Dragonshard 05/02/2005

ラザー公国連合

キース・ベイカー




ラザー公国連合はコーヴェアの東岸に広がっている。ホアフロスト山脈の北東に広がる島々は暗く寒冷で、長い冬の間日の光がさすことは滅多にない。これらの島は多くの悪の物語の根源である。長いこと影の中で暮らしていれば、冷たい海の上を滑るように走る幽霊船や、山脈の中に隠れた恐るべきリッチの女王などを想像する事はさほど難しくもない。南に転じれば蒸し暑いジャングルがラザー島を覆っている。これらの土地は陸は恐るべき恐竜の住処であり、波の下には巨大なウミヘビが潜んでいるといわれている。極寒の北から熱帯の南まで、およそ人が暮らすには厳しい地域であるといえよう。

ラザーという名前はグリーンターン、オルガロス、およびケイプ・ファーを開拓したサーロナの探検家兼海賊からその名を取っている。その名声にもかかわらず、ラザーはこの地域を開拓した最初の一人でもなければ最後の一人でもない。この地域には二ダース以上の大きな島があり、驚くほど多種多様な人々がコーヴェア東岸に至った。例えばズィラーゴのノームの探検家たちはロルグハラン島(訳注:Lorghalen、ロングハランのことか?)はラザーよりはるか前に自分達が渡航に成功していたと主張する。またエアレナルの内戦から避難してきたエルフたちはファールネンという名前の凍れる孤島に安住の地を見つけ、アイアンルート山脈のドワーフとオークの移民はタンタマールとクリフスクレイプに拠点を築いた。そして何十回にもわたるサーロナからの人間の大移民――その大部分はリードラ帝国に追われた逃亡者たちだった――がラザーの後に続いた。これらの島嶼人たちは数世紀に渡り互いに行き来し、緩やかな共同体と共通の文化を生み出した。

その文化と種族は驚くほど多種多様だったにもかかわらず、現在の公国連合には未だにラザーの大きな影響を感じることができる。最初の海賊船団を組織し、ズィラーゴの商人や滅びかけたダカーン帝国の船に対して遠征を行ったのはラザーであった。ラザーは彼女の部下の中でもっとも優秀な船長たちにプレーラス(praelas)――リードラでは「公子(prince)」に相当する――の位を与え、自身は「公子の中の公子」を自称した。彼女はこの地域の普遍的な法の一つを確立したのである――すなわち、公子の称号は血統によって受け継がれない。布告により、ラザーの貴族はその艦隊の実力と指揮の能力によってその地位を得るとされた。もしそのどちらかでつまづくものが居れば、より強力なリーダーが彼の称号と領土を要求することができる、と。世紀を超えて、多くの公国が自身の伝統の中にこの習慣を取り入れてきた。例えばロルグハランのノームは公子になることを望む者達に機知のゲームと戦略のテストを課すし、ファールネンのエルフは公子に海軍力に加えて秘術的能力を要求する。

ラザーの公子たちは常に独立独歩であった。この地域の歴史は公子たちの不和の歴史でもある。強力な同盟はいくつか存在したが、一人の公子の下で島々が団結したことは一度もない。しかし大公を名乗る強力な支配者が少なくとも一人は常におり、この地位は通常その公子の艦隊の戦力を反映していた。従って、他の公子は普通大公に敬意を払うが、彼の言葉が法になるわけではない。大公が他の公子に何らかの要求を行うとしても、武力の裏づけなしにそれが実現することはない。

現在の大公はライガー・イル・ワイナーン、グリーンターンの公子である。賢明な外交官であり、才気溢れる指揮官であるライガーは多くの戦士の忠誠と公子の大部分の敬意を得ている・・・そうでない者達が今のところ、声を上げることはない。ライガーはスローンホールドにおける講和条約会議に公国連合を代表する使節を送り、そしていつか本当の意味でこの海の王としてこの国を統治することを夢見ている。

