Dragonshard 07/15/2005

魔法の達人

キース・ベイカー




メイジライトとアデプトはエベロンの世界で重要な役割を果たすが、本物のアーティフィサー、ウィザード、及びソーサラーは比較的稀であり、これらのクラスの高レベルキャラクターは更に稀である。だとすれば、ウィザードが17レベルに達したとき、どうやって呪文書に書き写す9レベル呪文を見つけることが出来るのだろうか? また強力な巻物とマジックアイテムはどこから来るのだろうか?

エベロンでもっとも強力なウィザードのリストを作るとすると、それだけで本が一冊できるかもしれない。アルゴネッセンのドラゴンはトウェルブが発見したそれよりも多くの、忘れられた魔法を知っている。ドラゴンとゼンドリックの巨人と多くの秘密を共有し、カニス氏族も複製できないアーティファクトがかの地には存在している。ラクシャーサには生まれながらの魔法の才能があり、アシュタカラの失われた図書館にはアンデールのウィザードを呆然自失させる驚異が眠っている。これらの大部分が時とともに忘れられるとしても、人類は歴史の中で自身の伝説を作ってきた。この記事は何人かの強力な魔術師を紹介するが、これはDMの一助とするための例示であり、基礎であるに過ぎない。

 

モルデン・フレッシュウィーヴァー("肉体を織るもの"モルデン)

トゥエルブは秘術の科学を探求する一方、そのメンバーは倫理的な規範を守ることを求められる。しかしいつの時代にも秘術の進歩の名の元にあらゆる犠牲は許容されると信じるウィザード達がいた。その一人が現在モルデン・フレッシュウィーヴァーとして知られるモルデン・ド・フィアランである。トゥエルブの学長としてモルデンは新しく、そして恐ろしい方法で変成術を進歩させようとした。彼はシャーンの"クローズド・サークル(『シャーン:塔の街』に記述あり)"の禁じられた研究にのめりこみ、デルキールの力を我が物にせんと考えるようになったのだ。トゥエルブの評議会は彼の研究成果の全てを封印したが、それでも人々は彼の研究が最終的に生み出した悪夢について囁きつづけた。当時多くのものはなぜ彼が処刑されなかったかという疑問の声を上げた。ある者は彼の一族の強力なコネクションのおかげだと言い、またある者はトゥエルブの上層部が彼の研究から成果を得ようとしたのではないかとまことしやかに囁く――たとえ、それが公表できないものだとしても。

真実はともかく王国歴797年、モルデンは「皮剥がれ」としてフィアラン氏族から追放された。30年後、ブレランド西部の今ドロアームとして知られている地域に闇の塔、モルデンの新しい研究所が存在するという噂が流れた。それから二世紀の間、彼は外界との連絡を一切絶って邪悪な実験を続けているのだと言う。塔の周囲には彼の創造した恐るべき怪物達が無数に蠢き、その要塞の中には更に恐ろしいものが潜んでいるのだと。

モルデンがドーターズ・オブ・ソラ・ケルと同盟を組み、ハグ達は彼の生物兵器と引き換えに知識と資材を彼に提供しているというものもいる。しかし、ハグとウィザードとの間に単純な休戦協定があると考えることも出来るだろう。彼が自分の恐るべき被造物を大人しくさせておく限り、ハグたちもモルデンを放置し続けるのだ。

現在モルデンは438歳、エルフとしても高齢である。しかしトゥエルブの中にはモルデンは自分に実験を施したと考えるものもいる――リッチではないが、その静脈にドラゴンとトロールの血液を注入し、もはやいかなる意味でもエルフではなくなっていると。他にもモルデンはもはや弱った老いぼれに過ぎないが、決して人前に姿を現さず、その恐るべき生体兵器の軍団を通して自分の意思を伝えるという者もいる。パーティがモルデンと直接会う事を望むなら、DMはモルデンが本当に怪物なのかどうか決めておく必要がある――実際に会えるかどうかは別にして。

