Dragonshard 10/17/2005

コーヴェアのドルイド その2

キース・ベイカー


 

エルデン・リーチを越えて――東方のドルイドたち

ドルイドはコーヴェアに広く存在している。そして例えばヴァラナーのシヤル・マレインはシャドウ・マーチの門を護るもの達とは全く異なった伝統の元に育まれたドルイド文化である。エベロン・ワールド・ガイドとプレイヤーズガイドでは西方――エルデン・リーチとシャドウマーチに焦点を合わせたが、この記事では知られざる東方のドルイドの伝統を紹介する。タレンタ平原のハーフリングの"仮面の紡ぎ手"と、ヴァラナーのエルフたちの"馬の番人"である。

 

仮面の紡ぎ手(Mask Weavers)

ヴァラナーの戦士がその英雄的行為を再現することによって祖先の魂を自らに呼び込もうとしているのに対し、タレンタのドルイドは彼女を取り巻くあらゆる物に祖先の意志が介在し、人生のいたる所で影響を及ぼしていると考える。ドルイドは二つの世界の間の仲介者であり、人生の旅路において人々を導く案内人である。ハーフリングの信じるところによれば、人は死ぬとドルラーに飲み込まれ、そこから脱出してこの世に戻ってくるために戦わねばならない。ハーフリングはその戦いにおいて助けとなる二つの武器、自身の乗騎と仮面を持つ。ハーフリングの乗騎の魂もまた、死後ドルラーに飲み込まれ、そこでかつての主人と再び共に戦うことでこの世に戻るチャンスが生まれるというのである。そして仮面は彼ないし彼の乗騎――どちらが先に死んだとしても――の魂をとどめる力を持ち、騎手と乗騎の魂がドルラーに共に旅立てるように、やがて来るその日まで魂をこの世に止めておくのである。また騎手が新たな動物と絆を結ぶとき、かつての相棒の魂が仮面から抜け出し、新たな肉体の魂と合一するのだと多くのものは信じている。また戦士が打ち倒した敵の魂を自らの仮面に封じ込め、その力を我が物とできるような儀式が存在すると囁くものもいる。しかしそのような闇の魔法は術者を堕落させ、そうしたものが死後悪霊に変わってしまう、と殆どのものは言う。

タレンタのドルイドの第一の義務は部族の人々に精霊の仮面(下のコラム参照)を作る手伝いをすることであり、その為ドルイドはしばしば"仮面の紡ぎ手"と呼ばれる。他にもドルイドはきわめて重要な多くの役割を持っており、例えば病人と負傷者の治療や、クローフットやファスティシュと言った遊牧民が頼りとする獣たちを見つけ調教するのを助ける事もそれに含まれる。加えて部族の外交官でもあり、その相手は他の部族であるか自然の精霊であるかを問わない。そして彼女は部族の口承を受け継ぐ語り部であり、それを次代に伝える歴史の保管者でもある。

仮面の紡ぎ手は互いに敬意を払うが、自身の部族の他のメンバーに対する忠誠心は常に優先される。仮面の紡ぎ手が後継者のいないままに死んでしまった場合、部族は他の部族に援助を求めたりはしない。その代わりに先祖の精霊が子供の一人に仮面の紡ぎ手の秘密を授けるのを辛抱強く待つ。仮面の紡ぎ手が自らの部族を離れるのは非常に珍しいことだが、主に二つの理由でそれが起こりうる。一つめは時折精霊が若いドルイドに部族の外に出るよう命じる場合である。それは彼が部族の中で行う仕事よりもはるかに重要な隠された運命を見つけるためなのだ。もう一つの忌まわしい理由は、部族が滅びてしまったときに生まれる。彼らを害した者は災いを受けると信じられており、部族間の争いが起こっても敵の戦士が仮面の紡ぎ手を害することは殆どない。結果として仮面の紡ぎ手は彼の部族の最後の一人となることがある。こうした孤児の大部分はより広い世界に新しい人生を求めて平原を後にする。これらのいずれの理由も冒険のバックグラウンドとしては役に立つだろう。仮面の紡ぎ手にとって重要な技能は交渉、治療、芸能(朗踊)である。エルデン・リーチの分派やセラニスとの結びつきは全くないが、タレンタのドルイドは《緑の歌い手》特技を取得するかも知れない。これは仮面の紡ぎ手の存在意義と伝統に基づく平行進化の反映の結果である。

なお、ドルイドだけが祖先の精霊を祀る訳ではない。タレンタの聖職者は通常ソヴリン・ホストのバリノールを信仰しており、ハーフリングはバリノールがかつてタレンタ平原の偉大な狩人であったと主張している。また信仰大全を導入しているならスピリット・シャーマンもタレンタの聖職者として適しているだろう。

