Steal This Hook! 07/10/2006

スポーン・オブ・エビル:邪悪の子ら

ロバート・ウィーゼ


 

時折、極限の環境が冒険の舞台を提示する事がある。自然界に謎が潜む様は、あたかも何者かが隠された意図を持ってそれらを構築したかのようである。そして以下のアドベンチャー・フックにおいてそれは事実である。自然の出来事と見えるその奥に邪悪な意図が隠れているのだ。

今月のスティール・ジス・フック!はその原点に立ち戻ってみようと思います。過去の2,3回のこのコラムではフックというより「アイデア」というべきものを提供し、具体的なソースなどもともに紹介してきました。今回のそれは本来の意味での「フック」であり、カスタマイズの欄で提示された選択肢を補強するようなものです。今回のフックはモンスター・マニュアルIVで提示された「Spawns of Tiamat(訳注:ドラゴンの子孫であるが竜ではない爬虫類クリーチャーで悪の尖兵。ドラゴンランスのドラコニアンが近いが赤青黒緑白の五色、さらに色ごとに沢山の種類がいる)」を冒険に取り入れるものです。MM4がないならば別のモンスターに変更する事もできます(でも、本を使ったほうが楽なのは言うまでもありません。本屋さんに行って注文すればいいだけです――ほら、スポーン・オブ・ティアマットは中々にCoolですよ?)

 

木々の間に潜むもの ―― フォーゴトン・レルム

"跳ねるもの" グリーンスポーン・リーパーウィールダス森林はテシアとオームーの間にあり、フェイの守護者とエルフの部族で知られている。加えて無数の怪物たちと少なからぬ数のドラゴンすら生息している。もっともウィールダスは広大な大森林であり、それら森の住人を怒らせなければ森の端で人間の村がつつましく生計を立てる事はできる。ウェイファーンというそのような村の一つはブロストの近くにあり、そこに木材を供給している。村人は小規模な林業で生計を立てており、家の屋根に森の木の枝が触れるほどの距離で暮らしている。彼らは森の本来の住民の縄張りを侵さないよう、またその他の上手い手段を使って注意深く対処し、それらは上手くいっていた。今までは。

森の音に、普通ゴーストの呻き声と複数の悲鳴は含まれていない。しかしながら、最近これらが頻発している。森の端の方で働く木こりは奇妙な声を、それも一日中聞いたと言い、断末魔の悲鳴らしきものさえ聞こえたと証言する。怖いもの知らずが何人か、音の聞こえてくる方向を探しに行って戻らなかった後は、誰も音の源を確かめに行こうとはしなかった。村人達はトリエントの幽霊かドラゴンの幽霊、或いは別の恐ろしいものが森林に取り憑いており、やがて自分たちにも何か悪いことが起こるのではないかと恐れている。林業にも影響が出ている。どの地域が安全か、どの木のどの部分なら切っても問題ないか、木のどの部分に悪霊が宿っているのか、それを確かめない事にはおちおち木を切ってもいられないからだ。

ウェイファーンの木材を扱うブロストの商人、クローヴァル・メイシムにとってもこれは他人事ではない。彼は真実を明らかにし、材木の生産を元に戻すために悲鳴や呻き声を恐れない命知らずを探す。

d100ロール:動機

01-40 クローヴァルは何も隠していない。

41-80 何人かの村人は密かにティアマットのドラゴンカルト信仰に目覚めており、クローヴァルにいくらかの情報を隠している。冒険者たちは意外な驚きを感じるかもしれない。

81-00 バハムートのドラゴンボーン(dragonborn、「Races of Dragon」より)のグループはグリーンスポーン(greenspawn)の存在に気付いており、この邪悪な生物を監視している。彼らが冒険者の敵になるか味方になるかは状況次第だろう。

d100複雑さ

01-60 怪奇現象はグリーンスポーン・リーパーズ(greenspawn leapers、スポーン・オブ・ティアマットの一種。より高レベルの遭遇を望むならgreenspawn lrazorfiendに置き換えてもよい)の新しいグループによって引き起こされている。彼らはドラゴン・カルトに関係しており、ティアマットの勢力を広げようとしているのだ。

61-75 ウィールダスのフェイ達は冒険者たちをあの手この手で森から追い出そうとする。殺すつもりはないのだが、森に人間を入れたくないのだ。

76-85 森の中にはグリーンスポーンと関係ないドラゴンがいるが、グリーンスポーンと係わり合いになるのは拒否する。

86-00 音を出しているのは実はバンシー(モンスターマニュアル2)である。グリーンスポーン・レイザーフィールドはその存在を知ってカモフラージュに利用しているのだ。

