Steal This Hook! 08/21/2006

我が家と呼べる場所

ロバート・ウィーゼ


 

殆どの人々がそうであるように、幾つかのクリーチャーは我が家と呼べる場所、獰猛な冒険者から身を守れる場所を必要とする。しかし、家が防御拠点としては頼りにならない場合もある。モンスターや天災が襲い掛かってきた場合、家は安全に篭もれる場所ではなく、守るべき場所となるだろう。

 

炎は流れる ―― エベロン

イフリートとフィスト・オブ・オナタームロール・ホールドではドワーフの部族はそれぞれ鉱山の周りに山塞と地下都市を建造する。ドワーフ達は部族単位で割拠し、それぞれの地域を自分のものとして主張しているのである。これらの都市や城塞の中では万事がドワーフの型にそっており、他の種族にとってはかなり窮屈であるかもしれない。

アイアンルート山脈の南部は火山活動によって造山されているが、現在活火山はフィスト・オブ・オナターだけである。この地域はソルドラク、裕福ではあるが貪欲で権力への渇望に突き動かされる一族によって支配されている。(ワールドガイドではムロラノン氏族がこの地を支配しているが、プレイヤーズガイドではソルドラク氏族が支配していることになっているので、ここではそちらを採る)

この地域の防御の一部は山頂を取り巻く城塞及びドワーフの鉱山都市のネットワークによって構成されている。こうした都市の一つであるヴォンマルクはフィスト・オブ・オナターの北側にあり、ドワーフ達が地下で採掘を行っていた・・・その日、居酒屋の一つの床からマグマが噴き出すまで。ドワーフ達は酒場から逃げ出し、マグマが侵入してきたひびを岩石でふさいだが、すぐに別の場所から溶岩が都市内に流入してきた。今までのところドワーフ達は展開に先んじていられるが、結局のところ都市の破壊を食い止める事はできないだろう。

溶岩は「自然に」活動しているのだが、これまでフィスト・オブ・オナターの近くではそのようなことがなかったのも事実である。この破壊の裏に何らかの邪悪な力が関与していると考えた(或いは考えたかった)ヴォンマルクの支配者モリッド・ソルドラクは混沌であるはずの破壊にパターンを見いだし、真相を究明するために冒険者たちを都市の深層へ向かわせる。彼は金で報酬を支払うが、ドワーフ鍛治の武器や甲冑でも支払ってくれる。

d100ロール:動機

01-40 ロード・モリッド・ソルドラクは冒険者にありのままを語っている。少なくとも彼は邪悪な力の存在について確信している。

41-65 モリッド・ソルドラクはこの破壊を引き起こしているクリーチャーと手を握っている。地下竜教団に彼の街を売り渡すことで、強大な力を約束されたのだ。冒険者は彼が不死になるのを確実にするいけにえの「ボーナス」である(カルトは英雄たちを「商品」の一部として規定したのだ)。

66-00 市民の多くがヴォンマルクの最後が迫っていると考える。彼らは冒険者の成否に拘らず、都市を脱出する事を主張する。地下竜教団はこうした人々の一人と同盟を結んだ。彼の動機はカルトが近い鉱山の富を得られるようにドワーフを追い出す事である。

d100ロール:カスタマイズ

01-55 溶岩はサラマンダーとファイアー・エレメンタルによってヴォンマルクへ指向的に移動している。それらはカイバーで捕らえられた炎のデーモンによって制御されている。彼の牢獄の真上に都市があり、都市の崩壊はデーモンの解放を意味するだろう。

56-65 強力なイフリートの貴族が、かつてデーモンの時代に彼が封印したデーモンを再度、都市ごと封印しようとしている。イフリートはファイアー、マグマのエレメンタル及びレッドスポーン・ファイアーベルチャー(redspawn firebelcher、モンスターマニュアル IV)さえ動員して溶岩の流れを変えようとしている。

66-90 勇敢な英雄達が直面している危険は溶岩だけではない。溶岩はカイバーから来ており、そこには様々な危険なクリーチャーが存在する。パープルワームからローパー、ディープドラゴン・・・それらのうちいくらかは都市に襲い掛かるかもしれないのだ。

91-00 ドワーフ都市の下に住んでいるドラウは自身の勢力を強めるため、都市を破壊して鉱山を手に入れたがっている。更なる混沌を呼び起こすため、彼らは創造の魔法とエレメンタル捕縛を駆使する。

