Dragonshard 09/06/2004

コラヴァール(Khoravar):
コーヴェアのハーフエルフ

キース・ベイカー




「エアレナルとサーロナの血がコーヴェアで出会い、そこから我々が生まれた。我々は王を持たず、己の国も持たぬが、それでもこの大地の子なのだ」

--アリラム・ド・リランダー、飛行船ブライトウィンド号船長


およそ2,600年前に、エアレナルは内戦によってばらばらになった。不死宮廷の聖職者とヴォル氏族のネクロマンサー達の間には世代を超えて常に緊張がくすぶりつづけており、死のマークの顕現とヴォル氏族の育てていたハーフドラゴンの存在が明らかになった事により、そのおき火は火種を得てついに燃え上がったのである。アルゴネッセンのドラゴン達が即座にこの争いに介入し、戦いが終ったとき、ヴォルの血統は絶えていた。

エアレナルのエルフたちはすでにドラゴンを相手に多くの戦争を経験していたが、同族同士で戦ったのはこれが初めての経験であり、心にも深い傷痕を残した。争いの中で多くのエルフがエアレナルを離れ、コーヴェアと呼ばれる大陸に新たな希望を見出すことを選んだ。この大移動を指導していたのがフィアラン氏族である。死のマークを破壊するための戦いがまだ終っておらず、シブリング・キングスと不死宮廷が影のマークのエルフたちに対して行動を起こすことはなかった。移民の大部分は暗黙の了解がこの内戦によって破られ、エアレナルの土にこぼれたエルフの血はこの大地を永遠に汚してしまったと感じていた。

フィアラン氏族とその他のエルフがコーヴェアに到着したとき、彼等はこの大陸の現在の支配者と出会った。人間。冨と自由を求めてサーロナから移住してきた彼等は、エルフに心奪われ、多くのものが来訪者達の持つ妖精の美と魔法の秘密を欲しがった。さすらうエルフの多くが貴族やギルドの支配者層と結婚したが、殆どのエルフはこれを長期投資だと見なしていた。エルフは何世紀も先を見ることに慣れており、また人間の短い寿命も知っていたので、結婚とは配偶者が持つ財産を引継ぐ素晴らしいチャンスだと思われていたのだ。殆ど誰もその存在を想像しえなかった、最初のハーフエルフが誕生するまで。

コーヴェアの子ら

人間と結婚したエルフたちの配偶者は概ね特権階級だった。ハーフエルフの第一世代はほぼ例外なく権力と影響力の庇護の元に生まれたのである。人間の親は大概この風変わりな子供たちのことを喜んだが、エルフの親はこれを先祖の冷やかな蔑みの印と見た。多くのエルフが人間との関係から身を引いてフィアラン氏族のエンクレーヴに引きこもった。この種族的純血に対する欲求がなければ、現在のエルフははるかに大きな影響力をコーヴェア大陸に持っていたかもしれない。「真の」エルフが去った後も、胸に未知への憧れを抱き、若いハーフエルフ達はコーヴェアに広がっていった。彼等の多くは異なる家系の出身であったものの、血統的なそれよりも強い絆を同じハーフエルフに感じていた。多くのハーフエルフは同じハーフエルフとの婚姻を結び、新たな氏族、新たなギルドを形成していった。この種族としての安定が五つ国の地盤固めを助けたのは間違いないところであろう。

ほとんどのハーフエルフが彼らの人間の先祖の中に留まったが、彼らは去ってしまった祖先の言語と伝統のいくつかに執着した。新しい世代が成長して、彼らのかつての血族がより遠いものになったとき、彼らは独自の伝統を生み出した。そして「人間とエルフのあいのこ」ではない、種族としての独自の名前を求めた。そのうち最も一般的な名称が「コラヴァール(コーヴェアの子)」だ。「ヴァラナー」のように、この単語は形容詞であると同時に名詞でもある。例えばリランダーの飛行船は「コラヴァール・エアシップ」であり、ハーフエルフの弁士は「雄弁なコラヴァール」である。

何世紀ものうちにコラヴァールは数を増やし、広がった。大部分は親戚である人間との結びつきを維持していたが、ハーフエルフのみの共同体を作り出したところもあった。例としてはエルデンリーチの緑の歌い手やラザー公国連合のグレイ・セイルズなどがあげられるだろう。コラヴァールにとって、ハーフエルフ独自のドラゴンマークの発現は大きな転機だった。スレインで嵐のマーク、続いてブレランドで探知のマークが発現したのだ。マーク戦争とガリファー王国成立の後、これらの氏族の存在は種族としての確かなアイデンティティをハーフエルフに与えた。

今日、コラヴァールの大部分がメダーニ氏族かリランダー氏族とかかわっている。コーヴェアの貴族とギルドの中にかつてのまま残っている者達もいる。しばしばこれらのハーフエルフは大使や密偵としてエアレナルやヴァラナーと関わる事を期待される。これまで、純血のエルフは、コラヴァールは不死宮廷の力を借りることも出来なければ、ヴァラナーの先祖の精霊の力を授かることも出来ないと決め付けてきた。しかしながら、いつかハーフエルフがこの偏見を覆し、エルフがコラヴァールの血統は人間のそれより強い独自の物であると認めざるを得ない日がくるかもしれない。