キャンペーン適合

「自然の種族」「Races of the Dragon(ドラゴン関係種族のサプリ)」「Champions of Ruin(フェイルーンにおける邪悪の勢力を扱ったサプリ)」、また実際にホワイトドラゴンを用いるなら「竜の書」などが有用であろう。

 

宝の沼は今日も騒がしい ―― エベロン

"略奪者" ブラックスポーン・レイダーシャドウマーチは神秘的な場所であり、そこを訪れるものは少ない。沼はこの地域の殆どに広がっており、僅かな平地にオークと人間が住み着いている。タラシュク氏族はザラシャクで貿易を行い、外の世界との接点を保っているが、残りの殆どの地域は未だに未開の秘境である。それ以外にこの地に存在するのはエベロン・ドラゴンシャードの大規模な鉱脈のみであるといっていい。

オリエン氏族はあらゆる商業活動におけるタラシュク氏族の牙城を打ち破るために過去十年間努力を重ねてきたが、タラシュク氏族のコントロールを受けない現地のオーク及び人間とビジネスを始めたのもその一つだ。パトラクンからザラシャクまでの交易路を確立し、ザラシャクから運び込む物資は確実のこの地域の生活レベルを上昇させつつある。オリエン氏族はドロアームの交易路にこれをつなげ、タラシュク氏族の干渉なしにエベロン・ドラゴンシャードを扱いたいと考えている。

湿地帯を通る新しい交易路はオリエン氏族の護衛と巡視にとってさえ危険な道のりである。ここ数年、いくつものキャラバンが湿地帯に姿を消し、二度と戻ってこなかった。オリエン氏族にとってはそうしたキャラバンの損失は年に1,2回が限度である。

昨年はシャドウマーチ中が乾燥しており、湿地帯が少し後退した。噂は、貝を取りに出たパトラクンのオークがドラゴンシャードをつんだまま行方不明になった馬車を発見したというところから始まった。彼はその主張を裏付ける幾つかのドラゴンシャードを持ち帰りさえしたのだが、残念なことにその正確な場所を覚えていなかった。それ以来幾つかのグループがそれらを探しに湿地帯に入ったのだが、未だに見付からずにいる。多少後退したとは言え、シャドウ・マーチの沼は秘密を暴こうとするあらゆる行為を嫌うのだ。

オリエン氏族は馬車を見つけてその遭難の原因を調査し、交易路の安全を確保したがっている。またタラシュク氏族もこの件には興味を持っており、ドラゴンシャードの所有権を主張し、オリエン氏族をこの地域から追い出そうとしているが、双方ともに冒険者たちを雇い、事実関係を確かめるまで待つ程度の余裕はある。

d100ロール:動機

01-75 オリエン氏族、タラシュク氏族ともに行方不明のキャラバンの馬車を見つけて欲しがっている。オリエン氏族は何が起きたかを知りたがっているが、タラシュク氏族はオリエン氏族に対して有効でないのなら事情には興味がない。

76-90 ドーターズ・オブ・ソラ・ケルからの使者は宝を積んだ馬車の噂を調査しつつ英雄と交渉する。ドラゴンシャードが欲しいばかりではなく、オリエン氏族の交易路がドロアームとザラシャクを接続すれば、貿易が増えるだろうと見込んでいるのだ。この件に関してオリエン氏族を援助すれば、彼らの望む交易路の接続が早まるかもしれない。

91-00 地方のオークの部族はドラゴンシャードをそれを生み出した大地に返すべく、冒険者に張り付いて馬車を見つける手助けをする。これらのオーク――ドルイド及びレンジャーであろう――はドラゴンの予言書を信じており、ドラゴンシャードの鉱脈はそれに関係するものだと考えているのだ。つまり、余りに多数のドラゴンシャードが失われれば、ドラゴンの予言書の一部そのものが消えてしまうと考えているのだ。

d100ロール:カスタマイズ

01-50 キャラバンは湿地帯の奥に住んでいるブラックスポーン・レイダー(Blackspawn raider)の一団によって襲われた。オリエン氏族の交易路が確立されたとき彼らの生息地が脅かされたのに加え、ドラゴンマークを持つ者を殺そうとする彼らの衝動がオリエン氏族の妨害を行うと言う方向に発展するのはごく自然な成行であった。

51-65 ドーターズ・オブ・ソラ・ケルに忠実なオークが消えた馬車を探している。一度ドロアームを通り抜けたドラゴンシャードを盗み出すためだ。ブラックスポーン・ストーカー、チュール、ドロアームのメデューサ、あるいはワイヴァーンまでもが彼を支援しているだろう。

66-80 シャドウマーチには"狂気の領域"ゾリアット、"湧き立つ混沌"キスーリなどの顕現地帯が多数存在する。これらの領域のモンスターが顕現地帯を通って出現し、キャラバンを襲撃したのかもしれない。