キャンペーン適合

あなたはドワーフと山の危険について「石の種族」を使いたくなるだろう。「アンダーダーク」は冒険の設定を固めるのに役に立つだろうし、登場するデーモンを再現するのには「魔物の書」が有用なはずだ。当然、「エベロン・ワールドガイド」と「プレイヤーズ・ガイド」は重要だ。

 

呪われた渓谷 ―― フォーゴトン・レルム

俺の歌を聞け!(違)アスブラヴンで「呪われた谷」として知られているマイザー・ヴェイル(マイザーの渓谷)という場所がある。発見者の名にちなんで名付けられたそこは、ファー丘陵に数マイルにわたって存在する隠れた谷間であり、肥沃で豊富な動植物(中にはモンスターと呼ばれるようなものも含まれる)の存在する豊かな土地である。ネザリルの時代に発見されたとき、それは理想的な農地だと思われ多くの農民が移住を試みた。だが、到着するなり恐ろしい嵐が谷を襲い、殆どの者は死んだ。僅かに生き延びたものたちの語るところによれば、天空より稲妻のようなクリーチャーが下りてきて、幽霊のような恐竜を駆る幽霊のような騎手達が全てを蹂躙したのだという。

以来、何世紀もの間農民達は谷に移住し、開墾しようとしてきたが、谷に存在する何かが常に彼らを排除し、殺した。あるものは発狂し、ある者はアスブラヴンで稲妻のクリーチャーとゴーストについて語り、またある者は二度と戻らなかった。谷で死体が見付かった事は無く、マイザーの渓谷の謎について語るものが無いのと同様、戻ってこなかった移住者の運命を語るものは何も無い。

バーダスクの住人、ブリスタ・マイレーンは勇敢な英雄を探している。彼女の愚かな兄弟であるベブリスが家族の制止にもかかわらずマイザー渓谷に入植し、戻ってこないのだ。ブリスタ自身は呪われた谷に行く事もできず、代わりに探しに行ってくれる誰かを求めている。彼女自身はそう大した報酬は払えないが、谷で特定の種類の動植物を捕獲ないし採集してアスブラヴンで売れば、かなりの収入になるだろうという。

d100ロール:動機

01-50 ブリスタは心から兄弟の無事を願っているが、彼女のいとこは彼の遺産を獲得するこのチャンスを逃したがらない。彼らは英雄がベブリスを見つけるのを妨害しようとする。

51-85 マイザー渓谷には黄金と失われた宝物の噂がある(つまり、ブリスタが本当に気にしているのが何かと言う事だ)。それは同時に彼女の兄弟が何に興味を持っていたかと言う事でもあるが、実の所彼は谷に行ってなどいない――彼はゼンタリムの襲撃隊に殺されたのだ。

86-00 ブリスタは冒険者たちに同行することを主張する。彼女は自分が作っているポーションの材料を育てるため、兄弟に魔法をかけて谷に行かせたのだ。問題の材料はまさに呪われたその場所で収穫しなくてはいけない。もちろん、彼女は冒険者たちを生かして谷から出す気など毛頭ない。

d100ロール:カスタマイズ

01-45 マイザー渓谷にはネザリルの時代のさらに前から続く呪いが存在する。最初に谷が発見されたとき、入植者達は絶えず争い血を流し、ついには何人かの死者をだした。その内の一人は引退したクレリックであり、今わの際に呪いを吐き、古代の神によって谷は呪われてしまった。この呪いが消えるまで、何者も谷に入植する事はできないのだ。

46-55 谷の呪いは古代に埋葬された死者を甦らせる。彼らは谷に存在するあらゆる生者を排斥し、あるいはゴーストとなってこれを悩ませる。これらのゴーストが駆るのがゴースト・ディノサウルスである。

56-70 谷における呪いの正体は、単に毎日谷を襲う悪天候である。こうした天候による災害に遭い、エレクトリカル・エレメンタルを目撃した人々が呪いの伝説を作り上げていったのだ。当然ゴーストは想像の産物である。しかし、この悪天候は谷の奥に住むリッチの仕業であり、谷に他者を入れないために魔術でこの「呪い」を引き起こしているのだ。

71-00 渓谷は恐竜に乗るサウリアル(saurial、恐竜人間のような種族。またはキャットフォークなどの珍しい人型生物でも良い)の部族の住処であり、彼らは人間に発見されないでいるためにこうした呪いの噂を生み出した。

ちょっと変わった報酬

冒険の報酬が金銭だけとは限らない。それ以外の報酬を考えてみてもいいだろう。

キャンペーン適合

谷の呪い(あるなら)をオリジナリティに溢れたものにしたいと思うなら「Magic of Incarnum」「Tome of Magic」が有用だろう。この二つは新たな魔法のシステムをD&Dに取り入れるものである。

