Steal This Hook! 03/13/2006

古の神秘

ロバート・ウィーゼ


 

新しくなったスティール・ジス・フックへようこそ! このたびこのコラムを任される事になったのをとても嬉しく思います。今まで発売されたD&D製品の内で私がもっとも好きな物の一つはダンジョンマスター・デザインキット(Dungeon Master Design Kit)、手当たり次第に豊富で上質なアイデアを提供してくれる、まさしくDMにとっての打ち出の小槌でした。ですから冒険のアイデアをこういう形で提供するのは私がまさに夢見ていた事であり、DMの方々をお助けできるのは大いなる喜びでもあります。このコラムが皆様のお役に立ちますように!

今回から少し形式が変わっていますが、フックという形は変わっていません。御覧になればお分かりになるかと思いますが、NPCのために用意された秘密の動機(適切なチェックを適宜行わせる事を忘れないで下さい。悪党はしばしば愚かにも馬脚をあらわすものです)と、あなたがフックを使ってデザインする冒険をカスタマイズできるような選択肢が提示されています。またこれらのフックは適宜他のキャンペーン世界、特にフォーゴトン・レルムに適応できるようにしてあります。それぞれのエントリーにフォーゴトンレルムエベロン、一般的なD&D設定、さらにD20モダンのためのキャンペーン適応さえ用意されています。さて、では続きをどうぞ。今回のテーマは古の神秘、もしくは過去より来るものです。

 

湖の貴婦人 ―― エベロン

シルバー湖(ブレランドとエルデン・リーチの国境)最終戦争は少なからぬ無辜の民の犠牲をもたらした。ブレランドがシルバー湖の向こう側(当時のアンデール、現エルデン・リーチ)に軍事的進出を行ったとき、多くの農場が、村が、小さな町が破壊され炎上した。このような町のいくつかは補給、港、あるいは地元の男女による「サービス」さえ提供することによってブレランドによる破壊を免れたのである。グリーンブレード(Greenblade)近くの村では王国歴955年にブリスタラという名前の地元の娘が痕跡を残さずに姿を消した。彼女は医師見習をしていた美しい娘で、村全体から愛されていた。当時人々はブレランドを非難し彼女がいなくなってしまった事を嘆いたが、この事件がエルデン・リーチからブレランド軍を排除する機運の盛り上がりに大きく貢献した事も否定できない。

そしていま、シルバー湖周辺ではブリスタラが湖の上を歩いているのを見たという目撃証言が頻発している。ある船長は自分と乗組員が水面の上をそぞろ歩きしていたといい、ある漁師は同じ女性が夜明け頃に水の上で踊っているのを見たという。夜、湖の上に佇む彼女がエルデン・リーチ側の岸辺から目撃されたことも一度や二度ではない。目撃された彼女が本物の人間なのか、幽霊なのか、はたまたよく出来た幻影なのか確認できるほど近づいた者は誰もいないにもかかわらず、彼女は地元では一つの伝説になってしまっている。彼女の父親クレニリウスは余命幾ばくも無く、この件に関する真実を知りたがっている。彼はこの幽霊を発見し、彼の娘に何が起こったか確かめるために冒険者たちを雇う。だが、彼が今日明日をも知れぬ命である事を思えば時間の余裕は余りない。

d100ロール:動機

01-50 説明そのまま。父親は何が彼の娘に起こったかを本当に知りたがっている。

51-80 実の所クレニリウスは何が彼の娘に起こったかを知っている。 彼はブレランドの大尉に彼女を売り渡し、大尉は彼女を殺害して遺体を捨てたのだ。クレニリウスはこの事実を誰にも知られたくないが、これが本当に彼の娘であるかどうか知りたがっているのだ。

