Steal This Hook! 10/04/2006

恐るべき物、恐れるべき物

ロバート・ウィーゼ


 

恐ろしい出来事と言うのはいつでも起こりうるものだ。そしてそれはスプラッタ映画のような血まみれの臓物である必要はない。最も強い恐怖は肉体が傷つく事ではなく、精神が傷つく事なのだ。そして今月私たちが提供するのは、ほんの少しの想像力で素晴らしい恐怖を与えうる、三つの奇妙な事件である・・・。

丁度Ravenloft(ファンタジー・ホラー風味のD20システム背景世界)のサプリメントが発売になることもあり、今月のフックはRavenloftキャンペーンに使用するためのアイデアを含んでいる。Land of Dread(危難の世界)を私と同じくらい愛しているならば、是非今回のフックを使ってみて欲しい。そしてプレイヤーを恐怖させようではないか。

 

「・・・そして見よ、カエルは来たりて地を覆い尽くすであろう」 ―― フォーゴトン・レルム

(訳注:旧約聖書でモーゼとユダヤ人の出エジプトを止めようとしたエジプトは様々な災害に会うが、その中にカエルが地を覆い尽くし、それが原因で疫病が流行したという一節がある)

エンジンのおーとー、ごーおーごーおーとー♪(違)インピルターの農業と鉱業の中心であるラヴィガーはこの国の内陸にある唯一の大都市であり、一時期は何事もなく平穏無事な生活が続くかと思えば、またある時期は奇妙な出来事が頻発するような、そんな街である。近くのアースパー山脈からは黄金とブラッドストーン、そしてモンスターとその他の客人が途切れる事無くこの街にやってくる。もっとも、ここでの暮らしは概ね単調なものであるのも事実だ。鉱夫は石を掘り、商人は物を売り、人々は町を歩き・・・・*びちゃっ!* "ゲコッ" ・・・・そして、時々空からカエルが降ってくる。 "ゲコッ"

いきなりカエルが空から降ってくる。ぴちゃっ、と水気を含んだ物が地面に叩きつけられるあの音がしたにもかかわらず、元気にゲコゲコ鳴いている。人々は家に鍵をかけて閉じこもるが、カエルは次々と降って来て、家の中にまで入ってくる。カエルの大合唱は時とともに人々を苛立たせ始めるし、直接間接の被害を受けた人々なら尚更だ。その日、カエルの雨は5時間以上降り続いた。それがやんだ後、都市はカエルに埋もれる。どこへ行っても、道に蠢くカエルの群れの深さが膝より下に来る事はない。(彼らも行く場所がないのだ)

"広野(Vast)"へ旅立つべく街に滞在していたPCたち(別の理由でも良い)の元にカエルがどこから来たか解明しようとする商人など――例えば"ギフテッド(天才)"グリサルン(人間の女性、エキスパート10/ソーサラー4、魅力18)――が押しかけてくる。グリサルンは既にこの事件を商売に活かす方法を考え始めており、それ以外にも様々な理由から情報を欲している。あるいはコターラという女性ドルイドはこれが都市に対するなんらかの攻撃の始まりではないかと懸念しており、その背後にいるものにかかわりなく、PC達がカエルを止めてくれる事を望んでいる。彼女は降ってきたカエルがおよそ60マイル離れたアースファスト山脈のある谷にのみ生息する種類だと言う事を(PC達も知識:自然で難易度20の判定に成功すれば知っていたことにしても良い)PC達に教える。最後に、クリテーラという少女がカエル達を全て元いた場所に返してやって欲しいと、頼んでくる。彼女は純粋にカエルたちの事が心配なのだ。彼女(の両親)はカエル達の輸送費用を出し、かつPCたちへの謝礼を賄うのに十分な財産を持っている。

d100ロール:動機

01-50 PCに依頼する人々は、皆誠実であり、裏表はない。

51-80 迷信深い多数の市民はカエルの事件の裏には何か邪悪な魔法が潜んでいると信じており、それを引き起こした犯人に対する復讐を望んでいる。

81-00 カエルの雨は街の誰かが望んだ事である。ライバルの商売を妨害するか、または町に相互不信と恐怖を撒き散らすためだ。

d100ロール:カスタマイズ

01-30 カエルの雨は自分が住み着こうとした谷からカエルを追放しようとしたエルフのウィザード/ドルイド/アーケイン・ハイエロファントであるデイペックスが起こした物である。しかし、食物連鎖のバランスが崩れたことにより、彼は何らかの異変に直面するだろう。

