Dragonshard 09/20/2004

シュラセイカー:羽毛の使徒

キース・ベイカー


 

閉ざされた窓が太陽の光を遮り、影が部屋を包んでいた。デインの目は書庫の一角に佇むその影を辛うじて捉えた。見覚えの無い、背が高くほっそりした体つきのその姿をすっぽりと外套に覆い、深く下ろされたフードでその顔を見て取ることは出来ない。

「あなたはこの地に潜む邪悪を見たはずです」
彼女の声は低く、かすれてはいたもののはっきりとしていた。
「邪悪の力はそれが堕落させた全てのものと共にますます増大しつつあります。しかし、私にはかのフィーンド、カザラクを人々の中から探し出すことが出来ません。あなたはカザラクが毒を滴らせた後を辿り、闇の力に心を食い尽くされたもの共と戦い、恐るべき悪の源泉を見つけ出さねばなりません。あなたは生身の人間であり、単独でカザラクに立ち向かうことは出来ないでしょう。ですが、私たち二人でならばこの恐るべき災いをこの村から外に出る前に食い止めることが出来るのです」

デインは顔をしかめた。

「つまり俺たちは二人でデーモンを追い詰め、あんたが奴を倒すわけか。OK、プランは悪くない。だが、一体全体どうすりゃあんたがあいつに勝てるだなんて思えるんだ?」

「いいえ、私ではカザラクを倒すことなど出来ません」

「おいおい! 冗談じゃねぇぜ!」

「心配には及びません。私は全てを救う力、あなたの想像を越えた大いなる力のしもべなのですから」

ダラッサは一歩踏み出し、外套のフードを後ろに下ろした。シャドウウィーヴの外套の下から、純白の炎から織り出されたかのような光り輝くローブが現れる。その光は部屋を満たし、輝く虹色の羽毛で覆われたヘビの頭を照らし出した。

「私の名はダラッサカシュ・アリンター。縛めの炎、不滅の光のしもべ。カザラクが縛めから逃れても、私の中に炎が燃えている限り、決して私からは逃れられません」

 

世界のあけぼの、カイバーの最初の子供がエベロンの大地を支配すべく暗黒からその姿を現した。永きに渡り、何ものもこのカイバーの生み出した恐怖をとどめる事はかなわず、ついに強力なドラゴンと高貴なるコアトルの同盟が成立して初めて、このカイバーの落し子たちに戦いを挑むことが出来たのである。この常命のものの理解を超えた戦いは大地を揺るがし、百万年もの間続いたとも言われる。"戦いの場"シャヴァラスの平原では未だにこの戦争の残響が響いていると言うものすらいる。この膠着状態を破るため、コアトルは究極の犠牲を払う事を決意した。彼等はその精神を霊的な力として結合させた。そうして生み出された銀の炎はもっとも強力なフィーンドですら縛めたのである。

クレゼントの遺跡

コアトルはサーロナで生まれた。それらの古代遺跡の大部分は今もインスパイアドの勢力圏に埋もれている。フィーンドとの戦争において彼等はエベロンに前線基地を建設し、その内のもっとも大きなものが現在タレンタ平原と呼ばれる地域の南東に存在するクレゼント要塞である。この都市はカイバーの深層にまで広がっており、戦争終結まで恐るべき戦士達がこの基地を守っていた。フィーンドとの戦いで生き残った一握りのコアトルは今なお世界を見守りつづけているが、全ての封印を守れるほどの数がいなかったため、より若い種族の中から自分たちの仕事を手助けするもの達を探し出した。伝説によるとサーロナからやってきた人間の一団がコアトルの使命にその生命を捧げ、忠実にそれを実行したという。この何千年にも及ぶ献身は彼等の姿を変え、ダカーンの皇帝が全ゴブリンを統一したときには彼等クレゼントの守護者たちはもう人間ではなくなっていたという。それこそがシュラセイカー、羽毛の使徒である。

シルヴァー・フレイムの子ら

クレゼントに住まう人々は驚くべき外見をしている。コアトルの持つ蛇の特徴と内なる炎に輝く虹色の羽を持った人々なのだ。シュラセイカーはシルヴァー・フレイムのひたむきなしもべであり、その人生の全てを闇の勢力との戦いに捧げている。

だが、これら蛇の姿を持つ守護者が高貴にして賢明であるならば、何故ハーフリングは彼等を恐れるのだろうか。タレンタ平原の部族は何故月の無い夜にクレゼントの遺跡と蛇の民のことを口にしないのだろうか?