島の法

公国連合の住人はいわゆる法律には縛られない。その長い歴史にもかかわらず、公国連合はガリファーの法の元に統治されたことは一度もない。征服者ラザーの布告によればそれぞれの公子はその支配地域において裁判を行う権利と裁判官の任免権を持つと言うことになっている。その結果それぞれの公国で習慣や法律はかなり異なる。ライガー大公はリーガルポートで秩序を維持することに腐心しており、外国の使節と商人の為に安全な環境を整えている。しかしミカ公とクラウドリーバーズの支配するクラッグのクレズ港は部外者にとって非常に危険な場所であり、そこでは弱肉強食のストリートの掟こそが法律である。

ラザー人は独立独歩の気風の強い人々であり、海で公子に仕えはするが陸でこき使われることには好まない。殆どのラザー人は他の国の法に全くと言っていいほど関心を持っていない。ラザーの諺に曰く、「誰も海を所有できない」。そしてこの考え方が海賊の伝統を一層助長している。ラザーの海賊船長たちは、それが奪える物ならなんであれ、自分がそれを所有する資格を持っていると考えるのだ。略奪許可証(報復許可証)を手に入れるかどうかは、単に利便性の問題に過ぎない。ガリファーの増大する海軍力に対し、彼らはやむを得ず海賊行為を控えるようになったが、これも道義ではなく実利からそうしたに過ぎない。五つ国が最終戦争で弱体化し、多くのラザーの船長は祖先の道に立ち戻った。ラザー人が外国を旅するさい、彼らのこうした気性はしばしば揉め事を起こす。なんと言っても彼らは外国の王の法に縛られる必要性を感じないのだ。これらの混沌的傾向にもかかわらず、殆どのラザー人は自身の家族、友人、および同国人に対して非常に忠実である。一人の船員が口論の果てに仲間を殺したならばそれは全く問題にならないかもしれない。しかし外国人がラザー人を殺したならば、共同体全体が復讐にいきり立つかもしれない。友好と敵対は風次第で、それぞれの公国間の結びつきはゆるいものである。しかしよそ者に対しては公子が他の公子を守るために団結する。これはミカ公子のクラウドリーバーズのような略奪者にとってはこの上ない盾となっている――彼女を排除しようと五つ国のどれかが艦隊を派遣したならば、それは即座に公子たちの連合艦隊によって迎撃されるからだ。

権力は潮と同じくらい素早く移り変わるが、独立独歩の気風が強いラザー社会であるから、公子も絶対権力者と言う訳ではない。公子には大臣と治安維持の担当者を任命・解雇する力があるが、自分の領地とは言え一から十まで思い通りにできる公子と言うのはめったにいない。これら大臣など陸の官僚たちは船乗りたちとは多くの点で異なる階級であり、風向きに左右されない安定した人生を送る。

ラザー公国連合の慣習

水は公国連合の人々にとって生活の糧である。ラザーの子供は網を扱えるようになるとすぐ漁や海産物の採取を教えられるし、家にいるのと等しく船の上や水の中で過ごす。殆どのラザー人は水の近くにいるのを好む。海は自由であり、ラザー人は内陸深くでは海から隔離され捕らわれていると感じる。ラザー人は肉より魚やしょっぱい食べ物を好み、ラザーの船長は伝統的にサラスタ――サラスと言う海草から作る透明で強い酒――を嗜む。

ラザー人の先祖は多くの異なった種族と出身地を持つ人々の集合体であった。人間ならば非常に幅広い皮膚と髪の色を見て取ることができる。最初の移住者はサーロナのあらゆる場所、砂漠、ジャングル、平野などからやってきた人々であった。結果、ラザーの人々は全ての種族及び文化に対して寛容な傾向を持ち、言語に関しても多くの物を吸収している。例えばラザー育ちのドワーフはエルフ語が喋れなくとも、エルフ語の罵りや感嘆詞を使えるかもしれない。ラザーの西のほうの人間は主にリードラ語を学ぶ(これはインスパイアドの使うリードラ語とはアクセントが大きく異なるが、基本的には古サーロナの言葉である。オルガロスの人々はリードラ語こそ自らの言語であるとして、共通語はガリファーの言葉であると思っている。この一世紀でオルガロスの公子たちはインスパイアドとの強い結びつきを形成し、リードラ産の品物の多くがピリタールを通して取引されている。

