Steal This Hook! | 12/18/2006 |
ロバート・ウィーゼ
ひとたびデヴィルが計画を練るとき、その複雑さは常命の者の想像を遙かに超えて螺旋の如くに絡み合う。これは何も驚くべき事ではない。デヴィルの住まう地獄はおそらくあらゆる次元、あらゆる世界の中でも最高の官僚機構であるのだ。全てのデヴィルが互いに陰謀を企み、騙しあい、さらにそれらが複雑に絡み合い巨大なタペストリを織り上げるところ、それが地獄なのである。今月、「魔物の書U」が発売された。これは殆ど全てのデヴィルの情報を網羅しており、デヴィルをプレイするためのセクション、デヴィル達が互いに仕掛けあう陰謀の詳細をも含んでいる。今月のフックはそうした事を踏まえ、何らかの形で全てがデヴィルと関わっている。楽しんで欲しい。
それではまた来年お会いしよう。デヴィルが私たちの魂を持って行かないならば、だが。
"広野"にあるレイヴンズ・ブラフは冒険者の町と呼ばれている。フェイルーンの他の場所ではほとんど見つからない物であっても、ここを探せば見つかるからだ。広野は危険な場所であり、英雄を必要とする何かが常に存在する。むろんこの夜も例外ではなかった。PCたちは街の船着き場周辺を歩いていた。おそらくは「シャーキーズ」と呼ばれるユニークな水中酒場で夜のひとときを過ごそうと思ったに違いない。しかし、暗い影が水面から浮かび上がる。街灯の光の中に海の闇を切り取ったような姿が踏み入ってくる。それらは係留されていた船に群がり、動く者全てを殺し始めた。その生物(サフアグン)は無謀なまでの苛烈さに駆り立てられているように思える。実際、通常のサフアグンにない凶暴さがその時の彼らにはあった。
PC達がどうにかシー・デヴィルどもを波の下に追い返すと、コーウィン・スターク(商業ギルド代表)が接触してくる。スタークは酒場にPC達を招待し、さらなる攻撃を防ぐため助けを求める――全くもってレイヴンズ・ブラフ流なやり方で。彼によればこうした襲撃が先月にも一回あったといい、報酬を――彼が支払える額よりもかなり低い額を――申し出る。彼は、彼が支払うべき報酬を、サフアグンの宝物庫の中にある報酬で可能な限り相殺したいのだ。
d100ロール:動機
01-40 商人は誠実である。 彼らは本当に攻撃を防いで欲しがっている。
41-65 一人の商人がサフアグンと同盟を結び、ライバルに対してそれらをけしかけている。
66-85 商業ギルドの上位メンバーはサフアグンを奴隷にしたがっており、それが可能だと考えている。彼らはPCたちにその集落の位置を探り出させようとしているのだ。
86-00 デモゴルゴンの相(Aspect、分身のような物)に率いられた数体のデーモンがイクシタチトリ(ixitachitl、水中に住む吸血性種族)とともにサフアグンに敵対している。が、PC達から干渉を受けたくないのは彼らも同じだ。
d100ロール:カスタマイズ
01-50 広野の海岸であるかセンビアであるかを問わず起きたサフアグンの襲撃はサフアグンの神セコラの相によってもたらされたものである。彼は、デヴィルに近い彼らの神にさらなる献身と供物を捧げるよう、しもべたちを追い立てているのだ。
51-75 襲撃にはサフアグンの複数の部族が参加しており、それぞれは部族間の抗争に備えて富を増やし、武装を整えるために襲撃を繰り返している。この部族間抗争を止められないのならば、いずれ落星海沿岸の全ての都市がサフアグンによる襲撃を受けることになるかもしれない。
76-90 サフアグン達の後ろには水棲のグール達が続いている。攻撃の混乱を利用して、犠牲者達をゆっくりと頂くつもりなのだ。
91-00 サフアグンが戦利品とともに意気揚々と引き上げて来たとき、ブルー・ドラゴンは彼らの間に争いを巻き起こし、その隙に戦利品をゆっくり品定めする。これによってブルードラゴンの財宝はさらに増えるだろう。(ひょっとしたらあなたはブルードラゴンを巨大サイズにしたいと思うかもしれない。であれば一月発売の新しいガルガンチュアン・ブルードラゴンのミニチュアがおすすめである(CM!))