光を見るものはしばしば光によって目をくらまされる。シルヴァー・フレイムは紛れもなく善なる力であるが、シュラセイカーもその例外ではない。彼等は闇の力と戦うことをもっとも重要と見なしており、大いなる善を為す事に比べれば無辜の民の命を含む他の犠牲は取るに足りないものであると思っている。クレゼントの封印を守るため、シュラセイカーはなるべく平和的な手段で侵入者を追い返そうとするが、それでも先に進むのであれば速やかな、そして徹底的な実力行使でこれを阻止する。

シュラセイカーは自らを選ばれた存在だと思っており、本当の意味でコアトルの光(シルヴァーフレイム)に触れることができるのは自分たちをおいて他にないと信じている。シルヴァー・フレイムの教会、炎の護り手・・・それらは本質的に間違っており、良かれと思ってやっている事かも知れないが、彼等は自分たちで理解もしていない力をいじっているのだと。シュラセイカーは他のいかなるもの達よりもシルヴァーフレイムの信奉者と行動を共にする傾向があるが、それでも彼等を部下や子供のように扱う。彼らは自身の姿こそ紛れもない霊的な優越の証であるからと信じているからだ。

シュラセイカーは、自身の持つ蛇の特性が祝福であり、コアトルとの絆であると考えている。シュラセイカーは転生を繰り返し、その霊的な発達に応じて三つの種族にそれぞれ生まれ変わると信じており、それぞれの種族はこの思想を端的に反映した名前で呼ばれる。ピュアブラッドは「しもべ(サーヴァント)」、ハーフブラッドは「炎に触れられし者(フレイムタッチト)」、そしてアボミネーションは「超人(トランセンダント)」と。

闇の勢力との戦い

シュラセイカーはクレゼント及びエベロンに点在する他のコアトルの遺跡を守ることにその精力を費やす。彼等は闇の勢力の高まりを感じている。すなわち縛めから逃れたロード・オブ・ダスト、地下竜教団、ドリーミング・ダークの隠された脅威などであり、シュラセイカーは可能であればこれらの勢力と直接対峙する。ごく一部のピュアブラッドは人類の中に紛れ込み、闇の勢力の印を探し出そうとしている。シュラセイカーはこれらの問題を自身か、あるいは強力なしもべに解決させることを好むが、同時に誇りよりは勝利のほうが重要であるということも理解している。

特にパーティのうち一人以上がシルヴァー・フレイムの信徒であれば、シュラセイカーは直接冒険者たちに接触するかもしれない。しかしシュラセイカーには若い種族に対する敬意というものが殆どなく、自身の目的を達するためにパーティを欺いたり、体良く利用したりするのが普通である。彼等からすれば人間は余りに未熟であり、何が正しいのか理解する事も、正しい行いをする事も出来ないと思っているのだ。

もしキャラクターがシュラセイカーの尊敬を得る事が出来たのならば、彼は素晴らしい同盟者となりうる。彼等の持つ広大な知識を別としても、ドラゴンの時代に遡る宝物やコアトルの知識に触れる事ができる。また、人類がいまだ知らないシルヴァー・フレイムの力を引き出す方法を知っており、シルヴァーフレイムのクレリックやパラディンにそれを新しい呪文として授ける事ができるかもしれない。またシュラセイカーは生き残ったコアトルとの近しいかかわりを保持しており、高貴なシュラセイカーの中にはこれらに直接アクセスする事ができるものもいる。羽毛の使徒の信頼を得たものはその後援者たるコアトルの好意を得る可能性があり、そうした場合キャラクターは直接コアトルとアクセスする事が可能になるかもしれない!

