Steal This Hook! | 06/12/2006 |
ロバート・ウィーゼ
赤と黒の皮膚、翼、鋭い牙。あなたの目の前の生物が吐く燃えるような息と身体から吹き上がる炎。それらはアビスの奈落よりやってきた者どもの理想的な描写であり、同時に本日のスティール・ジス・フックのテーマでもあります・・・そう、デーモン。もちろん、「デーモンらしいデーモン」なんてそうゴロゴロしてはいません。あるものは泥の様で、またあるものは奇妙な触手と菌類の集合体であり、またあるものは驚くほど、想像を絶するほどに美しい。しかし彼らは皆何らかの理由のために死すべきものの絶対の敵であるのです。デヴィルと異なり、彼らには約束を守るという概念がないので、邪悪な死すべきものさえ彼らに注意深く接します。今回ご紹介するのはデーモン・ロードが重要な役割を果す、バラエティに富んだ三つのアドベンチャー・フックです。
大方の事はより平和的な方法で解決できるが、争い無しには片付かないこともあるものだ。どちらがよりすぐれたバイオリンの奏者であるかというハーフリングとグリッグ(コオロギ妖精)との論争がそうであるように。ルイレンの南がハーフリングの故郷であるが、彼らはフェイルーンの全てに渡って存在する。ハーフリング・バードの一座はバトルデイルでもっとも人口の多い都市、エセンブラに定着し、彼らの音楽、特にバイオリンの演奏で速やかに名声を獲得した。それに嫉妬したか、それともうんざりしたか(彼らにとってそれをはっきり口に出すのは大変難しいことなのだ)、地元のグリッグはデイルでもっとも優秀なバイオリニストを決めるべく、一座に挑戦した。コオロギ妖精とハーフリングはエセンブラの広場で対峙し、人々のために演奏する。そして聴衆はよりすぐれた方を選ぶのだ。
しかし、聴衆が待ちくたびれ、グリッグが落ち着きがなくなっているにもかかわらず、ハーフリングは現れない。グリッグは敗北を悟って逃げ出したのだと主張するが、ハーフリングが音楽のコンテストをすっぽかすなどありえないということで大方の意見は一致を見る。バードたちの最大のファンであったキッシン・アマダルス卿(引退したパープル・ドラゴン・ナイト)はハーフリングがどうなったか調べるよう、英雄達に依頼する。彼は次の晩彼の邸宅で行われるパーティにおいてハーフリングの演奏を依頼しており、その時間内に英雄達が彼らを見つけてくれる事を期待している。
で、一体何が起こったのだろう? 原因はやはり彼らの名声であった。エセンブラからそう遠くないところに古都ミス・ドラナー(エルフの古都だがいまやドラウ、デーモン、その他諸々のねぐら)がある。最近デーモンロード・グラズトはここに「相(aspect、分身みたいな物)」を送り込み、ドラウに働きかけてロルスとの(一時的なものだとしたら)表面的な同盟を結ぼうとしている。実の所彼はドラウを配下に引き込むか、少なくとも有効に活用したいと思っている。だが状況は余り芳しくなく、グラズトの「相」は自らの新しいねぐらを快適なものとすることに注意を向けた。グラズトの相のための娯楽はあらゆる種類の頽廃を含んでおり、堕落しきった音楽を伴っていなくてはならない。相はハーフリングの噂を聞き、すぐに彼らを連れてきたのである。それがたまたま競争の直前だったのだ。彼らは今ミス・ドラナーに捕らえられており、口にするのも憚られるような音楽を演奏する事を強要されている。
d100ロール:動機
01-50 キッシン・アマンダルスは吟遊詩人たちのことを心から心配しているが、彼の主催するパーティのために代理の音楽家を手配すべきではないかと思っている。が、同時に彼らが本当に危機にある場合のために彼らを探し出さなければならないという義務感を抱いている。
51-70 キッシン・アマンダルスは元パープル・ドラゴン・ナイトなどではなく、サーイのために働くしもべである。彼が屋敷に吟遊詩人たちを呼んだのは奴隷として売り飛ばすためだったのだ。
71-00 グリッグは多くの町民によって非難されており(「連中を信じられないのか、このクソったレの妖精め!」)、英雄達にハーフリングを救出するとともに、疑いを晴らして欲しいと依頼する。このままでは、場合によっては町民たちからのリンチに遭いかねない。
d100ロール:カスタマイズ
01-30 ドラウ、デーモン、その他の不快な怪物まで、ミス・ドラナーは冒険の豊富なバリエーションを提供してくれる。冒険は僅か数マイルの地域で行われるが、それでも非常に困難な作業であるべきである。よく出来たダンジョンの地図はその助けになるだろうし、ことによったら後日新たな冒険の種になるかもしれない。
31-50 グラズトの相はサキュバスと同じくらいに妖艶であり、誘惑によって彼らの任務を忘れさせ、罠にはめようとするだろう。
51-75 ドラウはグラズトの存在に不穏なものを感じており、冒険者を助けても構わないと思っている・・・無論、地獄の沙汰も金次第だ。
