Steal This Hook! | 04/10/2006 |
ロバート・ウィーゼ
ぺきり、と音がした。踏んでしまった枯れ枝は大して大きな音を立てたわけではないが、猛獣を刺激するには充分だ。あなたは不意討ちによって生存する可能性を失ったのかもしれない。力と威厳を併せもつモンスターがあなたの前に立ちはだかる。口先三寸を働かせるか、あるいは何らかの「通行料」なしで通り過ぎる事はできないだろう。森を通り抜けている最中、あなたは死体の山に出くわす。あなたが調査をしている間にそれをやったクリーチャーはねぐらから飛び出し、あなたを彼らのコレクションに追加しようとするのだ。
荒野は怪物達にとって我が家も同然であり、よってファンタジー世界の旅は時として非常に危険なものになりうる。今月のスティール・ジス・フックは荒野深く分け入り、あなたを強力な(或いは無数の)怪物に立ち向かわせる事となるだろう。
アースパー山脈には隠された間道がある――インピルターと広野の双方で長年にわたって囁かれている噂である。その多くでは夕暮れ川とラヴィガー市を繋げるといわれている。こうした道を探すため、大商人達は投資を惜しまないだろう。
冒険者達はタントラスでこの隠された道を旅行する話をするファーリス・クリードという名前のバードと出会う。多くのものは嘲笑したが、その話に非常に興味を示した者がいた。フェネラック・ブライトモアという大商人はこのバードと長い時間をかけて話を聞き出し、バードの物語から位置を類推した間道を確かめるために冒険者を雇う。彼は間道が実際にあると信じており、それを独占することによって巨額の利益を得ようとしている。
実の所間道は実在した。それが長年見付からずに済んだのは、孤独な傷心のクリオスフィンクスの住処であったからである。昔このスフィンクスは一頭のギュノスフィンクスを口説いたのだが、彼女は別のアンドロスフィンクスに夢中だったため、手ひどく失恋してしまったのだ。傷心のクリオスフィンクスは誰も住んでいない山奥に引っ込み、(クリオスフィンクスには)余り知られていない道を選んで、以来ここを通る全ての旅人に挑戦するようになったのである。そして今の所、彼の出すテストをクリアした者はいない。彼は殺した旅人から得た文献で秘術的な力を学んでおり、魔法で敗者から記憶を奪って放逐していたのである。
d100ロール:動機
01-50 フェネラック・ブライトモアは真実間道の存在を知りたがっており、それを自分の管理下におきたがっている。そして冒険者達が彼のために首尾よく間道を確保してくれたならば、そのまま消えてもらう事にもやぶさかではない。
51-80 フェネラックはクリオスフィンクスのために働いており、彼が望むときに誰かを山に送り込んでいる。
81-00 フェネラックはクリオスフィンクスのことを知っており、冒険者達が彼を殺して一族の呪いを解いてくれることを望んでいる。しかしながら呪いにより彼はそれを直接言うことができない。どうにかして冒険者達が事情を知らないままスフィンクスを殺すように仕向けなければならず、さもなくば呪いは永遠に解けないのだ。
d100ロール:カスタマイズ
01-30 クリオスフィンクスは多くのアイストロール、フロストジャイアント、エティンを脅迫によって従わせている。それで誰もこの間道を地図に載せることができなかったのだ。彼らは間道に足を踏み入れたものを全て殺し、クリオスフィンクスのためにその死体を料理する。
31-50 クリオスフィンクスを拒んだギュノスフィンクスもまたこの地域にいた。アンドロスフィンクスとの不毛な関係の後、自らの過ちに気付いた彼女はかつて告白してくれたクリオスフィンクスを探している。しかしながら彼の反応は非常に厳しいものであった。
51-80 フェネラックはファーリス・クリードを同行させると主張する。このやかましい男は謎かけで旅人に挑戦する方法をスフィンクスに教えるのだと張り切っているのだ。
81-00 スフィンクスは変装であり、その正体はドラコリッチである。
キャンペーン適合
この冒険はどんなキャンペーン世界にも適応する。
- フォーゴトン・レルム:上述のとおり。
