Steal This Hook! 01/24/2007

おしゃれ泥棒

ロバート・ウィーゼ


 

悪漢が常に盗賊であるわけではないが、盗賊は概ね悪漢である。彼らは所詮貴重品を盗む上等な泥棒猫や、手当たり次第何でも持って行く二流のこそ泥、あるいは単なる追いはぎでしか無いというのにもかかわらず、何か我々の心の中でどこかロマンチックな場所を占めている。例えば海賊のように、それに値するとは到底思えないにも関わらずである。今月のスティール・ジス・フックは泥棒と盗みに関わる冒険にあなたのPCを招待する。

 

おいで、私のしもべたち ―― エベロン

アンデールの首都フェアヘイヴンはコーヴェア屈指の大都会であり、もっとも活発な都市の一つでもある。匹敵するのはシャーンと他いくつかの大都市だけであろう。この巨大都市では殆どどんなことでも起こりうる。賑やかな下層社会、アンデール王政府、反動渦巻くワイナーン大学、ドラゴンマーク氏族のエンクレーヴ、そして商業勢力。可能性は無限に存在するのだ。

ある日PCは仕事の依頼を受けるが、その最中、当局が踏み込んできて窃盗を共謀した容疑で依頼者と共に逮捕されてしまう。依頼者には身に覚えが全くなく、無実を主張するが、当局はそれを確認できない。ゾーン・オブ・トゥルース呪文でも依頼人の主張が嘘であると証明はできないが、同様に目撃者は犯行現場で依頼人を確かに見たとなおも主張している(困ったことにこれもまた嘘ではない)。依頼者は彼(または彼女)が何らかの仕事上の関係で罠にはめられたと考えており、PC達に助けを求める。

d100ロール:動機

01-40 依頼人は誠実であり、助けを必要としている。PCに隠していることは何もない。

41-90 依頼者はモディファイ・メモリー(バード4)に対する意志セーブ(もしそれが行われていたなら。カスタマイズ参照)を行い、何が起こったかを思い出す(同様にゾーン・オブ・トゥルースに対するセーブも)。殺されるという恐怖が彼の証言を躊躇させており、彼の知っていることを探り出すためには気の長い説得か魔法的探査が必要となるだろう。

91-00 依頼人はバードであり犯罪の黒幕である。自らを被害者とすることによって、将来受けるであろう嫌疑から自分をそらすつもりなのだ。

d100ロール:カスタマイズ

00-45 犯罪の黒幕は心術を得意とするバードであり、善良な人々に盗みを働かせ、モディファイ・メモリーでその記憶を消すと言うことを繰り返しているのである。

46-60 実は今回と同様の事が既に何度も繰り返されており、記憶を改ざんされた他の「手下」がこの街にまだ存在する。PCたちは真相を解明し、立証するためにそれらの被害者達に当たらなければならない。

61-65 首謀者のバードは過去の冒険で世話になったPC達の友人である。かつて非常に世話になった彼が黒幕であるなどと、PC達は信じたがらないだろう。

66-75 黒幕のバードはさらに別の人物ないしクリーチャー(おそらくヴァンパイアかゴースト)に強要、あるいは脅迫されており、やむなくこうした犯罪を行っている。このバードを取り除けば犯罪は短期間やむだろうが、真の黒幕はすぐにまた別の駒を見つけるだろう。

76-90 犯人はドッペルゲンガーないしチェンジリングであり、依頼人は真実その場にはいなかった。が、依頼人のアリバイを証明できなければその無実を証明するのは至難の業だろう。

91-00 この犯罪全体がPC達を陥れる罠である。黒幕のバードはプレジャー・デビルの変身した姿であり、PCのクレリックを堕落させたがっている。デヴィル達は窃盗を行い、PCのパラディンやクレリックがその調査のあらゆる局面において霊的に堕落してしまうように、無数の罠を仕組んでいる。

キャンペーン適合

魔法使いはあらゆるD&Dキャンペーン世界にも存在する以上、このフックもいかなるキャンペーンにおいても適応可能である。冒険者大全はバードを肉付けするのに役立つだろうし、呪文大全は言わずもがなであろう。

フォーゴトン・レルム:これはサーイの仕業だ! あなたはサーイの治外法権地帯のどこかに黒幕がいるとしてもよい。

D&D一般設定:魔法使いがいるでしょ? ならそこでいいよ。

D20モダン:D20モダンの世界ではそれほど大きくない、例えばアメリカ中西部の大きめの街がいいかもしれない。D20フューチャーであれば開拓惑星の衛星軌道を回る宇宙ステーションというのもありだ。

 

