円錐の屋根を持つ極端に高い丸い建物が、凍りついた湖に浮かんでいる。この建築物は見た目どおりに小さいのか? それとも凍結面の下には何かが隠されているのか?
『氷中の塔』は9レベル・キャラクター4人のために用意されたショート・アドヴェンチャーである。シナリオは凍結した湖が特徴的な寒冷な辺境地帯で行われる。アクションは主に氷の下に建つ水中の塔で起きる。いつものことだが、あなたは自由にこれらを改変し、それを適切にキャンペーンに用いることができる。
準備 Preparation
あなた(DM)はこの冒険を動かすに当たり、D&Dコア・ルールブック ‐ PHB、DMG、MM ‐ を必要とする。冒険を走らせるために必須ではないものの、『フロストバーン Frostburn』のコピーが同様に助けとなるだろう。このシナリオはD&D3.5版ルールを利用する。
事前に冒険を印刷しろ。少なくともシナリオを1回は読み通し、あなたが設定した状況や脅威、塔に住まう主なNPC(彼女らの行動原理など)を把握しろ。
この枠に記された文章は必要なときにあなたが声を出して読むプレイヤー向けの情報であり、適切に言い換えろ。
冒険の背景 Adventure Background
何世紀も前に、悪しきオーガ・メイジが極北の谷に高い塔を建てた。結局のところ冒険者が彼を倒して略奪し、以来何十年間もの間そこは誰も住まうことがなかった。
そして約50年後、地質学的大変動が起きて谷は水が満ち、塔の最上階以外はすべて水没してしまった。この地域は寒冷であるため、この新しい湖はまもなく水中に塔を残したまま凍結した。ただ、その最上階層のみが氷から突き出ていた。
数年前、ピュンノーキという名前のハーフ・フィーンド/ハーフ・グリーン・ハグが、寒く水浸しの塔が理想的な住居と思い定め、ここを棲居とした。その後まもなくして、彼女は彼女の気の合う友、チアッカという名前のハーフ・フィーンド/ハーフ・アニスを見いだした。この恐ろしい2人はここを“魔女団”の集会所とし、そして第3のハグを待ち望んでいる。これまでのところは残念ながら、彼女らに加わったのはティーフリングのローグ、ハイニアだけだった。
この忌わしい三人衆は地域の人々を威嚇し、それゆえいくつかの冒険の対象となった。三人衆は放浪の狩人を誘き寄せ、肉と骨、生贄を得ることに成功していた。
冒険の概念 Adventure Synopsis
キャラクターが塔に接近して侵入するのは、実行可能と思われる方法ならいずれであっても可能だ。しかし、最も一般的であろうポイントは最上階層を通してだろう。そこでPCは彼女らを歓迎するふりをする、極地の鳥と野生動物に堪能なハイニアに会うだろう。ハイニアは雇用者と連絡をつける間、PCを歓待する。
もしPCが同意するなら、ティーフリングは下階層に降りていき、そこで警戒を発する。塔の居住者たちは、その時点でPCに対して組織的攻撃をおこなう。
もしキャラクターが塔の水没部分から侵入することを試みたり、もしくはハイニアの策略を看破するなら、塔の住民を出し抜く機会を得る。
冒険のきっかけ Adventure Hooks
DMとして、あなたはPCを如何にうまく冒険に巻き込むかを知っている。塔の奇妙な外観を見るだけでもその中を探りたくなるかもしれないが、あなたのプレイヤーがそれに釣られないなら、あなたは彼女らを引き込むため以下の示唆を使うことが出来る。
冒険の始まり Beginning the Adventure
『氷中の塔』は場所基点型の冒険で、ピュンノーキと友人たちが住む氷で覆われた塔の中で進む。PCが塔に接近するとすぐに開始する。
塔と環境 The Tower and Environs
塔は凍結湖の路盤か、遠浅の入り江に設けられている。それはいかなる寒冷地であっても配置できる。その地域は年間を通して凍結しているかもしれないし、PCがその地を訪れたときだけ凍結しているのかもしれない。
どちらの場合も、塔周辺地域は非常に寒冷だ。キャラクターは寒冷な気候に対し防寒服を準備しなくてはならない(PHB128ページ参照)。獣皮を羽織ることで部分的な防御を得ることは出来る。
日中の気温は華氏−20度(摂氏−28.9度)前後であり、無防備のキャラクターは10分毎に頑健セーヴ(基本難易度15、判定回数毎に+1が加わる)に成功しなくては1d6非致傷ダメージをこうむる。部分的防御を得ているキャラクターは1時間毎に1回の判定でよい。夜間、気温はさらに10度下降する。体感気温はさらに下がるがこれ以上の低温はキャラクターに、追加の危険を与えない。
