Dragonshard 10/17/2005

コーヴェアのドルイド その1

キース・ベイカー


 

エベロン・ワールド・ガイドはドルイドのための多くのオプションとそれにより得られるゲーム的な利益、ドルイドの信念によって統治された国家であるエルデン・リーチを提示している。しかしこれらのオプションが新たな疑問を招く。それぞれの分派はどれほどの広がりを見せているのだろうか? ドルイドならばこれらの分派のどれかのメンバーでなくてはいけないのだろうか? 自然の化身の能力を用いると、ドラゴンマークはどうなるのだろうか? この記事ではドルイドに纏わる種々の問題を紹介し、加えてエルデン・リーチ以外に存在するドルイド――ヴァラナーのブラッド・ガーディアン(血統の守護者)からデーモン荒野のサヴェッジ・ドルイド(野蛮ドルイド)まで――をクローズアップする。

 

分派の役割

エベロン・ワールド・ガイドでは5つのドルイド分派が紹介されている。森の番人、アッシュに属するもの、冬の子、緑を歌う者、門を護る者である。それぞれの分派には独自の目標、伝統、及び信念がある。門を護る者たちは自然に反する恐るべき存在から自然を守ろうとしており、冬の子らは自然が疫病と災害によって世界を浄化すると信じている。それぞれのグループには分派の教えに関連する特異な才能を反映した特技がある。ドルイドであるために分派のメンバーである必要はなく、分派のメンバーになるためにこれらの特技を取る必要もない。分派の一員であるということは信念とキャラクターの背景の話であり、あなたとあなたのDMが合意する限り、あなたはどんな分派とも関係を持ち、あるいは全く持たないでいる事ができる。あなたはキャラクターに例えば「エベロンは眠りながらもあらゆる生き物の目を通して世界を見ており、また雷は彼女の声である」と言った独自の信念を持たせる事ができる。現在の文明はエベロンが世界の為に立てた計画の一部であり、兎が巣穴を掘るように、人間は都市を築くことを期待されているのだと。あらゆるクレリックと同じく、あなたは信仰の為の支柱を心に持つべきであるが、特定の一つの宗教、あるいは分派や信念に身を捧げる必要はない。

エベロン・ワールド・ガイドでは特定のドルイド分派と関係ない特技も提示している。すなわち魔獣のトーテム、魔獣形態、トーテムの相棒の各特技である。加えてDMは常に適切な特技の習得を彼オリジナルの新しい分派のメンバーに許すことができる。例えばブレランドのキングズ・フォレストには「森の影たち(Shadows of the Forest)」として知られるドルイドとレンジャーの小さな共同体がある。森の影はエルデン・リーチのドルイド分派と何ら関係はないが、彼らの目的と手段は"森の監視人"に非常に似通っている。そしてDMはプレイヤーとの間に「森の影たちには森の監視人と何ら関係はなく、彼女がエルデンリーチに居たとしても"監視人"からの援助は受けられない」という理解のもとで《監視するもの》特技の取得を許すかもしれない。分派特技は特定のスタイルのドルイドの訓練を反映しており、その特定のグループのメンバーが取得を許可されるべきである。しかし、そのグループの一部でなくとも並行して同様の発展を遂げ、エルデン・リーチの分派と同質のものになっているならば、その同質の信念と教えを反映した特技もまた同質である筈だ。

 

森の影たち(Shadows of the Forest)

キングズ・フォレストはブレランド南東一帯に広がっている。この熱帯雨林は数百平方マイルの面積をもち、様々な珍しい動物たちの住処となっている。しかし何世紀もの間に伐採と産業利用により面積は減少しつつある。キングズ・フォレストは広大であり、ブレランドのナイト・レンジャーズ(騎士レンジャー)は密猟者と山賊に対処すべくパトロールを行っているが、森の奥深くには滅多に入り込まない。森林の奥深くには別の守護者がいるからだ。戦友たるディスプレイサー・ビーストと同様、影の如き捉えどころのない戦士たち。彼らこそ"森の影たち"である。

森の影たちは危険な魔獣の動きをコントロールし、そうした怪物達が森の辺縁部や交易ルートの近くをうろつかないようにしている。しかし彼らは木こりの伐採作業を妨害したり、王室の行事である"キングズ・ハント(King's Hunt)"に用いるものを含めた真っ当な狩人たちの仕掛けた罠を破壊したりもする。そのためナイト・レンジャーズの多くは影たちの活動に感謝しているものの、ブレランドの法によってこれらのドルイドは不法侵入者であり密猟者であるとせざるを得ない。

森の影は五つの分団(Band)に分かれており、それぞれ25人ほどのメンバーを持ちキングズ・フォレストで活動している。彼らは絶えず移動を続け、自然の中で生活するために生存技能を活用する。森の影たちの主張によれば、彼らは大自然の囁きに導かれて移動を繰り返しているのだという。時折この導きはドルイドを彼の分団から離れさせ、キングズ・フォレストの外へ、そして冒険者の道に引き込みさえするかもしれない。

