Dragonshard 04/18/2005

ドラゴンの役割

キース・ベイカー




デーモンの時代、コアトルとドラゴンはカイバーのフィーンドを打ち負かすために同盟を組んだ。コアトルはこの闘争を終わらせる為に自らを犠牲にして不死のデーモンたちを世界の奥底に封じ込め、そしてドラゴンが最高支配者として残された。ドラゴンはこの原初の時代の最後の子供であり、エベロンでもっとも古い文明を持つ。彼らの知識と力は常命のものの物差しで計る事は到底出来ない。ドラゴンに出会った事のある人は殆どいない――少なくとも、知られている限りにおいては。ドラゴンの大部分は予言を研究し、眠りにつき、計画を練るためにアルゴネッセン大陸に篭っている。しかしながら彼らはスパイや呪文を使い、アルゴネッセンに居ながらにしてコーヴェア、サーロナ、エアレナル、ゼンドリックの情報を手に入れ、世界の動きに注意を払っている。一握りのドラゴンはアルゴネッセンから外に出ることもあるが、そうした場合でも変身したり上手く隠れていたりしてその存在を気取らせない。

アルゴネッセンのドラゴンは宝を持ったランダムモンスターでもなければ、貪欲な冒険者が彼らを見つけるのを待ち受けていたりもしない。彼らは国家なのだ。これらドラゴンの秘密主義と隠棲主義を示した上でゲームに導入するのはちょっと骨かもしれない。しかしなんと言ってもこのゲームは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」なのだし、きっとプレイヤーは、いつかドラゴンと遭遇する日を夢見ているに違いないのだ! この記事はプレイヤーキャラクターがエベロンのドラゴンに対処する幾つかの例を示す。

チャンバー

チャンバーに属する竜は世界中で活動する。冒険者はシャーンの酒場でシルヴァー・ドラゴンとすれ違うかもしれない――しかし、今肩が触れ合った相手が恐れ多くもドラゴン様であるなどと、気づくはずもない。チャンバーは捉えどころのない組織であり、構成員は人形使いの如く糸を操り、猫の足音よりもひそやかに動く。チャンバーの詳細な計画をいずれドラゴンシャードの記事で述べる日も来るだろう。しかし当面重要なことは、チャンバーが英雄とドラゴンを邂逅させるもっとも簡単な方法の一つであり、一方英雄たちはその遭遇の本質を知らず、結果として最終的に竜と邂逅する願望を満たせないままで終る可能性もある、ということである。

古の守護者

ドラゴンは世界の黎明においてカイバーの子らと戦った。その戦いの終わりにもっとも強力なフィーンドの王侯たちは強力な魔法により縛めを受けることとなった。しかしどんな牢獄も完璧ではなく、コアトルとドラゴンは他の者が故意にせよ偶然にせよ彼らを解放してしまう事がないよう、牢獄の周囲に守護者を置いた。デーモンなどの来訪者と違い、ドラゴンは不死の存在ではないが、それでも何千何万年もの間、世代にも渡り先祖から受け継いだ義務を守りつづけてきた。これは冒険者のパーティが荒野でドラゴンと遭遇する一つの方法として機能する。古代の遺跡にいるドラゴンはかつての戦場を守りつづけ、ラクシャーサの莫大な財宝に囲まれて安らぎを覚えるかもしれない。そのような竜は冒険者に警告をするかもしれないが、恐らく二度目はない。捕らえられたデーモンかラークシャサの王侯の影響は時として封印を超え、こうした守護者たちを堕落させてしまう事もある。彼らはそれでもこの番人を続けるが、そうしたドラゴンは侵入者に対してより残忍に、攻撃的になる。

守護者であるドラゴンは本能に縛られており、それらが守護する地域を去ることは出来ない。その地域に住む種族に注意を払ったり脅かしたりすることも普通はないが、何事にも例外はある。

多くの守護者であるドラゴンがエベロン・ワールドガイドにて言及されている。もっとも分かりやすいのはクバーラでハカトルヴァクを守っているブラックドラゴンのラシャ―クである。この地のリザードフォークはこのドラゴンを神であると見なしており、ラシャークはこれを受け入れた。彼はリザードフォークの信奉者によってこの地域でかなりの力を持っている。彼は過去に供物と崇敬を得るためにこの影響力を駆使したが、クバーラで増えつづける人間に対して彼が何らかの行動を取るとしてもよい。ラシャークには同年代の竜の多くが持つような、拡張主義者や好奇心旺盛な探検家に対するこらえ性がない。

ワールドガイドでは更に他の守護者の存在をほのめかしている。例えばブルードラゴンのひながアダールの崖に生息しており、これらの強力な長虫(ワーム)は山で難に会う人々を助けるという。そしてデーモン荒野にはレア・オブ・ザ・キーパーがあり、ここは死と貪欲を司るキーパーがドルラーへ向かう途中の魂を掠め取り、保管しておく場所だという。確かに何らかの危険な力がこの深い裂け目の中に潜んでいるが、多くの賢者はこれが神であるとは考えておらず、カイバーの力に影響されたドラゴンの守護者、すなわちドラコリッチではないかとしている。

守護者である竜はいかなる遺跡及び古代から存在する場所にも存在し得る。バードの知識か古代の伝承のみがパーティが彼のこと――この遺跡を守護するドラゴンか、倒しても全く問題ないような「悪いドラゴン」か――を判断する手がかりとなりうる。

