Dragonshard | 08/08/2005 |
キース・ベイカー
リードラは神秘に包まれた国である。コーヴェアの殆どの人はリードラの正確な情報を知らない。曰く、あらゆるウィザードとソーサラーは殺される。曰く、ソーサラーが大陸を支配している。曰く、デーモンが大陸の支配者である。曰く、全ての街路に黄金が敷き詰められている。曰く、誰一人飢えるものがいないほどの豊かな国である・・・あるいは、泥と藁の小屋で人々が飢えていると。
エベロン・ワールド・ガイドを読んだあなたはインスパイアドの本質とドリーミング・ダークの目標を知っているはずである。しかし、その認識はコーヴェアの一般市民のそれとは大きくかけ離れている。人々はリードラに関して一体何を知っているのであろうか。リードラ人はあなたのキャンペーンでいかなる役割を果たすのか。そして、エベロンでもっとも捉えどころのない組織、ドリーミング・ダークをゲームの中でどのように活用すればよいのか? この記事はそうした答えの一助となるものである。
インスパイアドがリードラの支配を確立したとき、彼らはサーロナを閉じ、コーヴェアとの一切の接触を絶った。この日を境にリードラの文明化された地域ほぼ全てに対する占術の妨害が始まり、以降一千年間、リードラは外の世界から隔絶される事になる。これについて調べる冒険者は驚くべき数のウィザードと探検家がサーロナの秘密を知ろうとして発狂してしまった事実を知るだろう――彼らは恐るべき悪夢によって精神を破壊されてしまったのだ。リードラに向かおうとした船はあらぬ方向へ去り、秘密のベールの向こう側を覗こうとした探険家は一人も帰ってこなかった。リードラは攻撃的な行動は一切取らなかったが、それは外の世界に全く興味を持っていないだけのことであった。
何世紀も後、リランダー氏族とガリファー海軍の船がサンダー海とバレン海でリードラの艦と遭遇した。リードラ人はコーヴェアの人々よりはるかに前からゼンドリックとの航路を確立しており、ストームリーチを作った海賊商人達はリードラの船を相手に商売をしていた。ストームリーチにおいて彼らは香辛料、錬金術の溶液、織物、その他のエキゾチックな商品を扱い、貿易の基礎を築いた。外国人はリードラに入ることは出来ず、インスパイアドもガリファーの宮廷に大使を送ることはなかったが、小数のリードラ人が各地の港に住み着き、祖国との交易に従事していた。
ガリファーの崩壊と最終戦争がインスパイアドをリードラに呼び寄せた。戦争が始まって十年たったころ、五つ国の宮廷にインスパイアドの使節が現れた。美しく魅力的なこれらの人々は戦争で引き裂かれた王国に援助を提供した。適正価格で薬品を売ることでジョラスコ氏族に感謝され、彼らのカリスマと知恵に王と女王は感心した。彼らはしばしば中立の調停者としての役目を果たし、またリードラからの食料はカルナスの飢饉を救ったのである。ゆっくりと、しかし確実にインスパイアドと彼らのしもべたちはコーヴェアに浸透していった。
現在インスパイアドの大使はコーヴェアのあらゆる大都会と多くの都市に住んでいる。殆どの港には小さなリードラ人の共同体があり、リードラ語を話し故郷の簡素な服を纏った彼らを通りや波止場で見ることができる。リードラ人はおおむね物静かで品行方正だが、閉鎖的であり他人との接触を避ける。リードラの品物はコーヴェアでも一般的になりつつある。サーロナの木の根を原料としたヴィリンという飲料は疲労回復の効果があり、ジョラスコ氏族はリードラの薬草をしばしば治療に用いる。そして夢百合(ドリーム・リリィ)はその強い中毒性でコーヴェアの下層社会に蔓延しつつある。元はといえば患者に麻酔を掛けるための薬草に過ぎなかったのだが。
上流社会においてもリードラ人は勢力を得つつある。千年間秩序を保ち国力を蓄えていたインスパイアドは豊富な鉱物・農業資源を握っているのだ。リードラ人は五つ国の全てに対して最終戦争の戦禍から復旧するための寛大なる物資援助を申し出ている。これによって支配者達は彼らの面目を保つことができる――例えばカイウス三世としては、アンデールに援助を請うことに比べれば、インスパイアドの食料援助を受け入れることくらいどうということはないのだ。またクバーラのセバステス王はリードラからの軍事支援を受けている。インスパイアドはリザードフォークの攻撃から移住者を防衛するために、ニュースローンの周囲に守備隊を派遣したのだ。そして他の指導者達もそのひそみにならうかも知れない――再び戦争の足音が近づけば、アンデールはスレインやカルナスの強力な部隊から自国を守るためにリードラの支援を求めるかもしれない。恐らくは自殺行為であろうが、アーララ女王の眼にはそれがもたらすであろう利益しか映っていないかもしれないのだ!