塔周辺の水中(そして浸水)は大気よりさらに冷たい。無防備なキャラクターは10分毎に1d6[冷気]ダメージをこうむり(セーヴ無)、さらに水中にいる間は頑健セーヴ(基本難易度15、判定回数毎に+1が加わる)を行わなくてはならず失敗したなら1d4非致傷ダメージをこうむる。金属の鎧を身に着けているか、冷たい金属に接触した者は、チル・メタル 呪文の影響を受けたかのように扱われる。部分的防護を受けたキャラクターは、無防備なキャラクターと同様にセーヴィング・スローを行うが、その間隔は10分毎に1回だ。エンデュア・エレメンツ 呪文か、5以上の《冷気に対する抵抗力》は冷水に対して有効だ。防寒服は部分的防護を提供するが、それが防水性でないなら最初の10分間を超えたところで無効になる。
水中の冒険 Underwater Adventuring
塔を構成する5階層のうち4階層までは完全に水没していることから、この冒険において水中戦闘を考慮することは非常に助けとなるだろう(DMG90〜92ページ)。キャラクターが浸水した階層を移動するために水泳を行わなくてはならない。塔内の水流はなく、そのため〈水泳〉判定難易度10に成功することでキャラクターは移動することが出来る。判定に成功したなら、移動アクションを行うことで1/4地上速度で移動でき、全ラウンド・アクションを行うことで1/2地上速度で移動することが出来る。水中移動速度を持たないクリーチャーでも突撃は出来る(攻撃前に、少なくとも10フィートの移動が出来るなら)が、疾走や撤退、5フィート・ステップはできない。
十分な荷重を得たクリーチャーは、もし望むなら床を歩くことも出来る。小さくかさばらないアイテムを持つことは、この目的のために最適だ。以下の表に、キャラクター・サイズに基づく必要重量を記す。
サイズ | 極小 | 微小 | 超小型 | 小型 | 中型 | 大型 | 超大型 | 巨大 | 超巨大 | 水中移動![]() |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
必要重量 | 1 | 2 | 4 | 8 | 16 | 32 | 64 | 128 | 256 |
クリーチャーが水中を歩く場合、その運動は妨げられる。もし水中移動速度を持たないなら、隣のマスに入るために5フィートを費やす代わりに10フィートを費やす。斜めのマスに移動する場合には、少なくとも15フィート分の移動を支払わなくてはならない。クリーチャーは運動能力が妨げられるため、突撃、全力疾走、5フィート・ステップが出来ない。
加えて、水中ではクリーチャーがいずれかの手段により呼吸する必要がある。PCにはウォーター・ブリージング 呪文か類似した魔法のアイテムが適切だろう。塔の住民は、それを必要とするかもしれない客のために上層にウォーター・ブリージング のポーションを数本蓄えている。
塔の内装 Tower Interior
塔は5階建ての石積みで、最上階層のみが浸水していない。各構造の主要な特徴は以下のとおりである。
壁 Walls
塔の壁はすべて石積みである。そして周辺環境はとても厳しいものだった。水面上に突き出た外壁は頻繁に風雨に曝されている。水面下の外壁はより良好な状態に保たれているが、全面が水棲スライムに覆われている。
●外壁 Exterior Walls:厚さ5フィート;硬度8;ヒット・ポイント450;破壊難易度41;登攀難易度15
内壁も下4階層と同様にスライムに覆われているが、外壁よりは良好な状態に保たれている。
●内壁 Interior Walls:厚さ2フィート;硬度8;ヒット・ポイント180;破壊難易度37;登攀難易度20
重荷重ではないキャラクターは水中での〈登攀〉判定に+8状況ボーナスを得る。浮力が〈登攀〉を容易にするためである。
天井 Ceilings
塔の天井は特に記述がない限り25フィートである。
床 Floors
床全面はかなり滑らかな石で作られている。それらは移動を妨げることはないが、下階層での冒険における水中効果について上記「水中の冒険」を参照しろ。
扉 Doors
最上階層を除き、塔の扉はすべて補強された木製で、比較的新しいものに見える。扉はいずれも施錠されていないが、大部分は閉められている。水中の扉は抵抗と木材が膨張しているため開閉が困難だ。水中の扉を開閉したり破壊するにはその難易度に+5する。塔の住民は扉の特性に慣れている。そのため“姉妹たち”は開閉時の【筋】判定に+5状況ボーナスを得る。
住民は攻撃を受けた際に扉を閉鎖するために用いる石の楔を手元に用意している。楔を扉に押し込むのは全ラウンド・アクションだ。
●頑丈な木製扉 Strong Wooden Doors:厚さ2インチ;硬度5;ヒット・ポイント20;開閉難易度15、破壊難易度25
窓 Windows
塔の窓はすべて、青銅の格子にはめ込まれた極めて透明な加鉛ガラスで作られている。格子には蝶番があり鎧戸のように開閉されるが、それらは通常単純ながら頑健な掛け金で施錠されている。それらの機構は幾分堅めで、それぞれの掛け金を機能させるには【筋力】判定難易度10を必要とする。掛け金は破壊されていない状態の窓の外から開くことは出来ない。しかし誰であっても破壊された窓を介して中に手を伸ばし掛け金を開くことができる。扉と同様に、水中の窓を開いたり破壊することは困難だ。塔の住民はこれらの【筋力】判定に+5状況ボーナスを得る。