 

タレンタの精霊の仮面(Talenta Spirit Masks)

精霊の仮面は仮面の紡ぎ手のドルイドにとって信仰焦点具となる。またドルイドは仮面に特定の精霊の祝福を与え、《その他の魔法のアイテム作成》特技を用いてブルズ・ストレンクス、フォクセス・カニング、キャッツ・グレイス、及び同様の呪文の力を込めることができる。タレンタ平原のハーフリング達は騎手と彼の乗騎が死んだ場合、中の魂をドルラーに送るために仮面を燃やさなければならないと信じているが、これはレイズ・デッドや他の魂に働く呪文が彼の魂ないし仮面に効果を及ぼすのを妨げる物ではない。このハーフリングの信念が何らかの真実を含むのかどうか、それはDM次第である。

魂喰らい(soul-eater)の物語は子供を怖がらせるために作られたお話である。しかしDMがこれらの伝説を話に絡めさせたいと考えたならば、冒険者たちは仮面を身に付けたハーフリングに出会うかもしれない。仮面にはデス・ネルの魔力が秘められ――あるいはもっと悪ければ、着用者の用いる武器の全てにキーパーズ・ファングの特性を与えるかもしれない!

精霊の仮面は他の宗教的アイテムと同様、タレンタ平原のハーフリングにとってはシンボルであると同時に、極めて重要な物である。ハーフリングの冒険者は偉大な英雄の失われた仮面を回収するために冒険に出るかも知れない。しかるべき儀式の元でそれを破壊しなければ、英雄の魂はドルラーを永遠に彷徨いつづけるのだ。

 

"馬の番人"シヤル・マレイン(Siyal Marrain, the Horse Watchers)

ターナダルは自然の力に大きな敬意を払う。エルフのもっとも偉大な英雄の多くはレンジャーであり、魔法的な絆で武力と自然を結び付けている。ゼンドリックの巨人との戦いにおいてエルフのドルイドたちは巨人の魔法に嵐と雷で対抗し、荒ぶる野獣を伴うエルフ軍の特殊部隊として活躍した。多くのドルイドが獣の姿で戦いに参加し、最高のターナダル・レンジャーは強力な軍馬に変身したドルイドに跨って戦場を駆けた。それらの最も酷い戦いの一つではスラト・リーグの巨人ウィザードがこうしたドルイドに恐るべき呪いをかけ、彼らは動物の姿から元に戻ることが出来なくなった。ターナダルはこれらの偉大な自然の英雄の魂が彼らの子孫の中で生き続けると信じ、他の偉大な歴史上の英雄に対するものと同じ敬意を捧げている。ターナダルの騎兵にとって馬は単なる道具でも武器でもない。彼らは運命を共にする兄弟であり、ヴァラナーのレンジャーはそれらの乗騎との絆を強化する物として動物と会話する能力を非常に重んじている。典型的なヴァラナーのレンジャーは乗騎を動物の相棒としており、並外れたヴァラナー・ホースの能力は馬の祖先が彼らに導きを与えている印だと見る。現代においてアウェイクンが使えるドルイドは稀だが、それでも偉大な英雄の幾人かはアウェイクンした馬を駆っている。

ヴァラナーのドルイドは二つの役割を与えられている。第一に、エルフ馬の血統を管理すること。ドルイドは飼育所をまかされ、馬の育成や負傷した馬の治療を行う。これらのブラッド・ガーディアン(血統の守護者、または管理者)はワイルドシェイプを使用して馬の中に入り交じり、馬とエルフの間を取り持つのである。また騎手と乗騎の絆を築くのを助けもする。加えて、シヤル・マレインは戦士でもある。あたかも彼らの先祖が稲妻と炎で巨人と戦ったように、現代のドルイドはヴァラナーの戦隊において戦友とくつわを並べ、大自然の力を敵に叩き付ける。

通常馬の番人は動物使いと騎乗の技能ランクに最大までランクを割り振り、多くは騎乗戦闘とそれに関連する特技を取る。コンポジット・ロングボウは戦団の伝統的武器であり、騎射も一般的な特技である。

シヤル・マレインのドルイドはいかなるドルイド分派特技もとることは出来ないが、ドルイド呪文リストに追加の呪文を得る。1レベル:マウント、3レベル:ファントム・スティード、4レベル:スピリット・スティード。ドルイドが部族の伝統から離れたならばこれらの追加呪文は即座に失われる。