また、なにも王や女王だけがインスパイアドと取引するわけではない。リードラの共同体はあらゆる所に根を張っている――ただ見えないだけだ。そしてリードラの大使とスタッフはそれらで活発に活動している。エキゾチックな魅力と賢明さを兼ね備えたこれらの来訪者はコーヴェアの上流階級の心を容易くつかむ。シャーンではジョラセッシュ大使がしばしばモルグレイブ大学で公演を行い、彼とその補佐官ヘルカシュタイは主要な全ての祭りと催しに出席する。インスパイアドは公平な部外者と考えられており、その見せ掛けの知恵と共感能力ゆえに多くの尊敬を得ている。そしてしばしばその地域の揉め事に関して調停者として働いたり、忠告を与えたりする。
君はどこまで知っているか?知識(地理)
知識(歴史)
知識(サイオニック)
知識(次元界)
|
コーヴェアの住人の殆どがアダールについて知っていることは、リードラについて知っている事より更に少ない。アダールは国家としてはゆるい結びつきしか持たず、大使館も持っていない。アダールの共同体はコーヴェアの大都市の多くに存在するが、普通のブレランドの平民はリードラ人とアダール人の、またスレイン国民とアダール人の区別がつかない。サーロナは様々な環境を持つ広大な大陸であり、コーヴェアの人間は「リードラ人」に共通するような外見的特徴を見つけることが出来ないのである。アクセント、衣装、習慣などから区別することは可能だが、知識(地理)技能か彼らの文化に対する理解がなければコーヴェアの一般人が彼らを見分けることはできない。
アダールの人間がリードラ人と同じくらい閉鎖的であるという事実が事態を更に悪化させる。彼らがドリーミング・ダークとの戦いにおいて助けを請わないのが不思議に思える向きもあるだろうが、これは彼らがダル・クォールとの戦いを個人的なものであると信じているからである。これに関しては「Race of Eberron(未訳)」で詳述する。
インスパイアドの大使がアダールで進行中の攻囲行動に関して質問されたならば、アダールの人々はリードラと戦うゲリラであると簡潔に答えるだろう。アダール人は危険な超常能力を持っており、かつてリードラ人に対してそれを使用したため、正当防衛として攻囲を行っているのだと。インスパイアドの考えからすればこれは紛れもない事実であるため、ゾーン・オブ・トゥルースやディテクト・ソウツには引っかからない。カラシュターはリードラの支配者と戦っており、カラシュターが勝てば彼らは(クォーリとインスパイアドのために存在する)今のリードラとその秩序を破壊するだろう。インスパイアドは自分たちの作った秩序を維持し、自分たちの作った伝統を守るために戦っているに過ぎない。
それに、例えカラシュターのPCがドリーミング・ダークの存在を世界に知らせたところで誰が彼を信じるだろうか? リードラ人は奇妙な異邦人であるが、これまで一度もコーヴェアに対して攻撃的な行動を取ったことはなく、それどころかコーヴェアの復興を助けてさえおり、加えて好意的、魅力的、寛大である。国王が一介の冒険者と有力な支援者のどちらを選ぶか、言うまでもない。
勿論より賢明な人々もいるだろう。それはまずPCの役割である。王が気づかない所でその脅威に気づき、いち早く行動するのだ。そしてPCが伝説的な英雄になれば、恐らく支配者達はより真剣に彼女の言葉を受け止めるだろう。要するに、どれもこれも冒険の結果次第ということだ!