「悪いドラゴン」

全てのドラゴンがデーモンとの戦いや予言と関係しているというわけではない。ドラゴンは自由意志を持つ生物であり、人類が持つのと同じあらゆる精神的特性を保持しうる。大部分のドラゴンはアルゴネッセンに隠遁して満足しているが、中には自身の種族が作り上げた社会を拒絶する者もいるのだ。単にドラゴンの長老の鋭い目の届かない所に居たいと思うものがあれば、アルゴネッセンの支配者達に禁じられた秘密の実験を行いたいもの、人間の世界でのみ見つけられる楽しみを追求するものも居る。理由の如何に関わらず、そうした竜は確かにエベロンに存在する。孤独なドラゴン、隠されたねぐらの闇の中に膨大な財宝を蓄えた、恐ろしく危険な生物が。

「悪いドラゴン」が孤独な竜のイメージを充分満たしている一方、ドラゴンは狡猾かつ天才的な知性を持つ生物だということを忘れてはいけない。「悪いドラゴン」は冒険者だけを相手にしていればいい訳ではないのだ。アルゴネッセンのチャンバーと他のエージェントたちもまた警戒すべき存在なのである。しかし「悪いドラゴン」が自身かその行動かを目立たせすぎない限り、通常チャンバーは彼らを放って置く。

冒険者はドラゴンと偶然対峙するかもしれない。例えば盗賊ギルドと戦って、その後ろに真の黒幕を発見したとき、驚きと共にそれは現れるだろう。また遺跡の中でそのねぐらを見つけるかも知れず、故意かどうかは問わず他の魔獣の後に現れることもあろう。アルゴネッセンはこうした「悪いドラゴン」にあまりいい顔をしないし、冒険者のパーティはこうした恥ずべき逃亡者を処分するのに丁度いい道具であるかもしれない。

伝統的な悪役ドラゴンを出す場合「悪いドラゴン」は最良の選択である。倒しても誰も困らないし、デーモンが解放されるわけでもない。しかしDMもPCもドラゴンの狡猾さを忘れるべきではない。知性はかのクリーチャーの力の一部であり、ドラゴンの意表をつくことは至難の業である。ドラゴンは単なる怪物ではなく、空と大地の血を引き、エベロンの原初の力を受け継ぐ種族なのである。竜との遭遇は常にそれらの力、そして威厳を見せるべきであり、それは常に重大な出来事であるべきである。

10のドラゴンとの遭遇

1.NPC冒険者のグループは程近い森林でグリーンドラゴンの卵を発見し、街に戻ってきて卵を売り飛ばす。その後冒険者たちは不気味な方法で一人ずつ殺害され、唯一の生き残りであるノームのローグは呪われた卵を探し出そうとして護衛にPCたちを雇う。

2.パーティのエルフは遠い親戚であるカエル・ヴェンダリスの訪問を受ける。カエルはゼンドリック以来ドラゴンと戦い続けているターナダルエルフの一派、サイラス・ターンの戦士であり、冒険者の先祖の一人を殺した悪のブルードラゴンを発見したという。ジラス・ターンの伝統にのっとり、PCはこのドラゴンを倒さねばならない。

3.フィアラン氏族の影のカーニバルは素晴らしい出し物――ブロンズドラゴンのワームリングを始めた。アルゴネッセンの長老は母親に対してフィアラン氏族への直接的な行動を許さないだろう。母親は冒険者達に対して彼女の子供を救うように依頼してくる。

4.パーティの後援者と友人が仕事の話をするために冒険者たちを呼んだ。キャラクターが到着したときこの後援者は暗殺されており、彼の死体から彼の正体――ゴールド・ドラゴン――が発覚した。PCたちは彼の正体を知らなかったが、それでも誰が彼を殺したのか明らかにしないといけない――PC達に疑いがかかるかもしれないし、或いはPCたちも狙われているのかも知れない!

5.デーモンの時代、フィーンドとの戦争においてこの地上の全ての場所で竜は戦った。スレインで荒れ果てた城の地下を探索しているとき、英雄たちは強力なコボルドのソーサラーによって率いられた部族が、古代の巨大な竜の骸骨の中で生活しているのに出会う。

6.英雄たちはある貴婦人を探るように依頼され、依頼者は彼女の正体がシルヴァー・ドラゴンではないかと疑っている。彼女はゼンドリックにある幾つかのアーティファクトに興味を持っており、銀の竜をかたどった指輪を嵌めているが、本当に人間である――例えその意思が到底慈悲深いものとはいえないにしても。

7.英雄たちは最近の自身の後に発見された幾つかの古代の洞窟を探索するためにムロールのドワーフ商人によって雇われる。洞窟の一つで彼らはレッドドラゴンのゾンビ2体によって守られた水晶の牢獄――デーモンが中に囚われている――を発見する。

8.エアレナルの顕現地帯を通行している途中、冒険者たちは時間の流れの遅い気泡に捕らえられてしまった。そして突然、冒険者たちはエルフの島へのドラゴンの全面攻撃の真っ只中にいることに気づく。

9.モーンランドを探検している間、冒険者たちはチャンバーの観察者のゆがめられた残骸に遭遇する、かつてのレッドドラゴンは生きた炎のオーラをまとうスケルトンとなっている。

10.かつて悪のゴールドドラゴンがダカーンのゴブリンの氏族と同盟を結んだ。今この氏族、ケチ・ドラグース(Kech Draguus)は表舞台に姿を現し、ハーフドラゴン・ゴブリンの軍団と純血のドラゴン数匹を率いてダーグーンを支配しようとしている。パーティはこの脅威に対抗すべく行動するか? あるいは竜の血統をダーグーンの王座に据えるだろうか?