Steal This Hook! | 12/12/2005 |
ダグ・ベイヤー
先月、ついに満を持してスリードラゴン・アンティが発売された。これはWotCの販売するカードゲームであると同時に、D&D世界で広く遊ばれている遊戯でもある。本日のスティール・ジス・フックではその発売を記念して、このゲームをいかにエベロン世界に組みこむかを紹介する。楽しんでくれ!
パーティーのローグがシャーンの裏社会における悪名高き犯罪王、ヴロガス・ラッキー(Vrogath Lucky)に負債を負っているとしても、取り立てて驚くようなことではない。この白髪混じりの眼鏡を掛けたオークは多くの冒険者ローグに援助を行っているからだ。しかし、事債務に関する限り彼は忘れる事もなければ許す事もない。PCのローグが名を上げたならば、彼はそろそろ債務を返済してもらうときだと考えるだろう。
それは最初何らかの社会的な圧力から始まる。地元の商人はPCの懐の金貨に興味を示さなくなり、いかなる形であれサービスを提供することもなくなるだろう。そしてそれはより直接的物理的な圧力に変化していく。例えばシャーンのスカイブリッジでヴロガスの雇ったごろつきに襲撃を受けたりとか。最後にヴロガス自身との会見でPC達はある申し出をされるだろう。PC達が"プラチナ・アンティ"("platinum ante"、白金貨をチップとするスリードラゴン・アンティ)においてローグの負債を返済するならば、ローグは過去の負債から自由になれるというのだ。しかしヴロガスの悪名高い「幸運」(彼はイカサマを平然と、そして巧妙にやってのける事で有名だ)の事がある――そしてゲームは当然ヴロガスの手の内で行われるのだ! PCは果たしてこのゲームでヴロガスを打ち負かす事ができるのだろうか? また「勝利」がシャーンの犯罪王の激怒を意味するのだとしたら、本当の意味で「勝利」する手立てはあるのだろうか?
カードを楽しむのはなにも悪党や犯罪者に限った事ではない――やんごとなき大理石のホールでも多くの賭けがプレイされる。が、ことプラチナ・アンティともなれば、例え殺人が起こったとしても誰も気に留めない。
殺人者は接触毒をスリードラゴン・アンティのカード――信じられている所によればブラスドラゴンの――に仕込んで西ブレランドの貴族バーウィス・イル=ストラム卿の最愛の助言者を殺害した。そのゲームにはバーウィス卿自身が参加しており、彼はこの毒は本来自分を標的とした物ではなかったかと感じている。彼は個人的な捜査官として冒険者たちを雇うことにした。
クライマックスにおいてプレイヤー達は殺人犯が再び毒を打つように仕向けるため、バーウィス卿の法廷における裁判官を装う。DMたるあなたは毒を入れるためにこっそりカードを一枚選ぶだろう。例えばブラスドラゴンの9とか。そしてゲームごとにプレイヤーがそれを引くかどうか胸を高鳴らせつつ注視しているのだ。あなたはプレイヤーがブラス・ドラゴンのカードを引くたびに頑健セーブをロールさせてもよい――毒が仕込まれているか否かに関わりなくだ。だが、そもそも殺人犯はまたしても同じ手口を使うだろうか? 例えば毒を仕込むカードを変えたり、複数のカードに仕込んだりしたかもしれない。英雄達はカードに毒を仕込む手口を暴く事ができるだろうか? そしてもう一つ、暗殺の目標はバーウィス卿ではなく、最初から彼の助言者であったとしたらどうなるだろうか。助言者の死が敵の陰謀にとって重要な役割を果たしていたのだとしたら?
※訳注:ロードハウスとは街道脇にあるドライブイン、酒場、レストランなどの総称。
ゴラドラ・ロードハウスはその名の通りムロールのゴラドラ・ギャップ(エベロンワールドガイドp203参照)の今にも崩れ落ちそうな崖っぷちにあり、一攫千金を狙うギャンブラー達がせっせと負債を養殖する場所である。このエベロンで最も深く、背筋の凍りつくような神秘を秘めた『裂け目』は幸運を求めるもの達を誘蛾灯のように引き寄せる。『楽しい冒険』に出かけたもの達の多くは二度と戻らないが、幸運にも宝物を持ち帰った少数はここで浴びるようにエールを呑み、休息し、プラチナ・アンティで金をする。
ここではパーティーメンバーは情報を得たり、冒険の種を探す手段としてスリードラゴン・アンティを行う機会が増えるだろう。彼らはドラゴンシャードの鉱脈があると思われる場所へ続く間道の情報を聞き出すために酔っ払ったバーバリアンにおべっかを使うかもしれないし、ギャップの案内人としての腕を計るため、無口なレンジャーに一勝負吹っかけるかもしれない。盗みを働いているジョラシュター・オークの鉱夫を洗い出すためにいちかばちかの勝負をするかもしれないし、単にこの場で最も裕福かつ強いプレイヤーに対して大勝負を挑むかもしれない――勝てば冒険への豊富な支援、しかし負ければ一文なしだ!
チェンバーとして知られているアルゴネッセンのドラゴンによる秘密結社はコーヴェア中に変装したエージェントを送り込んでいる。そのうちの一人がアンデールの貴族レディ・へロンを名乗るヤング・ブロンズドラゴン、エラガッシュである。アンデールの王族やストームホームのハーフエルフ(訳注:リランダー氏族のこと)の双方に自由に出入りしている。彼女の任務はアンデールにおける政治的な動きを細大漏らさず監視し、またドラゴンの予言書に関わりあるようなあらゆる事象を報告することにあった。しかし、リランダー氏族の中でスリードラゴン・アンティが流行し始めたとき、彼女はドラゴンとしての誇りが傷つけられたのを感じ、栄光ある同胞をたかが下等生物の賭け事の道具にされることに耐えられなくなる。だが何よりも彼女の自己中心的な怒りを誘ったのは、彼女の腕ではリランダー氏族のプレイヤー達に勝てないと分かったことだった。そしてアンデールでもっとも優れたプレイヤーになるべく、彼女は秘密の計画を練り始める・・・。
ブロンズドラゴンは、この単なるカードゲームで勝つ為だけに、腰を低くして秘密裡に師を求めるだろうか? それとも他国からトッププレイヤーを秘密裡に招き、秘密のトーナメントにおいてリランダー氏族を打ち負かさせるだろうか? 勝利のためにドラゴンマークを持つプレイヤーを支援したり、また魔法的な何かの手段に訴えたりするだろうか? そもそもこれらのゲームへの介入は彼女個人の意図によるものなのか、それともチャンバーのドラゴン達そのものが大きな興味を寄せている結果なのだろうか?