Dragonshard 03/21/2005

コーヴェアのコボルド

キース・ベイカー




黒い鱗のソーサラーはかすれたドラゴン語の音節を発した。目に見えない力の波がデインを壁に叩きつけ、そのままでこぼこした岩の壁にはりつけにした。鋭い歯が露わになる。彼を捕らえた者は笑ったようだった。

「この深き穴を一人で、誰にも見られずに通り抜けられると思ったのか」 コボルドが嘲る。
「動けまいが。いかに姿を隠そうがカイバーが囁き、警告してくれる。貴様を見つけることなど造作もない」

神秘的な縛めがより力を増して締め付け、デインは苦痛に喘いだ。肺から残らず空気が搾り出される・・・



コーヴェアのコボルドはエベロンの夜明けまでその歴史をさかのぼることができる。古代の伝説によればコボルドはエベロンとシベイ、カイバーとの戦いで撒き散らされた血液のしずくから生まれた。後にカイバーはフィーンドと恐るべき怪物を生み出し、竜がシベイから生まれ、エベロンが自然の生物を生み出した――しかし、コボルドは既にその時存在していた。真偽の程はともかく、この神話がコボルドの精神と文化のバックボーンになっている。

コーヴェアのコボルドは二種類の「亜種(subrace)」に分類される。イレダール(iredar)、竜語で「大地のもの(ones of earth)」と呼ばれる種族は祖先を中たる竜エベロンに求めることが出来、イーヴィール(irvhir)、竜語で「下たるもの(ones below)」と呼ばれる種族は下たる竜カイバーから生まれたとされている。これら二つの亜種族は一般的な外観は同じだが、コボルド同士なら体臭で即座に区別をつけることができる。15フィート以内なら、コボルドは他のいかなるコボルドの亜種族も判別することができる。またコボルドに関して長年経験を積んできたキャラクターは判断で難易度20の能力値判定に成功することによってこれを判別できる、鋭敏嗅覚の能力があるならこの難易度は10まで低下する。コボルドは同族の匂いをかぐと安心を覚え、同族から一人離れて長いコボルドはしばしば精神的疲労を見せる。

二種類のコボルドを見分ける際、臭い以上に重要になるのが超自然の能力である。コボルドは驚異的な数のソーサラーを生み出す(彼らはこれを祖先たる竜との確かな結びつきの印と考える)が、イーヴィールのソーサラーは堕落と暗黒につながりを持つ呪文を、一方イレダールのソーサラーは守りと捕縛の呪文を習得する。これは絶対的なルールではなく、コボルドPCはいかなる呪文も選んで取得できる。しかしフィア、ダークネス、チル・タッチなどの呪文を取得するイレダールは下たるドラゴンの力を利用したとして仲間から疑いの目で見られるかもしれない。

物語は三番目のコボルドの亜種について語る。イーシュヴァーン(irsvern)、「上なるもの」と呼ばれるシベイの子らである。伝説によればこれらのコボルドは翼を有しており、高山に隠された共同体で生活している。伝説によれば王国歴867年、ターラッシュ・シベイの写本を探していた到達者財団の探検家、トーラス・ケルンはアイアンルート山脈に竜を祭る無人の寺院について言及し、財団の会報における彼の最後の記事は翼のあるコボルドとその驚くべきソーサラーの力について伝えている。これがイーシュヴァーン・コボルドとの遭遇であるとするものもいるが、他の者は単なるケルンの捏造に過ぎないと切り捨てる。

部外者はコボルドがしばしば自然のままの洞窟に住んでおり、文字を持たず口伝を用いて記録を残すことから原始的かつ野蛮な種族であると考える。また彼らは小さな部族共同体を営んではいるが、都市や国、または帝国を作ろうとしたことは一度もない。しかしコボルドはほぼ人間かノームと同じくらいに洗練された種族なのである。作られた建造物よりも自然のままの環境で過ごすことを好む一方、彼らは石工と採掘の偉大な才能を持ち、しばしば自身のねぐらを狡猾な罠で守る。しかしそれらの文化は伝統的に伝えられてきた物であり、コボルドはそこから進歩したり変化しようとしたりしたことは一度もない。彼らは竜の子であり、先祖の意志を守るしもべなのである。力ある竜がそれを強制するとき、コボルドの社会にも変革が訪れるであろう。

領土:これまでコボルドの共同体はクバーラとシーウォール山脈(ダーグーンとズィラーゴの間)で発見されている。しかしコボルドは身を隠すことに長けた種族であり、近年の幾つかの出来事はコーヴェア中にコボルドのコミュニティーが隠されていることを示唆している。

住居:エベロンのコボルドは自然のままの洞窟に住むのを好む。イーヴィール・コボルトの住居は地下深くにあるが、通常イレダール・コボルドは山の中の洞窟に住んでいる。コボルドはこれらの洞窟が先祖である龍の静脈であると信じており、しばしばその壁面に竜の意匠を掘り込む。コボルドは大人100人ほどの規模の部族共同体を好む。もっとも大きな共同体でこの数は600人に膨れ上がる。一般に、共同体の数が100人を大きく越えて膨れ上がるとそれは分裂し、若いコボルド達が新しい共同体を作るために去ってゆく。

