Dragonshard 10/18/2004

ドーターズ・オヴ・ソラ・ケル

キース・ベイカー




壁には100を越えるドクロがちりばめられていた。それらは炎の中の石炭のように白く輝き、この広大な洞窟の唯一の光源となっていた。ソラ・メーニャが貪り食らった犠牲者の魂をどうやって捕らえるのか、デインは子供の頃聞いた話を思い出す。子供の頭蓋骨が壁のひび割れの中からじっとこちらを見ているのに気づき、デインはあのような怪物の存在を許した全ての神を呪った。

「あやつは甘かったなぁ」 やわらかくざわざわとした声だった。砥石を鉄のやすりでこすったかのような。

洞窟の中心にはダークウッドの木立ちがあり、デインはそこに三人の女が立っているのに気づいた。今声を上げた女は灰色で背が高く、そのこびりついた血と同じ色の手足は周囲の枯れ木や彼女の皮の胴着にも負けず劣らず節くれ立っていた。彼女の仲間の一人は白雪の肌ときらめく青の瞳、石炭のようなぬばたまの髪、そして完璧な美貌を持つエルフの少女であった。それが幻影であるとわかっていても、デインは胸のざわめきを抑える事が出来なかった。影の中に佇む三人目は灰色のローブを纏い、深く下ろしたフードの陰から赤く光る目でデインを見つめていた。

「ようこそ、旅人よ」 エルフに見えるものが甘い声で、歌うように言葉を紡ぐ。「遥かな道のりを超えて、あなたはここまで来ました。狼にウォーグ、茂みに沼地、道は険しく長かったことでしょう」

「運命に定められ、かくてそれは為された」 女巨人が唸る。

「しかしそれは始まりに過ぎない」 灰色のローブがささやいた。

デインは膝を突いた。「偉大なる姉妹たちよ」 彼は話し始めようとしたが、しかしエルフが手を挙げてそれを遮った。彼女の顔がゆっくりと横に振られる。その姿はエメラルドのような目と炎の色の髪をした人間の少女になっていた。

「私たちはお前の目的を知っています、小さきものよ。私の姉はしばしばあなたについて話しているから。あなたはドル・アズールの剣を探し出すでしょう。そして私たちはそれを助けるでしょう。しかしその代償として、あなたはまず私たちの望みをかなえなくてはなりません」



三人の姉妹

アンデールの子供は恐ろしいソラ・メーニャの物語を聞いて育つ。そしてブレランドの吟遊詩人ならソラ・カトラと知恵比べをしようとした愚か者の歌を一ダースはそらんじているだろう。それらはおとぎ話であり、ダカーンの時代から存在していたものの表舞台に現れることなど無かったこのハグたちがウォートロールとスカルクラッシャー・オーガーの軍勢を率いるようになるなどとは、誰も予想していなかった。この十年の間、三姉妹はバイシュク山脈の向こう側を上手く統治し、この七千年で初めてこの地に秩序をもたらした。

何故ドロアームは生まれたのか? こうした疑問は今なお囁かれつづけている。何世紀もの間、これらのハグ達は荒野、森、沼地に潜み満足していた。何故住み慣れたねぐらを捨て、王国を作り上げたのか? グレイウォール山脈を越えて人間の国を切り取るつもりなのか、それともこの怪物の王国だけで満足しているのか? ドロアームは彼等の全てなのか、それとも最終目的のための一歩に過ぎないのか?