ここまで来れば、しめた物 ―― エベロン

塔の街シャーンでは、常に表に現れるよりはるかに多くの出来事が起こっている。ダガー河の川岸の地べたから1000フィート上空の塔のきわみに存在するスカイウェイまで、その一層ごとに異なる陰謀が企まれているのである。加えて塔の中には多くの魔法の部屋もあれば、上層部の歩道や庭園にウィザード(ないしはそうしたウィザードを雇える富裕層)による恒久的なマグニフィシェント・マンション(エベロンにおいては「モルデンカイネンズ」をつけずに呼ばれる)も一つならず存在している。

大学専属の探検グループからモルグレイブ大学に、オリエン氏族特急便の夜の最終便で珍しい荷物が届いた。次の夜、PC達が酒場や夜の娯楽に繰り出すのであれば、妙な集団が布で覆われた何かを運んで通りを歩いているのに出くわす。それはずいぶん大きく重そうだ。彼らは二つの階層を駆け上り(あるいは駆け下り)、公園に入ると遊歩道の真ん中にそれを下ろす。彼らの一人がいくつかの身振りを行うと空中にほのかなきらめきが現れた(近くのコンティニュアル・フレイムの光に照らされて、ちかちかと瞬いている)。彼らはきらめきを通って荷物ごと姿を消し、きらめきも消える。何秒か後に「泥棒!」の叫びが響き渡り、公園にブーツの足跡が迫ってくる。

d100ロール:動機

00-60 モルグレイブ大学はアーティファクトの消失で大騒ぎになっている。彼らはそれを取り戻してくれるなら報酬を惜しまない。

61-85 モルグレイブ大学の学者達はアーティファクトの魔力を誰にも知らせるべきではないと考えており、アーティファクトが何であるか、どこで見つかったか、どんな力を持っているのかを話そうとはしない。しかしアーティファクトを取り戻したいと考えていることには変わりない。

86-95 モルグレイブ大学の学者の一人はこの盗難を仕組んだ犯人であり、盗賊達が隠れたマグニフィシェント・マンションの持ち主とつながりがある。

96-00 アーティファクトには呪いが宿っており、デーモンないしデヴィルがそれを狙って学者の一人を自分の息のかかった者に置き換えた。このアーティファクトを奪い、その呪いの力を利用して、同胞をカイバーから解き放つのが狙いなのだ。ひょっとしたら学者は既に殺されていてデーモンに入れ替わられているのかもしれないし、憑依されているのかもしれない。

d100ロール:カスタマイズ

00-25 マグニフィシェント・マンションの所有者は盗賊の黒幕であり、それ故に彼女は自宅へ入ることを彼らに許した。盗賊達はここを基地として大規模な盗賊ギルドを作り上げることを計画する(この邸宅をディスペルする者に呪いあれ)。

26-55 盗賊達は魔法装置使用技能を用いてマグニフィシェント・マンションすら盗んだ。本当の持ち主をよそに盗賊達は我が物顔に振る舞っている。この邸宅は(盗賊達と持ち主が出くわさないほどに)恐ろしく広く、また本当の持ち主は滅多にこちらにはやってこない。

56-70 盗賊達はマグニフィシェント・マンションにアーティファクトを隠してしまった。マンションの作成者に連絡を取れない今、PCたちはアーティファクト回収のためにマグニフィシェント・マンションに侵入しなくてはならない。

71-90 マグニフィシェント・マンションには欠点・・次元の裂け目が存在した。そこから現れた怪物は既にマンションの中をうろついており、すぐにもこちらの世界へ侵入してくるだろう。PC達は盗賊だけに気を向けているわけにはいかない。

91-00 マグニフィシェント・マンションは普通の物とは違い、いくつかの変な場所に繋がる出口を持つ。その中にはグレイホーク世界に繋がる物さえあるのだ!

キャンペーン適合

あなたは異なるキャンペーン世界をつなげるマンションを造り出すことが出来る。従って、盗賊が同時に異なった世界で活躍することも出来る。フォーゴトン・レルムからの追っ手がエベロンで盗まれた品を探し回ることだってあるかもしれない。「Cityscape」は豪奢な邸宅の周辺を描写するのに役立つだろうし、「Dungeonscape」は大邸宅の内部を作り出すのを助けるだろう。あ、使用人を忘れないように。

フォーゴトン・レルム:ウォーターディープ、オームーのアスカトラ、サーイのどこでも、あるいはムルホランドのスカルドなどで上手く当てはめることが出来るだろう。

D&D一般設定:大きな交易の中心地がよいが、魔法の邸宅(及びあなたが見せたいと思う物)を生み出すために魔法を見せびらかすのが好きな強力なウィザードが必要となる。もっともウィザードの住んでいる大都会、ということなら一つは見つかるだろう。