コボルドはホリッド・アニマルを飼う事を好む。特にネズミ、いたち、ムジナなどの穴を掘るホリッドアニマルはコボルドの共同体で頻繁に見られる。

パワー・グループ:コボルドの文化は三つの職能集団によって動かされている。ストーンスケイル、竜語ではターンモリク(ternmolik)は工芸、農業、また農業が不調な時の食料調達等、共同体の維持に必要とされる日々の仕事をこなす。クロウ、竜語でギックス(gix)と呼ばれる集団は軍人であり狩人である。そしてブラッドシーア、竜語でイェジラストリクス(iejirastrix)と呼ばれる者たちは祖竜の声を聞く預言者であり、ソーサラー、ドルイド、フェイヴァード・ソウルなどコボルドの祖先である竜から力を授かったもの達として扱われる。

村の指導者は通常クロウの歳ふりた者が任じられる。一方ストーンスケイルは平和的な分野で指導力を発揮する。ブラッドシーアは宗教的権威として共同体をまとめるが、実務は指導者の仕事である。シーアは他のシーアに会って、種族全体に関わるような預言やビジョンについて語り合うために村から村まで旅をすることがしばしばある。

チャンバー:それはコボルド文化において重要なもうひとつの力である。殆どのドラゴンはコボルドが竜の子孫であるという主張を気にも止めないが、コボルドのブラッドシーアはドラゴンの予言書に対して奇妙な(そしてしばしば歪んだ)洞察を持つことが出来、チャンバーは時折コボルドのエージェントを用いる。これは強力な魔法の武器とアイテムで武装したコボルドのチームを生み出し、この小さい爬虫類を過小評価する冒険者に対して不快な驚きを与えることができる。

信念:コボルド文化で中心を占めるのは特定の先祖竜に対する崇拝である。イーヴィールのそれは地下竜教団のもっとも古いカルトの一つであるが、シャドウ・マーチの異端者たちとは全くつながりはない。イーダルのコボルドは命と自然の源としてエベロンを崇拝する。これはエルデン・リーチのドルイドたちと全く関係のない、独自のドルイドの伝統である。

コボルドは自分たちを現代に生きる先祖の手であると見なしている。また過去にはしばしばブラッドシーアのビジョンを借りてドラゴンの予言が現れた。コボルド自身がこれらの意味を殆ど理解していないため謎のままで終ってはいるが、チャンバーでさえこの不可思議な贈り物には敬意を表する。

勿論これらの伝統に縛られるコボルドばかりではない。ブラッドシーアの言葉を無視してこれらの伝統を捨てた部族も幾つかある。そうしたイーヴィールコボルドはしばしばシャドウかマックリーを崇拝し、イレダールならばボルドレイかオラドラを信仰する。

言語:コボルドはドラゴン語を話す。今までに別の言語を話すコボルドや竜に言葉を教わったコボルドの話は全くない。殆どのコボルドは会話を好む。食事時ともなれば吼え声による会話が溢れて洪水の如くなる。

世界との関係:殆どのコボルドは外の世界との接触を避けることを好む。イーヴィールは特によそ者を嫌う。そしてズィラーゴの鉱夫は何世紀もの間イーヴィール達と戦っている。彼らによるとイレダールはより穏やかである。彼らは殆ど外国の文化に関心を持たず、ノームや人間がそうするのと同じくらい頻繁にイーヴィールと戦う。

最終戦争勃発後、コボルドはコーヴェアの表舞台に活発に姿を現すようになった。コボルドのゴミ漁りは戦場と荒廃した村々をしばしば引っ掻き回す。過去、未知のイーヴィールの部族が地上に現れ、モーンランドの境界沿いに弱った軍隊と村々を襲ったことがあった。これらがカイバーの預言者による策動の結果か、単なる無作為の攻撃であるかはまだわかっていない。

クラス:コボルドの兵士は通常ウォリアーである、例外的なハンターはコボルド独自の戦闘テクニックが強さではなく速度に焦点をあわせている点を反映し、スワッシュバックラー、スカウト、レンジャーのレベルを取る。コボルドがドルイドとフェイヴァード・ソウルを好むため、クレリックとアデプトは稀である。一方魔術的な伝統はまったくないが、驚異的な数のソーサラーが存在する。全てのブラッドシーアは呪文使いであるが、呪文使いが全て預言者であるわけではない。しかし全てのコボルド・ソーサラーは祖先に祝福を受けた存在と考えられており、通常かれらの種族のチャンピオンとなる。

コーヴェアのコボルドをプレイする

PCかNPCとしてコボルドをプレイするとき、最初に幾つかのことを考えてください。あなたが一人であるならあなたはなぜ部族を去ったのですか? 一族の信念を捨てた? 探索の途中? 恐らくブラッドシーアはあなたが重大な運命を背負っていると考えていますが、あなたにとっては心地よく生きることが重要なのかもしれません。

コボルドは殆ど全ての他の種族より肉体的に弱いことを自覚しており、戦いに勝つために狡知を駆使します。卑怯な戦術は恥ずかしいことではなく、優れた知性の証です。これは戦闘でも、社会的状況でも適用されます。コボルド以外の種族に対処するとき、コボルドは嘘をつき、イカサマを行います。あなたの武器は機知なのです。

コボルドとして、傲慢さのバランスを慎重に取ってください。あなたの一族にはあなたを竜に等しい地位にまで押し上げる、神聖な遺産が伝えられています。一方、怒り狂うバグベアと論争しているときにはこの神聖な遺産は大した役には立ちません。可能ならば、存分にあなたの優越性を見せびらかしてやりましょう。勿論限度をわきまえて!