キャンペーン適合
サフアグンの襲撃はこの生物が存在するあらゆるキャンペーン世界でかなり一般的である。水中冒険用のサプリ「StormWrack」およびデヴィルの戦術を網羅した「魔物の書U」は非常に有用であろう。レイヴンズ・ブラフの設定をより積極的に取り入れたいのならば「LC4: Port of Ravens Bluff」(TSRの非常に古い刊行物である)が欲しくなるかもしれない。また、その意味では「City Scape」も有用であろう。
エベロン:サフアグンはゼンドリックへの水先案内人としての立ち位置を明確にしているため、そこはこの冒険に適した場所であるかもしれない。
D&D一般設定:近くにサフアグンが住んでいる海岸ならばもうそれ以上は何もいらない。それどころか舞台は海岸である必要すらなく、サフアグンが襲撃できるなら船、水上都市、または小さな島の共同体であってもよい。近くにシー・エルフの集落があったりするとより面白くなるかもしれない。
D20モダン:サフアグンは太平洋の環状火山帯に住んでいる。よって、日本やオーストラリアがよい選択と思われる。
シャーンの通りを形成する橋を渡るときは用心しなくてはならない。特に霧の濃い夜は。くぐもった悲鳴が街路に響いたその日も、濃い霧が立ちこめていた。PC達が駆けつけたとき、もうそこには何も残っていないかもしれないし、何かを引きずったような跡が残っているかもしれない。ひょっとしたら今まさに数人がかりで引きずられていく誰かを目の当たりにするかもしれない。
後の話だが、多くの人々がこの数ヶ月間で異なる状況で姿を消していたことがわかる。状況が多岐に渡りすぎて断定するのは難しいが、最後には犠牲者に共通する、失踪する理由を発見する。
もしPCがその事件に興味を持たなかった(行動を開始しなかった)場合、一日か二日ほどして、そうした状況で二ヶ月前に姿を消した商人の妻からの依頼が舞い込んでくる。彼女は夫に何が起こったのか調べるために彼らを雇いたがっており、最初の事件に関するPCの証言と夫の失踪に何らかの関係があることを望んでいる。
d100ロール:動機
01-30 商人の妻は誠実である。
31-60 商人の妻はデヴィル(あるいはデーモン。この事件の黒幕によって適宜変更すること)の変身した姿である。このクリーチャーは事件の解決を望んでいる。それが彼らの敵対者の計画を邪魔することになるのだ。
61-75 あるNPC(法の番人)はPCたちがこの事件に関わるのを好ましく思わず、合法的な手段で可能な限りこれを妨害する。犠牲者の一人は高い地位を持つ人物であり、このNPC(あるいは失踪した人物に近い人物)は、その詳しい状況が外部に漏れることを好ましく思わないのだ。
76-00 PC達を雇った商人の妻は実はあるカルトの信者である。そしてそのカルトは全ての失踪をPCの仕業にすべく、PC達が接触した人間を片っ端から誘拐する。
d100ロール:カスタマイズ
01-40 最近アークデヴィルの位に上った第六層の主、グラシアはアークデヴィル達のプレイする複雑なゲームを有利に運ぶため、より強大な力を求めている。彼女はシャヴァラスからエベロンに至る巨大な門を開き、この街そのものを「終わる事なき戦場」に引き込む――つまり彼女の領土に加えるつもりなのだ。この儀式を完了させるには多くの生き血したたる心臓が必要であり、シャーンの彼女のカルトはそれを集め終えた。60人以上の人々はもっとも古い塔の基部、忘れられた牢獄に閉じ込められている。
41-55 上記に加え、この計画を知ったデーモンロードが最後の最後でこれをひっくり返し、この都市をグラシアではなく自らの領域に加えようとしている。
56-65 デヴィルを崇拝しているカルトは実際にはラクシャサの奴隷である。このラークシャサはカイバーに封じられた強大な同族を蘇らせようとしており、それには犠牲者を生かしたまま、それを行わせなければならないのだ。
66-85 誘拐事件の背後に何者がいるとしても、その最終的な目標あるいは生け贄はPCたちである。彼らが偽情報を流し、PCたちは謝った結論に達する。最終決戦の時点でなおそれを見破れないなら、生け贄達は全て殺されDMの企むあらゆる儀式は完了していることだろう。
86-00 ヴォルの血は誘拐犯から犠牲者達を奪い取り、ヴォルのしもべのヴァンパイアとしている。
キャンペーン適合
「Cityscape」はおそらくかなり役に立つだろう。もっともあなたは都市を小さくして、広野での冒険に重点を置くことも出来る。その場合「自然の種族」を必要とするかもしれない。そして、当然デーモンやデヴィルを扱うならば二冊の「魔物の書」が有用であろう。
フォーゴトン・レルム:様々な宗教が入り乱れる大都市が適当である。ウォーターディープがベストと思うだろうが、センビアのセルゴントも悪くない。
D&D一般設定:複数の宗教が栄える大都市ならばほぼどこでも。さっきからそう言ってるだろう?