- エベロン:ズィラーゴとダーグーンの間の山脈に舞台を移す事ができる。あるいはクリオスフィンクスを邪悪なヒエラコスフィンクスに置き換えてもいい。
- D&D一般設定:殆ど使われてこなかった山中の道であればどこでも。
- D20モダン:現代でスフィンクスを見つけるのがまずかなりの挑戦かもしれないが、ニジェールの近くにあるアルジェリアの山脈に舞台を移し、間道を見つける別の理由を考えつくことによって無理なく導入する事ができるだろう。
スレインへ向かうハーフリングのキャラバンが物資の補給のために北ブレランドのハセリルへ立ち寄る。彼らはスレインの親戚のところに移住する途中であり、その馬車には財産の全てが積まれている。何事も無く彼らは出発していったのだが、数日後、三人のハーフリングがよろめき疲労困憊しながらハセリルに助けを求めて現れる。彼らはアリの怪物から仲間と馬を取り戻すために戦ってくれる助っ人をキャラバンの仲間が待っているのだという。
キャラバンは南スレインを旅行していたが、ハロウクラウンズの近くで六本の足とキチン質の表皮を持つ二匹の巨大昆虫が地面からいきなり現れ、二人のハーフリングをさらって再び地中に消えたのだという。同じ事が2,3マイル北でも起こり、この時は馬とハーフリング一人がさらわれた。キャラバンは身を守るために防御を固め、彼ら三人は助けを呼ぶべくハセリルに戻ってきたのだ。
キャラバンを攻撃していた生物はハロウクラウンズの周りの平野に生息するアンケグである。ここにはそれらが100以上も棲息しており、近づいた物は何でも餌食にするのだ。ハーフリングのキャラバンはアンケグと戦い、彼らを守ってくれる冒険者が現れるまで安全な場所から移動を試みる事は無いだろう。
d100ロール:動機
01-50 うむ、アンケグがあっちでハーフリングを食べているぞ。
51-80 ハーフリングの一人は彼の親類縁者を全滅させようとしている。彼はあらかじめアンケグのことを調べ、そのルートを通るように他のものを説得したのだ。彼はいつも馬車に乗っているか、自分が攻撃されないように犠牲者をひとところに集めておこうとしている。
81-00 実際にアンケグは存在するが、ハーフリングのキャラバンとは無関係である。キャラバンを襲ったのは別のハーフリングたちで、ハーフリング達は既に皆殺しにされている。助けを求めた三人は新たな犠牲者――金持ちの冒険者――を見つけてもう一稼ぎしようと送り込まれてきたのだ。本当のアンケグがいるのはもう少し北だが、襲撃はその手前で発生するかもしれない。
d100ロール:カスタマイズ
01-40 アンケグ達は一糸乱れぬ連携を見せる。彼らを率いているのは辺境の人口を減らそうと企む蜘蛛のデーモン、ないしはジルなのだ。ハーフリングのキャラバンもその犠牲者のごく一部に過ぎない。
41-75 アンケグを餌とする別の巨大な怪物がその地域には生息している。もっとも、夕食の献立としては冒険者であろうとハーフリングであろうとアンケグであろうと、えり好みをするほど贅沢ではない。
76-00 件のアンケグはスレインの軍が試験的に訓練した戦闘部隊であり、スレインはそれらが殺される事を愉快には思わないだろう。
キャンペーン適合
「自然の種族」はハーフリングについて重要な考察を与えてくれる。そしてこの本は適切なNPCや悪党を作るのに役に立つだろう。
- フォーゴトン・レルム:シャーのどこでも近くに街があるところ、または"緑地"に舞台を移す。
- エベロン:上記のとおり。
- D&D一般設定:この冒険は原生森林に程近い平野に設定すべきである。荒野と言う言葉が鍵だ――つまり、交通が余り無い場所である事。しかし数日で街にたどり着ける事。
- D20モダン:合衆国中西部の大農業地帯は素晴らしい適合を見せるだろう。無数の麦の穂の下で、アンケグは息を潜めて獲物を待っているのだ・・・。
「あの大地(フィールド)の下には富が埋まっているんだ・・・怪物があそこを立ち去ってくれれば、の話だが」
ダマラのロード・デモッカは溜息とともに語った。「そこでだ、ヴァサに行ってあそこの脅威を『掃除』してきてはもらえないだろうか?」