81-00 ウィル・オー・ウィスプは湿地帯に度々出現する。オークと怪物への恐怖もあればなおさらだ。オリエン氏族の作り上げた交易路は彼らの餌場となり、道の周辺に群生し始めているのである。

キャンペーン適合

この場合役に立つのは概ね「自然の種族」であろう。

注:モンスターマニュアルIVにあるブラックスポーン・レイダーの居留地の例はこの冒険に役に立つかもしれない。

 

森は燃えているか!? ―― フォーゴトン・レルム

"炎を噴きだすもの" レッドスポーン・ファイアーベルチャー忘却森林は長さ90マイル、幅30マイルの小さな森である。それはフェイルーンの中央部をかつて覆っていた巨大な森林の欠片であり、現在失われたそれを悲しみつづけるトレント達がそれを守っている。この森でトレント達が対応できない問題は殆どないし、訪問者が歓迎される事は滅多にない。

およそ20マイルはなれたところにエヴァレスカ、フェイルーン最後のサン・エルフとムーン・エルフの大都市が存在している。ある夜、このエルフの都市に滞在していた冒険者たちは忘却森林の方角にオレンジ色の輝きを見る。人々はどのような魔法が原因でこのような現象が引き起こされたのか議論するが、その時到着したフェイが、忘却森林が燃えているのだと主張する。炎はもはや制御できないほどに広まっており、トレントとドルイドが一つの地域を消火するたびに、別の地域で新たな火災が発生しているのだ。理由を考える暇もなく、エヴァレスカのエルフ達は救援・捜索の計画を立て、冒険者たちを強制的に徴用する(もっとも強制はしない・・ただ、断られる事など考えてもいないだけだ)。もし必要ならば彼らは冒険者を支援し、何らかの報酬の前渡しもしてくれるだろう。

森についた途端、冒険者たちは想像を越えた規模の火災であることに気付く。トレントとフェイが押し寄せる炎を食い止めるために絶望的な努力を続け、森は何マイルにもわたって燃えている。エルフと冒険者が延焼を食い止める作業を始めて(もしくは冒険者達が火災の原因を調査し始めて)すぐ、森の新たな地域が突然火事を起こす。

d100ロール:動機

01-50 トレントは最後の手段としてエヴァレスカに助けを求めたのであり、何ら隠していることはない。

51-80 エルフの一部はトレントが邪悪な生物であり、排除されねばならないと信じている。これらのエルフが火をつけたわけではないが、彼らは忘却森林を「浄化」するためにこの事態を有用に活用するだろう。これらのエルフ達は消火活動を妨げ、遅延させる。トレントが本当に邪悪であるかはこの際問題ではない。このエルフ達が堕落しており、トレントたちは無実なのかもしれない。確かなのは救援が遅れると言う事だけだ。

81-00 "ブラック・ネットワーク"ことゼンタリムは森の勢力とエヴァレスカのエルフの双方を弱体化させるために森林にレッドスポーン・ファイアーベルチャー(Redspawn firebelcher)を放った。エルフの注意がこの炎の惨事に向いている間、ゼンタリムは別の計画を見事に遂行している。

d100ロール:カスタマイズ

01-75 火事は狩猟を行うレッドスポーン・ファイアーベルチャーの一団によって引き起こされている。それらは灰色峰山脈南東にいるレッドスポーン・アルカニスの一団が番犬代わりに飼っているものだ。この一団は森を通行しているのだが、ファイアーベルチャーは踏みとどまって食事をしなければならないのだ。

76-85 森の奥深く、古よりハーフドラゴン(レッド)・トレントが住んでいる。通常は他のトレントに恐れられるため森の奥に引っ込んでいるのだが、この火事が彼の心にも火をつけた。トレントであるにもかかわらず竜の性に支配された彼は森が全て焼け落ちるのを見たがっているのだ。

86-00 灰色峰山脈ではレッドスポーン・アルカニスとファイアーベルチャーが邪悪なストーンジャイアントと戦っている。どっちにしろ悪であるには違いないが、この戦いの巻き添えを多くの生物が受けている。今回の火災もその一つだ。

ちょっと変わった報酬

冒険者を支援するため、エルフとトレントは様様な物を提供することができる。単なる現金や魔法のアイテムでは無味乾燥だと思ったら、以下のアイデアを使ってみるといい。

キャンペーン適合

「自然の種族」はエルフについての情報を提供してくれる。またダンジョンマスターズガイドの86ページには森林火災についての記述がある。冒険の舞台が灰色峰山脈に移った場合、「石の種族」も有用だろう。