モルデンは生物の変化を専門とするエルフの18レベル変成術師である。ポリモーフ・エニィ・オブジェクト、シェイプ・チェンジ、クローン、ソウル・バインドなどがより低レベルの変成術と共に彼の書庫に眠っているだろう。DMがゲームに変成術の新しい呪文か新しいタイプのフレッシュ・ゴーレムを取り入れたいのならモルデンはうってつけだろう。モルデンの存在は世界に新しい生物が存在することの裏づけにすらなりうる。例えばあなたがアベイルが好きだとして、彼らがなぜ広い範囲で繁栄していないのか説明したくはないだろうか? 恐らく彼らはモルデンによって一年前に創造された種であり、彼らはモルデンの塔から逃れ、増え始めているのだ・・・。

モルデンに関してはエベロン・ワールド・ガイドの190-191ページも参照のこと。

 

”夜の女王”ソラ・ケル

ナイト・ハグはラクシャーサと同じくカイバーの最初の子供であり、世界の最初の時代に生まれた。しかし彼女らの数は非常に少なく、秘密主義者である上に彷徨うのは荒野と夢の中と来れば人の口に上らないのも無理はない。伝説で知られる僅かな例外の一つが恐るべきソラ・ケル、すなわちドロアームのハグたちの母である。ソラ・ケルには何百もの伝説があり、それらの多くは互いに矛盾している。ある話では彼女はエピック級の力を持つウィザードであり、別の話ではその爪だけで軍隊を引き裂く怪物である。ソラ・ケルについてもっともよく知られているところでは、彼女は神秘の知識を求めて多くの次元界を流離う旅人であり、力ないし狡知によってそれを手に入れるという。彼女がトラベラーと盟約を結んでいるというものもいるし、中にはトラベラー本人ではないかというものさえいる。少なくとも多くのトラベラーの物語で彼女について言及されているのは事実である。彼女の個人的な能力に関わらず、ソラ・ケルは殆どどんな呪文やマジックアイテムの源としても使える。次元界の向こうに隠された彼女のねぐらには棚一杯のスクロール、古の呪文が収められた書庫、忘れられた遺跡の場所を示す地図、次元宇宙の神秘に関わる伝承などが眠っている。

彼女が生み出した多くの物語にもかかわらず、一世紀以上に渡りソラ・ケル本人が目撃されたことはない。恐らく彼女は彼女の娘達に指令を伝え、その結果を見て満足しているのだろう。あるいは別の次元界に幽閉されているか、世界を揺るがすような呪文の開発にいそしんでいるのかもしれない。しかしハグが戻るか否かに関わりなく、その発見した秘密と貴重な成果は世界の向こう側に隠され、見つけ出されるときを待っている。

 

”石の王”オルラスク

デルキールは狂気のクリーチャーである。デルキールは肉ある生物をその存在ごとゆがめ、狂気に追いやる。しかし全てのデルキールが同じ訳ではなく、ゾリアットのもっとも偉大な支配者にはそれぞれの専門と固有のパワーがある。

石の王オルラスク。物語はメデューサ、バシリスク、及び他の肉を石にする魔力を持った全てのクリーチャーの創造主としてその名を称えている。ドロアームのメデューサはデルキールとのいかなるかかわりも否定するし、実際彼らは異形ではないのだが、門を護るものの記録によればカザーク・ドラールの戦いではメデューサ達はデルキールの側に立って戦ったという。彼らがオルラスクの被造物か、或いは単に奴隷であったのかは議論の余地の残るところであろう。オルラスクの要塞は生きた石でできており、カイバーの深層を徘徊する巨大なガーゴイルであるといわれている。

デルキールは優れて魔法的な生物である。オルラスクはウィザードではないが、いかなるウィザードも真似できないような術を操り、また同様のアーティファクトを作り出すことができる。キャラクターはオルラスクの作業場、作り出したアイテム、あるいはオルラスクその人に関する研究を通して新たな変成の秘密を学ぶことができるかもしれない――それは石像や肉を石にする呪文であったり、或いは全く新しくそして恐るべき石化の儀式であったりするかもしれない。同様の事は他のデルキールに関しても適用できるだろう。ウィザードは畏怖すべき百眼の王ベラシャイラのアーティファクトを研究することによってプライング・アイズを学ぶことができるかもしれないが、しかしその過程でより恐ろしいものを見つけてしまうだろう――例えば、ビホルダーの致命的な光線を発射するプライング・アイズ呪文のバリエーションとか!

