Steal This Hook! 02/20/2007

地下迷宮は死のワナに満ちて

ロバート・ウィーゼ


 

きしむ歯車。迷宮もまた生きている。想像もつかないような富、ぞっとするような死の危険。ダンジョン(ゲームのタイトルの片割れであるとともにゲームそのものの原型でもある)は常に可能性に満ちている。私たちの世界と違い、D&D世界の人々は絶えず墓とダンジョンを作る。そしてそこには常に戦利品と怪物が充ち満ちているのだ。通常ダンジョンはそれ自体が挑む理由となる。だが今月はそこを少しひねって、「ダンジョンがそこにあるよ」という以上の理由でPC達をそこに挑ませる理由を考えてみよう。

新作サプリメント「Dungeonscape」はダンジョンを作り肉付けしてあなたのPCを喜ばせるために役立たせるべきである。さらにダンジョンの住人や所有者次第で以下のサプリメントが有用かもしれない。石の種族、「Lord of Madness」、「Libris Mortis」、「Sandstorm」、および「Savage Species」(訳注:それぞれ異形、アンデッド、砂漠、モンスター種族に関するサプリ)。「Savage Species」を使うならマルチヘッドクリーチャー(たくさん頭を持つクリーチャー?)を出して、「これは俺が作り出したんだぜ」と自慢するのもいいだろう。もっとも、これですら参考にするべき文献のごく一部に過ぎない。D&Dと名前のつく殆ど全ての出版物はダンジョン構築に役立つはずだ。

ダンジョン探検は殆どどんなキャンペーン、どんな場所でも成立しうる(訳注:よって今回は「キャンペーン適応」の欄はないし、キャンペーン世界の指定もない)。大都市の下にだってそれはある(「Expedition to the Ruins of Greyhawk(未訳シナリオ)」で紹介されたグレイホーク市地下の大ダンジョンを思い出せ)。D20モダン世界でさえダンジョンと無縁ではいられない。あなたのキャンペーン世界のどこかを選び、そこにダンジョンを建てよう。なに、誰でもやってることさ。

 

 

"ひょっとして私たち仲間とはぐれた?"

「違うね、仲間が俺たちとはぐれて迷子になったのさ」

「あのねぇ。ここのダンジョンは大きそうだし、私たちのことを見つけるまでにはかなり時間がかかりそうだよ? みんなは私たちのこと信頼してくれてるかもしれないけど」

「それについちゃあ同意見だな。しかし、結局のところ今ここにいるのは俺たち二人だけ。この部屋から逃げだそうとすればガブリ、と来そうなモンスターがすぐそこにいて、今はおまえの呪文が効いてるからいいが、そう何日も保つわけじゃない。さぁどうしよう?」

「悔しいことに全くもってその通りね・・しょうがないわ、頼りになるいとこ君に助けに来てもらいましょ」

そう言って、クレリックはセンディングの呪文を唱え始めた。

 

d100ロール:動機

00-25 センディングでPCにメッセージを送ってきたのは本当にPCの従兄弟であり、彼(彼女)は切実に助けを必要としている。

26-60 メッセージの送信者は助けを必要としているが、PCの親族というわけではない。が、彼はその友人と密接な関係を持っていると主張している。PCが確固たる名声を既に確立していた場合はなおさらだ。

61-90 送信者はPCのいとこではない(センディング呪文のためには相手を知っている必要があるが、悪党でもその前提条件を満たすことは出来るのだ)。この話がそもそも罠なのだ。彼らは行方不明になった冒険者グループを騙り、ピンチを装うことによってそれを助けに来るPCを罠にかけようとしている。彼らはダンジョンで何らかの仕掛けを施して、手ぐすね引いて待っているのだ。

91-00 センディングは実際にはPCの守護神格から送られたビジョンである(送信者の守護神格はPCのそれと同一である)。そして送信者は実際には助けを求められる状況ではなかった(あるいは助けを求められない他の理由があった)ので、神格が助けの手をさしのべたのである。

d100ロール:カスタマイズ

00-50 残念なことにセンディングで得られた情報は間違っており、PC達は予想外のモンスターに相対しなくてはならなくなる。

51-80 センディングを送った後、行方不明の冒険者はダンジョンの外からやってきたブルードラゴンに殺害された。冒険者が十分にハイレベルなら、D&Dアイコン・ミニチュアセットの巨大サイズブルードラゴンを用いるのもよい。

81-00 行方不明の冒険者は全員生きているが、無事とは言い難い。彼らは皆とらわれてマインドフレイヤーなどの手によって洗脳を受けてしまったのだ。PCは彼らが助けようとしている人々と戦わねばならない。

 