D20モダン:マグニフィシェント・マンションはD20モダンの世界設定では誰も見たことも聞いたこともないような魔法によって作られなければならない。従って、そうしたウィザードはファンタジー世界――D20モダンで通常許されるレベルのそれを超えた呪文を習得することが許される――から来ているに違いない。そうした人材はどこにでも住めるが、おそらくロンドン、ニューヨーク、上海あたりに住んでいるだろう。そこならばそうした人々も人混みに紛れることが出来る。

 

コアミア王の宝冠 ―― フォーゴトン・レルム

コアミアの首都スーゼイルは、この世界全体を見渡しても最も大きく、国際的な都市の一つであり、コアミア王家の家でもある。予想されるように、それは(場合によっては時々)宝冠の家でもある。殆どの王は戴冠に用いる宝冠を持っており、それはステータスシンボルでもある。当然彼らもそれを盗まれないよう警戒はしているが、革新的な手口を考え出す犯罪者と魔法の双方が存在する世界では、いかなるセキュリティといえども万全ではない。

ある朝、噂が流れ始める。戴冠用の宝冠が無くなっていると。本当のことを知っている者は誰もいないにもかかわらず、誰もが疑い、誰もが勝手な噂を流す。その朝、あるいは数日の内にその疑問は公然と口に出されるようになる。そしてそうした噂をしている者達が、公権力の制服を着ていることはない。丁度冒険の合間に滞在していたPCを含む街の人々は焦りを感じ始める。そしてついに逮捕者が出た。さぁ、冒険の時間だ。

d100ロール:動機

00-30 王室は、できるだけ早急に宝冠を取り戻したがっており、盗賊がその過程でどうなるかは気にしない。この姿勢は素早い「正義の味方」による実力行使や盗賊との交渉を導くことになるだろう。

31-50 王家は宝冠よりむしろ盗賊への復讐を叫ぶ。宝石は新しいのを用意できるが、潰されたメンツはそうはいかない。

51-75 王室のメンバーが盗賊の背後にいる。彼は罪を別のスケープゴートに押しつけ、民衆の疑問は次第に消えていく。そして宝冠は戻らない。

76-00 王家の敵はこの盗難を利用しようとしている。故エイズーン四世王の一族を動揺させることは非常に難しいが、彼らはそれでもなおこれらの事件を起こし、王家を揺るがそうとしているのだ。

d100ロール:カスタマイズ

00-40 PC達のローグを含む何人かが拘留されてしまう。PC達は潔白であるが、真犯人は「外国人の冒険者」に罪を着せられるくらいの証拠を揃えており、牢の外にいるPC達が事件を解決するかそれを覆さなくてはならない。

41-55 PC達は本当の犯人である。彼らがそうしたくなる、あるいはそうせざるを得ない状況か動機を与えなくてはならない。どちらの場合でも冒険は盗みから始まり、調査へ繋がる。PCは自首するか、他の誰かに罪をなすりつけるか、あるいは単に街を出て再び戻らなければすむかもしれない。PC達が動かない場合、遠慮無く別の方法を試してくれ。

56-85 法の影の側に存在する何者かが、この事件にPCが関わっていると考え、宝冠を差し出すように圧力をかけ始める(この辺は「マルタの鷹」が参考になるだろう)。PCは宝冠を持っているかもしれないし、そうでないかもしれない。

86-00 宝冠の盗難はウェストゲートの夜仮面団に属する盗賊達の「最終試験」であった。彼らはPC達の一人、あるいは複数に魔法的に変装し、PC達が「旅の途中」であり、この街からはすぐに旅立とうとしていると見せる(そして、PC達が捕らえられたり騒ぎを起こしている隙に逃げるのだ)。

キャンペーン適合

王家の宝冠があるならば、どこでもこの冒険は行うことが出来る。有用なサプリとしてはまず「Cityscape」が筆頭だろうが、自然の種族、石の種族、あるいはいずれかの世界固有の情報を記した出版物が入り用かもしれない。

エベロン:五つ国の全てはガリファーの末裔であり、いずれの国もそうした宝冠を持っていることだろう。五つ国の中からお気に入りを選べばよい。私はアンデールとスレインが好きだ。

D&D一般設定:支配者が王家である必要はない(公爵とか大公とか)が、戴冠用の宝冠が無くてはいけない。称号を持たない商人であっても、宝冠をそれに類するような宝に変えることは可能だ。舞台はキャンペーン世界でもっとも大きな都市、少なくとも大都会であればうまくいくだろう。

D20モダン:もちろん、最高の選択肢はロンドンである。他のどこに戴冠用の宝冠なんてあるんだ? ・・・ああ、そう言えば昔のバットマンのTVシリーズで悪党が宝冠を狙う話があったっけ?