Dragonshard 09/27/2004

ようこそ、シャーンへ!

キース・ベイカー





シャーン、塔の街、古きガリファーの宝石――我らが栄光の大都会は多くの名前によって知られており、地の果てまでその名は轟いています。毎日何千人もの人々がシャーンにやってきます。商人は遠い大陸からサーロナの絹、ズィラーゴの秘薬、ドラゴンタートルの肉を携えて、またブレランドの農夫は収穫物を売るために古街道(オールド・ロード)をやってきます。シャーンには恐ろしいほどたくさんの人々がおり、それを養えるほどダガー河の河口の土地は豊かではないので。大使と貴族が社交を行い、ドラゴンマーク氏族の後継者が賢者や大胆不敵の冒険家たちと語り合う。シャーンは誰にでも開かれており、そしてどの街路にも冒険が転がっているのです。

私たちの大都市はここにはじめて訪れた人々をしばしば圧倒してしまうため、シャーン・インクィジティブはこの簡単なガイドを作りました。このガイド、良い地図、シャーン・インクィジティブの写し。それだけあればあなたはこのシャーンの隅から隅までを楽しみ、まるでシャーン育ちのようにリフトを使いこなせるようになるでしょう! さて、ガイドブックの続きをどうぞ。そして、ようこそ、シャーンへ!

シャーン・オリエンテーリング

シャーンはダガー河とヒルト(訳注:「鍔」の意。河が刀身と柄で入り江が鍔と言うわけだ)と呼ばれる入り江の間に不規則に広がった町です。かの名高き塔は一マイルを越えて空にそびえ、この都市で道を探すためには、水平にだけではなく垂直に考えてみることも必要になります。空からこの都市を眺めれば、五つの街域に分かれていることが分かるでしょう。中央高台(Central Plateau)、ドゥラ(Dura)、メンシス高台、ノースエッジ、及びタヴィックス・ランディングです。

これらの街域はそれぞれ高さによって三つの街層(ward)に分けられています。例えば中央高台上層、ドゥラ中層、ノースエッジ下層など。

各区はさらに9つの街区(Distinct)に分割されます。各街区には、それぞれ特色があり、例えばドゥラ中層の市場は交易の中心ですし、タヴィック下層のブラックアーチは街を守る我らが勇敢なる兵士と都市衛視の駐屯地です。そしてノースエッジ上層のクリスタルブリッジは住宅街であり、シャーンでもっとも裕福な家族のいくつかが住んでいます。

これら五つの街域に加え注意すべき領域がいくつかあります。船でシャーンにやってきたのなら、あなたは既に岸壁地区(クリフサイド)を見ているでしょう(クリフサイドはダガー河の岸からドゥラ下層にかけて広がっています)。あなたがもしクリフサイドでこれを読んでいるなら、速やかにそこを立ち去る事をお勧めします。この街に慣れていない場合、この猥雑な地区はあなたにとってかなり危険なものとなる可能性があります! 一方上を見上げれば、最も高い尖塔の上に雲のようにかかる何かがきらめいているのをみることができます。これがスカイウェイ、シャーンでもっとも裕福な層が住む地域です。更に都市の下にはコグと呼ばれる空間が広がっており、ここは都市の工業の中心となっています。あなたがこの街に不慣れであるならば、クリフサイドと同じくうっかり踏み込まないように注意してください。

交通機関

シャーンの基本的な地理を把握した所で、そこへ移動するための方法について説明しましょう。ローンズ・ゲート(Wroann's Gate)からハイホープまで歩いていくのは何時間もかかります。勿論自分の足は常に頼りになりますが、塔の街を上下するにはいささか疲れる移動方法であるのも確かです。あくせく歩くのが嫌でかつ急ぎでないなら、オリエン氏族の運営する、ラバの引く乗合馬車のネットワークがシャーン全域をカバーしています。乗合馬車は時間は掛かりますが、快適でお値段も手頃です。

財布に余裕があるのなら、もっとも迅速な移動方法、シャーンの驚異の一つを試してみるのはどうでしょう。その名は天空馬車(スカイコーチ)。都市を取り囲む魔法のエネルギーは大気に満ち、リランダー氏族の飛行船が空を飛ぶのと同じくらい簡単に、あなたをはるか高く空中へ運びます。市の評議会は料金を1マイルにつき銀貨1枚と決めています。悪質な御者はそれ以上の金額を要求してくるかもしれませんが、決して払わないように!

シャーン名物

あなたがビジネスのため、或いは観光でここを訪れたかに関係なく、シャーンはあなたに多くのものを提供します。

買い物――私たちの自由市場は王国中に知れ渡っており、売るにも買うにもよい場所です。予算が心もとないならばドゥラ中層のバザールがよいでしょう。しかし、バザールは犯罪の温床であるというのも事実です。財布からは目を離さないでおくのが賢明なやり方というものでしょう。一方タヴィックとノースエッジの市場は安心と安全、そして豊富な品揃えを提供し、セントラル中層の大市場には世界中から最高の品物が集まります。またさらに一方、こうした市場を離れれば何百という専門店がこのシャーン中に散らばっています。悲しむべき事に、私たちはこれらを全て紹介するだけの紙幅を与えられていません。