一風変わった戦利品

通常ダンジョンは宝物と魔法のアイテムでぎっしりだ。そしてこれらは普通ダンジョンの所有者の持ち物である(ダンジョンを作れるような人間はそうごろごろしてないのを考えればなおさら)。しかし、そうした物以外の何かもあるかもしれない。これはこれでダンジョンの可能性の一つである。

1.ダンジョンそのものが報酬であるかもしれない(「火吹き山の魔法使い」を思い出せ!)。ダンジョンを制覇したとき、それは既に君たちの物だ。

2.ダンジョンのクリーチャーは統率力を持つ、特に悪属性のPCにとって有用な雇い人ないし腹心となるかもしれない。こうしたクリーチャーを雇っていれば後々の冒険で非常に役立つだろう。また、例えばペガサスやヒポグリフと言った、訓練可能なクリーチャーの仔を見つけることが出来るかもしれない。

ダンジョンの物は報酬であるかもしれない。私がここで話しているのはモンスターからの「戦利品」についてではない。例えばダンジョンの部屋に、上質な錠前のついた上質な扉(古代樫の一枚板を使っているとか)はそれ自体持って帰ればそれなりの価格で売れるかもしれない。同じ事が罠の機構や壁や床の彫刻、タペストリなどにも言える。元冒険者がかつて捕らえられたダンジョンを覚えていて、そこにある罠などを持って帰ってきて欲しいと依頼することだってあり得るのだ。

ダンジョンを作るならば、罠や怪物と同様に報酬にも何らかの創造性を発揮するべきである。冒険者、及びプレイヤーはそれらの報酬を得るために、それに見合う危険を引き受けるだろう。

 

 

法律なんざくそくらえ

そーっと、そっとな。「なぁおまえさん、連中が昨日見つけたって言うその墓についてなんか聞いたかい?」

 陰険そうな面つきの、目立たない格好の男が仲間にささやく。彼はあなたのすぐそばに、似たような格好の人間三人と一緒に腰を下ろしている。出来るだけ静かに話そうとしているようだったが、明らかに失敗していた。

「知ってるよ。でも知ってどうするんだい」

 別のところから声――女のそれが飛んできた。最初の男の仲間の一人だ。

「ここはとても古い土地さ。あたし達は墓の上に住んでるような物。でも今まで何かを探そうとして見つけた奴なんかいないのさ・・・運のいいことにね」

「王様が何もかも秘密にしちまったせいで、墓荒らしの群れがやってこなかったせいだろうよ」と、最初の男は言う。

「やつが知ってることを正直にしゃべってくれればいいのさ。あそこに何があるのか――魔法か? 俺は確実に奴は何か知ってると思うね」

「さぁ、そうする機会があるのかな」

そう言ったのは16歳ほどの少年だった。

「そこに何かあるにしても、どっちみちゴーレムなり歩く死体なりといったガーディアンがいるはずさ。事によったらヴァンパイアみたいなとんでもない物までいるかもしれない。もし誰でも入れるような作りになっているとしたら、俺たちだけじゃなくもっと腕の立つ奴が必要だろうな」

「ああ、考えてたんだが」と最初の男への返事。

「ずっと存在し続けていた番人が機敏に反応できるとは思えねぇ。早いとこ墓に入って中の物をさっとかっさらってくればいいんじゃないのか? けどもし、おまえの言うことが正しいんだとしたらこの方法は忘れるべきだな。ちっとばかし高くつきすぎる事になりそうだ」

そして四人は話題を変え、新しい飲み物を注文した。

d100ロール:動機

00-55 墳墓は実在する。地元の有力者のための建築を行っていた人夫が作業中に偶然発掘したのだ。この地域の領主は誰であれそこに入るのを禁じ、その存在自体を出来るだけ隠そうとしている。

56-80 墳墓は存在するが、四人の盗賊達はPCがそこを探索するように仕向けようとして、墳墓に先に侵入する(あるいはそれが彼らの死を引き起こすかもしれないし、また意図せず閉じ込められるのかもしれない)。彼らは話し始めたときにどの位置にテーブルを置くか、どの程度の大きさの声でしゃべるかをきっちり計画しており、実際PC達が墳墓についたとき、その侵入を邪魔する物は何もない。

81-00 地元権力の対立派閥は既にその墳墓について知っている。そして誰もがそこに埋葬された人物のことを知っていると主張している。どの派閥も墳墓とそこに眠る富を我が物としたがっているのだ。ある者はPCの力を利用しようとし、またある者はPCのライバルを雇う。

d100ロール:カスタマイズ

00-25 主な「カスタマイズ」として、墓は罠と守護者で満たされる。PCは報酬を見つけることが出来るかもしれないが、それは容易ではないだろう。

26-55 罠と守護者だらけではあるが、直接にはいかなる戦利品も報酬もない。代わりに墳墓の中心の玄室には世界に存在するあらゆるドラゴンの群れをリアルタイムで表示する巨大な魔法の世界地図が存在する。群れが冒険者などに倒されるか何かして消滅・解散した場合は地図の表示も消える。