森の影たちの大部分は人間とシフターからなるが、5つの分団の一つはノームだけで構成されている。この分派はディスプレイサー・ビーストと深い関係を持ち、これは魔獣のトーテム、魔獣変化、トーテムの相棒の各特技で表現される。彼らは隠密の達人であり、《Guerilla Warrior》特技(Heroes of Battle(未訳)より) かレンジャーを1,2レベル保有している。分派の用いるテクニックは森の監視人と同様であり、DMの裁量次第では《監視するもの》特技を取得できるかもしれない。

 

ドルイド語

全てのドルイドはドルイド語を話せる(このクラスの最初のレベルを取るときにボーナスとしてこれを取得できる)。これは何を意味するのだろうか? エルデン・リーチの"緑を歌う者"とタレンタ平原の"仮面の紡ぎ手(Mask Weaver)"、ましてや一度も他のドルイドと接触したことのない隠者が同じ言葉を話すのはなぜだろうか? 門を護る者たちがドラゴンによって教えを受けたなら、なぜ彼らはドラゴン語ではなくドルイド語を話すのだろうか?

ドルイド語は普通の言語ではない。あなたは森語を学ぶようにドルイド語を学ぶことは出来ないし、ディテクト・スネアーズ・アンド・ピッツを教授するように誰かに教授することも出来ない。ドルイドの最初の1レベルを習得するとき、あなたは様々な神秘を学ぶ。どのように動物と話すか、どのようにそれらを宥め、それらから身を隠すか、炎の秘密に触れ、接触によって肉体を癒す術を身につけ、植物に語りかけて敵を縛め捕らえる方法を理解する。これらの神秘はあなたのものであるが、ドルイド語は違う。多くのドルイドはこれこそ始原の言語であり、始祖にして世界たる中の竜エベロン自身の言語であると信じている。ドルイド語の碑文が山肌や流れる雲に刻まれていたと主張するものすらいる。これが真実であるか空想であるかはDMの決めることだ。

ドルイド語を話せるのはドルイドだけであるので、この言語は遭遇する他のドルイドに対する身分証明ともなる。コボルドに釜茹でにされようとしている時、ドルイド語での嘆願があなたたちの命を救うかもしれない。しかし、あらゆるドルイドが味方であるとは限らない。例えば平和を愛する隠者はアッシュに属するものや冬の子の破壊的な活動を軽蔑するかもしれない。ドルイド語は最低限の関係を保障するが、対立しているドルイドの動物の相棒を殺してしまったからと言ってその責任を免れうるような、固い信頼関係の証ではない。

 

ウォーフォージド・ドルイド

(ウォーフォージドについてはドラゴンシャードの「ウォーフォージド」1および2を参照)

多くの人々はウォーフォージドはドルイドになれないと考えている。人間の手によって作られた人造であるウォーフォージドが、自然といかにして絆で結ばれるのだろうか? しかし、ウォーフォージドは人造には違いなくとも「生きている」人造である。ウォーフォージドの体のかなりの部分は木の根と似た植物性繊維で出来ている。ドルイドの道に進むウォーフォージドは少ないが、中には自分の生物としての側面を調べ、自然との絆を強化しようとするものもいる。

ウォーフォージドのドルイドは多くの困難に直面する。《アダマンタインの体》及び《ミスラルの体》の二つの特技は金属鎧を着ているのと同様にドルイドの能力を阻害する。唯一役立つのは「Race of Eberron(未訳)」収録の《アイアンウッドの体》だけだろう。一方で明るいニュースもある。グッドベリーとワイルドシェイプによる治癒は双方ともに治癒の副系統を持つ効果ではない。従って、ウォーフォージドもこれらの効果からは完全な恩恵を受けることができる。

ワイルドシェイプはウォーフォージドのドルイドにとり驚異の能力である。それは生ける人造であるウォーフォージドの肉体の、無機物で構成された部位を血肉を備えた完全な生物組織に変化させるのだ。ワイルドシェイプを行っている間、ウォーフォージドはもはや人造ではない。あらゆる種族的な耐性とアイアンウッド製の体を含む装甲による鎧ボーナスを失い、リペア・ダメージも無効になるが、治癒の副系統を持つ回復呪文から完全な恩恵を受けるようになる。「Race of Eberron」ではウォーフォージド・ドルイドは依然として種族的耐性と鎧ボーナスを動物の姿において受け取るとあるが、これは正しくない。

今までのところ、特定の分派に加わったウォーフォージド・ドルイドは概ね森の監視人に惹かれているようだが、門を護る者の長老たちもこれら不死身の守護者に対して並々ならぬ関心を抱いている。

エルデン・リーチにウォーフォージドのドルイドが集まる一方、モーンランドで新たな分派が形成されているという"ゴミ漁り"や偵察兵からの報告がある。自らを「打ち砕かれた大地に仕える者(the Followers of the Broken Path)」と呼ぶこのウォーフォージド・ドルイドたちの小集団はモーンランドが蒙った痛手を癒し、この破壊された大地を癒すことによって自らの自然との絆を強めようとする一団である。モーンランドを旅する冒険者の一団は、彼らが世話する花咲き乱れる泉を発見するかもしれない。こうしたエリアはモーンランドで治癒の呪文が働かないというルールの例外となっている。そうでない場合でも彼らはグッドベリーで冒険者たちの傷を癒してくれるかもしれない。ただ好意に対しては、何かの形で返礼をしなければならない場合も多々あることは覚えておくべきであろう。彼らがモーンランドで為すべき事は多く、また排除すべき脅威にも事欠かない。