シュラセイカーとユアン-ティ

肉体的なことを言えばシュラセイカーはユアン-ティと同様だが、大きな違いが一つある。シュラセイカーの蛇のような肉体の表面は鮮やかな虹色の羽毛で覆われているのだ。またもっとも強力なシュラセイカーは翼を持つ。ピュアブラッド・シュラセイカーには羽毛は無いが、皮膚の表面に鮮やかな紋様が浮き出る。これは容易く刺青と見間違うが紛れもなく魔法のものであり、所有者の精神状態によって色や形が変化する。個人によってこれらの印の大きさや場所は異なるが、普通は人間に変装する事を妨げる物ではない。

肉体的に近しいにもかかわらず、シュラセイカーとユアン-ティの文化は殆ど共通する所がない。シュラセイカーはユアン-ティの先祖は堕落したコアトルによって選ばれた存在であり、それによって彼等もまた退廃していったのだと主張している。仮にこの伝説をユアン-ティも共有しているのだとしても、彼等は既にシュラセイカーには見切りをつけ、何の関心も持っていない。インスパイアドによってサーロナから追放された彼等はゼンドリックの密林やアルゴネッセンの岸壁にその姿を隠し、リードラの支配者達に復讐を遂げる力を手に入れるため、竜の予言を利用しようとしている。

シュラセイカーを使用する

シュラセイカーは非常に誇り高く、知的でひたむきだが、同時に横柄で非情でもある。彼等は銀の炎に人生を捧げており、人間や他の生物をその目的の犠牲にすることを全くためらわない。シュラセイカーは常に冷静であろうとしており、彼等が露わにする唯一の感情は暗黒の力に対する冷やかで激しい怒りである。

シュラセイカーは基本的にはユアン-ティとして扱うが、以下の変更がある。

  • シュラセイカーは秩序にして善属性を基本とする。悪のシュラセイカーは同族によって追放され、狩られる。
  • 超人(アボミネーション)は翼を持ち、飛行速度60ftを持つ。機動性は良好。
  • フレイムタッチト(ハーフブラッド)の特徴で21-40が出ればそのシュラセイカーは翼を持つ。飛行速度60ft、機動性は良好。翼を持つシュラセイカーは、翼を収容するために特別に作られた鎧でなければ装備することが出来ない。
  • 全てのシュラセイカーはロングボウとコンポジットロングボウ、シルヴァー・フレイムの好む武器に習熟している。
  • シュラセイカーはボーナス特技として「騎士の訓練」を得、これによってペナルティなしでパラディンと他のクラスのマルチクラスができる。ブラッドソーン(ピュアブラッド)の多くはレンジャー/パラディンである。シュラセイカーのパラディンは「遠隔の一撃(Ranged Smite)」特技を取得することが出来、これによりロングボウで悪を討つ一撃を発動させる事ができる。
  • ピュアブラッドの適性クラスはレンジャーであり、ハーフブラッドとアボミネーションの適性クラスはクレリックである。殆ど全てのシュラセイカーはシルヴァー・フレイムを信仰しており、強力なシュラセイカーはエクソシスト・オブ・シルヴァー・フレイム上級クラスのレベルを持っているかもしれない。

あなたは何を知っていますか?

ほとんどの人々はシュラセイカーについて一度も聞いたことがない。以下の技能チェックはキャラクターの知識の度合いを示す。

知識(ダンジョン探検)(難易度15)かバードの知識(難易度15):キャラクターはユアン-ティについて聞いたことがあり、ゼンドリックの密林に住む危険な種族だと知っている。シュラセイカーはユアン-ティによく似た種族だと知っているが、詳しい事は知らない。

知識(地理)(難易度25):キャラクターは、クレゼントの物語、蛇の民の住まう荒廃した都市について聞いたことがあるが、その信念や能力については知らない。タレンタ平原出身のキャラクターはこの判定に+5のボーナスを得る。

知識(宗教)(難易度25)かバードの知識(難易度30):キャラクタはシュラセイカー(コアトルとシルヴァーフレイムを崇める蛇の民)の特定の物語を聞いたことがある。彼は、エクソシストとパラディンがシュラセイカーの中にいるのを知っており、彼らの能力についての一般的な知識を持っている。シルヴァーフレイムの信奉者はこの判定に+5ボーナスを得る。