Steal This Hook! 05/15/2006

金と銀

ロバート・ウィーゼ


 

金、銀、そして真鍮の輝きがはるか彼方の空にきらめく。寛容と優越感がない混ざった表情で小さな君を見下ろす彼ら。恐怖、崇敬、瞳に燃える強欲の炎。それら全てを兼ね備えた生物――そう、今月のテーマは竜、それも金属色のそれである。彼らは常に善である(もちろんエベロンを除く)が、彼らは冒険の中で実に面白い役割・・「英雄たちの盟友」「英雄の情報源」また「彼らを見下し、矮小感をすら感じさせる存在」としてさえ使う事ができる。

 

ドラゴンもさばいてしまえば只の肉 ―― エベロン

ゴールド・ドラゴン東ブレランドのニュー・サイアリは滅びたサイアリの生き残り達のための新しい故郷である。街は最初単なる難民キャンプであったが、現在ではかなり大規模な街にまで成長している。今日もまた五人のハーフオークの商人がやってきたが、取り立てて珍しいことでもない。扱っている商品以外に怪しいところもなく、何らかの疑惑を抱かれる事も無かった――少なくとも、最初は。

一行のリーダー、ハルカスタン(ハーフオーク、バード/スカウト)は市場で商品を販売しており、買い手からすれば荒唐無稽極まりない売り口上を並べ立てている。つまり、彼の扱っているのはゴールド・ドラゴンの肉体の一部だというのだ。
「そう、ゴールド・ドラゴンです。普通コーヴェアではドラゴンを見ることすら稀ですが・・・私と私の手勢は信じられないほど幸運でした。我々はシーウォール山脈で種類を問わず鉱脈を探し、見かけたゴブリン類たちを殺していました。
山に入って三日目、我々は頭上を飛ぶ巨大な影を目撃し、それが黄金の竜であることに気付いて吃驚したのです。そして一時間後、我々は同じくらい大きな銀の竜が先ほどの黄金の竜と同じ方向に向かって飛んでいるのを発見しました。その時は彼らが何をしているのか分からなかったのですが・・やがて私たちは戦いの音を聞きました。二頭の竜が、己の持つあらゆる手段を駆使して相手を攻撃していたのです。その凄まじさときたら、到底言葉では言い尽くせないほど。そしてついに銀の竜が金の竜に致命的な一撃を加え、恐らく200フィート以上の高さから大地に叩き落したのです。
私たちはこの幸運を逃しませんでした。呪文使いにとって、ゴールドドラゴンの肉体は計り知れない価値があるからです。我々はその死体を回収し、今こうして非常にお手ごろな価格でそれを提供させて頂いているわけです」

もちろん、売られているのはゴールドドラゴンの肉体の一部などではない。これらはハーフオークが山で殺したワイヴァーンの死体なのだ。彼らが街を出て一日か二日の後、疑惑と怒りの声が上がり始める。呪文の触媒やポーションの材料として、買い手が望んでいたような効果が一切現れないのだ。多額の金貨を支払ったウィザードたちの何人かは冒険者にハーフオークを探し出させ、金を取り返そうとする。勿論、実際に彼らがゴールド・ドラゴンの体の一部かそれにかかわるものを持っていたりするなら、彼らは金より現物のほうを欲しがるだろう。

d100ロール:動機

01-40 ウィザードは真から金を取り戻したがっている。そしてそれ以上にゴールドドラゴンの一部があればそれを手に入れたがっている。

41-75 ハーフオークは(多少は)本当のことを言っている。それらは本物のゴールドドラゴンの一部である。ウィザードたちは彼らが「在庫」をまだ持っていると考えており、冒険者と商人にそこまで案内させて、それを盗み出すつもりなのだ。

