華麗なるヒコーキ野郎| Steal This Hook! | 04/25/2005 |
華麗なるヒコーキ野郎ダグ・ベイヤー
大空を舞台にした映画にはすべからくドラマがある。それは臓腑がすくみ上がるようなスタント飛行をやってのけるパイロットの妙技であり、サーカスめいた大胆な空中救出ショーであり、破れかぶれの胴体着陸であり、荒々しいドッグファイトであり、最悪のタイミングで訪れる稲妻と暴風である。その魅力を知っているならば、貴方のキャンペーンでPCに空を飛ばせない理由は何も無いはずだ。今回のスティール･ジス･フックはエベロンスタイルの空の冒険である。
おおよそ一月前、カンランの北の岩っぽい山脈を飛んでいた飛行船が、運んでいたリードラ水晶鉄ごと行方不明になった。２ヶ月前にも同様にアダマンタインを積んだ船が消息を断ったばかりである。リランダー氏族が特別に準備した飛行船をそのルートに飛ばす、という言葉を発した瞬間、英雄達は自分達に新たな冒険が舞い込んできたことを知るだろう。実際これはエサであり、PCたちは釣り針である。船は輸送船であるかのように装い、書類もちゃんと偽造済み、PCたちはその時がくるまで秘密の個室に隠れていればいい。一方・・・
ロード･オブ･ブレイズは彼が最近成功させた二つの飛行船強奪が余りにも大胆であったことを自身自覚している。彼はリランダーの愚か者共が罠を仕掛けることを予測しており、当然今度は手を出さないことも出来たのだが、操縦技能のテストのためにあえて襲撃を仕掛ける。狭い谷間に追い込み、逃げ場がないようにしてウォーフォージドの射手とウィザードの一個小隊で炎の雨を浴びせ掛けるつもりなのだ。もしパイロットがこの挑戦を生き延びたなら、彼は奪った二隻の飛行船を使い、直接兵力を乗り込ませるつもりだ。
ぼろぼろのバジリスク革に記された地図にはゼンドリックに眠る宝物のありかが記されている。問題はサフアグンによるテロ行為がこれまでに無く激しくなっているため、シャーンからの全ての船が航行停止していることだ。そして運良く一隻の飛行船がシャーンからゼンドリックまで飛ぶことをPCは知る。しかし今度の問題は、その船ウィストフル・ワンダラー（物欲しげな放浪者）号はブレランドの国益に寄与する（具体的には多額の献金）探検家のみが乗船を許された船だということだ。運良く、もとい運悪く彼らには金も国王のツテも無い。そこでPCたちの寡黙な友人であるドワーフ、ジモーダン・ランナバウトから一つの提案が出る。彼はこの船に雇われることになっており、荷物に紛れて密航してはどうかと言うのだ。無論危険ではあるが、PCたちは何が何でもこの神秘の大陸に行かねばならない。そして喉を裂かれたジモーダンが船旅の半ばで発見されるとき、PCは予想よりも一足早く暗い陰謀に突き落とされることだろう。
かつてサイアリであった場所の空にわだかまる不自然な暗闇は異世界からの逃亡者、アイバであった、彼女はキスーリから迷い込んだエア・エレメンタルであり、その存在はモーンランドのデッド･グレイ･ミストに神話的な大渦を生んだ。殆どの人間はモーンランドの咆え猛る大気に突っ込む事など考えもしないが、フレッド･グランラッチという名前のハーフオークの飛行船船長は、一刻も早くアイバを見つけるために勇敢な乗組員を必要としている。フレッドの動機は愛（渦に巻き込まれた息子を助けるため）であるが、それは欲望（伝説的な＋４ロングソードは「ゴーレムの大地に渦巻く嵐」によって露わになると言う）に変わるかもしれないし、報復（彼はアイバが彼の父親を殺したリヴィング･クラウドキル･スペルの成長した姿であると信じている）がそれにとって変わるかもしれない。
アーズと言う名の若く有望なチェンジリングのメイジライトは、シャーンの名門造船大学から追放されたときいかなる感情も示さなかった。少なくとも彼を追放した、人間である学部長はその表情を見て取ることが出来なかった。恐らく、彼は最終的に感情を別の形で表現したのだろう。
それでも次の週にソアウッドと幾つかの重要なエレメンタル素材が大学から消えたとき、誰も驚くものは居なかった。彼らはすぐにアーズを非難し、探偵によって盗まれた材料が見つけられることこそ無かったものの、大学職員はドラゴンマークなしで非認可の飛行船がつくられるとは思っても見なかったのである。
そして二ヵ月後。シャーン中層のホールドファストから現れた、殆ど目に見えないリング（エア・エレメンタル？）をもち、殆ど音を立てずに飛行する黒い船の報告が混乱の中多数寄せられた。アーズは新型の、秘密の飛行船を開発することに成功したのだろうか？ それとも何らかの他の勢力と結託して大学を攻撃するために動いているのか？ あるいは誰かがこの潔白なチェンジリングに罪をなすりつけて悪事を働こうとしているとは考えられないだろうか？