第1階層から第3階層において、窓を介して塔内に侵入することが出来る。
●窓格子 Window Lattices:厚さ2インチ;硬度8;ヒット・ポイント50;開閉難易度15(掛け金のない場合);破壊難易度25(掛け金の)
●窓ガラス Glass Window Panes:厚さ1/2インチ;硬度1;ヒット・ポイント2;破壊難易度7
照明 Lighting
特に指摘されない限り、塔内はいずれも照明されていない。
最上階層への接近 Approaching the Level(遭遇レベル6)
塔の最上階層に設けられた窓は、湖の凍結した水面から15フィートの高さにある。少なくとも100ヤード(=3000フィート=600マス=約90メートル)離れた距離から第1区画にある窓が開放されていることが見える。
訳註:マップ上では1マス5フィートとして描かれているが、大型クリーチャーが多いことから1マス10フィートとして読み替えて運用する方が楽であるかもしれない。
ただ、天井は25フィートであることから、大型クリーチャーであっても上下に並んで戦うことは出来る。DMは熟慮しろ。
罠:結氷面を横切って歩くキャラクターは、塔の周辺に約1フィートの開水面が亀裂を成している事に気づく。ここでは氷が砕けやすいため、不注意なキャラクターは足元の氷を踏み抜いてしまい落水する。
罠:砕けやすい氷の罠 Brittle Ice Trap | |||
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脅威度: | 5 | 攻撃ロール: | |
罠の種類: | 機械式 | セーヴ難易度: | 反応20・無効 |
作動条件: | 場所式 | ダメージ: | |
再準備条件: | 不可 | 効果: | 落水 |
目標: | 100ポンド以上の荷重の者(下記参照) | ||
難易度:〈捜索〉20、〈装置無力化〉不可 |
100ポンドを超える重量のキャラクターは亀裂から10フィート以内に近づいたなら1d6ロールを行う。ロール結果が1であるなら、結氷は崩壊し、キャラクターは反応セーヴ難易度20をロールしなくてはならず、失敗したなら凍てつく水中に落水する。そのキャラクターから5フィート以内にいる者も同難易度で反応セーヴを行い、失敗したなら落水する。300ポンドを超える重量のキャラクターは周囲5フィート以内の者を巻き込んで自動的に落水する。難易度15の〈生存〉か〈捜索〉判定に成功することにより、亀裂のそばの氷が不安定であることを発見する。
展開:塔の住民は東、西、北東方向から接近するキャラクターを発見する可能性がある。第1区画、第2区画、第3区画の戦略欄を参照しろ。
第1階層 | 第2階層 | 第3階層 | 第4階層 | 第5階層 |
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この階層は塔の最上階層であり唯一水面上に位置する。他の階層と異なり、この上には頂部が高さ50フィート、外周部が高さ20フィートの緩やかな傾斜をした円錐形の屋根がある。屋根全体は木製の垂木の迷路であり、下階層に向けて開けた構造をしている。この階層の内壁は25フィート高であり、キャラクターは〈登攀〉や飛行することにより壁を乗り越える事ができる。 | 塔のより低階層は浸水している。水位は第5区画にある階段の頂部からおよそ5フィート下にある。水面は薄氷で覆われているが、PCは容易にそれを破ることが出来る。 | |||
1.日の入りの間 | 6.下士官の間 | 9.兵舎 | 12.台所 | 16.衛兵詰所 |
冒険の終了 Concluding the Adventure
PCがピュンノーキとチアッカの双方を殺すか、追い払うまで冒険は続く。2体のハグが破られたなら、その部下は早々に塔を立ち去る。
その後の冒険 Further Adventures
ピュンノーキとチアッカの敗北は周辺地域に魔力の欠如を生み出す。結局のところ、他のモンスター、もしくはモンスター群が塔に押し寄せ、2体のハグを継承するだろう。ホワイト・ドラゴンか『フロストバーン』で提供されるモンスターは塔の新住民として最適だ。
Design: | Skip Williams |
Editing: | Penny Williams |
Typesetting: | Nancy Walker |
Cartography: | Rob Lazzaretti |
Web Production: | Julia Martin |
Web Development: | Mark A. Jindra |
Graphic Design: | Sean Glenn, Cynthia Fliege |