普通のリードラ人はドリーミング・ダークに付いて一度も聞いたことはなく、ダル・クォールについても何も知らない。リードラ人は彼らの指導者が偉大なる過去の霊魂の宿る器であり、最も偉大で高貴な魂が転生のサイクルを経て肉体を超越した存在こそインスパイアドだと信じている。
更に、インスパイアド(リードラの支配者と大使たち)とドリーミング・ダークには、一般にいかなる直接的関係もない。彼らの義務はダル・クォールからの指令を果たすことのみである。ドリーミング・ダークのエージェントがインスパイアドの大使館に援助を要請することはできるが、恐らく要請はテレパシーかダル・クォール経由で成されるだろう。従って、大使館を直接その地域のドリーミング・ダークの活動と結びつけることは出来ないし、調べても証拠を見つけることはまず不可能である。
この徹底した隠蔽ゆえに、ドリーミング・ダークは敵役としてはもっとも使いにくい組織の一つである。彼らは心を操り、また人間に憑依して事を為す。彼らのエージェントは翡翠爪騎士団の従者であるかもしれないし、地下竜教団であるかもしれない(地下竜教団は彼らの崇めている存在についてあまり知らない事が良くある)。パーティが12の陰謀を叩き潰したとして、その時点でようやく、今までの陰謀全てはドリーミング・ダークの進める一つの大きな陰謀の一部に過ぎなかったと気づくこともあるだろう。それどころか黒幕であるインスパイアドをサイオニックの炎の中に叩き込み、一連の事件が大団円を迎えたとしても、その奥に潜むリードラそのものを引きずり出す事は出来ないだろう。一連の事件によって邪悪なインスパイアドが存在することは知れ渡る。しかしインスパイアドの大使はかの悪党とリードラ政府の間には全く関係がなく、彼の計画については一切知らなかった、とゾーン・オブ・トゥルースの中で堂々と主張するだろう。実際リードラ政府とドリーミング・ダークの間には直接の関係は一切ないのだ。
殆どのリードラ人がドリーミング・ダークについて何も知らない一方、この闇の組織に仕えるリードラ人のエージェントも存在する。インスパイアドの大使がこの組織と接触を持たないのと同様、これらの人間のエージェントもリードラの政府や大使館と一切の接触を持たない。これらのエージェントはインスパイアドの能力を持っていないが、クォーリの憑依する器("空の肉体"ないし"空の器")としての能力を持つ(ワールドガイドp276ないしプレイヤーズガイドp152参照のこと)。不注意な冒険者達が彼らがただの人間だと思って油断してくれればしめたものだ!
大都市の波止場を通る旅行者は誰でもリードラ人の共同体に出会う可能性がある。キャラクターはリードラの商人から何か買うかもしれないし、コーヴェアの犯罪者から共同体を守ろうとするリードラ人の自警団と衝突するかもしれない。また講演や揉め事の仲裁を頼むためにインスパイアドの大使の元を訪れるかもしれないし、逆に大使館の催しに名誉ある賓客として招かれさえするかもしれない!
