Steal This Hook! 09/13/2004

謎の消失

ダグ・ベイヤー


 

「スティール・ジス・フック!(このアイデアを盗め!)」にようこそ。ここはエベロンにおける冒険のアイデアを提供するコラムである。このコラムはDMであるあなたのために、よちよち歩くアイデアの群れを引き連れてやって来る。さぁ、手を突っ込んで好きなだけかっさらっていきたまえ! あるいは君はえり好みが激しい、ナプキンを首にかけた、はらぺこの王様だ。そしてこの記事は湯気を上げる肉汁たっぷりのご馳走を山盛りにした大皿である。さて、我慢できるかね? 勿論そんなわけは無いだろう! 料理が気に入らなければ足元の犬にくれてやりたまえ。毎回の皿の上にはあなたをおなか一杯にする幾つかのアイデアと、一口サイズのちょっとしたアイデアを盛った小皿が用意されている。

「スティール・ジス・フック!」には毎回それぞれのフックを結びつけるお題がある――丁度、シェフがコース料理にテーマを設けて、それぞれに風味をつけるように。テーマは正統派ファンタジーからエベロン風スラプスティックコメディまでバラエティに溢れた物となるだろう。最初のテーマは何かって? よくぞ聞いてくれた! それではどうぞ、「謎の失踪」だ!

 

ある鍵のかかった金庫の場合

ある富豪の屋敷でエベロン・ドラゴンシャードその他の宝物の盗難が頻発している。タラシュク氏族の賞金稼ぎは事件を調査するためにPCたちを雇った。宝物は鋼鉄の扉で封じられた窓の無い石造りの金庫室に納められ、日夜を問わず警護されている。盗難は毎晩のように起こり、護衛たちは誰も見ていないし扉も開けてないと誓っている――宝物は、まさしく謎の消滅を遂げたのだ。秘術に長けた盗賊がテレポートを使用した? 野心的なエセリアル・フィルチャーの仕業? 金庫の下に誰かが秘密のトンネルを掘った? あるいは「盗難」そのものが真の犯罪から目を逸らす策略だったのだろうか――富豪が手に入れた宝物は全て幻影で、単に呪文の持続時間が終了したから消えたに過ぎないとしたら? 英雄たちはこの謎を解き明かすために、法廷の技を活かす必要があるだろう。

 

エルデン・リーチの家出人

冒険者に対してエルデン・リーチのタワリング・ウッドに程近い農家から行方不明の娘を見つけて欲しいという依頼があった。少女が最後に目撃されたのは三日前であり、羊毛の分厚い外套と二週間分の食料、そして骨董品の盾を持っていたという。調査によって、彼女の元に森語で綴られた手紙が届いていたことが明らかになるかもしれない――彼女はチャーミングなサチュロスに言い寄られていたのだろうか? 月を崇拝する未知のドルイド宗派に入信するよう誘われていたのだろうか? それとも、いたずら好きなフェイに誘拐されたのであり、森語の手紙や無くなった品物は捜査を混乱させるための欺瞞だったのだろうか? あるいは彼女の家族は暗い秘密を抱えているのかもしれない――彼女は、来年の収穫と引き換えに邪悪なドルイドに売られたのだ。英雄は少女を見つけねばならない。それも、できるだけ早くそうする必要があるかもしれない!

 

眼柄欲しいの誰だ?

カラシュターの学者が会議で出かけていた間に、彼のコレクションしていたビホルダーの眼柄が盗まれた。英雄の調査によってまず分かったのは、学者が犯罪に取り付かれているという事実だ。何かといえばPCの後をつけ、調査の間中、姿を見せずにサイオニックでPCたちの様子を監視する。その上、現場状況は複雑怪奇だ――正面玄関の扉は強力な顎を持つ何かに噛み砕かれ、木の床には鉤爪でえぐられたような跡があり、しかし、警報装置やガラスのケースの錠前は綺麗に解除されていた。そもそも眼柄のコレクションを誰が奪っていったのだろうか? カラシュターを異端視するシルヴァー・フレイムの清教徒派? ワンド、ないしエルドリッチ・マシンの材料として興味を持った、アイアン・ディフェンダーをつれたマッド・アーティフィサー? 召喚した飢えたデーモンに捧げる供物を探していた召喚術師? ビホルダーの眼があれば、目が見えるようになると信じ込んだ盲目の怪物の集団? はたまた、カラシュターの異形コレクションを破壊するために忍び込んだビホルダーとその従者?

 

消えたミイラ

シャーンの歴史博物館において"古代のガリファーの支配者"展が開催されている。展示品の目玉は最近発見された数世紀前のガリファー王、ブラダッシュ三世(Bruudash Third)の石棺である。しかし、博物館のガイドが客の前で石棺を開いたとき、そこには死体を保存するための麝香以外何も残されていなかった。地元の富裕な熱狂的愛好家が個人的コレクションに加えるために盗賊を雇い「ミイラ大強奪」を目論んだのであろうか? 何らかの呪いがミイラを塵にしてしまったのか? それとも最悪なことに、ブラダッシュ三世は自らは石棺を出て、その眠りを妨げた者たちを罰しに行ったのか?

 

ライトニング・レイルは一両少ない

ライトニング・レイルが定刻遅れでシャーンに到着する――車両が一両足りない状態で。列車の操縦士と保安要員は「濃霧を通り過ぎたときに寝台車が消えてしまった。前後に車両が連結されていたにもかかわらずだ」とショックを隠せない様子で説明する。シャーンで助けを求めるため、彼らは車両を再連結してここまでたどり着いたのだ。それは消滅したのか? テレポートしたのか? 車両に乗っていた人々の時間を止め(魔法で眠らせたか、或いは本当にタイム・ストップを使ったのかもしれない)、その隙に犯罪者たちが車両を奪っていったのか? 調査を進める内に、列車がロートを出発したとき、件の寝台車には最終戦争におけるブレランドの英雄、フォーヴ・ヤナー(Forv Yannar)が乗っていた(シャーンで講演を行う予定だった)事が判明するかもしれない。ヤナーの敵がその講演を妨害しようとしたのだろうか? ヤナー自身が注意を引いたり、或いは暗殺を避けるために失踪を演出したのだろうか? あるいは彼は最終戦争における貴重な遺物を携えていたのかもしれない。PC達は車両、あるいは乗客や貨物を見つけ出すことができるだろうか?

 

ミニフック

まだおかわりが欲しいって? ふむ、そういうと思って一口サイズのアイデアをいくつか用意しておいたよ。

 

編者注:1970年を思い出せないほど若いあなたの為に:この年、アビー・ホフマン(Abbie Hoffman:彼のことを知らないならググって下さい・・・そう、"彼"です)は「Steal This Book(この本を盗め)」と呼ばれる本を発行しました。これはD&Dやエベロンとは全く関係ないものの、無法者である所の我々は彼の本のタイトルをハイジャックすることにしました。アビーも喜んで・・・あるいは苦笑しながら認めてくれるでしょう。