 

”滅びの声” ジャザル・ダカーン

ダカーンのゴブリン帝国はウィザード魔法の伝統を持たない不可知論的文明であった。しかしそれでも魔法はゴブリン社会の一部であった。それがバードの魔法、ドルカラ(哀歌の歌い手)の歌である。史上最も偉大な哀歌の歌い手は六人の王を同盟させ、ダカーン帝国の礎を築いたジャザル・ダカーンである。伝説では彼女はただの一言で聴衆の心をつかみ、その絶叫は一軍を打ち負かしたとされている。その個人的な能力に加え、彼女は数多の強力なアーティファクトをも作った。その一つが"大いなる葬送歌ガルダ―"(エベロンワールドガイドp.270)として知られる巨大な角笛である。しかし、それですら彼女の偉大な作品群の一つにしか過ぎない。

ダンジョンマスターがキャンペーンに新しいバード呪文を取り入れたいなら、ダカーンの古の伝統は適切な手段である。バードはジャザルの古の歌の一つを再生させることを試みることができるし、ダカーンの哀歌の歌い手はホーン・オブ・ブラスティングからパニック・ドラムまであらゆる魔法の楽器を提供してくれるソースとなるだろう。

 

7つの魔法的な遭遇

1.ラークシャサはギャンブルを好む。パーティがアーティファクトを見つけた直後、ラクシャサがパーティを追って現れる。彼は件のアーティファクトを賭けたゲームないし技比べでパーティが勝つなら、ウィザードにフィーンドにしか知られていない強力な呪文を教えるかもしれない。勿論勝利したとしても長期的に見てどうなるかは判らない。ロード・オブ・ダストは常命のものに理解できないほど長期のスパンで陰謀をたくらむし、ラクシャーサにはその呪文をパーティに教える何らかの邪悪な理由があるのかもしれない!

2.石化の疫病が西ブレランドにゆっくりと広まっている。これはドーターズ・オブ・ソラ・ケルの仕業であるかもしれないし、ゾリアットからの侵入者による古代の兵器かも知れない。いずれにせよ、これに対抗する唯一の希望はカザーク・ドラールのはるか地下、オルラスクの生きた石の要塞にしかない。

3.英雄の親戚の一人がデイ・オブ・モーニングによって引き起こされた病によって苦しめられており、信仰魔法による治癒も役に立たない。神託によればモルデン・フレッシュウィーヴァーがこの病を回復させられると言う。英雄達はモルデンに会い、犠牲者を治療するように彼を説得するできるだろうか? 説得出来たとして、彼の要求する恐るべき代価を支払えるのだろうか?

4.古代遺跡を探検し、パーティはジャザル・ダカーンの失われた歌を記した一連の巻物を回収する。バードはこれらの巻物から新しい呪文を学ぶことができる。しかしそれらが部外者に冒涜されているのがわかれば、ダカーン族は怒り狂うだろう。そしてバードを黙らせるためにシャーラット・ケシュの暗殺者を送るに違いない。

5.モーンランドを通過する途中、パーティはリビング・スタチューたちの住む村に出くわす。これらのストーンゴーレムは外観と記憶の双方において死んだ村人の完全な複製であるが、彼らは自分たちの状態と周囲の破壊された状況に気づいていない。オルラスクはなぜこの村を再建したのだろうか。彼らをモーンランドに残しておいていいのだろうか。そして彼らをもとの石に戻すことはできるのだろうか?

6.モルデンは魔法を使って彼の塔に魔法使いの使い魔を誘い出し、それを人型の生物に変えて元の主人を殺させるために解放する。キャラクターの使い魔が消えたとき、パーティは彼女を手遅れになる前に助け出せるだろうか?

7.歳をとった老婆が彼女の娘を解放してくれとパーティに頼んでくる。彼女は若いソーサラーであり、夢の領域ダル・クォールに囚われの身になっているのだという。実は老婆はソラ・カトラであり、娘とはソラ・ケル自身のことである。ダル・クォールで幽閉されている一世紀の間にソラ・ケルはドリーミング・ダークの計画の多くを知った。しかしパーティは果たしてハグを信じることができるだろうか?