コーヴェアとリードラの文化の差の詳述はソースブックに任せるが、プレイするに当たって重要と思われる幾つかの点を述べる。
これらはリードラ人の習慣のごく一部の例に過ぎないし、こうした習慣も地域と個人で異なる。しかし上手くいけばこれらはあなたのキャラクターを上手く動かすためのヒントを与えてくれるだろう。
リードラ人は怪物でもないしまた奴隷でもない。リードラは異なる文化であり、リードラ人の習慣は殆どの五つ国の住人にとって奇妙に思えることだろう。しかしリードラ人とその支配者であるインスパイアドが五つ国で恐れられることは殆どない。どちらかと言えば彼らは支援者として歓迎されているし、インスパイアドの美しさとエキゾチックな雰囲気が人々の興味を引いている。
リードラを出身地として選ぶのは一風変わった選択である。殆どのリードラ人は彼らの故国が楽園であり、犯罪と偽りから無縁の平和な国であると考えている。またコーヴェアの人々はインスパイアドの導きを得られない混沌とした民であって、暴力的かつ精神的に未熟な振る舞いをする人々だと見なしている。インスパイアドの役に立つためとは言え、コーヴェアで貿易に従事するのは彼らにとって恐ろしい運命であるのだ。だとしたら、リードラ人はなぜ野蛮人に混じって、それも冒険者のような不安定な人生を送らねばならないのだろうか? 以下はその一例である。
追放された反逆者:インスパイアドはプロパガンダと人心操作を武器として用いる。しかし、知るべきでなかった秘密を知ってしまうものは常に存在する。ある者はカラシュターを信じるようになるし、またある者はダル・クォールの支配者に心からの軽蔑を抱くようになる。あなたはサイオンだろうか? だとしたらおそらく君は最初ドリーミング・ダークのエージェントとなるべく召集されたが、彼らの本質を知り叛旗を翻したのだろう。君が自分の知った真実を同国人に納得させることは不可能だし、そうするのであれば彼らは君がフィーンドに乗っ取られ、彼らを悪の道に誘い込もうとしているのだと考えるだろう。しかしインスパイアドについて君が知っている事が間違っていたのであれば、コーヴェアの民について知っていることも間違っているはずだ。彼らの中に高貴な精神を見いだす事だってできるだろう。そして恐らく君はその、死ぬまで終らない戦いにおけるかけがえのない戦友を見つけるはずだ。
スパイ:ダンジョンマスターの許可があればドリーミング・ダークの"草"(スリーパー・エージェント)となることもできる。君は人間だが、夢の中に訪れ指示を与えてくれる後援者――すなわちクォーリの魂――がいる。ドリーミング・ダークはPCとその素質に興味を持っているのだ。当面は君と彼らとの絆を強め、君の技能を育てることになっているが、そのうち直接の指示を受けることになるだろう。そのうちいくつかは君には意味のわからないものであるかもしれない。恐らく君はドリーミング・ダークの大いなる目標の為に役だつよう、パーティを動かしているのだろう。
このオプションは細心の注意を払って使用されるべきである。あなたが仲間と戦うように命令されれば、あなたはパーティから抜けなければならなくなるかもしれない。DMと事態について議論し、先の展開に対する合意を必ず作っておこう。取るべき選択の一つは、君がドリーミング・ダークについて知るにつれ反感を抱いていき、ついには反逆者となる道である。二番目に、直接パーティの目標と相反する命令は決して下されないという選択もある。DMの腹案次第だが、例えばドリーミングダークはコーヴェアに直接行動を起こす前に数世紀の準備期間を持つことにしたのかもしれない。また彼らにとってもロード・オブ・ダスト、翡翠爪騎士団、地下竜教団、また他の世界を脅かす勢力はいずれも敵であり、敵の敵が味方となりうる状況が生まれるのかもしれない。
伝道師:リードラはコーヴェアの戦災復興を援助している。物質的な援助(適切な価格で)に加え、彼らは多くの善意の人材を派遣した。君は同国人の多くよりも外交的であり、未知の人々に対しても物怖じしない。君はコーヴェアの人々に哀れみを感じており(インスパイアドという偉大な指導者を持たないのは不幸なことだ)、彼らを助ける方法を捜し求めている。彼らが犯罪者を逮捕して秩序を確立するのを助けよう。このような問題がリードラにはなぜ存在しないのか説明し、行動で彼らを勇気付けるのだ。君の導きと教示により、仲間の何人かはまるでリードラ人のように立派に生まれ変わるだろう!
