船が攻撃され、破壊されている。ハグは彼らが望む貨物を積んだ船を破壊するために幻影、アンデッド、また河に住むクリーチャーなどを利用している。

キャンペーン適合

無頼大全と冒険者大全は水賊をデザインする際に役立つだろう。水上の冒険に関しては「Stormwrack」が有用であるはずだ。

エベロン:この冒険はスローンホールドのすぐ北、スレインとカルナスの境界線の河川あたりで上手く行える。もう少し文明的でない所がいいなら、北のアンデールとカルナスの国境地帯が良かろう。

D&D一般設定:貿易に使用される水路が必要であるが、ハグはどこにでも住み着くため、沼沢地は必要ない。

グレイホーク:グレイホーク市の北に広がる水運地帯、ダイヴァースとヴァーボボンクの間あたりがいいだろう。

モダン:モダン世界において影界以外にはハグは存在しない。しかし、あなたはそれをフェイかメドゥサの呪文使いに置き換える事も出来る。この冒険はミシシッピー川沿いに行うのが面白いだろうが、揚子江、ナイル、あるいはアマゾン流域でも悪くない。

レイヴンロフト:リッチェムロット(Richemulot)のムサード(Musarde)川が適しているだろう。この川はあらゆる居住地をつなぎ、また関わる人々は皆商人である。

 

バグベアは友なりき ―― エベロン

潰す!ズィラーゴのシーウォール山脈近くでは多くの人々があっちこっちに絶え間なく移動し続けている。ライトニング・レイルはこの地域を貫き、オリエン氏族の交易路が主要なノームの居留地をつなぐ。この地域では時折山賊が出没するが、オリエン氏族のキャラバンは守りが堅いために標的は概ね個人の旅人になる。ブラッディ・ホークスと呼ばれるノームの山賊グループがズィラーゴとコランベルグの間の地域で略奪を繰り返している。彼らは通常交易路で活動しているが、ライトニング・レイルを襲ったこともある。彼らは決して殺しはしない。常に仮面を身につけ、貴重品だけを奪った後グループのシンボルを残していく。

一週間前、旅商人のグループがタランドロとスリムバーの間の街道で荷物を奪われた上に皆殺しにされた。現場にはブラッディホークスの印が残されていた。これは今までさほど彼らに注意を払ってこなかった当局の目をブラッディホークスに向けさせるには十分であった。二日前、今度はゾランベルグ郊外で同様の襲撃が起こり、唯一の生き残りはバグベアとノームが協力して仲間を皆殺しにしていったと証言した。現場には今度もブラッディ・ホークスの印が残されている。

守備兵を預かるオサムニッシュ大尉が冒険者を捜し始めた丁度その時、PCはその地域の街に滞在していた。大尉は彼が指揮下に置く中隊全てを失ったことと、くだんのノームとバグベアの山賊が関係あるのではないかと考え、PC達の助力を必要としている。彼は標準的な報酬を提示するが、加えて山賊は多くの戦利品を持っていること、場合によってはそれらが元の持ち主に戻ってこなくてもどうにでも理由はつけられる、とほのめかす。

d100ロール:動機

00-45 オサムニッシュ大尉は誠実である。彼は部下達を失い、彼らの命がむなしく散ったことに耐えられず、勝利を欲しているのだ。

46-55 オサムニッシュ大尉はお裾分けに預かろうと山賊と交渉したが、バグベアはこれ以上の同盟者を求めておらず、彼の中隊は全滅した。今彼は復讐に猛っている。

56-80 背に腹は代えられず、PCたちは山賊が圧倒的な戦力で襲撃を仕掛けた、その街道をまさに歩いている。そこに現れたのは別の部族のバグベアだった。彼らは彼らの思惑(敵部族に奪われたものを取り戻したい)によって、PCたちに山賊の隠れ家を教える。

81-00 ブラッディ・ホークスはバグベアと一緒に働いているわけではない。それどころか一連の襲撃の犯人ですらない。バグベアが自分たちへの疑いをそらすためにブラッディホークスのシンボルを悪用しているに過ぎないのだ。彼らは自らの潔白を証明するために冒険者と接触する。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 ブラッディホークスはシーウォール山脈のバグベアの部族と同盟を結んだ(自分たちがバグベアに殺されないために)。ノームの山賊は殺人をしていないが、バグベアは殺人を犯している。

41-50 バグベアは単に疑いをそらすためにブラッディホークスの印を用いているに過ぎない。バグベアを率いているのはノームのソーサラーか死霊術師だろう。

51-65 三度目の襲撃は山賊ではなくアウルベアによって行われる。手がかりはこれまでのそれと全く符合しない。PCは何が起こっているのか、真実を探り当てなくてはならない。

66-90 攻撃の現場からは、大尉の指揮していた守備兵中隊の殆どを含む死体が消えている。それらの死体の一部はゾンビないしグールとなって次の襲撃に参加する。残りは後になって現れるか、バグベアとブラッディホークスの(あるいはバグベアかブラッディホークスの)拠点を守っている。

91-00 消えた守備兵中隊こそがブラッディホークスである。彼らは強盗を行うために自分たちの立場を利用していたのだ。これらのサインの使用をやめようとしたとき、彼らはバグベアに遭遇して全滅した。

キャンペーン適合

このフックは容易に他のキャンペーン設定に適応させることが出来る。「Savage Species」を用いてありとあらゆる種類のバグベア(頭がたくさんあったり、下半身が魔獣だったり、エトセトラエトセトラ)を自作するもよし。また無頼大全は山賊に肉付けをする際に役立ってくれるだろう。

フォーゴトン・レルム:デイルランズがまさにおあつらえ向きである。バグベアは雷山脈かコーマンソーの森林に住んでいるのであろう。

D&D一般設定:通行がそれなりに頻繁で街なり都市なりを結ぶ街道。また、山賊が隠れることの出来る荒野など。

グレイホーク: アーンスト公国、あるいは伯国でもいい。多くの商人、行き交う旅人、加えてそれぞれが独立都市国家に近い空気を持つのがよい。

モダン:SUVかオートバイにバグベアを乗せるべきであろう。そうすれば「マッドマックス」や「ロードウォリアー」の世界を再現できる。舞台としてはオーストラリアがふさわしい。未開の地であり、かつ街からも遠くない。

レイヴンロフト:山賊とバグベアは恐怖の世界(Domein of Dread)から現れた。それらはライカンスロープでさえあるかもしれない。DementlieuとInvidiaは良い選択だが、Falkovniaも悪くはない。