ラザーのドレスは公国によって異なるが、しばしばこの地域の国際色豊かな伝統を反映する。他の衣服は海の荒れた天候と北国の寒さに耐えるために頑丈で機能的になる傾向がある。ラザー人は髪に非常な誇りを持っており、複雑に編みこんだ髪と身を飾る装飾品は男女共に一般的である。

特技

DMはゲームに以下の特技を追加できる。プレイヤーはこれらの特技が確実にDMのキャンペーンに適合するように良く話し合うべきである。

水泳の達人(Expert Swimmer)

あなたは魚のように泳ぐ。あなたは同じ種族の他のものよりはるかに長い間潜っている事が出来る。水はあなたの家のようなものだ。

前提条件:持久力、水泳4ランク

利益:耐久力一点ごとに3ラウンドの間息を止めることができる。また、息を止めるための耐久力判定において+4ボーナスを得る。水泳判定に成功すれば全ラウンドアクションとして地上移動速度で、移動アクションとして地上移動速度の半分で水中を移動できる。

生来の水泳移動速度を持つのなら、それは+10フィートされる。

通常:あなたは耐久力1点ごとに2ラウンドの間息を止めることができる。水泳判定に成功すれば全ラウンドアクションとして地上移動速度の半分で、移動アクションとして地上移動速度の四分の一で水中を移動できる。

老練な船乗り(Old Salt)

あなたは経験豊富な船員が持っている多くの技能を修得しており、熟練の船乗りと呼ぶに相応しい能力を持っている。加えてあなたは天候の変化に敏感である。

前提条件:職能(船乗り)5ランク

利益:平衡感覚、職能(船乗り)、縄使いの判定に+1ボーナス。加えて職能(船乗り)技能で天候を予測することができる。

通常:天候の予測には生存技能を用いる。

船の魔法使い(Ship's Mage)

あなたは船との超自然的な強い絆を形成する。あなたの呪文はこの船の上で用いられるとより強力な効果を生み出す。この特技を持っている呪文使いは船の乗組員として大いに歓迎される。

前提条件:職能(船乗り)2ランク、呪文学4ランク

利益:馴染み深い船にいるとき、あなたの発動する全ての呪文の術者レベルを+1する。加えてその船はあなたの用いた呪文からは全くダメージを受けない。

あなたがその船になじむ為に、一週間をその船で働かなくてはならない。あなたは一度に一つの船のみになじむことが出来、他の船になじむか船を一月以上離れるとその船へのなじみは消えてしまう。

 

公国

ラザーには2ダースを超える公子が存在し、クラッグやラストポイントなどの小さい島は一人の公子の、それより大きい島や本土の海岸線は複数の公子の勢力下にあり、それぞれ要塞化した港や周辺の小村への統治権を主張している。

この記事では強力であるか珍しい公国をいくつか述べる。知識判定のリストにはPCがその公国のことを知るのに必要な難易度を挙げた。公国のリーダーは単にキャラクターレベルで決まるのではないということに注意。PCが公子の位を窺うのであれば、彼女は個人的な決闘で前の公子を倒すのではなく、公国の人々の支援と賛同を得、自分の艦隊を作ってその力を示す必要がある。公子に必要なのはキャラクターレベルでは無い、リーダーシップなのだ!