D20モダン:様々な・・以下略。ロンドン、ローマ、カイロ、または上海でもよい。
西ハートランドの南に位置するトリエルはウォーターディープとスコーヌーベルを結ぶ通商道上に存在するにもかかわらず、いたって小さな街でしかない。街を通って多くの交易が行われるが、交易の終点ではない。従ってトリエルの商人たちがスコーヌーベルの商人たちがそうであるほどには豊かでないのも当然だろう。とはいえ南のエルタレルへの直通路が存在するため、人々はサービス業以外でも多少の稼ぎを得ることが出来る。
トリエルの領主市長は絶えず自分の威信と都市の富の量を高めるべく、何らかの計画を練っている。彼は様々な才能に恵まれているが、メロミーネという名の美しい娘以上に彼をして自分が(それなりに)恵まれていると感じさせるものはない。彼女は父親の意に反して労働者階級と親しく交わっているという評判であり、加えて街の若者には絶大な人気を誇る。PC達が街に到着した晩、彼女はパーティから父親の家に戻る途中で姿を消した。現場に残った痕跡からは彼女の馬車が多くのオーガーに囲まれていたことがわかる。周辺に人間の痕跡は全くなく、オーガーの内二体が何か重い物を運んでいた事もわかる。そして、街の外へと続くようにして数滴の血痕が発見された。
次の朝、領主市長の部下がPC達を見つけ、行方不明の少女を捜し出すために彼らを雇う。彼は領主市長が丁度始めたばかりの投資に用いる資金か、もしくは事業の部分的権利をもってPCへの報酬とする。
d100ロール:動機
01-40 市長は娘に戻って欲しいと心から願っており、侍従もその為に動いている。
41-60 市長は実の娘を売り飛ばしたのだ。市長が自分の評判を傷つけると思うほどに彼女は自由奔放であり、それ故に借金のカタとしてオーガーに売り飛ばされたのだ。
61-80 誘拐の黒幕はエルスレルの商人である。市長の新しい投資事業に一枚食い込み、甘い汁を吸うための交換材料とするつもりなのだ。
81-00 市長は嘘をついているわけではないが、政敵が誘拐の後ろにいるのではないかと恐れている。場合によっては娘を捨てざるを得ないと考えているが、それでも彼は娘の奪還を望んでいる。
d100ロール:カスタマイズ
01-35 メロミーネの正体はプレジャー・デビル(魔物の書U)であり、本物は1年以上前に殺されている。入れ替わった悪魔はこの街の司祭と官僚を堕落させるべく、領主の娘という身分を利用していたのだ。それが彼女が自由奔放と噂されている原因でもある。そして、そろそろこの街から移動しようと考えた彼女は自らの誘拐をお膳立てしたのだ。
36-50 PC達がメロミーネを探している間、市長は最後通牒を突きつけられ、時間稼ぎのために何人かの危険な犯罪者の釈放を呑まざるを得なくなる。PCたちはこれらの危険人物をも捜し出さなくてはならない。
51-65 PCが失敗し、メロミーネが死んでしまった場合、彼女はゴーストとなって戻り、父親とPC達を悩ませる。
66-90 領主がPC達を探している間にスポーン・オブ・ティアマットかマルカンテト(魔物の書T)のカルトの信者達がオーガーからメロミーネを奪い取る。わずかな手がかりからPC達はこれらの正体を突き止めなくてはならない。
91-00 メロミーネはマルカンテトの従者であるサキュバスである。その共通した脅威に対してエリニュスないしプレジャー・デビルがPC達と同盟を持ちかけてくる。こうした同盟から得られる報酬は非常に興味深い物になるだろう。それは「魔物の書U」に記された特技等へのアクセスをも当然含んでいる。
キャンペーン適合
残念ながら誘拐事件はありふれたニュースであり、大概のキャンペーン設定では珍しくもない。よって、殆どのキャンペーン世界ではこの冒険を導入できるだろう。この冒険は「魔物の書」T及びUの内容に負うところが大きい。加えて都市に厚みを与えるために「Cityscape」を必要とするかもしれない。
エベロン:登場人物をノームに変えてズィラーゴのドラゴンローストにするのがいい。もっと破天荒にしたいならばダーグーンのレルリーチで、登場人物全てをホブゴブリンにするのがいいだろう。
D&D一般設定:PC達が訪れたことが無く、領主が支配する街が必要である。もしPC達がそこに訪れたことがあるのならば、あなたは市長の娘がどう変化していったのかを説明せねばなるまい。
D20モダン:ラスベガス以外にはあり得ないだろう、ベイビー? そう、こいつぁ譲れねぇ。おまえさんは人間を使ってもいいし、何らかのシャドウクリーチャー(この設定における幻想生物の総称みたいなもの)にしてもいい。なんかファンタジックな生物の隠れ里の話にしちまっても問題はないぜ。