76-00 恐るべきハーフフィーンド・ホワイトドラゴンが近辺にねぐらを持っており、彼はハーフリングをちょっとおやつにつまむのを好む。実際一人は既にこのドラゴンに食われてしまった。かけらになってしまったハーフリングは金にならないとしても、ドラゴンの体の一部は常に金になる。
キャンペーン適合
あなたは「魔物の書T」からコピーを取りたくなるだろう。特にグラズトのデータとか。また、ミス・ドラナーについて述べた書物のいずれかは用意しておくといいだろう。付近に住むエルフのための「自然の種族」とかも。
- フォーゴトン・レルム:ミス・ドラナーの近辺。
- エベロン:エルデン・リーチに舞台を移す。トワイライト・ディメインはグリッグの故郷であり、グラズトの相が根城にしているのがグローミングである。
- D&D一般設定:グリッグが住んでいるような場所であればどこでも。
- D20モダン:グリッグはイギリス、ウェールズ、アイルランド、またはスコットランドにしか存在しない。だが、例えばグリッグとハーフリングを二つの対立するロックバンドに変えて、アメリカないしオーストラリアに舞台を移す事も可能だろう。グラズトの相も容易にモダン世界の地球に適合する。
(訳注:原文では「Gnomelantis」、恐らく"Gnome/ノーム"と"Atlantis/アトランティス"のもじり)
コーヴェアにガリファー王国が勃興するはるかに前、大陸には多くの国の興亡があった。ズィラーゴのノームもまた例外ではなく、北、現在のブレランドへ進出してブレイ湖の中央の島にイェロシン(Yerosin)と呼ばれる都市を建設した。ズィラーゴのノームはこの都市から他の国の様子を観察し、またウィザードたちは一般レベルをはるかに超えた高度な魔法の研究に熱中していた。
だが、島とイェロシンが消えたとき、全ては終った。島と都市は一晩でその姿を永遠に消し去ったのだ。警告はなかった。あったとしても誰も気付かなかった。千年もの間人々はそれを不思議がったが、几帳面に歴史の記録をつけていたノームを除き、やがて忘れていった。
一、二週間前、高価な貨物を載せた小さな商船が転覆して沈没した。このとき船員のうち二人が水中呼吸の魔法を使い、船の沈んだ位置を報告できるように船と一緒に沈んでいったのだが、戻ってきた彼らはブレイ湖の湖底にノームの様式を持った、光り輝く幻想的な都市を見たと報告した。イェロシンはついに発見されたのだ。
そのような発見は宝捜しと学者の双方から等しく注目を浴びる。モルグレイブ大学の学者は他者を出し抜かなければいけない理由があったか、それとも都市の運命を知る手がかりが失われる可能性があったか、いずれにせよ実地で答えを探すために、即座に冒険者を雇い出発した。
イェロシンを一瞬で湖底に沈めたほどの謎の災厄は、また都市とそこに存在する物全てを一種の不気味な停滞状態のままに維持していた。ノームたちは時が凍りついたかのように街路に立ち尽くし、活気のあふれた街路がそのままの姿で彫像と化している。発動中の呪文すら凍りつき、ちょっと見れない幻想的な情景を生み出していた。幾つかの呪文はそれ自身の命を獲得し、リヴィング・スペルと化しているが、リヴィング・メジャー・イメージがうろついているだけで、特に危害を加える事もない。ノームの宝物の多くは数世紀の間に水中種族によって略奪されているが、まだ多くの宝物が隠されている。
沈んでからずっとこの都市が無人のまま凍りついていたわけではない。その時々で異なった湖の生物がここをねぐらにし、最終戦争の初期にはリッチさえここを我が家と呼んでいたのだ。現在のこの都市の主はシー・ハグ及び水棲のデーモンとオーガの集団であり、彼女らは古のデーモン・プリンス、ダゴンを崇拝している。
これは小さな冒険に適した舞台であるが、都市のサルベージを目的としたミニキャンペーンに仕立てる事もできるだろう。都市が沈んだ原因も、ひょっとしたらダゴンとの何らかの契約――或いは契約の不履行――がかかわっているのかもしれない。
d100ロール:動機
01-50 モルグレイヴ大学はその目的に対して真摯であるが、見つけたアーティファクトも全て自分の物にしたいと思っている。
51-70 コランベルグ図書館からきた学者は滅びた都市について知りたがっている。冒険者の見つけたどんな情報であっても金を出してくれるだろう。これはモルグレイブ大学との契約に違反するだろうが、大金持ちになるチャンスである。
71-00 ズィラーゴのノームは滅びた彼らの都市に非常な関心を持っているが、同時にちゃんとしたノームの立会いなしに人間達がそれを探り回ることを望まない。
d100ロール:カスタマイズ
01-35 湖には他にも様々な生物が生息している・・・そして、彼らは腹を空かせているのだ。
36-55 都市が発見されるのと時を同じくして、シー・ハグの中にダゴンの「相」が現れた。彼の目的は自らの礼拝者に庇護を与えることである。