シードラゴンズ

リーダー:ライガー・イル・ワイナーン大公(秩序にして中立、人間の男性、レンジャー9)

本拠地:グリーンターンのリーガルポート

知識判定: 地理(難易度20); 地域(難易度10); 貴族と王族(難易度15)

20隻の船と多くの忠実な戦士を擁するシードラゴンズはラザー公国連合最大の勢力である。ライガー大公のリーダーシップの下でこの地域の安定に寄与しており、ライガーはかつて私掠船としてまた海賊として活躍していたが、近年はリーガルポートを整備し、東部の交易の中心としている。かつて大公はラザーを国家として認知させるためにスローンホールドで活躍し、またシードラゴンズは若き国家クバーラの信頼すべき同盟相手である――少なくともかの地でドラゴンシャードが採取できる間は。

ライガーは鋭い頭脳とカリスマを併せもち、刃におけるそれと同じくらい外交の技能において卓越している。彼は約定を守ることで名高いが、一方で不注意な言質は与えない。しかしながら彼はラザー人であり、自らの伝統――海賊行為を含むそれ――にも多大な敬意を払う。ビター海を航行する商人はシードラゴンズに代価を支払って保護を受けることができる。またライガーはリーガルポートの近くで敢えて海賊行為を働くものがいれば誰であれ容赦はしない。しかし、海賊行為を行うその他のラザー人をわざわざ探し出そうと言う気はまったくない。

ライガーが公子として最初に行ったことの一つはグリーンターンの土地をチュラーニ氏族に与えることであった。このチュラーニとシードラゴンズの同盟は大公の財産であり、もう一つの武器でもある。あるものはライガーがグレイ・タイドに備えるためにチュラーニ氏族を公国連合に誘致したのだという。確かに、誰かがチェンジリングたちの計画を打ち砕けるとしたら、それは影の氏族をおいて他にあるまい。

シードラゴンズには全ての主族とクラスのキャラクターが存在し、これはラザー公国連合出身のPCには良い背景となるだろう。シードラゴンズは秩序・中立の属性に偏っている。

クラウドリーバーズ

リーダー: ミカ・ロックフェイス公(混沌にして悪、女性のドワーフ、バーバリアン6)

本拠地: クラッグのクレズ港

知識判定: 地理(難易度25); 地域(難易度10)

クラウドリーバーズはクラッグ島を本拠にしている。彼らはドワーフ、オーク、ハーフオーク――伝統的にムロール・ホールドと敵対する種族――からなっており、それ故に海に出る共通の理由があった。クラウドリーバーズは野性的で行動が予測できず、暴力的で野蛮な行為に走る傾向がある。彼らはガリファー最盛期でさえ決して海賊行為をやめようとはしなかった。無論それには高い代償を払わざるを得ず、結果として彼らの勢力は大きく減退した。現在のクラウドリーバーズには高速船――その速度は多くのウィンドセイル(永続的なウィンズ・フェイヴァーを封じた魔法のアイテム)によって実現されている――のみで構成された六隻の艦隊がある。これらのマジックアイテムを用い、クラウドリーバーズは根拠地からはるか遠くにまで遠征し、エレメンタル・ガレオン船に匹敵する速度を出すことができる。通常彼らは五つ国の南岸とクバーラ、エアレナル、ダーグーン、ズィラーゴの船及び村々を餌食とする。それどころか時折ブレランドの定期航路に足を伸ばし、ストームリーチやトロランポートへ向かう船を襲うことすらする。クラウドリーバーズは船員の大部分が持っている暗視を最大限に活用するため、夜獲物を襲うことを好む。

ミカ・ロックフェイス公は攻撃的かつ荒々しい女性で、味方を奮い立たせ、敵を恐怖に陥れる不思議な力を持つ。彼女は自分がデヴァウラーによって祝福されており、海底に船を送るたびに新たな力を授かると信じている。その真偽は是非あなたの目で確かめて欲しい!