 

ドルイドとドラゴンマーク

ドラゴンマーク氏族は極めて商業的な性質を持つ組織である故に、メンバーがドルイドである事は少ないが、ヴァダリス氏族のメンバーは時折自然の呼びかけを聞く事があり、リランダー氏族のメンバーも風と水に強い共感を感じることがある。そして、この二氏族でなくともあらゆるキャラクターはドルイドの道を選ぶことができる。ならば、ドラゴンマークはドルイドの能力にどんな影響を及ぼすだろうか?

ドルイドがワイルドシェイプしている間、ドラゴンマークは体表に毛皮ないし獣皮の模様としてそのまま残る。そしてドルイドはワイルドシェイプしている間でもその全ての能力を使用することができる。しかし、ドラゴンマークは養殖できない――馬にワイルドシェイプしたドルイドが他の馬との間に子供をもうけたからと言ってドラゴンマークを持つ馬が生まれることは絶対にない。動物の姿で保有するドラゴンマークを見つけるには視認判定が必要である。基本難易度が15、これに動物のサイズとマークの大きさ(つまり等級)による修正が加わる。

例えば超小型生物で最下級マークであれば視認の難易度は31になる。

一方、ドラゴンマークを持つドルイドは「千の顔」の能力を使ってオルター・セルフ呪文を使ったかのようにドラゴンマークを隠すこともできる。

 

動物の相棒とテンプレート

クラス能力か特技などで明言されていない限り、ドルイドやレンジャーは動物の相棒にテンプレートを適用できない。プレイヤーズ・ハンドブックによれば動物の相棒は相棒としての特殊能力を除けば「その種の典型的なクリーチャーと全く同じ」なのであり、エベロン・ワールド・ガイドにおいてもメイジブレッド・アニマルを相棒にすることは出来ないと明記されている。ドルイドが動物の相棒を購入したり探したりすることはない。それは24時間の祈りに応えて大自然が授けてくれる贈り物なのである。故に、ドルイドはどこで儀式を行おうとも出身地ごとに一定の相棒リストの中から相棒を選択することができる。決して今現在いる場所ではない。相棒が今までどこにいたかではなく、あなたがどこでドルイドの神秘を修めたかということが重要なのである。ヴァラナー出身のドルイドは常にヴァラナー・ライディングホースを相棒として呼ぶことが出来る。対してデーモン荒野出身のドルイドは決してヴァラナー・ホースを呼ぶことは出来ないが、代わりに4レベルになればホリッド・ラットを呼ぶことができる――これこそ「クラス能力で明言された」テンプレートを持つ相棒の一例である!

 

エベロンにおけるリーンカーネーション

強力なドルイドには死んだものを生まれ変わらせる能力がある。この力をプレイで見ることは余りない。多くのドルイドは自然な生命のサイクルに敬意を払っており、加えて一般に冨には無関心な人種であるために、儀式に必要な貴重で高価な香油と軟膏を持っていることはまずない。しかし英雄が余りに不当な死を遂げるか、あるいは自然に対して大きな貢献をしている場合、ドルイドは彼の魂を現世に再び呼び戻すかもしれない。

以下の表は通常のそれと異なりチェンジリングとシフターを含んでおり、またエベロンにおける種族的な傾向を反映している。例えばオークはそのドルイド的な絆の強さゆえに転生の確率が高くなっている。あなたはウォーフォージドとして転生することは出来ない。しかし、ウォーフォージドのキャラクターが転生することはできる。カラシュターがリストにないが、カラシュターの魂が人間に転生するとそのキャラクターはカラシュターになる。それ以外の生物として転生したカラシュターは彼女の持つクォーリの魂との絆を失う。これは深刻なトラウマを作るかもしれない。

D100 種族 筋力 敏捷 耐久
1−3 バグベア +4 +2 +2
4−8 チェンジリング      
9−15 ドワーフ     +2
16−22 エルフ   +2 −2
23−24 ノール +4   +2
25−31 ノーム −2   +2
32−37 ゴブリン −2 +2  
38−42 ハーフエルフ      
43−49 ハーフオーク +2    
50−56 ハーフリング −2 +2  
57−61 ホブゴブリン   +2 +2
62−71 人間      
72−73 コボルド −4 +2 −2
74−78 リザードフォーク +2   +2
79−88 オーク +4    
89−98 シフター   +2  
99 トログロダイト   −2 +4
100 その他

ドラゴンマークを保有するキャラクターは転生後もそれを保持しつづけるが、それを子孫に伝えることは出来ない。したがって、嵐のマークを持つオークと出会うことはあるかもしれないが、それがオークのドラゴンマーク氏族を作ることはない。