76-00 ハルカスタンの正体はゴールドドラゴンであり、彼は自分が「ドラゴンの予言書」を研究できるようにするため、セヴン・ケイヴス(エベロン・ワールドガイドp176)のワイヴァーンを一掃して欲しいと思っている。ワイヴァーンの一部をゴールドドラゴンとして売りに出すことにより、疑念を抱いた人々がセヴン・ケイヴスに向かうように仕向けたのだ。勿論、ハーフオークがそこへ向かったという噂も抜かりなく流してある。

d100ロール:カスタマイズ

01-45 ワイヴァーンは丁度セヴン・ケイヴスで繁殖期を迎えている。冒険者たちは苦労することになるだろう。

46-70 セヴン・ケイヴズにはドラゴンの予言書がある。ドラゴンマークに似た紋様が洞窟の壁面に渦を巻いているが、それを研究出来たものはわずかしかいない。現在ゴールドドラゴンが5番目の洞窟で彼が夢で受けた啓示を完成させるべく研究を続けている。彼は悪ではないが善属性でもなく、体の一部を分けてくれという頼みには応じてくれないだろう。

71-00 ダーグーンからやってきたゴブリン類と鉢合わせする。彼らは自分たちの行動を見てしまった冒険者をそのまま返しはしないだろう。

キャンペーン適合

まず「竜の書」はドラゴンに関して設定やデータなどあらゆる面であなたの助けになるだろう。「宿命の種族」はハーフオークについて様々な見解を示してくれるはずだ。

 

謝罪と賠償を要求する! ―― フォーゴトン・レルム

カッパー・ドラゴンフェイルーンではドラゴンを見かけることは珍しくない。文明的な土地であっても、この地に住む人々は遠い山にドラゴンが住んでいて、その姿を時折見かけるという状況にはおおむね馴染んでいるのだ。だから、蛇丘の南にある小さな街の住人は、カッパー・ドラゴンがいきなり町の中央に着陸して彼の財産の損害を補填するべしと要求してきたことに驚愕を隠せなかった。彼の主張によれば、人間の冒険者が彼の財産を盗んだので、同族がそれを弁償する事はあたりまえなのだという。彼はもし要求を受け入れないのならば町民の命でそれを購わせてやると言い、無作為に選んだ町民を掴んで飛び去った。

街の人々は彼らに責任の無いことで法外な賠償を支払うべきであるとは当然思わず、彼らは英雄たちを探してこの竜を探し出し、問題を解決してもらおうとする。善良なドラゴンが何故このようなことをするか疑問に思う者もいるが、街の滅亡の危機の前に、そのような些細な違和感は置き去りにされる。

宝物を全く持ってないドラゴンを殺す事は控えめに言っても魅力的な仕事ではない。町民は蛇丘には他にも多くのドラゴンが住んでおり、悪属性のそれを一匹でも殺せば法外な報酬となるだろうと示唆する。町民はそうしたドラゴンのねぐらの地図さえ提供するかもしれない。地元のレンジャーがいつの日か役に立つかもしれないと保管していた貴重な知識だ。蛇丘の竜の幾たりかはヴェリー・オールドにまで達しているので、ひょっとしたらネザリルの魔法が生み出したアイテムなども持っているかもしれない。

d100ロール:動機

01-40 町は本当に困っているが、カッパードラゴンのせいと言う訳ではない。カッパードラゴンは実の所自分の財産を増やそうとしているレッドドラゴンであり、町民が善のドラゴンを殺そうとせず、交渉によって解決しようとする事を期待している。

41-80 カッパードラゴンは彼の宝物の一つによって狂気に落ちた。彼は本当に善良なドラゴンなのだが、全てを丸く治めるためには彼の狂気を癒し、奪われた件のアイテムを彼の手元に戻さなければならない。

81-00 町民の一人はカッパードラゴンの一部を持ち帰ってくれればその宝の価値を超えるような大金を支払うと申し出る。ドラゴンの体の一部にはそれだけの価値があるのだ。また彼は鱗を持ち帰ればそれをどんな鎧にでも作って見せると申し出る。

d100ロール:カスタマイズ

01-50 蛇丘のレッドドラゴン達は、善良なはずのカッパードラゴンのやった事を聞いて大いに楽しむが、英雄(彼らはドラゴンの宝を盗むのが何よりの楽しみなのだ!)がやってくるとなれば楽しんでばかりもいられない。

51-70 カッパードラゴンは宝物を詐取しようとするウィザードが作った幻影に過ぎない。

71-00 冒険者はユアン−ティと衝突する。その後ユアンティは協力を申し出てくる(彼らに取りドラゴンが死ぬことはなんであれ歓迎すべき事なのだ)が、彼らは冒険者が竜を倒した後で背中から刺す気なのだ。