礼拝――ソヴリン・タワー地区はブレランドでも最大の寺院のうち二つがあります。パビリオン・オブ・ホスト(神々のあずまや)と浄化の炎の大聖堂(カテドラル・オブ・クレンジング・フレイム)です。祭りの日や休日にはソヴリンタワーが儀式と祈りの中心となります。この街に点在する神殿の中には、他にもコーヴェア中から巡礼者が訪れるような聖地もいくつか存在します。例えばウレオン大聖堂(the Great Hall of Aureon)、コラナス街区(the Korranath)、或いは都市の地下に存在するオナターの涙泉などです。

エンターテインメント――タヴィックの劇場からドゥラの空中スポーツまで、シャーンでは無数の素晴らしいイベントが開催されています。あなたはハレス・フォリーの尖塔から風追いレース(ウィンドチェイサーズ)を見てもいいし、タッチファイアのエロティックなコメディや、カバラーの伝統的なコンサートで夜を楽しむ事も出来ます。思い切ってコーナーストーンの「ハラザク・マッチ」を観戦して見るのも悪くはないでしょう。ドラマに運動競技、はたまた酷く個人的な付き合いに至るまで、シャーンではありとあらゆる人間を満足させるだけの娯楽が提供されるでしょう。

食事――今度は味覚についてお話しましょう。あらゆる街角に、人間の舌にとっての驚異が溢れています。その中でも特筆すべきいくつかをご紹介しましょう。予算に余裕があるならば、スカイウェイの雲上から塔を眺めつつ賞味する「セレスチャル・ヴィスタ」(天上の眺望)の味に敵う物はありません。シェ・リアスの「樫の木亭(ジ・オークス)」は料理長が数世紀かけて研鑚したエアレナルとブレランド双方の料理を味わわせてくれます。もし予算が心もとないのであればハイ・ホープにある宴席式の店「オラドラの腕(かいな)」がいいでしょう。長いテーブルにつく客には誰であれ、惜しみなく料理が振舞われます。

しかしこれらで終わりと言う訳ではありません。浮かぶ果樹園、夢のような店の数々、その他ありとあらゆる素晴らしいものがあなたを待っています。あなたは中央高台でドラゴンマーク氏族のお偉方や大使に入り交じるかもしれません。モルグレイヴ大学に入学するかもしれないし、忠実な仲間を見つけるかもしれません。技能があり、スポンサーがいるのならエイト・ウィンズ・レース(八風レース)で運試しをすることになるかもしれません。シャーンに存在するチャンスは、到底書き尽す事などできないでしょう。さあ、前へ進みましょう。そしてこの街を探検してください!

注意点

あらゆる都市は暗い一面を持っており、それはシャーンも例外ではありません。崖の上やドゥラ下層、コグ――旅行者にとってはこれら全てが危険である可能性もあるのです。特にあなたの財布が金貨で膨らんでいる時は。できればこれらの地域には絶対行かないで下さい。特にゴブリン類の居住区やカイバーズ・ゲートとして知られる地区には何が何でも行くべきではありません。これらの地区が平穏だった事など一度たりともなく、特にここ数年は暴力事件がかなりの割合で増加しています。私たちの調査によればドロアームからの移民のグループが犯罪社会で台頭し権力を握りつつあり、その影響が下層にも及んでいるのです。

これらの獣達のみならず、暴力の火種はあらゆる所にくすぶっています。最終戦争の後、シャーン市長は難民を下層の住居に押込めました。この古傷が時折傷口を開き、暴動と流血を巻き起こすのです。

多くの旅行者はグラスタワーの残骸に興味をそそられますが、ちょっと待ってください。ゴッズゲートの住民は災害の前から減り始めており、王国歴918年にグラスタワーが崩落してからその廃墟は放棄されました。今日そこは「フォールン(崩落の地)」として知られており、地元で近づく人間はいません。

冒険的精神の持ち主の中には、カイバーにまで達すると言われている、埋もれた古代のゴブリンの遺跡の物語に好奇心をそそられる人もいます。過去を掘り返さないでください! これらの遺跡は恐るべき古の災いを解き放ち、あるいは古代の強力なトラップを発動させてしまうのを防ぐために封印されているのです。私たちはあなたが無鉄砲な冒険者や宝探しに憧れるのではなく、それらの誘惑を退けられるほどに賢明である事を願っています。

最後に、夢百合(ドリーム・リリィ)、アブセンティア(霞の粉)、竜血(ドラゴンズブラッド)、その他怪しい薬物等に手を出さないようにしてください。これらの吸引は犯罪者による危険とはまた別の、時には致命的な危険を招きます。賢い旅人は手を綺麗に、頭を明晰に保っておくものです。

最後に

ここまでの紙幅を費やし、私たちはシャーンに潜む多くの素晴らしいものと危険なものについて伝えてきました。そのどちらにしても、我々があなた方に伝えられたのは表面をちょっと引っかいた程度の事柄でしかありません。シャーンには美が溢れていますが、美しい薔薇にとげがあるように、シャーンにも不注意な旅人を突き刺す鋭いとげがあります。シャーンを楽しんでください。しかし警告には耳を傾けてください。人の言葉を鵜呑みにせず、軽軽しく誰かを怒らせないよう気をつけてください。人畜無害に見える人に、強力な友人がいるかもしれないのです。迂闊な侮辱はダガー河の河底への直通切符になる場合もあります。

さぁ、天空馬車を呼びましょう。雲の上を飛び、セレスチャル・ヴィスタで舌鼓を打ちましょう。食事が終ればグランドステージで最新の出し物を見物です。シャーンはあなたを待っています!