ドーターズ・オブ・ソラ・ケルの三人はそれぞれがコーヴェア屈指の強力なクリーチャーである。ソラ・メーニャとソラ・カトラは伝説の怪物であり、対峙する時はそれを充分考慮する必要があるだろう。彼女たちは何世紀もの間、数多の英雄と対峙し、打ち破ってきたのであり、これらに感銘を与えたり、威嚇したりするのは容易い事ではない。またソラ・テラザによって彼女たちは訪れる冒険者に対してあらかじめ十分な知識を得る事ができる。DMはこれを充分に利用するべきだろう。

三姉妹をキャンペーンに関わらせるには様々な方法があり、その多くはPCとの戦闘を伴わない。ソラ・テラザはエベロンでもっとも偉大な預言者の一人であり、パーティはその神託を必要とするかもしれない。ソラ・カトラはコーヴェア全土に及ぶ陰謀を練っており、ダースク、ないしタラシュク氏族とハグとの取引がPC達にかかわって来るかも知れない。彼女たちはデーモン荒野の深層やダカーン帝国の遺跡から発掘された多くの忘れられた秘密と古代の宝物を所持しており、何らかの奉仕か危険な任務と引き換えにするため、冒険者との取引の材料とすることがしばしばある。ソラ・カトラにかかわる物語はやがて災いをもたらす見せ掛けの勝利で満ちている。ソラ・テラザによって姉妹は未来を見通すことが出来、冒険者の一時の勝利が必ずしも最終的な勝利につながるとは限らない。ドル・アズールの剣によってあなたは黒のハスカラスクを倒すことができるかもしれないが、恐らくそれこそが三姉妹の望む展開なのであろう。

殆ど知られていない事だが、三姉妹は単なるハグではなく、ハーフフィーンドである。三姉妹の父の名は伝説の中に埋もれてしまったが、母親であるソラ・ケルは極めて強力なナイト・ハグである事がわかっている。三姉妹は翼こそ持たないものの、そのほかのあらゆるハーフフィーンドの能力を持つ。サモン・モンスター\を用いる場合、三姉妹は一体のナイトハグのみを召喚できるが、彼女たちはこれを最後の手段としてのみ使用する。

パーティの関係が三姉妹との対決で終るならば、DMは彼女達が並々ならぬ生存本能を備えた恐ろしく狡猾、利己的、そして危険な敵である事を忘れてはならない。それぞれが偉大な何百もの英雄と戦い、それを乗り切った怪物達なのである。ソラ・メーニャでさえ死ぬまで戦うなどという真似はしない。不利になれば躊躇する事なくディメンジョンドア、インビジビリティ、その他のトリックを使用するだろう。やがて戻って復讐するために。エピックレベルの英雄が彼女たちを打ち破る事は可能だが、その場合でもそれが簡単なものであってはならないのは勿論である。



ソラ・カトラ

中立にして悪、女性、ハーフフィーンド・グリーンハグ バード11

深い沼のペテン師として歌にも歌われた彼女は、何世紀もの間ブレランドの民話でおなじみの登場人物であった。登場人物は秘密や宝物を求め、智恵や武器をもって彼女に挑むが、殆ど例外なく、これらの物語は悲劇で終る。彼女の口から紡がれる言葉はカリスマと技術を兼ね備えており、暴力によってドロアームの土台が固められていく一方、彼女の舌がハグを指示する熱狂的な従者たちを生み出し続けている。

三人揃って誰かと会うとき、ソラ・カトラはその会話の殆どを担当する。彼女は常にディスガイズ・セルフを使っており、相手を混乱させたり、気をそらせたりするような姿を選ぶ。彼女は世界を広大な遊戯板であると見なしており、常に十近い計画を進行させている。彼女の最高の道具の一つはダースク(巨人語で「怪物の目」の意味)と呼ばれる犯罪組織である。ダースクについては「シャーン:塔の町(日本語版がHJより近刊)」で詳しい記述を見ることができるだろう。

ハグとハーフフィーンドとしての能力に加え、ソラ・カトラには他者を呪う伝説的な能力を持つ。1日1回ビストウ・カースを擬似呪文能力として使用することが出来、また一ヶ月に1回バインディングを同様に発動できる。この時物質要素は消費しなくてはならない。彼女は20レベルバードとしてこれを発動し、セーブ難易度は魅力にもとづく。