クラウドリーバーズは殆どが混沌のドワーフ、オーク、ハーフオークで僅かに人間がいる。殆どのクラウドリーバーズはウォリアーかバーバリアンであり、僅かにファイターとレンジャーがいる。多くの構成員はデヴァウラーを崇拝しており、献身の結果としてドルイドの能力を身につけるものもいる。そこからクラウドリーバーズ――雷雲を呼び、稲妻で敵の帆と船を破壊すると物語にも歌われた「雲の略奪者」――の名は生まれたのである。

グレイ・タイド

リーダー: ケル公(不明)(訳注:プレイヤーズガイドでは真なる中立のチェンジリング、ローグ6となっている)

本拠地: ラストポイント

知識判定: 地理(難易度25); 地域(難易度15)

チェンジリングは常にコーヴェアの人々の大部分からの疑いの眼差しを向けられてきた――時にはそれ以上の恐怖の眼差しを。1300年前、現在カルナス、サイアリ、スレインとして知られている地域の支配者はチェンジリング撲滅の運動を始めた。多くのチェンジリングが人間に紛れてブレランドかアンデールに逃げたが、その中にただ逃げ延びることをよしとしない一人のチェンジリングがいた。このケルと命名されたチェンジリングにはチェンジリングの国を作るというビジョンがあった。世界の果てにある楽園、人間の恐ろしい追及を受けずにチェンジリングが暮らせる国。彼は旅を続け、多くの家族に自身のビジョンを語って聞かせ、ゆっくりとエクソダスが始まり、そしてラストポイント島でついに旅は終りを迎えた。グレイ・タイドの壁を見つめ、彼はここに自分たちの国を作ると宣言したのである。

部外者でグレイ・タイド公国の全貌を知っているものはいない。幾つかの推定では五万人以上のチェンジリングがラザーにいるというが、それを証明する証拠はない。チェンジリングはラザーに広がり、公国連合の売春宿と劇場の多くは彼らによって運営されている。またガイド、通訳、調停者として、他の公子の船の雇われ乗組員としても働く。一部のラザー人は、チェンジリングが表に現れているよりもはるかに多くラザーの社会に潜んでいるのではないかと恐れているが、大部分のラザー人は彼らを海の上で兄弟と呼ぶことに何ら不安は感じていない。恐らく、コーヴェアのどこよりもチェンジリングが受け入れられているのがこのラザーだろう。

グレイ・タイドは設立以来ケル公によって統治されてきた。殆どの部外者は複数のケルがおり、彼のイメージを代々伝える家系によってこれを支えているのだと信じている。中にはラストポイントがキャビネット・オブ・フェイスと呼ばれる秘密結社の本拠地であるというものもおり、だとすればこれはこの島に隠されたもうひとつの秘密ということになるだろう。

グレイ・タイドには四隻の船があり、通常は海賊行為に従事しているとされる。しかし多くの噂があり、あるものはチェンジリングはグレイ・タイドに安全に入る方法を知っており、その中に大規模な船隊が隠されていると言う。また彼らは外見を変える事のできる船を開発しており、これによって他の公国の船のふりをして海賊行為を働いているのだという。これらが真実であるかどうかはDM次第である。

この国の住人は殆ど全てがチェンジリングであり、殆どは混沌・中立属性である。エキスパート、ローグ、バードが一般的ではあるが、どのようなクラスのキャラクターもありうる。

ブラッドセイルズ

リーダー: シェイン・タシル公(秩序にして中立、エルフ女性、クレリック7(ヴォルの血))

本拠地: ファールネンのケルン港

知識判定: 地理(難易度25); 地域(難易度15); 宗教(難易度30)

不死宮廷が死のマークを滅ぼそうとしたとき、ヴォルの血を引く全てのエルフが殺された。しかしヴォルの血統には血の繋がりのない味方も多かった。内戦が終ったとき不死宮廷は彼らの降伏を受け入れはしたものの、既にその居場所はエアレナルにはなく、彼らは新天地を求めてエアレナルを去っていった。これらの避難民の多くはファールネンの島に到達し、フィンガーボーン山脈の影に新たな故郷を築いた。今日多くのエルフがフィンガーボーンの孤立した集落で生活することを望むが、ほかのものはラザーの文化と海の人生を受け入れた。その中でももっとも大きな物がケルン港(ファールネン南岸中央)に築かれたブラッドセイル公国である。