31-50 カエルの後から巨大で危険な生物が現れる。アースファスト山脈にねぐらを持つレッドドラゴンは、空を舞うカエルの群れを追いかけてラヴィガーを見つけた。彼は街の宝物が欲しくてたまらなくなる。

51-70 デーモンロード、オボクスオブのカルトが谷に住み着き、山に存在する共同体を攻撃するために谷で無数の害虫を飼育している。カエルがこれらの虫の天敵である事から、これらの信者達はカエルを魔法で追放した。この狂信者どもを止めなければ、害虫どもの最初の標的はラヴィガーとなるだろう(遠慮せず、あなたの好みでいやらしく嫌悪感をそそる害虫を描写してくれ)。

71-90 カエルが降ってくるとすぐに、その中に紛れていたスラード達が市民を脅かしはじめる。通常の攻撃に加えてカエルを投げつけてきさえするのだから始末が悪い。

91-00 谷に住んでいたそれよりもはるかに多くのカエルがラヴィガーに落ちてきている。残りはどこから来たのか? デヴィルの攻撃か、それとも原因は別の世界、ないし別の次元界に起因しているのか?

キャンペーン適合

カエルの雨は少しアレンジすることによってほとんどどこでも降らせることができる。以下の世界に当てはめると考えて欲しい。

 

「されど、憎しみが我が手を動かす」 ―― エベロン

おお、君よ。汝は殺されたのか、それとも殺したのか?アサンドラ市はスレインのほぼ中央にありイーリス・シックス(Six Aeylisors)と呼ばれる冒険者グループの故郷(現在の彼らは関係ないが、初代がそうだった)である。彼らはコーヴェアのみならずゼンドリックまでもまたにかけて宝を探している。最近彼らは金、宝石、彫像、及び幾つかのマジックアイテム(これは彼ら自身が保管する)を含む大量の宝を手に入れてデーモン荒野から戻った。彼らが宝物を商人に売却して祝杯をあげたその夜、最初の死体が発見された。

酒場の主人の娘ミシュリーを殺したのが誰であるか、それは誰にも分からなかったが、死に方だけははっきりしていた。彼女は繰り返し刺されて死んだのだ。僅かに間を置いて、次の犠牲者が別の方法で殺された。例えば生きたまま埋められたり、井戸で溺れたり、首をはねられたり。殺人者は異なったテクニックを次々と試しているのか、それとも多数の殺人者がいるのか。イーリス・シックスは二人目が発見された時点で次の冒険に向かっており、この時点で彼らの持ち帰った宝とこれらの殺人が関係しているなど、誰にも分からなかった。

容疑者すら特定できないまま11番目の犠牲者が発見された後、アサンドラの警邏隊は破れかぶれになる。殺人者(たち)をなんとしても逮捕するため隣のシギルスター市に魔法で助けを求めたのだ。そしてシギルスターの責任者はPC達を派遣する。

d100ロール:動機

01-25 殺人は宝物の中にあった彫像の呪いで引き起こされている。彫像が安置されるための場所から取り外されると、それは周囲の人々の精神に殺人衝動を引き起こすのだ。彫像が人の手をわたるつど、呪いは広まる。

26-50 殺人は宝物の一部に取り付いたゴーストの仕業である。彼は太古の職業殺人者であり、生きた人間に憑依して「仕事」を続けているに過ぎないのだ。

51-75 殺人は近辺のワーウルフたちの仕業である。これはイーリス・シックスが群れのメンバーを何人か殺したことに対する復讐であり、彼らはイーリス・シックスを知っている人間(つまり、街のほぼ全員)を誰でも殺したがっている。彼らは通常と異なる方法によって正体を偽装しているため、正体を暴くのは容易な事ではない。

76-00 アサンドラの治安関係のトップはデーモンに憑依されており、彼が全ての黒幕――彼自身それに気付いているか否かにかかわりなく――である。このデーモンはイーリス・シックスによって持ち込まれた宝物に由来するのかもしれない。

d100ロール:カスタマイズ

01-25 殺人事件の被害者は皆魂の安らぎを求めてゴーストとして甦る。彼らは復讐を求めており、それが果されたときこそ、安らかな眠りにつくことができるのだ。

26-65 呪いを運んでいるのはイーリス・シックス自身である。そして彼らはフレイムキープなどのさらに人口の多い都市に向かおうとしている。

66-85 盗賊団が殺人事件に紛れ、警邏隊の目がそちらへ向かっている隙にやりたい放題を始める。殺人事件のいくつかは彼らの仕業であるかもしれない(そして、それは捜査をより混乱させるだろう)。