加えて、リードラ人をプレイする時はバックボーンにかかわらず以下のことを念頭に置いておくこと。
コーヴェアは野蛮な土地である:戦争、組織犯罪、炎を崇拝する教会、拝金主義のドラゴンマーク氏族。インスパイアドを崇拝しているか叛旗を翻したかに関わらず、君はコーヴェアが混沌と災厄の地であると未だに考えているだろう。
彼らは人ではない:リードラの住人は殆どが人間であり、リードラ出身者は人間以外の人型生物は奇妙かつ信頼できない存在だとごく自然に感じる。チェンジリングのような変身生物やウォーフォージドのような魔法的存在は特にだ。最悪なのはカラシュターで、君はリードラ人としてカラシュターがインスパイアドを滅ぼしたがっているのを知っている。カラシュターは悪霊の力を受けた危険で信じる価値のない存在である。カラシュターの言を信じてはならず、反対できるものならそれに反対しなくてはならない。
魔法は危険である:サイオニックは己のうちから湧き上がる力であり、意志と想像力のパワーである。しかし秘術及び信仰魔法はフィーンド及びデーモンとの取引により生まれる力である。呪文使いは自分で何をやっているか理解しておらず、これらの力によって自分の精神を危うくしているのだ。ウィザードやクレリックのいるパーティに参加することはできるが、その場合でも君の考えをはっきり述べて、力を振るう際に用心深くあるように警告すべきである。
インスパイアドは賢明なる助言者である:コーヴェアの人々はインスパイアドに関して何も知らない。あなたがインスパイアドへの反逆者でないなら、あなたの指導者を中傷するどのような言葉も耳に入らないだろう。あなたの信頼は絶対のものである。インスパイアドは過去の最も賢明な魂であり、リードラを戦争から解放して平和の道を示した。彼らは楽園を作り上げたのだ。コーヴェアの人々は日常的に悪魔と取引して(=魔法を使って)いる。そんな人間がインスパイアドについて何か悪意をこめて語るとしたら、それは欺瞞でしかありえない。
身を慎み、徳を修めよ:リードラにはいかなる悪も存在し得ない。あらゆる悪徳はあなたの魂の成長に害を及ぼす。たかだか数時間の肉体的な喜びや虚ろな富を追求して永遠の幸福を犠牲にするなど、愚かな事だ。人生における最大の美徳は他者を助け、インスパイアドに仕え、社会における自らの役割を果たすことである。言うまでもないが、あなたがドリーミング・ダークのスパイであるなら、それには任務の為に人を騙し虚偽を述べることも含む(上手くやることだ)。しかし一般的なリードラ人は正直かつ勤勉であって、自分のことよりも他者のことを先にする。
リードラ人は共通語の代わりにリードラ語を話す。しかしコーヴェアに来る殆どのリードラ人は共通語をボーナス言語として、ないし技能ポイントを消費して修得する。
この記事を読んだあなたはリードラがユートピアであるという印象を持つかもしれない。人々は正直で勤勉で自分の境遇に満足している。戦争と犯罪にも無縁だ。ならば、インスパイアドがコーヴェアを支配した所で何か悪いことがあるのだろうか?
リードラ人は自身が奴隷であるとも圧制の下にあるとも信じていないが、それで事実が変わるわけではない。彼らは檻の中の家畜であり、檻の格子は伝統とプロパガンダで作られている。その檻を補強する金具はサイオニックによる人心操作とインスパイアドのために作られた宗教だ。犯罪がない? それは人々がそれを想像する力すら奪われているからだ。加えて実際にそれを行った人間が速やかにこの世から消え去るためでもある。もっとも、リードラ人がそれを肯定することは疑いない。そしてこの国には進歩や変化の余地が殆どない。今生の勤労によって来世の変化を求めるのがリードラ人の考え方なのだ(つまり、自分達から変化を起そうという気は全くない)。インスパイアドの言葉は絶対であり、この御言葉によってあなたは人生の慰めを得る。インスパイアドの下の世界は安定していて平和であり、人々は幸せですらあるかもしれない――しかし、自由は全くない。