ハーフエルフの血統

コラヴァールの遺伝は普通では考えられないものである。多くの錬金術師と賢者は人間とエルフが完全に交配可能な事に驚いている。加えて人間とハーフエルフとの間で子供が生まれるとき、子供が両親のどちらの種族になるかは半々である。しかし他のすべての場合(人間とエルフ、ハーフエルフとハーフエルフ、エルフとハーフエルフ)では常にハーフエルフの子供が生まれるのだ。エアレナルのエルフは、これは生理学や遺伝学の問題ではなく魔法の問題であると主張する;エルフの血液は古代のゼンドリックの輝きを秘めており、いったん希釈するとそれを決して取り戻すことができないのだと。これが真実であるかどうかは、各DMが決めることだ。

コラヴァールの習慣

ハーフエルフは住んでる地域の文化に柔軟に適応する。それぞれのコラヴァール・ドラゴンマーク氏族には独自の伝統があり、それらは将来更に独自色を強めるだろう。またそれとは別にハーフエルフに共通するいくつかの一般的な習慣もある。ハーフエルフのキャラクターを演じるか、またはハーフエルフのNPCを用いているのなら、あなたはそのキャラクターがこれらの伝統に従うかどうか決めなければならない。

コラヴァール言葉(Khoravar Cant):コラヴァールの両親を持つハーフエルフは共通語とエルフ語の双方を修得する。それらの新しい世代は両方の言語のボキャブラリーを混ぜる傾向があり、そうして生まれた混成言語をある言語学者が「コラヴァール言葉」と命名した。
どんなハーフエルフもこの方言を完全に理解することができるが、それ以外の種族のキャラクターはこれを理解するために知力判定(共通語とエルフ語の双方を知っているなら難易度5、どちらか片方だけなら難易度10)を行わねばならない。聞いたキャラクターが1か2ポイント差で失敗するなら、会話の要点は理解できるかもしれない。出目が腐れば腐るほど、理解からは遠ざかる。

ハーフエルフの歓待:コラヴァールは若い種族だ。そして、彼らはコーヴェアで自らの地位を確立するために様々な事柄を耐えねばならなかった。結果として、同族に対する歓待と寛大さの伝統が生まれた。これはズィラーゴのノームの一族の絆ほど強いものではなく、同種族とは言え必ずしも赤の他人のために肉体的経済的なリスクを侵すわけではない。しかしながらその他の種族と比べれば、明らかにハーフエルフは同族を助け、情報やニュースを共有しようとする傾向が顕著である。これは相互的なものであり、PCが冒険家や英雄として名声を得たなら、他のハーフエルフは彼の支援か忠告を求めるかもしれない。そこで彼が援助を提供するなら、彼の名声は同族の中でさらに広まるだろう。しかしこれらの要求を拒否するなら、彼はいつか同族から見捨てられている自分に気づくはずだ。

共同食事会(unity meals):都市や町ではハーフエルフはしばしばローカル・ニュースと出来事について議論する為の、共同食事会(unity meals)と呼ばれる集会を毎週開く。PCが良い評判を築いているなら、それらは情報を手に入れる為の素晴らしい場所となるだろう。DMの裁量で、食事会に出席する事によって情報収集ないし知識(地域)判定へのボーナス、またはパーティーが雇い人をいい条件で雇う事を可能にしてもかまわない。また、冒険の種や何がしかの秘密について知ることが出来るかもしれない。

異文化の掛け橋:多くのハーフエルフは歓待の精神を更に推し進め、コーヴェアの異文化の間の橋として自らを役立てようとしている。多くが吟遊詩人、弁護士、外交官、記録者、翻訳者、または商人になる。ゼンドリックの奥地やカイバーの深層に隠された未知の種族を発見するため、探検家になるものもいる。

キャラクターへの質問

ハーフエルフPCかNPCを作成するとき、以下を考えてください。

  • コラヴァールには、種族の誕生に遡る歴史があります。あなたはハーフエルフの共同体に生まれましたか、それとも人間とエルフの親の間に生まれた「新生児」なのでしょうか? そうであるなら、あなたはハーフエルフ社会の一部になりたがっているのでしょうか。それともあなた独自の立ち位置を世界の中に定めたいのでしょうか。
  • あなたには、メダーニ氏族かリランダー氏族と関係がありますか? 多くのコラヴァールがそのルーツを氏族にたどることができますし、直接的なつながりのないものでさえ、しばしば自分たちをどちらかの氏族に結び付けたがります。これはドラゴンマーク特技や一族の有力者特技、あるいは単にバックグラウンドの一部としてゲームに反映されるでしょう。
  • あなたはどの伝統に従いますか? まだ見ぬ未知の友人に胸をときめかせ、交友を広げ彼等との絆を強めるか、それとも既に存在する友人や家族の為に力を尽くすことを望むのでしょうか。
  • あなたはエルフの遺産に何か関心を持っていますか?あなたはエアレナルのエルフかヴァラナーの道を学びたいですか?あなたは、不死宮廷の力を授かったり、またはヴァラナーの先祖の霊と交信したいと望んでいますか?
  • あなたの一族はどれくらい大きいですか?あなたの住む地域の他のハーフエルフはどうですか?あなたには、地方の共同体の一員として生きて来たのか、それとも独立独歩のアウトサイダーなのでしょうか?
    これらの質問は考慮するための注意点であり、それ以上の物ではありません。これらを気に留めて置けばキャラクターを肉付けする際に役に立つでしょう。しかし何よりも重要なことは、あなたがプレーしたいキャラクタを造る、ということです!