ヴァラナー・ホース

エベロン・ワールド・ガイド292ページにヴァラナー・ライディング・ホースが掲載されている。その高い移動力と敏捷力を別としても、ヴァラナー・ホースは普通の馬の10倍の寿命を生きることができる。ターナダルはこれを騎手から愛馬に染み込んだエルフの血液の成せるわざと考えている。平均的なヴァラナーの騎兵は何十年もの間親しんだ馬と共に戦いつづけ、二者の間には非常に強い絆がある。彼の愛馬が殺害されたなら、ヴァラナーは相手が誰であろうと必ずや復讐を遂げるだろう。

ヴァラナーがコーヴェアにやってきて以来、ヴァダリス氏族のメイジブリーダーはメイジブレッドアニマルの血統を更に改良するためにヴァラナー・ホースを入手しようとした。これまで多くのヴァダリスの男爵がメイジブレッド・ヴァラナーホースの生産を夢見てきたが、それが実を結んだことは一度もない。何十年にも渡り彼らは多くのヴァラナー・ホースを入手したが、未だにヴァダリスの飼育場でヴァラナー・ホースが生まれた事はない。繁殖能力に問題があるようにも、また何らかの魔法の悪影響の元にあるようにも見えないし、チャーム・アニマルで交配を強要したとしても、ヴァラナー・ホースの特性を欠いた普通の馬が生まれるだけなのである。ヴァダリス氏族の賢者はこの不思議な現象に様々な理由をつけようと試みてきた。ヴァラナー・ホースの高い能力はエアレナルにある強力なイリアンの顕現地帯に関係するというものもいれば、彼らは殆どの馬に不妊処置を施し、ごく少数のみを種馬として保存し、スパイと盗賊から保護するためにどこかに隠して守っているというものもいる。第三の理論として、ヴァラナー・ホースの能力はエルフの祖先の霊との絆による説があり、それによればいかにヴァラナー・ホースの血を引くと言えども、ブラッド・ガーディアンによる祝福なしにこれらの賜り物を得ることは出来ないというのである。これが真実であろうとなかろうと、ヴァダリス氏族はこの障害を克服することを諦めていない。もし冒険者がこの謎を解き、ヴァラナー・ホースの繁殖に成功する鍵を手に入れたならば、ヴァダリス氏族はそれに対していかなる報酬も惜しまないだろう!

 

ヴァラナー・ウォーホース

大型サイズの動物
ヒットダイス:
4d8+16(34hp)
イニシアチブ:+3
移動速度:90フィート(18マス)
アーマークラス:15 (-1サイズ、 +3【敏】, +3外皮), 接触12, 立ちすくみ12
基本攻撃/組み付き:+3/+11
攻撃
:蹄=+6近接(1d4+4)
全力攻撃:蹄(×2)=+6近接(1d4+4)
接敵面/間合い:10フィート/5フィート
その他の特殊能力:戦う乗騎(Combative mount)、鋭敏嗅覚、夜目
セーヴ:頑健 +8,反応 +7, 意志 +4
能力値:【筋】 18, 【敏】 16, 【耐】 18, 【知】 2, 【判】 16, 【魅】 10
技能
:跳躍 +26, 聞き耳 +6, 視認 +5
特技:持久力、疾走
出現環境:暑熱/平地
編成:家畜
脅威度:2
宝物:なし
属性:常に真なる中立
強大化:5−9HD(大型)
レベル調整値:――

殆どのヴァラナー・エルフは戦闘用に訓練されているとは言えライディング・ホースに乗る。しかしながら、真のヴァラナーの軍馬の血統もまた存在する。そうした乗騎は決して金で手に入れることはできず、エルフたち自身にとってすら望めば手に入るようなものではない。ヴァラナー・ウォーホースを求める戦士はまずシヤル・マレインと馬そのものに対して自らの価値を証立てねばならないのだ。ヴァラナー・ウォーホースは騎手に対して猛然たる忠誠を尽くし、他種族の騎手を受け入れるくらいなら自ら死を選ぶ。しかし馬の番人達は過去何回か、ヴァラナーに対して多大な貢献をした他種族のものに、こうした軍馬たちとの絆を作るための手助けをしたことがある。

ターナダルのドルイドは動物の相棒として4レベルでヴァラナー・ウォーホースを選択することができる。ウォーホースは騎手を乗せている間普通に闘うことができるが、通常のウォーホースと同じく、騎手が乗騎と同時に攻撃するには騎乗チェックに成功しなくてはならない。

戦う乗騎(Combative mount)(変則):ヴァラナー・ウォーホースの騎手は常に+2状況ボーナスを騎乗判定に得る。ヴァラナー・ウォーホースは軽装、中装、重装鎧に習熟しているが、ヴァラナーは滅多に重装のバーディングを用いない。

運搬能力:ヴァラナーウォーホースは300ポンドまでが軽荷重、301-600ポンドまでが中荷重、601-900までが重荷重である。ヴァラナー・ウォーホースは4500ポンドまでのものを押し引きする事ができる。