エルフは魔法、弓術、及び木工に関する広範な知識をラザーにもたらした。ブラッドセイルのそれはラザーでもっとも素晴らしい船の一つに数えられる。エルフは秘術的な知識の全ての分野に興味を持つが、死霊術は特に重要である。ブラッドセイルの全ての船長はウィザード(死霊術師)かクレリック(ヴォルの血)のレベルを少なくとも1持っている。ファルネンはヴォルの血崇拝の中心であり、ブラッドセイル公国の殆ど全てがこの信者である。最終戦争の間ブラッドセイルズはカルナスの私掠船として活躍していたが、カイウス三世が翡翠爪騎士団を告発したのを受け、現在はもっぱらカルナスの船を襲うようになっている。また最近になってバージ港のダイアーシャークスと同盟を結んだ。

ブラッドセイルズはもっとも安定した公国の一つであり、シェイン・タシル公は一世紀以上に渡って統治している。シェインは冷静かつ計算高い。大公の地位には興味を持っていないが、政治と外交の動きには鋭い目を光らせ、しばしば調停者としての役割を果たした。彼女の前のリーダーはモレン公というが、伝説によればモレンはその悪しき行いによって呪われ、骨の船に乗ってビター海を彷徨っているという。

ブラッドセイルズは現在七隻の船を所有しており、物語によればその暗い色の帆は犠牲者の血液で染め上げられているというが、これは恐怖を煽るための作り話かもしれない。

ブラッドセイルズは主に秩序・悪のエルフによって構成されており、僅かに人間、ハーフエルフ、チェンジリングが存在する。殆どのブラッドセイルの船員はウォリアー、ローグ、スワッシュバックラーであり、ウィザードやクレリックは公国にいる。

ウィンドウィスパラーズ(風にささやくもの)

リーダー: クールトン・ブライトウィンド公(混沌にして中立、男性のハーフエルフ、レンジャー4/ドラゴンマーク・エア4)

本拠地: オルソスのブラックロック港

知識判定: 地理(難易度30); 地域(難易度20)、貴族と王族(難易度30)

エアレニからの難民全てがフィンガーボーンの影の中に新たな故郷を求めたわけではなかった。ラザーの文化を受け入れ、人間と入り交じって特筆すべきハーフエルフを残したものたちもいたのである。オルソスの島はコラヴァールの避難所であり、コーヴェアからのハーフエルフはブラックロックの町で己の道を見つける。注目すべきことにメダーニ氏族及びリランダー氏族のハーフエルフ達、氏族の伝統から逃れる場所を探していた若い反逆者たちにとっても、ラザーの文化は魅力的だったのだ。彼らの血は島に広がり、氏族の血統ははるかに薄くなったが、それでも時折オルソスの子らはドラゴンマークを発現する。

一般に嵐のマークを顕現する人々がウィンド・ウィスパラーズに加わる。この小さな公国のメンバーは風のように野性的であって予測がつかない。しばしば困った旅人を助けるが、同時にリランダーの船を襲ったり妨害したりすることで知られている。

ウィンドウィスパラーズの現在の公子はクールトン・ブライトウィンドであり、生まれた時はクールトン・ド・リランダーであったこの天才的な後継者は氏族の飛行船を盗み、それをオラソスに持ってくることによって自らの居場所を勝ち取った。リランダー氏族は彼の首に賞金をかけたが、ブライトウィンドはチュラーニ氏族と協定を結び、結果として彼の頭はまだその肩の上に乗っている。

ウィンドウィスパラーズには一隻の飛行船と二隻のエレメンタル・ガレオン船を含む七隻の船がある。残る四隻の船は小さく速いが、ブラッドセイルズやシードラゴンズの軍艦ほど強力ではない。

ウィンドウィスパラーズは主に混沌にして中立のハーフエルフによって構成されているが、どんな種族やクラスのメンバーもありうる。