86-00 呪いは犠牲者に対する霊的接触を拒む。スピーク・ウィズ・デッドレイズ・デッド、その他類似の能力は捜査手段として使用できない。

キャンペーン適合

エベロンのキャンペーンを行っていないとしても、これを別のキャンペーンに適合させる事はできる。設定を固めるのに「Ghostwalk」(非実体アンデッド本。アンデッドの街とかもあり)や「Libris Mortis(アンデッドモンスター本)」などが役に立つだろう。

 

「我は影の如く夜闇に消えぬ」 ―― フォーゴトン・レルム

影を無くすことはできない・・・・決して。チェセンタの"理論上の首都"であるシンバーは、その武勇とともに芸術と文化でも知られている。この街で芸術、哲学、音楽の少なくともいずれか一つに興味を示さない市民はいないと言っていい。またこの街は賢者、芸術家、ウィザードを輩出する学院があることでも有名である。この賢者の学院は常に蔵書を集めており、大部のコレクションを持つ。そして最近問題が起きた。

冒険者たちはネザリル時代の大部の書物を見つけ出し、これを相当の値段で賢者の学院に売却した。これらを保管する新たなスペースの確保のため、賢者たちが何百年も使用されていなかった古い収納室を開き、掃除したところ、大量のねずみ、犬、そして人間の骨が発見されたのだ。

これらが撤去された後、学院では奇妙な事が起こる。影のようなものがうろつくのが何度も目撃されるようになったのだ。やがてそれは殺人事件へと発展する。負のエネルギーに生命を吸い取られ、賢者の一人が死んだのだ。ここで彼らは謎の影がシャドウだったことに気付いたのである。事態を重く見た賢者の一人クレフェスは冒険者たちに問題解決を依頼する。

d100ロール:動機

01-45 クレフェスは嘘をついていない。彼は本当にできるだけ波風を起こさずに問題を解決して欲しがっている。

46-70 クレフェスが何が起きたのかを知りたがっているのは本当だが、自分で言っているほどに仲間の賢者たちを心配してはいない。ライバルが消えてくれれば万万歳というわけだ。もっとも、彼自身は決して誰も殺したりはしない。

71-00 クレフェスは賢者たちを心配していない。彼の正体はライバル都市スーレナーの賢者の学院のエージェントであり、彼はこれをこちらの学院の権威を失墜させるチャンスであると見なす(その結果地位を失うとしても)。彼は一部始終をできるだけ学外に広まるようにしたがっている。

d100ロール:カスタマイズ

01-40 収集室にあった人骨は、チェセンタのかつての大将軍の犠牲者のものであり、遺骨の眠りが乱されたとき、犠牲者たちはシャドウとして甦った。彼らは今廊下に度々出現し、姿を隠しては不意を打って犠牲者から筋力を吸い取っている。

41-60 図書館には読書をするために多くの光源が設けられているが、シャドウたちはそれを避け、書庫で人を襲ったり、それを避けてどこかへ行ったり、どこかから来たりする。

61-80 遅かった! PC達が調査を始めたとき、干からびた賢者が収納室近くのテーブルにくずおれているのが見付かる。彼は数時間前に死んでおり、そしてPC達が戦わねばならない、新たなシャドウとなって甦る。

81-90 PC達はシャドウ(ないしは収納室から撤去された遺骨)と語り、情報を得る。シャドウたちは彼らに対して行われた非道を明らかにし、正式な葬儀の元に埋葬されるなら成仏するだろうと言うのだ。が、これは実の所虚偽(あるいは誤認)情報である。こうした措置が取られた場合、シャドウたちは一週間の間賢者たちを襲うことはなくなる・・・そして、安心した所でまた戻ってくるのだ。

91-00 収納室には影界にリンクするポータルが存在する。これの入口が開かれるなら、またもや新たなシャドウがやってくるだろう。

キャンペーン適合

この不気味な冒険は多くのキャンペーン世界に応用することができる。「Libris Mortis」は"影"達を扱う役に立つだろうし、「Tome of Magic」は何らかの影の魔法を導入する助けになるだろう。