キャンペーン適合

当然ながら「竜の書」は非常に有用である。邪悪なウィザードが登場するのであれば「秘術大全」及び「呪文大辞典」を使ってプレイヤーに挑戦したくなるだろう。ユアン−ティは「Savage Species」などに記述がある。

 

白銀の心臓 ―― フォーゴトン・レルム

シルヴァー・ドラゴン現在の主要種族がフェイルーンという舞台に上がる前、この大地を支配していたのはグレートワームたちであり、自らに伍するようなライバルを持たなかった彼らは我が物顔でこの世界を闊歩していた。「下等種族」が彼らの脅威となったのは彼らが魔法を身に付け始めてからのことである。こうして世界の変化が始まった。この時代の終わりに、最も偉大な人間のウィザードが当時存在した内で最も古く強力なシルヴァードラゴン、キネンサーナーンヴェラサル(Kinenthurnurnverasal)を支配しようとした。ドラゴンは彼らが扱うには強力すぎたのだが、にも拘らず彼らは竜を停滞状態に置くことに成功した。彼らは心臓を切り取り、三つに分けて強力な魔法のアミュレットを作った。それぞれは異なった所有者の手に渡り、現在その内の二つはウォーターディープでそれぞれ別のローグが所有しており(特定の誰かに所持させたい場合、「ウォーターディープ:壮麗な都」の「ローグとごろつき」(the Rogues and Ruffians)の章を参照するのがいいだろう)、最後の一つは歴史の中に消えてしまっている。

キネンサーナーンヴェラサルの肉体はオースローン山脈の洞窟の中で今も停滞している。何世代もの間、誰もそれを見つける事ができなかった。古代からの伝説によれば、心臓を修復し、時間を止めたままのドラゴンの肉体にこれを戻せば古の強大な竜は甦り、甦らせた者にランプの魔神の如く忠実に仕えると。

この話がローグ達の耳に届けば、彼らはもう片方が利益を得る事を恐れてドラゴンを蘇生させるあらゆる計画を阻止しようとするだろう。

そして冒険者たちがゼンタリムの宝物から失われた最後の一つを発見したとき、冒険は始まる(ゼンタリムはこれが魔法のものであると分かってはいても、何に使うものかは知らなかったのだ)。PC達はそれに気付くが(恐らく賢者ないし馴染みの情報源から知識を入手したのだろう)、そうなると他の二人のローグから同じアミュレットを手に入れなくてはならない。もし必要であれば、冒険者たちにアミュレットの事を教えた賢者を後援者にしてもよい。

なお、今回は英雄達が自発的に冒険を始めるため、動機についてのロールはない。

d100ロール:カスタマイズ

01-25 ライバルのローグの一方ないし双方が探索への協力を申し出るが、提供された心臓のアミュレットは偽物である。英雄達がドラゴンの肉体へたどり着いたときに改めて姿を現し、自分の報酬を請求するつもりなのだ。

26-45 伝説は部分的に真実である。古代の竜はこの事件のために悪属性に転じており、英雄達は彼が古代の力を怒りとともに世界に撒き散らす事を防がなければならない。

46-70 伝説は丸っきりのデタラメである。三つのアーティファクトは確かに存在するが、それは古のドラゴンの心臓などではない。賢者はそれが本当はなんであるかを知っており、英雄達に三つを集めさせた後でこれを手に入れることを意図しているのだ。

71-90 ある現代のドラゴンはこのアミュレットを自らの心臓に埋め込めば古代の偉大なドラゴンの生命力を我が物として、無敵の存在になると信じている。このドラゴンはあらゆる局面で英雄たちを苦しめるだろう。

91-00 この心臓の断片には呪いがかかっており、現在の主からこれを盗もうとする者はみなすべてエピッククラスの呪文使いのみが回復させることの出来る消耗性疾患に感染する。

キャンペーン適合

件のローグ二人を創造するにせよ選択するにせよ、「ウォーターディープ」は助けとなるだろう。オースローン山脈は怪物で一杯であるから、モンスターマニュアルを始めとするあらゆる怪物の書は有効である。あなたはページをめくるたびに小躍りし、ドラゴンの肉体を探す冒険をそれに相応しい難関とすることができるだろう。