ソラ・テラザ

秩序にして中立、ハーフフィーンド・ダスク・ハグ クレリック13

ソラ・テラザについて語る伝説は殆ど無い。ドロアームが打ち立てられるまで、デーモン広野を徘徊する盲目の老婆について聞いたことがあるのはもっとも博識な吟遊詩人のみに限られていた。多くのものが、彼女こそドロアーム成立の影の立役者であり、下された神託にしたがって姉妹たちを集めたのだと信じている。彼女が言葉を発することはめったに無いが、残りの姉妹二人はその言葉を一言たりとも聞き逃すまいとする。

全てのダスクハグは洞察の能力を持つが、彼女のものは際立って強力である。しかし彼女もこれらの神託を制御する事は出来ず、むしろ神託そのものによってそれが実現するような行動を強いられているようにすら見える。これはDMのためのツールであり、種も仕掛けも無い。キャンペーンを動かすためには非常に有用なギミックであろう。

彼女は盲目ではあるが周囲で起こること全てを把握している。これは半径60ftの全周囲に有効な擬似視覚として扱う。彼女は挟撃されず、不意討ちを受けることも無い。



ソラ・メーニャ

中立にして悪 ハーフフィーンド・アニス バーバリアン10

ソラ・メーニャはエルデン・リーチを幾世代にも渡って恐怖のどん底に突き落とした。その強さと食欲は伝説的であり、シーライラクという名前のドラゴンを素手で組み伏せ、そのまま貪り食ったと伝えられる。その鉄の抱擁から逃れられたものはほとんどおらず、また彼女自身挑戦してくる巨人や他のモンスターを素手で組み伏せる事に喜びを覚えるという。何世紀も前の話だが、彼女がシフターの部落を襲ってその全てを喰らい尽し、去った後には破壊された建物以外何も残っていなかった。彼女はレンジャーをはじめとする人間の獲物を狩る事を非常に好んでいる。多くのドロアームのモンスターがソラ・カトラを崇拝しているが、それよりはるかに多数がソラ・メーニャを恐れている。

ソラ・メーニャはその剛力で知られているが、決して獣同然の愚か者ではない。ソラ・カトラに国を経営させてはいるが、ソラ・メーニャ自身も狡猾にして雄弁である。彼女は個人的技能を振るうのを好み、犠牲者を引き裂く前にさんざんにいたぶる。また彼女は放逸な好色家であり、常に未知の感覚と新しい経験を捜し求める探索者である。三姉妹の中ではソラ・メーニャは単独で遭遇する可能性が最も高い。その場合は恐らく血塗られた娯楽を求めて荒野を彷徨する彼女と遭遇する事になるだろう。

ソラ・メーニャは素手で戦うのを好む。骨を砕き、肉を引き裂く感触を楽しむためだ。しかしウォー・トロールを率いて戦に出るときはバトルアックスかグレートソードを用いる。グレート・クラッグに隠された三姉妹の宝物庫には、多くの魔法の武器が眠っているのだ。

ソラ・メーニャ

中立にして悪 女性 ハーフフィーンド・アニス バーバリアン10 脅威度19 大型の来訪者(原住)(人怪)

HD 7d8+35+10d12+50;hp171; イニシアチブ+5; 移動速度50フィート; AC31(接触14、立ちすくみ31);

基本攻撃ボーナス+17 組み付き+36;

攻撃 +34近接(1d6+17、鉤爪)

全力攻撃+34/+34近接(1d6+17、鉤爪)及び+29近接(1d8+9、噛み付き)

特殊攻撃 つかみ強化、激怒3/日、引っかき1d6+17、かきむしり2d6+24、善を撃つ一撃(ダメージ+17)、擬似呪文能力

その他の特殊能力 暗視60フィート、ダメージ減少(下を参照)、高速移動、毒への耐性、直感回避強化、酸への抵抗10、冷気への抵抗10、電気への抵抗10、火への抵抗10、ソウル・バインディング、呪文抵抗27

属性 中立にして悪

セーブ 頑健+16 反応+15 意志+13

筋力 40, 敏捷 20, 耐久 20, 知力 14, 判断 12, 魅力 14.