そう言って彼はブラッドストーン峠の北、ガレナ山脈のヴァサ側の幅20マイル、奥行き30マイル程の地域を指し示す。
「君がゴブリン類とその他の怪物を掃除してくれれば、私は鉱山に人を集め、砦と町を建ててあの極寒の地に文明を築き上げる事もできるだろう。これは壮大な事業であり、私のような人間だけがそれを実行できる。そして勿論君の助けが必要なのだ。どうだろう、考えてくれるかね?」ヴァサは常に寒冷で荒涼とした土地であり、悪のリッチ"魔王"ゼンギーと彼の怪物の軍団の支配する土地であった。ゼンギーは数年前に滅ぼされたが、怪物の多くはまだ残っている。ダマラの実力者達は常にその資源(ブラッドストーンの豊富な鉱脈)と土地に注目していたが、恒久的な拠点を作ることはできなかった。ロード・デモッカはその最初の一人となることを望んでいる。
デモッカはゲアレス・ドラゴンズベイン王の祝福と、上手くいった場合の労働者及び軍の派遣の約束をすでに取り付けている。だがそれを実現させるために彼は人型種族の略奪者、ホワイトドラゴン、ルモアハズ、その他常冬の地の怪物たちを駆除しなくてはいけない。これは冒険者にとってもモンスターたちを倒して莫大な戦利品を得るまたとないチャンスである――もちろん、生き残ればの話だが。
d100ロール:動機
01-50 ロード・デモッカは真実ヴァサの平定を願っている。何も隠し事は無い。
51-80 デモッカはガレナ山脈に住むオールド・ホワイトドラゴンがあるアーティファクトを所持しているのを知っており、それを手に入れたがっている。冒険者達がその所有権を主張するなら、彼はそれを盗み出すために人型生物の略奪者を雇う。
81-00 デモッカは腹黒い男であり、自分こそヴァサの次の"魔王"だと見なしている。彼は怪物達の軍団を既に組織しており、それらは解き放たれる時を待っている。冒険者達が地域のモンスターを一掃した後、彼は冒険者たちを倒し、この地域を要塞化して残りのヴァサを平定するための根拠地とするだろう。
d100ロール:カスタマイズ
01-55 多くの、数え切れないほど多くの種類のバラエティに富んだクリーチャーが存在する。極地、山、または寒冷な地域に住み着くものは全て今回の駆除の対象となる可能性がある。もっとも、それらのモンスター全てが恐れ避ける存在がある・・・グレート・スノーワームだ。これはパープルワームの巨大な、寒冷地に適応したバージョンである。
56-80 ロード・デモッカが掃討を依頼した地域は既にダマラとの貿易関係を築こうとしているフロスト・ジャイアントのイャールが領有を宣言している。
81-00 その地域に存在するモンスターの多くは実の所"魔王"ゼンギーによって生み出されたゲートから出現している。冒険者は既に存在するモンスターを一掃する一方で入口を消さなければならない。
キャンペーン適合
「Frostburn」(寒冷地ソースブック。未訳)は適切なモンスターをピックアップするのに最適であり、また特技及び寒さや雪など様々な環境のフォローの面でも有用である。また「Savage Species」(モンスターをPCとして使うためのサプリ)のモンスター特技や「竜の書」も役に立つだろう。
- フォーゴトン・レルム:ヴァサ。
- エベロン:ラザー公国連合の最北地域、ないしはフロストフェルが適切であろう。後者の場合何らかの設定変更が必要になるかもしれない。
- D&D一般設定:これは寒冷な地域のためのフックであるが、モンスターが跳梁跋扈している地域であればどのような場所にでも応用が効く。
- D20モダン:現代の世界設定においては怪物の蔓延する広野を設定するのが不可能であるかもしれない。しかしながら、「d20 Past」(ルネサンスから20世紀前半までを扱うD20モダンのサプリメント)ならば適当な秘境を舞台として設定するのも可能だろうし、宇宙を冒険の舞台とするならば「d20 Future」(同じく未来世界を扱うD20モダンのサプリメント)に移植するのも容易だろう。この場合、舞台によってはモンスターも寒冷地のそれでなくなる可能性がある。