81-00 クレニリウスは娘がアンデッドとして戻ってきたことと、彼女が生前決して口にしなかった何かを恐れている。冒険者達に彼女を滅ぼして欲しがっているのだが、自身でそれを尋ねる事はできないのだ。

d100ロール:カスタマイズ

01-30 ブリスタラはゴーストであり、善なる本質と復讐を求める妄執との間で葛藤を続けている。これまで犠牲者が一人も出ていないのは彼女の中でこうした葛藤が続いているからだが、それも長いことではないだろう。

31-55 巨大な怪物が湖面のすぐ下に生息しており、ゴーストは近寄る人間がその餌食になることを望んでいる。

56-75 シルバー湖の両端の住民の不安をかき立てようとする誰かがこの悲劇を政治的に利用している。犯人はスローンホールド条約による平和を打ち壊す戦争を欲しているのだ。

76-00 海賊は獲物をおびき寄せるための餌として少女の幻影を利用している。目撃譚は幽霊に近づいていない船の物だけであることに注意するべきだろう。

キャンペーン適合

ここに、異なったキャンペーン世界へ適合させるためのアイデアがある。 より面白くするために、あなたは「ストームラック」(Stormwrack、水中冒険サプリメント。未訳)を導入する事を考えるかもしれない。またドラウンド(モンスターマニュアルIII)――恐るべきアンデッドと多くのDMが考えているあれ――を湖に配置するかもしれない。

 

丘に金は眠る ―― フォーゴトン・レルム

ダガーデイル周辺かつてテシヤマーの古代ドワーフ王国はダガーデイルの西、砂漠口山脈に栄えた。数百年前、モンスターの軍隊の前にそれは滅亡した。怪物の侵入と時を同じくしてドワーフ王はダガーデイル側にあった、掘り尽くされたと考えられた小さな鉱山のいくつかを放棄した。少数のドワーフたちが居残ろうとした物の、結局彼らも諦めて姿を消した。その後数百年に渡り怪物に勇敢に立ち向かった探鉱者と冒険者によって、これらの鉱山は本当に全く価値がないことが証明され、それは周知の事実になった・・・はずだった。

しかしこの一年、鉱山の一つから金が産出されている。その量は着実に増えており、あたかも産出が新たな産出を呼んでいるかのようである。人々はかつての鉱山で起こっていることに興味を持っており、そのうちの誰かが冒険者を雇うかもしれない。

d100ロール:雇い主の動機

01-25 テシヤマー最後の王は1369DRに死亡したが、彼には息子がいた。そのうちの一人であり、"魔を斬り裂く者"(フィーンド・シュレッダー)と呼ばれたテスターはこの金の所有権を主張し、テシヤマーを奪回・再興するための軍資金として使用したがっている。

25-50 ダガーデイルの人々はこの新たな富に非常な関心を寄せており、権利を確保したがっている。そのうち何人かは彼らに代わって権利を主張し、また危険な怪物を鉱山への道から除去するために冒険者を雇う。

51-75 ウォーターディープの学者は廃坑から出て来る金について聞き、調査のための護衛と魔術的な援助を必要としている。探索の結果見つけたものについては共有する事もやぶさかではない。

76-00 鉱山に向かった人々の殆どは戻ってこないが、理由は分かっていない。冒険者の一人の親戚も、鉱山か鉱山の中を探索している間に行方不明になった。

d100ロール:カスタマイズ

01-25 鉱山に金を供給していたのはマインドベンダー・ウィザード(秘術大全)であり、彼は金に惹かれてやってきた愚か者どもを奴隷として(欲望は精神的抵抗力を弱めるだろう)軍勢を作り上げ、ダガーデイルに侵攻するつもりなのだ。

26-65 鉱山はアンダーダークと繋がってしまっている。ドウェルガルは金を自分たちの物にしたいと思うだろう。

66-85 黄金はゼンタリムから来たベインのクレリック、ないしはベインその人の仕業であり、突然の富の流入でダガーデイルを混乱させようとする策略である。状況が混乱している内に、ゼンタリムは貿易の利権、あるいは領地そのものを我が物としようとしているのだ。