56-70 "顔なしの王"ジュイブレクスの相が現れ、ダゴンの相と対立する。水面下の世界とその宝物はすべからく自分の物であるというのだ。
71-00 都市を沈めた魔法はまだ生きており、それは元に戻す事が出来る。都市の上昇に従い、そこにいるもの全てが復活する。ただし、島の上昇はブレイ湖周辺の全ての町に洪水を引き起こすだろう。
キャンペーン適合
「Stormwrack」はこのシナリオの水面下の場面に肉付けし、また水面下の戦闘を処理する際に役に立つ。ダゴンとジュイブレクスの「相」は「魔物の書T」にデータがある。奈落の軍勢に関するウェブ・エンハンスメントはWotC社のサイトに、デーモンプリンスたちそのもののデータはやはり「魔物の書T」にある。
- フォーゴトン・レルム:落星海の南、ターミッシュ近くに失われたノームの都市を設定すること。サフアグンやシー・エルフに決して見つからないような場所でなくてはならない。
- エベロン:上記のとおりブレイ湖に設定する。ズィラーゴから一番近い大きな湖だからだ。
- D&D一般設定:深い湖か海の底であれば問題ないだろう。結局発見されるけれども、中々発見されないような場所であるのが理想的だ。
- D20モダン:まさしくアトランティスをテーマとしたキャンペーンに合致する。ノームを地球外のウィザードか超能力エイリアンに変更するのがいいだろう。デーモンを置き換えるのも簡単なはずだ。
ソードコースト北部は寒い山がちの地方であり、争いが絶えた事がない。世界の背骨山脈の怪物はその近くに住まうあらゆるものたちを脅かし、オークの群れが街を略奪し、人々を殺すために山から下りてくる。これらの土地では人々は大都市に集中するか、もしくは自給自足の小グループを作って点在する。これらの二つの「世界」が出会う事は滅多にない事だった。
シルヴァリームーンにはノスターと呼ばれるウィザードが住んでいる。彼は氷の悪魔に対して使用するための特別な冷気の呪文を開発しており、物質要素としてフロストジャイアントの体の一部(刺青などのない、纏まった面積をもつ皮膚を含む)を必要としている。その報酬として、彼はコレクションしている幾つかの宝物の地図を提供することを提案する。彼は古代のゴーントルグリム、オールドイラスク(それぞれ「Lost Empire of Fearun(未訳)」を参照)およびアノーラッチの端にあるネザリルの都市の地図を持っており、獲得した物の1割を要求する。またノスターはフロストジャイアントの棲息する地域と、出現しそうな場所を冒険者に伝える。
道中、冒険者たちは何か巨大な存在によって皆殺しにされた小さな街に行き当たる。全ての住人、全ての建造物が破壊されており、あらゆる物を血が濡らしている。そして痕跡は冒険者たちが来たほうへ向かって続いている。
フロスト・ジャイアントのデーモンロード、コシチェイ(Kostchtchie)はフロストジャイアントの部族に相を送り、自らの新たなしもべとした。そして相は大規模な殺戮と略奪を部族に命じたのである。彼らは人間の居留地も巨人の居留地も分け隔てなく破壊する――たとえそれが同じフロストジャイアントの居留地であっても。
d100ロール:カスタマイズ
01-40 冒険者がフロストジャイアントの体を一部を手に入れ、怒る部族と一悶着起こせば、それは他のフロストジャイアントの注意をひきつけるだろう。
41-75 恐るべき怪物の群れが世界の背骨山脈の周辺に存在する。旅程は寒冷地の怪物たちとの多数の、或いは連続した戦いで構成されるだろう。
76-00 冒険が山の奥深くに至る時、天候が状況を混沌とした物にするだろう。
キャンペーン適合
「Frostburn」は低温状態の冒険を補佐してくれるだろう。またフェイルーンで冒険するならば「SilverMarches」が有用だろう。コシチェイの「相」は「魔物の書T」に記載されている。WotCのサイトにはアビスの軍勢についての記事がある。
- フォーゴトン・レルム:世界の背骨山脈のすぐ南が適当。
- エベロン:冒険の舞台をフロストフェルにしたくないのなら、コシチェイに率いられたフロストジャイアントの軍団が船に乗ってコーヴェア北部の村や町を襲いに来るとしてもよい。
- D&D一般設定:バーバリアンは殆どどこにでも現れるが、フロストジャイアントの軍団は寒冷な気候を必要とする。舞台をどこか北の寒冷地に設定すること。
- D20モダン:蛮族は既に過去の存在(少なくとも現実の地球では)ではあるが、モンゴルかシベリアに上手くはめ込めるかもしれない。また「UrbanArcana」キャンペーンにおける「small enclave(訳注:隠れ里や妖精郷のことか)」にはまだ巨人族が生き残っているかもしれない。その場合、アルプスかフランス、スペインの山岳地帯などに当てはめるのが面白いかもしれない。