特技と技能: 威圧+24、隠れ身+11、聞き耳+21、言語(共通語、エルフ語、巨人語)、交渉+16、視認+11、忍び足+10、真意看破+6、水泳+20、製作(皮なめし)+8、製作(骨の彫刻)+8、生存+18、跳躍+20、登攀 +20、はったり +12、変装+12(役柄に相応しく振舞う場合+14) 強打、追跡、突き飛ばし強化、鋼の意志、ふっとばし攻撃、無視界戦闘

ダメージ減少(変則):10/魔法、2/殴打、2/- ソラ・メーニャの肉体武器はダメージ減少を貫く目的に関して魔法の武器として扱う。

ソウル・バインディング(擬呪):死体を貪り食い、一時間の儀式を行う事によってソラ・メーニャは犠牲者の魂を捕らえることが出来る。魂を閉じ込める媒体が犠牲者自身の頭蓋骨である、死亡後17時間まで儀式を実行可能な事を除き、これはソウルバインド呪文と同様に扱い、術者レベルは17である。

擬似呪文能力 3回/日――ダークネス、ディスガイズ・セルフ(術者レベル8)、フォッグ・クラウド(術者レベル8)、ポイズン(セーブ難易度16)、アンホーリィ・オーラ(セーブ難易度20) 1回/日――ブラスフェミィ(セーブ難易度19)、コンテイジョン(セーブ難易度16)、ディセクレイト、ホリッド・ウィルティング(17d6、セーブ難易度20)、サモン・モンスター\(ナイトハグのみ)、アンハロウ、アンホーリィブライト(8d6、セーブ難易度16) 特記されたものを除き術者レベルは17、またセーブ難易度は魅力にもとづいている。

激怒:激怒している間ソラ・メーニャのHPは34点上昇する。加えて以下の変化がある。
AC29、接触12、立ちすくみ29、
攻撃 +36近接(1d6+19、鉤爪)
全力攻撃 +36/+36近接(1d6+19、鉤爪)および+31近接(1d8+10、噛み付き)
特殊攻撃 引っかき1d6+19 引き裂き 2d6+27
セーブ 頑健16、意志13
筋力44 耐久度24
彼女の激怒は11ラウンド持続する。

装備品:+3グラマード・スタデッドレザー アミュレット・オブ・マイティ・フィスツ+2 バッグ・オブ・ホールディング(タイプU) ベルト・オブ・ジャイアントストレンクス+4 ブーツ・オブ・ザ・カウワード ポーション・オブ・バークスキン+5 ポーション・オブ・キュア・シリアス・ウーンズ×3 ポーション・オブ・イーグルズ・スプレンダー ポーション・オブ・ディスプレイスメント ポーション・オブ・フライ ポーション・オブ・インビジビリティ、ポーション・オブ・レッサー・レストレーションx2 ポーション・オブ・ポーション・オブ・ヘイスト ポーション・オブ・プロテクションフロムアロー(15/魔法) ポーション・オブ・アンディテクタブル・アラインメント
ブーツ・オブ・ザ・カウワード(臆病者のブーツ)は装着者に1日1回ディメンジョンドア呪文(術者レベル9)を発動したかのように転移する能力を与える。

背を丸めた姿勢は彼女をやや小さく見せているが、このしなびた老婆の身長は少なくとも8フィートある。彼女は血がこびりついてどす黒くなったフードつきの外套を纏っている。彼女の手足は長く節くれ立っており、指には長く黒い爪が生えている。しわくちゃの皮膚は濃い藍色であり、髪は黒く汚らしい鳥の巣のようである。目は赤く輝き、彼女が微笑むと針のように鋭い牙が口の中にぞろりと並んでいるのが見える。