86-00 金は自然に発見されたものであり、地震によって露出した細い鉱脈からの物である。しかし現在マインドフレイヤーが鉱山を占拠しており、また彼は人間やドワーフたちが好きな訳でもない。彼は鉱山の歴史に興味が無い奴隷たちを通じて金を流出させている。

キャンペーン適合

ここに、異なったキャンペーン世界へ適合させるためのアイデアがある。 ドワーフからの視点を肉付けするさい、「石の種族」が役に立つかもしれない。

 

砂塵舞う死者の都 ―― フォーゴトン・レルム

砂漠に朽ち果てた死者の都PC達がカリム砂漠をメノンからカリムポートまで横断しているとき、彼らは消えた子供を狂ったように探し回る家族に出会う。家族の馬車は今朝ここで車輪を壊してしまい、大人三人(男、彼の妻、彼女の兄弟)がそれを修理している間に八歳の末っ子のジャスティナルがいなくなってしまったのだ。彼らはもう一時間以上も狂ったように探しているのだが、息子は見つかっていない。家族は捜索を手伝ってくれるよう懇願する。追跡特技を持ったキャラクターが生存で難易度15のロールに成功すればその痕跡を発見することができるが、家族が探し回っていたり、或いは風と砂のせいで難易度はより上昇している。しかしそれでも痕跡を発見出来たならば、二時間の追跡によって巨大な、そして明らかに無人の都市に到着するだろう。そして英雄達が城門にたどり着くのと時を同じくして、砂漠に夜の帳が下り始める。

カリム砂漠にはいくつもの廃墟と化した都市が存在するという噂があり、これはその一つであろう。住人達は何世紀も前にジンニー達の戦いによって皆殺しにされており、今では様々なアンデッドと化している。その後あるリッチが侵入し、これらのアンデッド達を支配下に置いた。要するにこの街は紛れもない死者の都(ネクロポリス)であり、あらゆる侵入者の精神と肉体を奪い尽くし餌食にせんと待ち構えているのだ。

なお、家族には英雄に支払う謝礼は全くない。彼らはカリムポートでの迫害から逃げ出してきた貧しい旅人なのだ。

d100ロール:動機

01-25 家族はアンデッドの元を供給するために生者を死者の都に誘い込むために罠を仕掛けている。ジャスティナルは痕跡を作るために都市に向かって歩くように指令されたゾンビに過ぎない。大人たちの一人はリッチのしもべによって憑依されている。

26-75 特に裏は無い。両親の不注意と、別の子供が馬車から離れないように注意していたためにこの事件は起こった。

76-00 ジャスティナルは存在しない。両親は勇敢な英雄が死者の都に足を踏み入れ、宝を持ち出してくるのを期待している。弱ったPC達を襲って戦利品を強奪するのが目的なのだ。他の子供は両親たちの奴隷であり、恐怖により従っている。

d100ロール:カスタマイズ

01-30 なし。

31-55 リッチはジャスティナルに魔法をかけ、都市に来るように命じた。彼を弟子に取り、幼い頃から悪に染めるべく訓練するつもりなのだ。

56-75 ジャスティナルは実の所カリムポートの貴族の子供であり、家族を装った一団によって誘拐された。無事彼を連れ戻すならPCは素晴らしい報酬を得るかもしれないし、逆に誘拐犯として起訴されるかもしれない。

76-00 ライバルのリッチないしヴァンパイアは、ジャスティナルの一件を死者の都のリッチのパワーを奪う絶好の機会だと感じる。PCたちは子供を利用して力と互いの破滅を望む二つの勢力の間で板挟みになるだろう。

キャンペーン適合

ここに、異なったキャンペーン世界へ適合させるためのアイデアがある。リッチ、また他のアンデッドや死者の都自体を発展させる(物がアンデッドだけにあえて言おう、「肉付け」と)ために、「Libris Mortis」や「Heroes of Horror」(それぞれアンデッドやホラー風キャンペーンに関するソースブック)が、また砂漠に関しては「Sandstorm」(砂漠に関するソース本)が役に立つだろう。