Steal This Hook! | 03/28/2005 |
ダグ・ベイヤー
またもやスティール・ジス・フックにようこそ! 今回のテーマはドラマティックな戦闘である。変わった環境、予測できない状況、ことによればその結果がキャンペーンを左右するかもしれないような状況でPCを戦闘に迎え入れるようなアドベンチャー・フックだ。これらは巨大な悪漢、あるいは名無しの雑魚の群れなどと組み合わせても、キャンペーンのクライマックスを飾る戦闘として上手く働いてくれることだろう。そして何より重要なことに、これらはエベロンの持つパルプ・アドベンチャーの雰囲気を否が応にも盛り上げてくれるように考えられているフックなのだ。
山中深くにある彼の研究所で、英雄達が倫理観の欠けたマッド・アーティフィサーを追い詰めたその時、彼らはアーティフィサーが自分の体に奇妙な機械を接続するのを見た。管から送られる液体は彼の手足を循環し、肩から覗くピストンは体内で上下動を繰り返す。彼が一歩を踏み出すごとに、筋肉に埋め込まれた金属がうねり、震える。その唇は微笑みながら呪いの言葉を呟き・・・そして、彼は成長し始める。筋肉が膨張し、頭が膨れ上がり、胴の半ばには謎のスイッチ、そしてその肉体には整然と配置された無数の魔法兵器が出現する。彼はパーティを攻撃する――ワンドのようなパーツが火を吹き、マジックミサイルを放つ。肩に取り付けられた石弓には触手が自動的にボルトを装填し、次々と発射する。胸のパネルが開いたかと思えばそこからは炎が吹きだす。戦いは短く、破壊的なものであるべきである。アーティフィサーは戦闘中も長いホースを引きずり、魔法ジェネレーターを動かす酸性の水溶液で一杯のタンクを装着している。彼の成長と強化は不安定なものであるべきである――彼は余りにも多くの実験を彼自身に施し、それを完全にコントロールすることが出来ないのだ。
きっかけはなんだったのだろうか? シャーンの一部で謎の停電ならぬ停魔力によって灯火が消える事故が起きていたのだろうか? 複数のウィザードから強力な薬品が盗み出されたのか? 地方の村で、山の中から身の毛もよだつような笑い声がたびたび聞こえたのかもしれない。
戦いの後には何が起こるだろう? PCはアーティフィサーの研究目標、或いは何故このような改造を行ったかと言う理由を確かめなくてはならないかもしれない。あるいはアーティフィサーの肉体に組みこまれていた重要なパーツをそれを必要としている街に返還することになるかもしれず、アーティフィサーが謎の水溶液の実験に供した犠牲者(誘拐された子供)を解放し、家に送り届けてやらなくてはならないかもしれない。
戦いはブレランドのダガー川沿いにある高級魚料理レストラン、「サルガンドロの店」で突然に勃発した。サルガンドロには4人用丸テーブルが20、8人用丸テーブルが6あり、それぞれのテーブルにはリネンのテーブルクロスが掛けられ、完璧なセッティングがなされている。台所には大きな焼き網と薪が赤々と燃えるオーブンが二つあり、訪れる客に舌鼓を打たせる料理を提供している。ダガー川に面した壁は天井から床まで窓になっており、客は川が7,8フィートの小さな滝を流れ落ちる様を楽しむことが出来るし、よりロマンチックな雰囲気が欲しいなら張り出しに設けられた特別席で雰囲気を盛り上げることも出来る。戦いはテーブルからテーブルを飛び移って行われるかもしれないし、台所や地下の小さな収納スペースにまで及ぶかもしれない。レストランの中央にはダガー川を再現した小さな水族館――直径10ftのガラスの水槽の中に魚、砂利、川底の泥、さらにはビーバーが寝床にするような川藻まで再現した手の込んだそれがある。悪漢がこれを破壊するならレストラン内部の地形はず異聞と様変わりするだろう。まず最初に小石まじりの水が勢い良く流れ出し、冒険者たちはずぶぬれになりながらナプキンの浮いた水に腰まで使って戦うことになるだろう。他には野生のヘラジカの角から作られたシャンデリア、全てのテーブルにともされた蝋燭、網にかかった魚を模した壁の飾りつけ、そして誇らしげに飾られたダガー川における店主の釣果などが戦闘で重要となるかもしれない。
きっかけはなんだったのだろうか? サルガンドロのコック長である彼の兄弟の庇護を求めるべく、ジャングル・ボーイズのローグがここに逃げ込んだのか? 夕食を取っていた客が川からいきなりサフアグンのスカウトに攻撃されたのだろうか? それとも翡翠爪騎士団が自らの秘密を暴こうとする学者を襲撃したのか?