 

ソウルスティーラー ―― フォーゴトン・レルム

冒険の舞台とマウンテン・トロールシャーの彼方、フェイルーンの南の果てにダンブラスはある。その西、僅かに北。ダンブラスとハルアー、ラパリーヤに挟まれた地域にスワグダー(Swagdar)と呼ばれる地域がある。このごつごつした土地はそれぞれ違う種類のトロールが住む森林と山によって囲まれており、他にも危険な怪物にはこと欠かない。旅人は頻繁にこの領域を通り抜け、アムター森林の盗賊や北壁山脈、チャナス森、ワームボーンズのトロール(或いはマンティコア、あまつさえドラゴンであるかもしれない)に勇敢に立ち向かう。

この領域を通ってダンブラスやルイレン、そのほかの場所へ赴く冒険者たちはレスマーの西の森でトロールの大群に遭遇する。とロールたちは彼らを攻撃することもなくその前を通り過ぎ、何かを恐れているようにさえ見えた。また、数体のマウンテントロールが大急ぎでアムター森林の方角に向かっているのも見た。道中擦れ違う人々も、口々にトロールやその他のモンスターが慌てたように東のほう、アムター森林へ向かっていったと異口同音に噂する。

そして冒険者はレスマー(ないしはチャナスゲート)で街に対するおざなりな攻撃があったことを知る。それぞれ数体のケイブトロールとマウンテントロールが町の壁を殴りつけ、しかし誰も殺す事無くそのまま東のほうに逃げていったと言うのだ。それでもレスマーを本拠とする商人の一団は不安を抱き、トロールたちを西から追い立てている物の正体を知るために何人かの怖いものしらずを探している。彼らの町に大きな災害が起きるのを防ぐ事ができれば、英雄達に莫大な報酬を提供しても構わないと思っているのだ。彼らの一人は報酬として彼の家族が入手した古い地図を提供するかもしれない。彼には自分でその地図の真偽を確かめる暇なり趣味なりがないのだ。

d100ロール:動機

01-60 商人たちは冒険者に問題点を明らかにし、怪物をねぐらに戻す事を望んでいる。英雄たちは上手くやるだろう。

61-90 商人たち、少なくともその一部はこの新しい、未知の状況の原因を究明するよりも彼らに有利になるように活用する事のほうに興味を持っている。トロールを支配下に置くか、少なくとも望むものを与えてある程度制御できるようにするため、彼らは行動を起こすだろう。

91-00 この件はハーパーの知るところとなり、彼らは強大なデーモンがその領域で活動しているのではないかと案じている。冒険者がハーパー的な傾向を持っているならば彼らはその懸念を率直に話し、調査について話し合う。そうでないならば、彼らはこっそりと糸を引いたり無辜の民が危険に晒されている事を言い立てて、冒険者たちが調査に向かうように仕向ける。

d100ロール:カスタマイズ

01-50 デス・ジャイアントはアノーラッチからこの地域の山の中にかけてトロールを殺し続けている。再生能力を物ともしないオーラによって彼らを殺害し、また魂を盗み取るこの巨人をトロールたちは心底恐れている。

51-65 魂を奪い取ってその肉体を獲得(ないしは憑依)する能力を持つ強大なデーモンが、ある強力なウィザードによってこの地域の山に追放された。彼は現住のモンスターを操って自らの王国を作り出すことを学び、ウィザードに報復してアビスに戻るだけの力を回復することを望んでいる。

66-80 マウンテントロールは自分がひどくまずい状況に陥ったことに気付き、一時的ながら冒険者と同盟を結ぶ。どのトロールと戦い、どのトロールとなら同盟が組めるか、それを知ろうとするのは下手に全てのトロールと戦うよりも危険な冒険になるかもしれない。

81-00 ソウルスティーラー(巨人ないしデーモン)は地元の強力なドラゴンと同盟を結んだ。差し出された報酬の見返りとして、竜はモンスターたちをソウルスティーラーのところに追い立てる。

キャンペーン適合

山や森林の種族の肉づけをするには「石の種族」や「自然の種族」が役に立つかもしれない。またトロールの亜種はモンスターマニュアルIIIに掲載されている。発売されたばかりの「ウォー・オブ・ドラゴンクイーン(War of the Dragon Queen)」ミニチュアセットにはマウンテントロールのフィギュアが含まれている。