56-80 宝物を望む派閥の一つがPCの後に墓に入る。怪物や罠がPC達、あるいは他の競争者を弱めた後にこれらを攻撃して宝を我がものにするつもりなのだ。

81-00 墳墓など存在しない。入り口に見えた物は実は次元界をつなぐゲートであり、それは何世紀もの間休眠状態であった。しかし、ゲートの向こうにいるクリーチャーはそれが再び開く時を未だに待ち続けている。

 

淑女は謎めいて

伝説は何を語る美しい湖のそば、十分な金さえあれば豪商や政治家、冒険者さえも分け隔て無く受け入れる、風光明媚で有名なリゾート地。だがそこも一皮むけば人が住んで働いて死ぬ、普通の街である。およそ百年前、都市の有力者の一人が不思議な死に方をした。ベッシィラ(Bessiyra)というこの女性はこの地でももっとも有名な温泉と賭博場の経営者であった。伝説によれば死因の調査が終了する前に何者かがその遺体を持ち去り、湖の北の岸、都市から30マイル東に複雑な墳墓を作って埋葬したのだという。彼女は元冒険者かつ強力なウィザードであり、冒険によって手に入れた財産でそのビジネスの第一歩を踏み出したのだが、彼女の保有していた強力なマジックアイテム、記録、及び日記の全てがその死後行方不明となった。

長年、墓荒らし、盗賊、冒険者はこの墳墓を見つけようと努力を重ねてきたがその全ては無駄に終わった。正確に言うならば彼らは確かに言い伝え通りの位置に墳墓らしき物を見つけたのだが、無数の洞窟の周辺に張られたネットらしき物がそこを通る全てのものを捕らえて放さず、誰も中に入ることが出来なかったのだ。結局のところ洞窟の中には何も見えなかったという噂が広まり、この言い伝えられる「墳墓」の位置そのものが本物から目をそらすためのダミーだと考えられるに至った。

しかしながら最近何かが変化した。墓荒らしのグループがひどいけがを負って墳墓の密集地域から戻り、奇跡的に命を取り留めた一人はそれ以来ずっと酒に溺れている。ベッシィラの墳墓に続く隠し扉を見つけただの何だのとうわごとのように呟き続けているが、それに耳を傾ける者は殆どいない。そうした例外の一人は調査を行うためにPC達を雇った。この後援者は宝物(あれば)を分配する際はそれなりの分け前を約束すると申し出る・・・言ってみれば海賊船の乗組員に船長がそう約束するように(船長の取り分は平船員の二倍だ)。

d100ロール:動機

00-50 後援者は墳墓に興味を持っているが、PCが考える理由とは違う。ベッシィラは後援者の一族についてある情報を握っており、それに関する記録がその墳墓の中にあるのではないかと心配しているのだ。彼はそれを闇に葬りたいと思っており、財宝そのものに対する執着はないが、それが目的であるというポーズは貫く。

51-70 何人かの後援者がPCを取り合う(PCはおそらく冒険者として有名なのだろう)。前回派遣したグループは弱すぎたが、より強力な冒険者なら生きて財宝を持ち帰るだろうと期待しているのだ。

71-85 ベッシィラの子孫の一人が彼女の遺体を移動させ、彼女の墓が荒らされたり騒がされたり、あるいはそれを巡って争いが起きたりすることが無くなるよう、PC達に助力を依頼する。

86-00 墳墓自体は重要ではない。重要なのは遺体を盗んで墳墓にそれを収めた人々だ。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 本物の墳墓はゴーレム他の人造と無数の罠で埋め尽くされた迷宮である。さらに罠のいくつかは生きたガーディアンを召喚するためのキーになっている。

41-50 記録のたぐいが全く墳墓には残っていない。何者かがそれを持ち去ったか、もしくは処分したのだ。

51-65 隠し扉は罠で満たされた別の偽の墳墓に通じており、そこには彼女の死とともに消えたはずの魔法のアイテムが収納されている。ベッシィラは現在リッチとなっており、他の場所に拠点を持っている。現在ここは単なる倉庫でしかない。

66-90 本物の墳墓は鉛の遮蔽、そしてテレポートと次元移動を防ぐ障壁によって守られている。

91-95 本物の墓は「墳墓」から5マイル離れた街道沿いの小さなほこらにある。彼女の遺体、魔法のアイテム、及び書類のたぐいは全てその下に埋められている。

96-00 彼女の怪物的な正体を衆目に晒さぬため、その仲間は遺体は別人の墓に納めた。彼らはベッシィラの「神話」を生かし続けるため、それ以来ずっと偽の墓を維持し続けている。