戦いの後には何が起こるだろう? 英雄達は掃除を手伝う羽目になるだろうか? はたまた怒髪天を突くオーナーに追いかけられる羽目になるかもしれないし、感極まった美女の抱擁(ひょっとしたらその先も)を受けるかもしれない。一方悪漢はバルコニーから川に飛び込み、小さな滝の泡立つ深みで謎の消失を遂げるかもしれない。
英雄達は埃だらけの地下墳墓でかつての貴族であるオルムストイ家の遺体を見つける。奇妙なことにオルムストイ家の者達は皆立ったままであり、甲冑を身につけたまま埋葬されているものもいる。PCたちの一人がほこりに埋もれたケーブルにつまづいたとき、地下室の壁で何かのメカニズムが作動し、強力な魔法の仕掛が動き始める。天井の鉄の格子の中で青い宝石は光を放ち、オルムストイ一族の肉体にかりそめの命を与える。勿論、侵入者を目の当たりにして彼らが幸福を感じるわけも無い。結果として肉を持つゾンビとの戦いが始まり、点いたり消えたりを繰り返す気まぐれなエヴァー・ブライト・ランタンやオルムストイの窒息性の塵、顎をカチカチ鳴らす甲虫の群れ、さらにはワイヤーと歯車の仕掛罠、何十年も生き続けているリヴィング・スペル、事によると人の生命を喰らい尽すワイトと化したオルムストイの女家長までもが現れるかもしれない。
きっかけはなんだったのだろうか? オルムストイの一人と一緒に埋葬された小物を取り返すためのちょっとした依頼だったのだろうか? 地下室に眠る強力な青い宝石の情報を求めたのだろうか? それともシフターの墓泥棒を追って、彼らの美術品密売ルート調査のためにここにやってきたのだろうか?
戦いの後には何が起こるだろう? この待ち伏せは墳墓の下に広がる更に深い地下を出現させるきっかけに過ぎないのだろうか? まだ生き残っているオルムストイの親族は損害賠償の訴えを起こしたらどうするべきだろうか。考古学的な遺物のコレクターが、遺体を特定するために君達に接触してくるかもしれない。
英雄たちの後援者がサイアリであった地域の東端にある、戦争で破壊された人気の無い刑務所を調査するように依頼し、すぐにチュラーニ氏族がここを諜報活動の拠点としていることが明らかになる。訓練を受けた暗殺者であるか否かを問わず、後援者が望むならPCたちに選択の余地はない。門をくぐった途端、戦闘が始まった。これは位置取りと間合いに重きをおいた戦闘である。鉄のかんぬきのかかった扉や門、鍵のかかった障害物は移動、そして呪文の射線を妨害できる。チュラーニのエージェントの大半はゲートを解放出来る合鍵を持っているが、砦は外からの攻撃に対する準備が完全でなく、多くの扉や門は鍵がかかっていないままで放置されている。簡易寝台と小型トランクにはチュラーニの鋭利な短剣とスクライングのための小道具が隠されている。チュラーニの影のマークがもたらす暗闇の中の戦いに備えるため、パーティは光の呪文を必要とするかもしれない。
きっかけはなんだったのだろうか? パーティの後援者を装っている何者かの罠? フィアラン氏族がいとこたちの情勢を探るための捨て駒にされたのか? 息子の死を悲しむ親は、彼の遺体がまだ刑務所の中にあると信じているのかもしれない。
戦いの後には何が起こるだろう? PC達がチュラーニの比較的小規模な分隊を蹴散らし、エルフたちを追撃するだろうか。それとも完全な暗殺者の砦に出くわして、情報を集めて撤退するのか? 戦いは隠された脱出用の飛行船で再開されるのか? それとも、刑務所の拷問部屋の前で最終的な決着をつけるべく敵のボスがPC達に挑戦してくるだろうか?